(珍しい曲の収録;弦楽四重奏のためのフーガK.405、バッハ平均率のモーツアルト編曲)
10-10-3、アルテイス弦楽四重奏団による弦楽四重奏のためのフーガK.405より第2番〜第5番、バッハの平均率の弦楽四重奏版、モーツアルト編曲、1782年、ウイーン、

−アルテイス弦楽四重奏団の演奏は、実にきめ細かくゆっくりしたテンポで丁寧に演奏されており、音色も暖かく素晴らしい演奏であると感じた。非常に珍しい貴重な映像が収録できたと考えている−

(珍しい曲の収録;弦楽四重奏のためのフーガK.405、バッハ平均率のモーツアルト編曲)
10-10-3、アルテイス弦楽四重奏団による弦楽四重奏のためのフーガK.405より第2番〜第5番、バッハの平均率の弦楽四重奏版、モーツアルト編曲、1782年、ウイーン、
アルテイス四重奏団;V;P.Schuhmayaer、V;J.Meissl、Vla;H.Kefer、Cello;O.Muller、
(2010年5月8日、クラシカジャパンの放送をブルーレイデイスクBD033に収録)

   ケーテンのバッハ音楽祭に出かけるなどこのところバッハづいているが、モーツアトルトが編曲したバッハの平均率クラヴィーア曲集の弦楽四重奏版K.405の珍しい映像を収録したり、日本モーツアルト協会の10月例会でこれらの曲が演奏されたりして、親しむ機会があったので、この収録した映像をアップすることにした。
   モーツアルトは1782年ウイーンでファン・スヴィーテン男爵(1734〜1803)と親しくし、バッハおよびヘンデルの音楽の譜面を通じて、フーガや対位法的な作品に触れる機会を持った。男爵は1777年にウイーンに来て宮廷図書館の司書を務めていたが、造詣の深かったバッハやヘンデルの作品をモーツアルトやベートーヴェンに伝えて、ウイーンの音楽界に影響を与えた人として知られていた。



  モーツアルトはバッハの「 平均率クラヴィーア曲集」より5曲の4声フーガの弦楽四重奏版K.405 を残している。年代は1782年が定説になっており、このころ男爵の影響で、バッハの音楽を知り、対位法の音楽、フーガの音楽を数多く作曲している。この5曲は全てクラヴィーア曲集の第二巻から選ばれた4声のフーガで、プレリュードは割愛して、フーガだけを原調のまま、小節の数までも原曲に忠実に四つの弦楽器のために分けて編曲したものとされる。その詳細は次の通りである。

第一曲;4声のフーガ ハ短調(第二巻第一番)BWV870、
第二曲;4声のフーガ 変ホ長調(第二巻第七番)BWV876、
第三曲;4声のフーガ ホ長調(第二巻第九番)BWV878、
第四曲;4声のフーガ ニ短調(第二巻第八番嬰ニ短調を半音下げて)BWV877、
第五曲;4声のフーガ ニ長調(第二巻第五番)BWV874、

        映像はアルテイス弦楽四重奏団が2001年のモーツアルト週間にザルツブルグのモーツアルテウム小ホールで演奏したものであり、全5曲のうち、第二曲以降の五曲が選ばれ、第四曲ニ短調、第二曲変ホ長調、第三曲ホ長調、第五曲ニ長調の順に演奏されていた。



   最初のニ短調のフーガK.405-4は、平均率クラヴィーア曲集第二巻第八番嬰ニ短調BWV877を弦4声に編曲したものであるが、モーツアルトは半音下げてニ短調に調性を変えていた。冒頭の歌謡的な穏やかな主題がこのフーガの特徴であり、特有の美しさを持つ主題が第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラというように繰り返されていき、最後には合奏で現れており、ピアノのソロ演奏とは異なって、とても温かみのある弦楽合奏に聞こえた。
   第二曲のフーガは、変ホ長調K.405-2の4声のフーガであり、平均率第二巻の第七番の曲BWV876を編曲したものである。この曲では優雅な主題が第一ヴァイオリンから第二ヴァイオリンへそしてヴィオラ・チェロと渡されていくのが目に見えるようなフーガのお手本のように思われ、穏やかな弦楽合奏が続けられていた。



   第三曲目のホ長調K.405-3の4声のフーガは、平均率第二巻第九番の曲BWV878である。この曲はグレゴリア聖歌風の主題であり、その古風な弦の響きはバッハらしい奥行きの深さを表していた。
   第四曲目のニ長調K.405-5の4声のフーガは、平均率第二巻第五番BWV874の曲である。この曲はプレリュード部分が華やかな曲であるので、4声のフーガはそれに応えるように、強力な対位法的な展開がなされてやや難解に聞こえた。



   アルテイス弦楽四重奏団の演奏は、実にきめ細かくゆっくりしたテンポで丁寧に演奏されており、音色も暖かく素晴らしい演奏であると感じた。非常に珍しい貴重な映像が収録できたと考えている。

   一方、2010年10月10日(日)に東京文化会館小ホールで行われた日本モーツアルト協会4月(振替)例会は、「ヨハン・セバステイアン・バッハ賛」と題して、弦楽四重奏団ニ短調K.173のほかK.405の弦楽四重奏のためのフーガ第1番〜第5番などの演奏が行われ、後者はバッハとモーツアルトを比較するように弦楽四重奏とチェンバロの演奏を行うという極めて珍しい企画であった。演奏者は寺神戸亮とレ・ボレア−ド(オリジナル楽器使用オーケストラ)、チェンバロは上尾直毅のメンバーで、寺神戸が解説し第一ヴァイオリンを担当していた。

   第1番ハ短調K.405-1の4声のフーガは、平均率第二巻第2番ハ短調BWV871からのフーガであった。この曲は4声のフーガであるが、殆ど3声で演奏されチェロはオルガンペダルを思わせる曲であった。チェンバロではプレリュードとフーガが演奏されていた。
   第2番変ホ長調K.405-2の4声フーガは、四重奏に先立って原曲の平均率第2巻第7番変ホ長調BWV876のプレリュード部分のみが演奏され、弦楽四重奏ではフーガのみを演奏していた。しかし、音色が全く異なるので、異なる曲が二つ弾かれた感じであった。
   第3番ホ長調K.405-3についても、前曲と同様に四重奏に先立って平均率第2巻第9番ホ長調BWV878のプレリュード部分のみが演奏され、弦楽四重奏で4声のフーガを演奏していたが、プレリュードは初めて聴くような曲なので、異なった楽器ではプレリュードとフーガという一体感を持った曲のようには聞こえなかった。

   休憩の後、弦楽三重奏のためのアダージョとフーガK.404aから6曲中の第2番ト短調が演奏されていたが、チェンバロでは平均率第2巻第14番嬰ヘ短調BWV883のプレリュードとフーガが全曲演奏されていた。新全集では6つの3声フーガK.404aは、残念ながら第6版の疑義のある作品から疑作の扱いになっているが、この曲は最もモーツアルトの編曲に近い曲とされているようである。
   第4番ニ短調K.405-4の4声フーガは、第二曲と同様に四重奏に先立って、原曲の平均率第2巻第8番嬰ニ短調BWV877のプレリュード部分のみが演奏され、続いて弦楽四重奏ではフーガのみを演奏していたが、音色が異なるので両曲の一体感は感じられなかった。第5番ニ長調K.405-5は、先に平均率第2巻第5番ニ長調BWV884のプレリュードとフーガが全曲演奏され、続いて弦楽による4声のフーガが演奏されていたが、音色が全く異なるため、フーガの部分でも別の曲のように聞こえていた。

   寺神戸亮とレ・ボレアードの演奏は、古楽器のせいか、アルテイス弦楽四重奏団のように音色に温かみがなく、チェンバロのソロは良く響いていたが、残念ながら余り楽しめなかった。振替例会のため、練習量が十分ではないのではないかと疑ってみた。フーガが弦楽四重奏に編曲されると、和声的な響きがなくなり、旋律をそれぞれの楽器が追いかける音楽となって、私の耳には難しく感じた。



   終わりにアルテイス弦楽四重奏団は、先に「ドン・ジョバンニ」より「弦楽四重奏に編曲されたアリアたち」と言うタイトルでアップロード(2-6-3)したことがあり、この映像と同じ2001年のモーツアルト週間における演奏であった。この四重奏団はウイーン大学に学んだウイーン在住の団体であり、モーツアルト週間ではお馴染みの団体であった。
二つの演奏を相前後して聞き比べるように聴いてきたが、自分の耳では何度も聴き馴染んでいるアルテイス弦楽四重奏団の方が良く聞こえ、このK.405のフーガは古楽器演奏には向いていないように感じてしまった。それにしても、バッハの平均率クラヴィーア曲集は、何時もバックグラウンド的に聴いており、今回のように1曲1曲細かく切って聴いたことが殆どなかったが、1曲1曲を識別するには似たような曲が並列しており、調性が皆異なっていることも含めて考えると、やはり難解な曲が揃っていると思った。

私はこの平均率の第1巻と第2巻は、ピアノではグールドの全集とグルダの全集のCDを持っており、さらにチェンバロではハンス・ヒシュナーのCD全集を持っている。いずれも本を読んだりパソコンをやったりしている時間のバックグラウンドとして聴くことが多くなってきたが、最近ではグルダの演奏が一番身近な演奏に思えてきた。しかし、教会で演奏したチェンバロ演奏と言うことにこだわって求めたヒシュナーのCDは、とても緊張感を強いられ、バックグラウンドとしては聴けない演奏である。

    (以上)(2010/10/21)


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