(懐かしいオリンピコ劇場;バルトリの「ライブ・イン・イタリー」から2曲)
10-5-4、チェチーリア・バルトリの「ライブ・イン・イタリー」から2曲、リート;「鳥よ、年ごとに」K.307およびコンサート・アリア「喜びに胸はときめき」K.579、ほか多数、ピアノJ.Y.テイボーデ、

−2曲とも小鳥が囀るような明るいテンポの早い軽快な曲であったが、映像で見るバルトリだけが、ライブのステージで観客を前にして歌っているせいか、自由に自分の調子を出して、マイペースで歌いこなしている感じであり、これらの曲に非常に合っていると思った。全曲を全て諳んじて自由に伸び伸びと歌いこなしている姿は、超一流の歌姫の感じがした−

(懐かしいオリンピコ劇場;バルトリの「ライブ・イン・イタリー」から2曲)
10-5-4、チェチーリア・バルトリの「ライブ・イン・イタリー」から2曲、リート;「鳥よ、年ごとに」K.307およびコンサート・アリア「喜びに胸はときめき」K.579、ほか多数、ピアノJ.Y.テイボーデ、
(収録)1998年6月、イタリア、ヴィチェンツア、テアトロ・オリンピコにおけるライブ、
(2001年9月27日発売のDVD、ユニバーサル・クラシックス、DECCA-UCBD-1020)

  今月も、是非、一気にアップロードしてしまいたいソフトが出て来た。それはチェチーリア・バルトリが歌った「バルトリ・イン・イタリー」というDVDである。このソフトはイタリーの歌曲がメインであったが、その中にモーツアルトのピアノ伴奏のリートが2曲K.307(284d)およびK.579(正しくはコンサートアリア)と1曲の「フィガロの結婚」のケルビーノの第2幕のアリアが含まれていた。始めの2曲が未アップであったので、かねてから取り上げようと考えていたが、最近になって、HP作業上、このソフトを見ざるを得ない機会が何度も生じてきた。





  その第一は、シフの弾き振りによるオペラ的なニ短調協奏曲K.466(10-3-4)のソフト紹介においてであり、それはこの演奏が、イタリアのテアトル・オリンピコのステージで演奏されていたからである。この劇場は何とルネッサンス時代に建築家パッラーデイオによる世界最古の建築遺産であり、この建物内部の美しさに定評があるが、このシフの映像よりもこのバルトリの映像の方が、建物内部の装飾の美しさが遙かに良く写されていたからである。従って、この劇場の内部の写真紹介は、バルトリの映像のアップ時に行おうと考えていた。


  その第二は、今回5月号でアップする予定のビーチャムのモーツアルト・コンサートのDVD(1956)を昨年12月に購入したのであるが、それには往年の名ソプラノのマリア・シュターダーの二つのコンサートアリアK.418 およびK.217が含まれていた。この名ソプラノを紹介するために、彼女が全盛期にデムスのピアノで録音した有名なリート集のLPをチェックする必要が生じてきた。シュターダーが歌ったモーツアルトのリートは5曲しか収録されていなかったが、いずれも珠玉の名曲で、そのLPには何と冒頭のバルトリが歌った二つのピアノ伴奏のリートが歌われていた。名人のなす事は、時代が変わっても共通する。それらは私が最初に聴いた実に素晴らしいモーツアルトのリート集であったので、そのためどうしても、この2曲は急いでアップしなければならないと感じるに至っている。

  また、テアトル・オリンピコ劇場を使ったオペラ作品の過去の映像は残念ながら未アップあり、優先してアップしなければならないと思っている。それにはロージー監督の「ドン・ジョバンニ」(1979、マゼール指揮、ライモンデイ)、アーノンクール・ポネルによる「ポント王のミトリダーテ」(1986)などがある。私は前者のLDを買いそびれており、どなたからかお借りして、急いでアップする時期が迫ってきたと考えている。
 以上が今回追加的に10-5-4として、失念していたバルトリの「バルトリ・イン・イタリー」を急いでアップするに至った理由である。そして、この映像から得たオリンピコ劇場の写真を、バルトリが歌い出す前に掲載しようと考えた。この劇場の舞台正面の遠近法を活用した奥行きの深い構造と言い、天上を飾っている見事な彫像と言い、或いは100体を超える無言の聴衆となっている等身大の像の見事な作りと言い、劇場全体のバランスの取れた姿と言い、写真では一部しか分からないが、聴衆を圧倒する素晴らしい劇場であった。


     このバルトリの「ライブ・イン・イタリー」は、二つの部分に分かれており、第一はソナトーリ・デ・ラ・ジョイオーサ・マルカという古楽の室内楽団の伴奏による、カッチーニ、ヘンデル、ヴィヴァルデイによる5曲のアリア集であり、第二はモーツアルト、シューベルトのリートと、ベルリーニ、ドニゼッテイ、ロッシーニなどの歌曲を約20曲ほどピアノ伴奏で歌う部分である。さらにサービス満点のアンコールがあり、ピアノ伴奏で5曲歌われている。モーツアルトのアリエット「鳥よ、年ごとに」K.307およびコンサート・アリア「喜びに胸はときめき」K.579は、ピアノ伴奏になってからの最初の2曲であったが、伴奏者のJ.Y.テイボーデはバルトリの軽妙な発声にピッタリと合った素晴らしい伴奏ピアニストであり、この2曲ばかりでなく他の曲でも、十分、実力を発揮していた。


 最初の第一曲は、モーツアルトが二度目のパリ旅行の際に、マンハイム滞在中に2曲のフランス語のアリエッタを作曲した。1778年2月7日の手紙には「グストル嬢(アウグステの愛称、ヴェントリングの娘)から貰ったテキストでフランスの歌曲を書きました。彼女はこの歌をとても上手に歌います」と書かれており、さらに2月28日の手紙には、「彼女のために、さらに何曲かのフランスのアリエッタを作曲すると約束して、今日また一曲を書き始めています」と書かれていた。
  アリエット「鳥よ、年ごとに」K.307(284d)は、その1曲であり、アントワーヌ・フェラン(1678〜1719)のシャンソン詩集に収録されており、この詩は年ごとに森にきて飛び交う小鳥たちを渡り鳥にたとえて、愛の営みを歌ったフランス語の軽妙な愛らしい歌曲である。


  曲は軽やかな付点リズム、伸びやかな旋律の高まり、中間部のハ短調のメランコリックなかげり、一転して囀りのような語りかけ、そして喜びに溢れた歌い上げ、と伸びやかな気分に満ちている。
  バルトリはさすがオペラのヴェテラン歌手だけあって、実に表情豊かに軽やかに歌い出し、朗々と歌ってから、中間部ではテンポをガラリと変えてゆっくりと沈むように歌い、後半は一気に語りかけるように明るく歌っていた。曲はあっと言う間に駆け抜けて、次の曲に移ってしまうが、何と爽やかな楽しげな曲だろうか。バルトリの明暗の表情をつけたやや大袈裟な歌い方が楽しかった。
  短い曲なので、マリア・シュターダーのLPとバーバラ・ボニーのCDを聴いてみた。シュターダーはやや硬い感じでテンポも強弱の変化も余り付けずに明るく歌っていたが、譜面通りの感じでややき真面目な調子で歌っていた。バーバラ・ボニーは、一節・一節、表情を変えながら歌っていたが、フェルマータでは十分に伸ばし装飾も自由につけながら軽妙に変化を付けて歌っていた。1分40秒ほどの短い曲であったが、バルトリだけが2分10秒かけて歌っており、中間部のゆったりした表情の付け方でガラリと変わっているようだった。私には、どなたも透き通るような良い声で歌っており、多少のニュアンスの違いはあるが、この曲の良さを十分に歌いこなしていると思った。


第二曲目は、新全集では「フィガロの結婚」の第13曲aアリエッタ「喜びに胸はときめき(Un moto di gioia mi sento)」K.579とされているが、自筆作品目録にないので確証はないようである。ウイーン再演の際に、スザンナ役のデル・ベーネに依頼されて代替アリアとして作曲されたと推測されている。元の曲は第二幕でスザンナがケルビーノに変装をさせながら口ずさんだアリアだったものと考えられている。
  曲は喜びに満ち溢れた軽やかな明るいブッファ調の曲であり、オーケストラの伴奏がついているが、モーツアルト自身の作とされるすっきりした魅力タップリなピアノ伴奏版があるため、しばしばリート集として歌われることが多い。私のデータベースではオペラのようにオーケストラ伴奏でコンサート・アリアとして歌われたものとピアノ伴奏のものとは4曲ずつ、相半ばしていた。


 曲は短くて明るいアレグレット・モデラートのピアノ伴奏で始まり、喜びに溢れる主旋律が出て、ピアノ伴奏で弾みがつくように旋律が高まっていき最初のフェルマータで一息つく。中間部ではピアノと歌唱部が掛け合いながら進み、再び冒頭の旋律が出て変化し高まりながら次のフェルマータで一息つき、最後はピアノと声とがさえずりながらあっと言う間に軽やかに終わりとなる83小節の美しいアリアエッタになっていた。
  バルトリは場馴れしたオペラ歌手の意気込みを見せて、最初から軽やかに歌い出し、フェルマータでは十分に間を取って、ピアノと声を重ねるように歌いながら、最後はピアノと一体になって突き抜けるように歌っていた。そして全く同じような調子で、始めから繰り返して歌い出し、十分時間をかけて、後半は一気に歌いこなしていた。
  シュターダーもボニーもピアノ伴奏で歌っていたが、バルトリが余りにも伸び伸びと自由に歌っているのに反して、シュターダーは前曲と同様にやや硬い表情で全く譜面通りの感じで歌っていたが、ボニーは声が澄んで美しく、明るい調子で、十分に装飾音を付けながら落ち着いて歌っていた。矢張りバルトリ一人がライブで歌っているせいか、自由に自分の調子でマイペースで歌いこなしている感じがして、この曲に最も合っていると思った。


  これらのモーツアルトの2曲は、極めて短い曲なので、あっと言う間にご報告することは終わって仕舞うので、この映像に盛り込まれたヘンデルの最高のアリア「トゲは捨ておき」(「オラトリオ」時と悟りの勝利より)や有名な民謡調のジョルダーニの「カロ・ミオ・ベン」などを紹介しておきたいと思う。バルトリは、重要な言葉や感情を表現するために、音色や声量を変化させつつ、ワン・ブレスで大変長いフレーズを支える超人的な技巧によって、その意味を明らかにすると言われているが、われわれ外国人には、残念ながら良く分からない。ヘンデルのアリアなどで驚くことは、大きな声と小さな声の使い分けが見事であって、特にワン・ブレスで長く小さな声の微妙なコントロールをする技術には驚かされる。彼女はピリオド楽器と声を合わせて歌う微妙なアンサンブルを表現するのが得意と見えて、ヘンデルではこの合奏団とも十分に合っていた。


  また、ドニゼッテイやロッシーニのサロン風の作品がピアノ伴奏で歌われていたが、バルトリの声の魔力、あどけない魅力ある表情、そして緻密な演出が魅惑的に融合されて、素晴らしい出来映えを見せていた。
  アンコールの最初に歌われたのは、「フィガロの結婚」からの第二幕のケルビーノの有名なアリア「恋とはどんなものかしら」であったが、軽妙なピアノ伴奏に乗って、バルトリは手慣れたこの曲を実に楽しげに歌っていた。恐らくこの曲は彼女の声域に最も合っている曲なのであろう。また、「カロ・ミオ・ベン」は難しいベルカント・コロラチューラの曲と言われるが、バルトリは疲れも見せずに朗々と歌われていた。

この歌姫バルトリの「ライブ・イン・イタリー」は故郷イタリアの著名な文化遺産になっている劇場でのソロ・リサイタルなので、バルトリは始めから気合いを入れて望んだコンサートだったに違いない。彼女は広い声域を持ち、バロック音楽からイタリアのベルカント・オペラまで広いレパートリーを持っているが、今回は自分の最も得意な持ち歌ばかりを、自信を持って歌ったものと思われる。彼女の「ヴィヴァルデイのヴィヴァ・ヴィヴァルデイ」というアリアと協奏曲のDVD(2000)を持っているが、ほぼ同じ時期のライブであり、ここでも多数のアリアを暗譜で歌っていたのには驚かされた。

  終わりに今回の映像のアップロードを機会にして、モーツアルトのリート「鳥よ、年ごとに」K.307(284d)およびコンサート・アリア「喜びに胸はときめき」K.579の2曲のデータベースを含む「映像のコレクション」のアップを行った。また、バルトリのソリストとしてのこのHPの演奏者目録を作成したので、それぞれ、ご覧いただきたいと思う。

(以上)(2010/04/30)

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