(最新入手のDVD報告;カラヤンとベルリンフイルのデイヴェルテイメントK.334)
10-11-1、カラヤンとベルリンフイルのデイヴェルテイメント第17番ニ長調K.334(320b)、1987年5月1日、1991Telemondial制作、

−この演奏は、老大家のお楽しみ的演奏であり、ベルリンフイルの皆さんも喜々として楽しみながら演奏しているように見えた。カラヤンが指揮をしながら、特にメヌエット楽章では、気のせいか優しい表情を見せた珍しい演奏であったが、お歳のせいかなとも思わせた−

(最新入手のDVD報告;カラヤンとベルリンフイルのデイヴェルテイメントK.334)
10-11-1、カラヤンとベルリンフイルのデイヴェルテイメント第17番ニ長調K.334(320b)、1987年5月1日、1991Telemondial制作、ベルリン市制750年記念祝賀オープニング・コンサート、
(2010年10月12日、柏タワーレコードにて特売価格1690円で入手、SONY、SVD-46388)

    11月の最初の曲は、カラヤンとベルリンフイルの「デイヴェルテイメント」ニ長調K.334(320b)であり、この録音の存在は知っていたが、不思議に入手したり聴く機会に恵まれなかったものであった。このたびソニーで発売したカラヤンのシリーズものが特売されていたので購入したものであり、原盤はカラヤンが自ら作ったTELEMONDIALのレーベルであるが、ソニー・ミュージックの2003年のDVDは5.1ドルビー・デジタル・サラウンドになっているので、機械的に録音をリミックスしたものであろうと思われる。やっと歩いている状態のカラヤンであるが元気に指揮する姿が写っており、彼の映像のモーツアルトは限られているので、貴重な存在であろう。DVDには、ベルリン市制750年記念の祝賀オープニング・コンサートと銘打っており、この曲の後にはリヒアルト・シュトラウスの交響詩「ツアラトウストラはかく語りき」作品30が収録されていた。



    映像を改めて見て驚いた。私の頭には、この曲はボスコフスキーのウイーン八重奏団やベルリナー・オクテットの演奏する古いLPレコードが刷り込まれているので、カラヤンの演奏するベルリンフイルによるオーケストラ演奏は、まるで別の曲のように聞こえており、どうしてか分からないが、第5楽章の第二メヌエットが省略されていたほか、一緒に冒頭に演奏されることが多い行進曲K.445(320c)なども、残念ながら演奏されていなかった。



   新全集ではホルン2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、バスの楽器編成になっているので、最近の演奏は殆どがこの編成による室内楽的な演奏であるが、調べてみるとこの曲の最初の印刷版として、1795年にライプチヒのバウムガルトナーから出版された時には、第3・4楽章を省いた4楽章の交響曲形式であり、6楽章の今日のような完全な版が出たのは4年後の1799年であるとされている。従って、カラヤンのこの曲の5楽章の演奏(アレグロ・アンダンテ・メヌエット・アダージョ・ロンド)は、これらの何れにもよらないカラヤン独自の恣意的な構成による演奏ということになるのであろうか。カラヤンがゆっくりと舞台に登場した全体の映像を見ると、コントラバスが右奥に2台で、その前方にチェロとヴィオラ、左側が第一・第二ヴァイオリンで、総勢は、約35人位の大所帯によるオーケストラ演奏であった。



    第一楽章はアレグロのソナタ型式であり、流麗な第一主題が第一ヴァイオリンの合奏で始まった。このような厚みのある音の合奏で聴くのは初めてであり、カラヤンは終始目をつぶって腕だけで流れるように指揮をしていた。やがてホルンが加わり第一ヴァイオリンによる経過部が過ぎてから、第二ヴァイオリンが弾むように第二主題を弾き出してピッチカートの伴奏で第一ヴァイオリンがこの主題を変奏していた。続いて第二ヴァイオリンからヴィオラ、第一ヴァイオリンへと第一主題を順番に重なり合いながら合奏し盛上がりを見せて提示部を終えていたが、ここで繰り返しはなかった。展開部では新しい主題が転調しながら繰り返され、一気に再現部へと進んでいたが、カラヤンは実に気持ちよさそうに、ベルリンフイルの分厚い弦楽器の重奏を楽しんでいるように見えた。



    第二楽章はアンダンテの主題と六つの変奏曲であった。スコアを見ると、主題は反復される8小節の二つの部分からなり、全ての変奏において第一ヴァイオリンが中心となる装飾的な32小節の変奏であった。親しみやすい穏やかな主題に続いて、第一変奏は第一ヴァイオリンの三連符が早いテンポで踊り出すように変奏するもので後半も同様であった。弦楽合奏で演奏されるとベルリンフイルでも音が揃わない部分があるが、カラヤンは全く自分のペースで指揮をしているように見えた。第二変奏は第一ヴァイオリンがリズミックな主題変奏を行うもので、第三変奏はホルンが加わった合奏による力強い変奏であった。第四変奏は二つのホルンの和音に導かれて弦楽合奏が続くもので、第五変奏はテンポが変わり暗い音調の変奏に変わっていた。第六変奏はピッチカートの伴奏により第一ヴァイオリンが32分音符の素速い音形で明るさを取り戻した変奏で、最後はコーダで纏め上げていた。



    第三楽章はあの有名なメヌエット。カラヤンの出だしは何とゆっくりなのであろうか。ピッチカートのリズムが快く、怖いカラヤンの表情が気のせいか優しい表情に変わっていたような気がした。これぞ今流行りのモーツアルトの「癒やし効果」なのだろうか。トリオの弦楽合奏も流れるように美しく弾かれ、さすがベルリンフイルであると思わせた。カラヤンが指揮をしながら優しい表情を見せた珍しい演奏であったが、お歳のせいかなとも思わせた。
第四楽章はアダージオの弦楽合奏だけでのソナタ形式。出だしの静寂な第一主題は実に美しく、続く簡素な第二主題もカラヤンは静かに丁寧に演奏させていた。直ぐに展開部に入り短調で第一主題が展開されていたが、展開部の終わりでフェルマータを挟んでコンサートマスターが短いカデンツア風の装飾音を演奏してから再現部へと静かに移行していた。

         どうしてか二つのトリオがある重厚なメヌエットが省略されて、演奏は第六楽章のロンドへと移り、お馴染みの軽快なロンド主題が飛び出してきた。この曲はABACAのロンドに更にDBAと三つのクープレを挟んだ大きなロンドのよう。晴れやかなロンド主題が何回も駆け巡り、カラヤンは無表情で手の運動を楽しむかのように演奏していた。しかし、演奏終了後に見せたカラヤンのかすかな穏やかな微笑みが印象的であった。



    老大家の思いつき的なコンサートの一曲であり、多少、恣意的な演奏のような気がしたが、曲はデイヴェルテイメント(喜遊曲)であり、目くじらを立てる必要はなかろう。この演奏を聴いてこの曲のデータベースを作成し、幾つかの演奏を聴いてみた結果、カラヤンのような30〜40人の弦楽合奏によるオーケストラ演奏、ヴェーグとカメラータ・アカデミカのように20人弱の弦楽合奏による室内楽的演奏とオクテットによる演奏に別れているようであった。しかし、新全集の普及により最近の演奏は殆どがオクテットの演奏に限られてきたように思われる。

   この演奏は、老大家のお楽しみ的演奏であり、ベルリンフイルの皆さんも喜々として楽しみながら演奏しているように見えた。しかし、休憩後に演奏されたリヒアルト・シュトラウスの交響詩「ツアラトウストラはかく語りき」作品30では、いつもの通りの厳しい表情のカラヤンに戻っており、特にこの曲の冒頭の金管楽器によるファンファーレはこれぞカラヤンとも言うべき厳しい音像が実に豊かに響いていた。

(以上)(2010/11/15)


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