(最新収録のソフト報告;ハンガリーのケレメンによるヴァイオリン協奏曲全集、第2巻)
10-4-1、バルナバス・ケレメンの弾き振りによるヴァイ才リン協奏曲第4番ニ長調K.218、第5番イ長調K.219、二つの独奏ヴァイオリンのためのコンチェルトーネハ長調K.190(186E)ヴァイオリン;カタリン・コカス、ロンドハ長調K.373、ロンド変ロ長調K.269(261a)、アダージョホ長調K.261、フェレンク・エルケル室内楽団、06年5月、ブタベスト

−ケレメンは、自ら演奏しながらこの室内楽団を統率し、ソロパーツをほぼ完璧なまでに掌握して、自信をもって堂々とこのヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲シリーズの完全演奏を成し遂げていた。3曲のヴァイオリン協奏曲楽章、ロンド変ロ長調K.269(261a)、アダージョホ長調K.261は、このHP初出である−

(最新収録のソフト報告;ハンガリーのケレメンによるヴァイオリン協奏鐘全集、第2巻)
10-4-1、バルナバス・ケレメンの弾き振りによるヴァイ才リン協奏曲第4番ニ長調K.218、第5番イ長調K.219、二つの独奏ヴァイオリンのためのコンチェルトーネハ長調K.190(186E)ヴァイオリン;カタリン・コカス、ロンドハ長調K.373、ロンド変ロ長調K.269(261a)、アダージョホ長調K.261、フェレンク・エルケル室内楽団、06年5月、ブタベスト、
(2009年11月26日、石丸電気で輸入DVOを購入、HUNGAROTON HDVD 32553-54)

  ハンガリーの名手ケレメンのDVDの第二集は、第一集が素晴らしかったので、2曲の協奏曲の名曲は期待できそうであるし、さらに二つの独奏ヴァイオリンのためのコンチェルトーネハ長調K.190(186E)のもう一人の独奏ヴァイオリンが、第一集でヴィオラを弾いていた若いカタリン・コカスが演奏するので楽しみである。これまで聞いてきたLPやCDで、ヴィオラとヴァイオリンをこなしている人は珍しい。彼女はどちらの楽器が得意なのであろうか。また、2曲のロンドと1曲のアダージョは、このHPで初出なのでK番号の目録を増やしただけでも価値があり非常に期待している。



  第一曲目のヴァイオリン協奏曲第四番ニ長調K.218の第一楽章は、威勢のよい軍隊風のリズムを持った第一主題がオーケストラのトウッテイでアレグロで開始されるが、ケレメンも大きな身振りで指揮を取るように自ら合奏に参加していた。続いて第一ヴァイオリンが弱奏で特徴ある第二主題を提示しオーボエによって繰り返されて行き、やがてオーケストラにより提示部が終息する。そこでケレメンが主役登場とばかりに、独奏ヴァイオリンが2オクターブ高く第一主題を高らかに弾き始め繰り返してから、新しい主題を走句のように弾き進み、目まぐるしい技巧を見せながら勢い良く走り出した。やがて途中で起伏のある第二主題が独奏ヴァイオリンで示されてから、ケレメンとオーケストラとが掛け合いを見せながら主題を発展させ、次第に盛り上がりながら主題提示部を終えていた。ケレメンの独奏ヴァイオリンの勢いは展開部に入っても変わらずに、オーケストラを相手に激しく揺れ動きを見せていた。再現部でも軍隊風の威勢の良いリズムが現れ、主題提示の順序が異なるものの独奏ヴァイオリンの華やかな走句が続き、最後のカデンツアでも後半には軍隊調のリズムを取り入れて技巧的にまとめており、さり気なく終わっているのが面白かった。
  この第二楽章はケレメンがオーケストラの部分も弾いているため、ケレメンがアンダンテ・カンタービレの美しいメロデイを次から次へと一人で弾きまくっているかのような楽章であった。第一ヴァイオリンと木管が奏でる美しい穏やかな主題で始まり、ケレメンが1オクターブ高く独奏ヴァイオリンで優しく繰り返してから、続けてソロが新しい穏やかで美しい主題を弾き始めて和やかなムードになった後に、再びソロがヴァイオリンのスタッカートを伴奏にした踊るような軽やかなメロデイ弾き出してオーケストラと協演し第一部を美しく締めくくっていた。第二部では最初からケレメンがまるで一人舞台のように弾き進み、全体を明るく繰り返していた。カデンツアは冒頭主題を微妙なヴァイオリンの音色で変化させたもので穏やかにコーダに繋がりさり気なく終わっていた。


      フィナーレはフランス風のロンドーと書かれた楽章であるが、モーツアルトの気まぐれが始まったかのような形式の楽章。アンダンテ・グラツイオーソで独奏ヴァイオリンによるロンド主題で軽やかにゆっくりと始まり、オーケストラとソロとに引き継がれてフェルマータとなった。するとアレグロ・マ・ノン・トロッポの表示になり、テンポと感覚ががらりと異なって独奏ヴァイオリンがスタッカートと装飾音を持つて軽快な主題を提示して繰り返して行き、さらにケレメンが新しい主題をいくつか提示してゆく。再びゆっくりした先のロンド主題に戻り、フェルマータの後に先のアレグロ・マ・ノン・トロッポに変わって華やかに進行していた。しかし、途中からフェルマータの後にアンダンテ・グラツイオーソの表示になり、全く突然に、新しい別の主題が独奏ヴァイオリンにより提示され、さらにこれも新しいヴァイオリン・ソロの重奏和音のエピソードなどが現れてビックリさせた。再び当初のアンダンテ・グラツイオーソによるロンド主題が現れてホッとしたが、メロデイスト・モーツアルトの主題の豊かさが混乱を招く例のようであった。カデンツアのような短いソロの部分を過ぎてから終結していたが、さり気ない終わり方もこの曲独自のものであった。
  この曲は独奏者のケレメンがトウッテイ部分にも参加している所為もあって、第一楽章からフィナーレまで急−緩−急と、休む暇なく走り続けており、その精力的な弾きぶりには頭が下がる思いがした。



  続く第二曲目はヴァイオリン協奏曲第五番イ長調K.219 であり、始めにトウッテイによる主和音の強奏に続いて第一ヴァイオリンがスタッカートでアレグロ・アベルトの勢いで堂々と威勢よく第一主題が開始され、ひとしきりトウッテイで軽快に進行していた。やがて軽やかな第二主題が弱奏の第一ヴァイオリンで提示されて素晴らしい調子で進んでから、コーダを経て提示部を終え、フェルマータになった。ここで曲はアダージョになり、独奏ヴァイオリンがオペラのアリアのように美しいアインガングで登場して、一際豊かな音色をヴァイオリンが示していたが、曲は再びアレグロ・アベルトとなり、ケレメンの生き生きとした独奏ヴァイオリンが第一主題を弾き出した。そして素晴らしい勢いで曲はドンドン進行し、やがて軽やかな第二主題が弾むように提示され、息つく暇もないほどの勢いでヴァイオリンの走句が明るく駆けめぐっていた。ケレメンのヴァイオリンの細かな技巧が十分に発揮され、オーボエとの重奏も美しく一気に駆け抜けるように提示部を終えていた。展開部に入ると独奏ヴァイオリンが新しい主題を提示し、華やかなソロの技巧的な走句が繰り返されて、いわば型通りに再現部に突入していた。このアダージョで曲調を変えて改まって登場する独奏ヴァイオリンは、協奏曲では初めての試みであり、オペラのアリアの導入部を模倣したようにケレメンが登場して、ここでヴァイオリンが際立った美しさを見せていた。終わりのカデンツアは、全ての主題の断片を折り込んだ技巧的なものを弾いていた。



     第二楽章はアダージョの美しい楽章であるが、ソナタ形式でしっかりした構成の曲。甘い第一主題が第一ヴァイオリンによってゆっくりと始まり、直ぐに続けて細やかな第二主題も提示されひとしきり演奏されて提示部が示されてから、独奏ヴァイオリンが第一主題をおもむろに弾き始めた。しかし直ぐにケレメンは独奏ヴァイオリン向きに変奏しながらソロ主体で進行し、続く美しい第二主題も歌うように変奏されながらドンドンと進行し、後半には独奏ヴァイオリンが新しい軽やかな美しい音形を弾き始めて提示部を終えていた。展開部では冒頭の主題を中心に独奏ヴァイオリンがリードしながらオーケストラを相手に変化を見せて再現部へと移行していた。ケレメンはこの楽章でもトウッテイにも参加しながら独奏ヴァイオリンを自在に弾き進み豊麗な音色を際立たせていたが、終わりの短いカデンツアでも存在感のある技巧の冴えを見せていた。

  第三楽章はロンドーとフランス語で書かれており、最初にテンポ・デイ・メヌエットと書かれてイ長調のメヌエットのロンド主題からなるA-B-A-C-Aの部分と、中間部にアレグロと書かれたイ短調のD-E-F-D-E-Fの「トルコ風」の名の由来の部分からなり、最後に再びテンポ・デイ・メヌエットのA-B'-A'で終わる大型のロンドになっており、これも他の連作にはない新しい特徴を持っていた。ケレメンの独奏ヴァイオリンによりメヌエットが始まると、これをトウッテイが受けて繰り返されてから、独奏ヴァイオリンが新しい主題を提示してトウッテイが繰り返すというロンド形式で進んでいた。冒頭のメヌエットが三度現れてから、突然曲調が一転してアレグロになり、ケレメンが急速な走句を弾き始め繰り返しているうちに第一ヴァイオリンを中心とするトウッテイば「トルコ風」のリズムを持ったが活発な主題をもたらし、さらにクレッシェンドが賑やかな半音階風の主題が流れ、異様さを加えていた。再度、トルコ風のメロデイが繰り返されてこの印象を深めてから、独奏ヴァイオリンが冒頭のメヌエット主題を弾き出して、曲は穏やかに終息していたが、この楽章はいろいろな意味で、工夫が加えられた曲であると思った。
  曲が明るく終わり、ケレメンは大変な拍手で迎えられていたが、彼の笑顔や体全体に漲る自信に満ちた姿などが絵になっており、ハンガリーは素晴らしいヴァイオリニストを生み出したものだと感心せざるを得なかった。これで5曲のヴァイオリン協奏曲を全て聴いたことになるが、ライブなのに実に堂々としていて、トウッテイにも参加して皆をリードするなど指揮者としても十分な力量を持った人だと思った。



  第三曲目は映像では待望の二つの独奏ヴァイオリンのためのコンチェルトーネハ長調K.190(186E)であり、独奏の第二ヴァイオリンには前回ヴィオラのソリストだったカタリン・コカスが担当していた。また、全楽章を通じて、ソリストとして二つのヴァイオリンのほかオーボエが加わって活躍しており、また第二・第三楽章ではチェロもソリストとして加わっていた。それぞれの楽章にあるモーツアルトが作り付けた自作のカデンツアでは、全てのソリストが参加しており、その珍しい響きには映像でしか味わえない素晴らしいものがあった。この曲を通してじっくり聴くと、ヴァイオリン協奏曲と言うより、やはり合奏協奏曲とか協奏交響曲ないしデイヴェルテイメント風の自由な味わいがあり、そのせいかメヌエット楽章で終わるのが、やや中途半端で気になっていた。ソロの部分が多く、映像ではソリストが競い合うところがしっかり捉えられているので、CDで聴くよりも遙かに聴き応えがあり変化があって面白いと思った。



  スコアではトウッテイとソロが明確にされており、二人のソロヴァイオリンはトウッテイではケレメンが第一ヴァイオリンを、コカスが第二ヴァイオリンのパーツを弾いていた。第一楽章はソナタ形式で、オーケストラの前奏で弾むようなモチーブの第一主題で始まり、続いて第一ヴァイオリンがメロデイを奏する第二主題が提示されてからオーケストラによる提示部を終えていた。それからおもむろに第一ヴァイオリンのケレメンがソロラインを弾き始め、一小節遅れて第二ヴァイオリンのコカスが弾き始めると、続いてオーボエがメロデイラインを独奏して開始された。それからは第一と第二のソロヴァイオリンがカノン風に弾き始め、弦楽合奏が加わると、第一と第二のソロヴァイオリンはソロを交互に分担したり、合奏したりして進行した。そして第二主題に入ると第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、オーボエの順に主題を変奏しながら進行し、後半では三者が合奏したりして提示部の最後を盛り上げていた。短い展開部では、弦楽合奏にケレメン、カロス、オーボエの順にソリストが加わって、後半は合奏になって再現部へと移行していた。再現部ではソリストが大活躍をしながら進行し、最高の効果を上げていたが、終結部には短い作りつけのカデンツアが用意されていた。二つのヴァイオリンのカノン風の動きに、途中からオーボエが加わって互いに持ち味を出しながら、三つのソロ楽器が三つ巴でソロを演じ、最後には合奏で終結する見応えのあるカデンツアであった。

  アンダンテ・グラツイオーソの第二楽章は、歌うような歌謡的な第一主題がオーケストラで示され、フェルマータの後に第一と第二ヴァイオリンが交互に進む第二主題が提示されてオーケストラによる提示部が終了した。そしてソロとしてケレメンが第一主題を変奏して提示し、トウッテイのあとにコカスが第二ヴァイオリンを弾き、再びトウッテイになってから、独奏者はオーボエとチェロ、第一・第二ヴァイオリンが互いに一小節づつ交替に演奏したり、オーボエ・ケレメン・合奏の順に弾き継がれていた。二小節のトウッテイとフェルマータの後に、第二主題がケレメンとコカスが交互にソロ楽器として弾き始め、途中からオーボエとチェロがいつの間にか参加して、再びトウッテイとなり盛り上がりを見せていた。展開部が省略されて再現部に突入して、独奏部分が主体であるがソロとトウッテイが交互に現れて、ほぼ型通りに繰り返されていた。最後のカデンツアでは、四つのソロ楽器が特徴を出しながら競い合う18小節の面白いカデンツアになっていた。




  フィナーレはヴィヴァーチェと記されたテンポ・デイ・メヌエットであるが、始めにトウッテイでメヌエットが奏され、トリオの表示はないが中間部がソロ楽器によるトリオの形を取った大きなメヌエット楽章になっていた。冒頭のメヌエットは全奏の力強い堂々たるメヌエットで元気よく進行し、中間の温和しい部分を挟んで、勢いよく進められ、全体が繰り返されていた。中間部のソロの部分では弦楽器を伴奏にして、始めにケレメンが登場してからコカスが弾きだし、続いてオーボエとチェロが登場してから4人の合奏で終息し繰り返されていた。続く第二の部分では、オーボエとホルン、第一・第二ヴァイオリンとチェロの5重奏で始まり、第一・第二ヴァイオリンのソロがあったり、オーボエとチェロの二重奏が続いたりして最後には四重奏になってから、繰り返されていた。実に豊かな響きのするトリオの後には、再び全奏で力強いメヌエットに戻り、堂々たる進行を見せながらこの楽章を締めくくっていたが、全曲の終わりとしては、少しあっさりし過ぎて物足りなく、次ぎにアレグロ的な楽章が続いても良さそうな終わり方であった。




  独奏者のケレメンとコカス、そしてオーボエとチェロのソリストを加えたフェレンク・エルケル室内楽団は、実に歯切れの良いしっかりした演奏をしており、好感が持てた。またこの曲は難しい技術が要求されないせいかケレメンとコカスも余裕タップリの演奏であり、二人の息もピッタリしており、全体として素晴らしいアンサンブルを見せていた。この曲の数少ない名演奏の一つであると評価できよう。


  映像では続いて三曲のヴァイオインと管弦楽のための小品3曲、すなわち、演奏順にロンドハ長調K.373、ロンド変ロ長調K.269(261a)、およびアダージョホ長調K.261が演奏されていたが、どうやらアンコールとして演奏されたものを、後日、編集したものの様子であった。確かにアンコールとして演奏されることは多いと思われるが、3曲とも演奏されることは、全曲演奏とでも言うべき演奏目的がなければなかなか実現は困難であろう。この3曲は、このホームページ初出であるので、貴重な記録になったことを感謝したい。

  第一曲目は、ヴァイオインと管弦楽のためのロンドハ長調K.373であった。この曲の草稿には「ウイーン、1781年4月2日」と書かれていたと言われる。4月8日付けの父宛の手紙には、「ブルネッテイのために作曲した協奏曲のロンド」ほか3つの新作をコロレド邸の夜会で演奏したと書かれていた。曲はA-B-A-C-A-B-Aの基本に沿った形でまとめられており、協奏曲のためソロとトウッテイの明確な区分が記述され、最後にカデンツアがはめられるように作られていた。
  優雅な歌謡的なロンド主題が踊るようなリズムで独奏ヴァイオリンによってまず提示され、全奏で繰り返された後、再びソロとトウッテイでこの主題が現れた。続いて16部音符を主体にした新しい主題が独奏ヴァイオリンによって提示され、ケレメンの技巧的なパッセージが続いた後にそのままトウッテイでロンド主題が現れた。第二クープレはソロで明るく提示され途中からはピッチカートの伴奏でソロが変奏を重ねて再びロンド主題が現れ、短い技巧的なカデンツアの後、独奏ヴァイオリンの回想するようなロンド主題の提示で華麗に終結していた。ケレメンと室内楽団は互いに意気が合っており、映像では二度目のアップとなるが、まずまずの演奏に思えた。





  第二曲目は、ヴァイオインと管弦楽のためのロンド変ロ長調K.269(261a)であった。この曲は過去に出版社アンドレが、後述のアダージョK.261とともに1776年に作曲された曲として「アダージョとロンド」の題で出版されたことがあったが、この作曲年代と目的については確実な考証がないようである。この曲も前作と後半が少し異なるA-B-A-C-A-D-Aのロンド形式の枠組みに沿って作曲されており、独奏ヴァイオリンがソロの部分もトウッテイの部分も続けて演奏されるように書かれていた。このロンド主題は1778年にパリで残されたバレエ音楽のスケッチにもハ長調で現れているようであるが、どちらが先に出来たかについても明らかではない。
  親しみやすい軽快なロンド主題が独奏ヴァイオリンによって提示され繰り返されてから、トウッテイで再び力強く再現されていくが、ソロによる軽快な経過主題を経てケレメンが、独奏で最初の伸びやかな主題の第一クープレを明るく歌い出し休まずに弾き続けて再びロンド主題に戻っていた。第二クープレでは独奏ヴァイオリンが低音で入り技巧的なパッセージを連ねる異色的なものでこれもケレメンが休まずに弾き続けてロンド主題に戻っていた。後半には第三クープレとも言うべき新しい早いパッセージが独奏ヴァイオリンで示されていた。カデンツアは、それぞれの主題の断片を組み合わせた技巧的な長いものをケレメンは丁寧に弾いており、最後のロンド主題もしっかり弾き結んでいた。



  第三曲目は、ヴァイオインと管弦楽のためのアダージョホ長調K.261であった。この曲は、父レオポルドの1777年の9月25日と10月9日の手紙に「ブルネッテイのためのアダージョ」と2度も出て来ており、ヴァイオリン協奏曲第五番イ長調K.219 のもう一つの第二楽章として書かれたと考えられている。ただし、この曲はオーボエの代わりにフルートが使用されているが、このような変更例は第三番ト長調の第二楽章アダージョでも弱音器をつけてフルートに置き換えており、この曲でも同様にソルデイーノ(弱音器)の指示がある。
   曲は簡単なソナタ形式で書かれており、冒頭に叙情的な甘い第一主題がトウッテイで現れてから、ケレメンの独奏ヴァイオリンが華やかにこの主題をフォローし、同様に第二主題もオーケストラにより提示されてから、ソロヴァイオリンがこれを追いかけていた。短い展開部は独奏ヴァイオリンが短調で新しい主題を出して暗い感じに変化させてから、型通りに再現部が演奏されていた。カデンツアも用意され、ケレメンは短いながらも各主題を思い起こさせるように配慮されたものを巧みに弾いていた。

   以上の3つの協奏曲楽章の演奏で、モーツアルトのヴァイオリンとオーケストラのための協奏曲全集は完結することになった。これだけの曲を2枚のCDに納めることは不可能なので、このように2枚のDVDに収録したから出来た完全版の貴重な記録であった。 ブタペストのフランツ・リスト・アカデミーの教授でもあるバルナバス・ケレメンは、自ら演奏しながらこの室内楽団を統率し、ソロパーツをほぼ完璧なまでに掌握して、自信をもって堂々とこの完全演奏を成し遂げていた。オーケストラの中央で無心にヴァイオリンを弾く一挙一動が、彼の自信に満ちた揺るぎない姿となって現れていた。経歴を見ると日本にも来ているようであるが、まだ若いからこれからが期待できるであろう。輸入盤を店頭で見かけて即入手したものであるが、思わぬ買い得になったものと思っている。

   (以上)(2010/04/17)


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