(懐かしいLDより;ガーデイナー指揮による古楽器の「コシ・ファン・トッテ」)
10-12-2、ガーデイナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイストによる「コシ・ファン・トッテ」K.588、モンテヴェルデイ合唱団、1992年7月、パリ・シャトレ座のライブ、

−音楽や演出など全体がとても上品で洒落ており、ガーデイナーの意図が強くそして極め細かく反映されており、この映像でなければ気が付かない新しさや新鮮さを感じさせた。スター歌手がいない面を、主役6人のアンサンブルの良さがカバーしていた−

(懐かしいLDより;ガーデイナー指揮による古楽器の「コシ・ファン・トッテ」
10-12-2、ガーデイナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイストによる「コシ・ファン・トッテ」K.588、モンテヴェルデイ合唱団、1992年7月、パリ・シャトレ座のライブ、
(配役)フィオルデリージ;アマンダ・ロークロフト、ドラベラ;ローザ・マニヨン、デスピーナ;エイリアン・ジェイムス、フェランド;レイナー・トラスト、グリエルモ;ロドニー・ギルフリー、アルフォンゾ;クラウデイオ・ニコライ、
(1997年8月14日購入、ポリドール、レーザーデイスク、POLG-1152/3、)

     12月では懐かしい見慣れたレーザーデイスクから、ガーデイナーの指揮と演出によるパリ・シャトレ座の「コシ・ファン・トッテ」K.588を10-12-2としてアップしたい。この映像は有名なオペラ歌手は出演していないが、ガーデイナーが自ら指揮・演出したアンサンブルオペラになっており、彼が育てた古楽器オーケストラとモンテヴェルデイ合唱団を活用して音楽の美しさを強調した異色の「コシ・ファン・トッテ」とされていた。映像をみると、このシャトレ座の舞台は上品で洒落ており、有名なスターはいないが演ずる6人のアンサンブルが素晴らしく衣裳なども凝っており、魅力溢れる舞台であった。



   映像は字幕で出演者などの簡単な紹介の後、いきなりオーケストラの総奏で力強い二和音のあと古楽器のオーボエのソロで序奏が開始されて序曲が始まった。カメラは序曲を演奏するオーケストラ内部と指揮者ガーデイナーを克明に映し出していた。早いテンポのキビキビした序曲が進行し、「コシ・ファン・トッテ」の大音響で序曲が終息すると、拍手している客席が急に騒々しくなり、通路からフェランドとグリエルモが大声を出して登場し、そのまま舞台に駆け上がって第一曲が威勢よく始まった。ガウン姿のアルフォンゾが剣を抜いたフェンシング・スタイルの男二人に大声で責められ三重唱となっていた。どうやらアルフォンゾが若い二人の彼女たちの悪口を言ったらしく決闘だと騒いでいたが、アルフォンゾが相手にせず、逆に「彼女たちの貞節なんて不死鳥伝説と同じ」とからかい、彼女たちの貞節の証拠はと詰問して、新しい別の三重唱に発展していた。しかし、アルフォンゾの「賭けようか」の一言で二人は賭の条件を鵜呑みにし、恋人たちの貞節を信じて、賭けに勝ったようなつもりでセレナードを歌い始め、三人は愛の女神に乾杯!をして、この女性の貞節の物語は始まった。



   場面が変わってフィオルデリージが一人で歌い出し、ドラベラが駆けつけて恋人たちを歌う二人の甘い二重唱になっていた。海の見える別荘のテラスで、女二人の衣裳もよく似合うお上品そうなお嬢さん姉妹が恋人たちの噂話をしていると、深刻な表情をしたアルフォンゾが登場。心配して女二人が声を掛けると、アルフォンゾが歌い出し、王様の命令で恋人たちが戦地に行くという。さあ、大変。男二人が「どうしてもこの足が進まない」と軍服姿で歌いながら顔を出すと、女二人は「行くのなら剣で胸を突き刺して」と泣きながら別れの四重唱となり、もう勝ったと得意顔の男二人に、アルフォンゾが「終わりが肝心」と加わった五重唱と発展していた。続いて男二人が愛の神様が守ってくれるから「必ず帰ってくる」と、通常は省略される第7番の二重唱を元気よく印象的に歌っていた。



   大きな太鼓の音がして、船が来たとなって「軍隊万歳!」の合唱が始まり、大勢の迎えの兵隊たちの前で、「毎日手紙を書いてね」と美しい別れの五重唱となり、「アデユー」を繰り返しながら歌っていた。再び「軍隊万歳!」の合唱が始まり、兵隊たちは舞台から降り客席を通ってアッという間に出征して行った。舞台に残された女二人とアルフォンゾは、手を振りながら美しいピッチカートの伴奏に乗って「風よ、穏やかに」と祈るように歌っていた。「コシ」の音楽の美しさを示す天国的な響きが豊かに聞こえていた。しかし、一方のアルフォンゾは「わしも役者だな」と舌を出していた。



   場面が変わって、デスピーナが姉妹の部屋に登場し、朝食用のチョコレートをかき混ぜながらペロリと味わっていると、お嬢さん方が泣きながら部屋に飛び込んできた。特にドラベラが「お下がり!」と言ってデスピーナに当たり散らし、「不安が私をかき乱し」と半狂乱のアリアを歌い出し、「一人にしてくれ」と女中に当たっていた。フィオルデリージも同調し大荒れとなって大変であったが、デスピーナは出征したと聞いても驚きもせず、直ぐに帰ってきますと平気な顔。デスピーナは男のために死にたいなんてと二人を赤ちゃん扱いにし、「兵隊に誠実を期待するなんて」とアリアを歌って陽気に諭しながら、むしろ「女達も仕返しを」とばかりに姉妹に浮気を奨めていた。



   B面に移って男二人に変装を命じたアルフォンゾが登場し、心配なデスピーナに協力を呼び掛けてお金で買収し、姉妹を慕う二人の男がいると持ちかけると、彼女はお金持ち?と反応し、会ってみたいという。そこでトルコ帽に鬚ずらのアラビアンスタイルに変装した二人がデスピーナを煽てたので大騒ぎの四重唱となった。彼女は変装に気付かずに作戦は成功。騒ぎを聞きつけて姉妹が登場するが、見知らぬ変なアルバニア人が二人もいるのでカンカンになり、五重唱となって二人を追い出そうとしていた。そこへアルフォンゾが現れて、親友だと男二人を姉妹に改めて紹介し、顔を立てさしてくれと頼んでいた。そこでグリエルモはフィオルデリージに、フェランドはドラベラにアモーレと愛を要求し、姉妹が驚いて我慢していると次第に愛の要求がエスカレートしてきた。それがしつこ過ぎたので姉妹の怒りが爆発し、フィオルデリージは私たちの心は「岩のように」揺るぎはしないと激しく歌い出した。男二人は初めは直立不動で聴いていたが、グリエルモが近寄ると平手打ちを食らい、歌はアレグロのコロラチューラになって激しい怒りを歌っていた。しかし男二人も引き下がらず、グリエルモが「私たちを愛して下さい」とアリアを歌い出し、自分たちを自慢して売り込んだので、姉妹は呆れて逃げ出してしまい、残された二人は大笑いとなっていた。そして賭けに勝ったとばかり喜んだので、アルフォンゾがまだ早いぞと次の作戦の指図をしていた。そこでフェランドが「愛のそよ風が」とウラウラの美しいアリアを歌い出し、愛は心を満たしてくれると満足げに歌って大きな拍手を浴びていた。アルフォンゾはデスピーナの考えを探ると、彼女は雄弁に「姉妹が彼等に凄く愛されていることを知れば大丈夫よ」と言い、私に任せてと張り切っていた。



       フィナーレに入って、姉妹が「たった一時で運命が変わってしまった」と美しい二重唱を歌いながら、テラスに出て二人で嘆いていると、突然、男二人が現れて「死ぬんだ」と言いながら、姉妹の前で毒薬を飲んで倒れてしまった。さあ、大変。二人は大騒ぎして大慌てでデスピーナを呼ぶと、彼女は生きているから助けようと二人に介抱を命じ、自分は医者を呼びに行った。ここでごく自然に、ドラベラはグリエルモの手を取り、フィオルデリージはフェランドの脈を測って、相手が変わっていた。



デスピーナのお医者さんが登場し、フランスで改良された2本の鳥の刷毛で撫でると磁石が作動する器械を持ち出し、男二人の急所を刷毛でくすぐると、二人は飛び上がって動き出し、命だけは助かった。しかし、二人は気が付くと、介抱している姉妹の手を取ってキスをしたり、刷毛で姉妹の体をくすぐったりし始めた。そして我慢をしていた姉妹に強引にキスを求めたので、遂に二人は怒りだし、男二人を突き飛ばして逃げ出して、第一幕は大笑いで終幕となっていた。



    第二幕は姉妹の部屋にデスピーナが登場し、男達が留守の間に女らしく恋のチャンスをものにしなければと説教し、あの二人は毒が抜けたらすっかり紳士になったし、あなた方のためなら死ぬ勇気も持っていると諭していた。そして世間に知れたらデスピーナの所に来ていると言えばいいと入れ知恵して「女が15歳にもなれば」と高らかに歌い出し、途中から早いテンポのワルツになるとドラベラの手を取って踊り出し、女王のように男を従わせるのよと歌っていた。このアリアはドラベラにはかなり効いたように見えた。デスピーナが立ち去ると二人は「どう思う?」と顔を見合わせて本音を語り初め、少し楽しんでみようかしらと雰囲気が少し変わり始めた。そんなことよりもどちらを取るのとドラベラが言い出し、「私は褐色さんが好いわ」と歌い出した。フィオルデリージも「私は金髪さんの方よ」と明るい二重唱になり、二人は素敵なドレスに着替えを始めていた。楽しい恋の気配がにわかに迫ってきたような、何とも楽しそうな浮き浮きした雰囲気の二重唱であった。



         そこへアルフォンゾが登場し「お庭へどうぞ」と案内すると、木管セレナードが聞こえだし合唱団の皆さんも入場して、あの二人が「微風よ聞いておくれ」と真面目に歌っており、合唱も続いていた。ぎこちなく声も出ない男二人を前にして、アルフォンゾがお手をどうぞとお手本を示してドラベラとグリエルモを結びつけ、一方のデスピーナも女二人に過去のことは忘れてと勇気づけ、四重唱になってフィオルデリージとフェランドの手を結んだ。そして愛の神様のいたずらか、4人の手が固く結ばれてしまい、4人は結び目をふりほどきながら、新しいペアーによる会話が少しずつ始まっていた。



   「散歩しません」とフィオルデリージがフェランドを誘って立ち去ると、グリエルモは心配で気もそぞろ。しかし、ドラベラが真剣そうなのでグリエルモは、小さな贈り物を差し出すと、それがきっかけとなって話が進み、思いがけなく受け取ってくれた。驚いてグリエルモは「ハートを差し上げます」と歌い出し甘い二重唱になって更に口説き続けると、ドラベラはウットリとなってしまい、甘い言葉とともにロケットを交換されても気が付かず、そのまま二人はしっかりと抱き合ってしまっていた。






    一方、「どうして逃げるのです」とフィオルデリージを追いかけてきたフェランドが「優しい目で見てくれ」と頼んでいた。しかし、彼女は泣きそうになって「私の平和を乱さないで」とはねつけると、フェランドは居たたまれずに逃げ出してしまっていた。ここでフェランドが歌う愛を求める第24番のアリアは、残念ながら、省略されていた。一人残されたフィオルデリージは、フェランドにも心を許しそうになっている自分を激しく責めながら、「どうかお許し下さい」と二つのホルンの伴奏でアリアを歌い出した。途中で座り込んで悲しげに歌っていたが、最後には新しい愛を決然と打ち消すように歌い、美しいホルンのオブリガートもよく響き、素晴らしいアリアとなっていた。しかし、彼女が歌うもの陰では、ドラベラとグリエルモが抱き合っている姿を写す出す珍しい初めての演出が行われていた。

   

    フィオルデリージの姿を見ていたフェランドが「われわれは勝ったぞ」と彼女の貞節ぶりを報告すると、グリエルモは喜んだが、フェランドから「僕のドラベラはどうだった」と聞かれ、誤魔化せずに受け取ったロケットを見せると、フェランドは半狂乱。裏切りだ、復讐だと暴れだし、どうしたらよいか忠告してくれとグリエルモに頼んでいた。グリエルモは「女どもは良く浮気をする」と舞台から客席に降りて行ってアリアを歌い出し、タンテイア、タンテイアと歌いながら聴衆に話しかけ、舞台に上がったり降りたりしていた。P.セラーズの演出でも客席での歌が披露されており、グリエルモは大拍手を浴びたいた。B面に入りフェランドが「裏切られ、踏みにじられても」と歌い出し、復讐を決意したものの、心の中は彼女のことばかりと、悲痛な声で彼女を愛していると歌っていた。



   一方のドラベラは、デスピーナを相手に新しい首飾りを見せて恋の成果を自慢していると、フィオルデリージが現れ「新しい人が好きになった」と告白した。ドラベラは大喜びで「恋は盗人」と歌い出し、お姉さんも一緒に成り行きに任せましょうと歌っていた。一人残されたフィオルデリージは「皆が私をそそのかす」とレチタテイーボを歌い出し、ふと思いついて、軍服を着てグリエルモに会いに行こうと決心した。そしてデスピーナに命じてグリエルモの軍服を着て、帽子を被り剣を手にして「もう少しでグリエルモに会えるわ」とにこやかに歌い始めていた。そこへフェランドが駆けつけて、あなたの剣で私の胸を刺し殺してから行ってくれ、私の死かさもなくばあなたの心か決めてくれ、力がなければ手を貸そうと責め立てた。優しいフィオルデリージは死か心かと責められて、遂に「愛の神様、お助けを」と悲鳴をあげ、「あなたの勝ちよ」とオーボエの悲鳴とともに泣き崩れ、最後にはフェランドに強く抱きしめられてしまっていた。



    それを見ていたグリエルモは「何たることか」と半狂乱。引きあげてきたフェランドにも自慢されて意気消沈していたが、アルフォンゾは「ありのまま受け入れよ」と言い、あの二人と結婚するんだと言い聞かせていた。そして「男は皆、女を非難する」と歌い出し、男三人で「コシ・ファン・トッテ」と声を揃えて歌って、大拍手を浴びていた。






    フィナーレに入って、二つの結婚式を挙げるためデスピーナも合唱団も忙しい。やがて「二組みの花嫁花婿に祝福を」と合唱が始まり、二組のカップルが入場し四重唱になっていたが、どうも男女の組み合わせがハッキリせず、4人は離れて座っていた。シャンペンが注がれて乾杯して歌いながら踊っていたが、まだ組み合わせがハッキリしなかった。しかし、フィオルデリージが「あなたの杯と私の杯に」と美しく歌い出し、フェランドが続けると自然に新しいペアーに落ち着いた。しかし、ドラベラが続けて歌い出すと、グリエルモが一人だけ離れて座り、怒り顔で皆を毒づいていた。




    そこへ公証人が現れて「結婚証明です」と大騒ぎが始まったが、デスピーナの公証人は何と低音の男声。証明書にサインをし終わったところに、太鼓の音とあの忌まわしい「軍隊万歳!」の合唱が聞こえてきた。見に行ったアルフォンゾが二人の婚約者たちが兵役から戻ってきたという。




    さあ、大変。早く行ってと二人の新郎を追い出して、どうしようと考えているところに、婚約者二人が明るく登場。しかし、二人の恋人たちの様子が変だ。そのうちにデスピーナの公証人が見つかり、結婚証明書にサインしてあることが見つかり、男達が剣を抜いて怒り出すと、女二人はとうとう「死に価する罪です」と白状した。そして、剣で胸を突いてくれと謝っていたが、そこへアルバニアの騎士たちが現れたので、全てがアルフォンゾに騙されていた芝居であることが分かった。アルフォンゾは「確かに私のせいだが」と歌い出し、これで恋人たちが利口になったので、4人は幸せに暮らせるだろうと歌っていた。







    4人もそれに合わせて歌っていたが、どうも元の鞘に素直に納まらず、さりとて新しいカップルにもならず、結局は最初のカップルに戻って互いに抱き合っていたものの、フィオルデリージとフェランドが握手しており、これからどうなるかハッキリしない幕切れとなっていた。
   音楽が変わり、全員で幸せにと合唱が始まっていたが、ここでも出演者は一列に並んで手を繋いで歌っているだけで、結論は視聴者に任せたとばかり、元気よく明るく歌って終幕していた。



   映像を見終わって、その音楽や演出など全体に、ガーデイナーの意図が強くそして極め細かく反映されており、この映像でなければ気が付かない新しさや新鮮さを感じさせる見どころのある映像であると感じた。素晴らしいスター歌手が登場している訳ではないのに、このオペラの映像を語る際には、矢張り忘れられないものの一つであろうと思われる。それは、客席と舞台とが一体となった古楽器演奏に適したシャトレ座を活用していることから始まり、舞台も背景も衣裳などもとても美しく洒落ており、このオペラに必要な趣味の良さを感じさせていた。そして有名スターがいないのに6人が揃って歌も演技も上品に楽しませてくれるので、観客は楽しいオペラを見たという充実感を持ったであろう。これはひとえにガーデイナーのポリシイによるものと考えられるからである。

   狭い舞台を巧みに活用していた例は、美しい背景画が揃っており、簡単に上下させて場面を見事に変化させていたからであろう。それが海が見える景色であったり、山が見える風景だったり、庭木のある庭園であったり、お嬢さん方の部屋であったり、見事に変化に富んだセンスの良さを感じさせ、抜群に美しかった。客席と舞台とが一緒になった例では、第一曲から客席の通路から大声を上げながら主役が登場したり、グリエルモが女性を非難する第26番のアリアを客席で歌ったり、入退場に上手く利用するなど、一体化に工夫がなされていたことも珍しかった。

   音楽面では古楽器の音色がキビキビと進行する序曲から印象づけられていたが、全体としてガーデイナーの指揮振りには聴くものを安心させる何かがあり、ピッチカートや木管のオブリガートの美しさなどがよく耳に入り、「コシ」の音楽の特別な美しさを良く捉えていたように思った。また、各所で出てくる重唱の素晴らしさやオーケストラとのアンサンブルの良さも特筆すべきであると感じた。このオペラでは初演の時に外されたと言う理由からか第7番(男二人の二重唱)と第24番(フェランドのアリア)が省略されるのが通常であるが、ガーデイナーは第7番を復活させていた。この曲は地味な曲であるが、出発の別れに際し「必ず帰ってくる」と決意を姉妹に伝える二重唱であり、このオペラで方々で顔を出す「愛の神様」に導いてくれるよう祈る曲でもあって、省略されるには惜しい曲であると思った。私はこの2曲の省略曲を映像で始めて見たのは、P.セラーズの映像(1990)であったが、グリエルモの第26番のアリアを客席で歌わせていたのもこの映像であり、舞台は全く異質でも、リブレットを細かく見る視線は共通なのかも知れない。

   この舞台を楽しくさせていたのは、主役4人の適材適所の活躍によるものであり、中でもフィオルデリージとドラベラのシンメトリーな美しさが魅力的であって、衣裳も双子のように色違いの衣裳で、性格の違いも示されていたような気がした。中でもフィオルデリージを演じたロークロフトの魅力は抜群で、彼女のコロラチューラのアリアも素晴らしかった。男性二人のフェランドとグリエルモもキビキビとして動きが良く、二人の行動力の良さが全編を支えていたように思う。また、アルフォンゾのしたたかさ振りや、デスピーナの公証人の男のような声などは、配役の確かさを物語るものであった。

    このように音楽も舞台も私には気に入って誉めすぎになっているかも知れないが、このLDの解説者の佐々木健一氏は、第二幕第六場の背景がアロエなどの砂漠に繁茂する背景が視覚的に興を削いだと指摘していた。確かに上品で優雅な背景が揃っている中で、この場面は愛が結ばれる場面でもあり、もっと美しく見えるものに組み替えは可能であろう。また、第7番を加えたなら、何故第24番を省略したか疑問があり、フェランドのフィオルデリージへの口説き方が少なすぎるのは、私はかねて問題があると思っていたので、折角ならこの曲も追加してモーツアルトの作曲した全曲盤として一貫して欲しいと思った。また、日本語字幕は繰り返し部分はカットされていたが、手間を惜しまずに、折角なら追加して欲しいと思った。

   終わりに最後のフェランドとフィオルデリージとの愛の結末が強烈だったせいか、グリエルモの落胆が激しすぎたせいか、この演出では4人のカップルの行く末が曖昧で、最後の場面では、当初のカップルに戻ったように見せかけて、フェランドとフィオルデリージに握手させて笑いを誘っていた。しかし、ここでは4人がどうなったかハッキリさせないのがガーデイナー流の解釈なのであろうと、あれこれ詮索しないことにする。

(以上)(2010/12/12)


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