(懐かしい映像記録;マッケラス指揮エステート劇場の91年の「ドン・ジョバンニ」)
10-1-3、サー・チャールズ・マッケラス指揮、D.ラドック演出、プラハ国民劇場管弦楽団&合唱団の「ドン・ジョバンニ」K.527、(プラーハ版)、
 1991年、プラハ、エステート(テイル)劇場でライブ収録、ハベル大統領ご夫妻臨席、

−この映像は、このオペラを初演したエステート劇場で、恐らく当時の舞台や衣裳も記録に残されたものと同じようにしつらえたもので、音楽もプラハ版が採用されていた。指揮者のマッケラスは、序曲のオーケストラの響きからピリオド風の演奏スタイルで一貫しており、歌手陣も繰り返しでは装飾をつけて歌うという工夫がなされていた−

(懐かしい映像記録;マッケラス指揮エステート劇場の91年の「ドン・ジョバンニ」)
10-1-3、サー・チャールズ・マッケラス指揮、D.ラドック演出、プラハ国民劇場管弦楽団&合唱団の「ドン・ジョバンニ」K.527、(プラーハ版)、
 1991年、プラハ、エステート(テイル)劇場でライブ収録、ハベル大統領ご夫妻臨席、
(配役)ドン・ジョバンニ;A.ベスチャスニー、ドンナ・アンナ;N.ベトレンコ、ドン・オッターヴィオ;V.ドレジャル、騎士長;D.イユドウリチカ、ドンナ・エルヴィラ;I.マルコヴァー、レポレロ;R.ヴェレ、マゼット;Z.ハルヴァーネク、ツエルリーナ:A.ランドヴァー、その他、
(91年12月31日、NHK衛星放送をS-VHSアナログテープに3倍速で収録)

   3曲目はサー・チャールズ・マッケラス指揮によるプラハ国民劇場管弦楽団&合唱団の「ドン・ジョバンニ」K.527であり、プラハのエステート(旧テイル)劇場でライブ収録されたということで、急遽、この劇場を見るために繰り上がったものである。91年のモーツアルトイヤー時の記念公演であり、プラーハで初演された通りに演奏(プラハ版)し、ハベル大統領ご夫妻が臨席しているという評判になった映像であった。出演者はドンジョバンニを歌うアンドレイ・ベスチャスニーが有名であり、他はプラハの国民劇場の面々であった。この劇場でのコンサートでは、「プラハのモーツアルト」というホーネック指揮のDVD(6-10-1)、或いはバレンボイム指揮のベルリンフイルの06年ヨーロッパ・コンサート(6-11-1)など数種類残されているが、オペラのライブは初めてである。ドロットニングホルム宮廷劇場も奥行きの深い劇場であったが、この劇場も同様であり、今春の1月25日にこの劇場で「コシ」を見る予定になっているので、アップを繰り上げたものであった。






  この映像は始まると直ぐにプラハの有名な 旧市街広場が映し出され、大勢の人の中から広場を横切って歩いている一人のリンゴを持った青年がスタスタ歩いている様子が写されていた。青年はエステート劇場の右脇の路地に入り、劇場の裏口から建物に入ったようであるが、この青年が何とこのオペラの主人公のドン・ジョバンニであるアンドレイ・ベスチャスニーであった。劇場内が映し出され、オーケストラ・ピットに指揮者サー・チャールズ・マッケラスが入場し観客席に会釈をしてから、突然にファンファーレが始まった。貴賓席が映し出され、ハベル大統領ご夫妻が入場し起立して拍手に応えておられた。  序曲が二つの重苦しい和音で開始されると、舞台の映像を背景に字幕で出演者などの紹介が行われていたが、続いて舞台の奥からガウンを着た青年が登場し、クローズアップで良く見るとそれが主人公のドン・ジョバンニであり、リンゴをかじりながらウロウロしていた。序曲が終わり続いて第一曲の序奏が始まると薄暗い奥の方からレポレロが荷物を持って登場し、「見張り役なんてゴメンだ」と歌い始めていた。そこへ突然上半身が裸の男が女性に追われて登場し、女性がくせ者と大声を上げ三重唱となって争っているところへ騎士長が剣を抜いて登場し、立ち会えと迫っていた。二人は刀を交わしていたが、あっと言う間に勝負が付いてしまい、主人公とレポレロは逃げ出してしまっていた。



  そこへドンナ・アンナとドン・オッターヴィオに従者たちが駆けつけたが、ドンナ・アンナは騎士長が倒れているのを発見し、父の死を確認して気を失ってしまった。しかし、オッターヴィオに抱き起こされて気がつくと、健気にも復讐してくださいと開き直り、二人の二重唱となって、オッターヴィオに復讐を誓わせていた。
  場面が変わって、主人公とレポレロが街中で言い争いをしていると、「女の匂いがする」と言ってドン・ジョバンニが立ち止まり様子を窺っていると、ドンナ・エルヴィーラが従者を従えて登場し、直ぐに「あの男は何処かしら」とアリアを歌い出した。見つけたら心臓をえぐってやろうなどと物騒なことを歌っていた。ドン・ジョバンニが気の毒に思って声を掛けたところ、前に別れたエルヴィーラだったので驚いていると、彼女が悪党・ペテン師などと騒ぎ出すので手に負えず、レポレロに任せて逃げ出してしまった。レポレロは、彼女を慰めながら、旦那は海千山千の男だと「カタログの歌」を歌い出した。怒り狂ったエルヴィーラも、レポレロのスペインでは1003人と言う名調子のアリアにはさすがに驚いて、裏切られたとばかりに復讐を誓っていた。



  場面が変わって大勢の若者たちが結婚式を迎えるツエルリーナとマゼットを囲んで大騒ぎしているところへ、主人公とレポレロが登場し、早速、花嫁のツエルリーナに目をつけて、皆のご機嫌を取りながらレポレロに命じて自分の館でご馳走をさせようとしていた。邪魔なマゼットを脅して二人になろうとしたので、マゼットが怒りのアリアを歌ってツエルリーナを毒づいていた。二人になってドン・ジョバンニはツエルリーナを煽てながら口説きだし、甘い二重唱を歌いながら裏の館で結婚しようと囁き、「さあ行こう」となった時にエルヴィーラが突然現れ、「この裏切り者から逃げなさい」とアリアを歌いだした。
  ドン・ジョバンニは、「今日はついていない」とぼやいていると、そこへ喪服姿のドンナ・アンナとオッターヴィオが現れて助けが欲しいと頼まれて、ドンナ・アンナを慰めていると、またしてもエルヴィーラが現れ、「この人を信じてはいけません」と歌い出して、四重唱が始まった。不思議がるドンナ・アンナに対して、ドン・ジョバンニがエルヴィーラを気違い扱いにして、二人だけにさせてくれと「アミーチ・アデイーオ」と別れたところ、ドンナ・アンナは「あの男よ!」と初めて自分を襲い、父を殺した犯人に気がついた。そして激しくレチタテイーボ・アッコンパニアートで襲われた状況をオッターヴィオに説明し、「これで分かったでしょう」と激しくアリアを歌っていた。オッターヴィオは騎士が大罪を犯すとはと驚き、復讐を誓って立ち去っていた(アリアのないプラハ版)。



  ここでドンジョバンニがレポレロの報告を聞いて「盛大な宴を用意しよう」という有頂天になって歌う「シャンペンのアリア」と、ツエルリーナがマゼットのご機嫌を取って歌う「ぶってよ。マゼット」の2曲の有名なアリアが続いてから、ドン・ジョバンニの屋敷で賑やかな歌と踊りの盛大な宴のフィナーレに突入していた。
  マゼットとツエルリーナが争っているうちに、宴の準備が出来、ドン・ジョバンニは盛大にやろうと宣言して宴が始まった。ツエルリーナが隠れようとして直ぐドン・ジョバンニに捕まるが、仮面を付けたマゼットが大胆に監視しているので何も出来ない。そこへ仮面を付けたエルヴィーラが「主人公の正体を見極めよう」と言って、ドンナ・アンナとオッターヴィオを導いて来た。メヌエットが始まり三人の仮面の人もどうぞと許されて、三人は「神よ、お守り下さい」と復讐の三重唱を美しく歌って勇気づけていたが、皮肉にもこの演出では、ドン・ジョバンニがこの様子を窺っていた。




踊りが始まって、コーヒーだ、チョコレートだと騒いでいるうちに、マスクの三人はようこそと招かれて、「どなたもご自由に」と挨拶され、やがて皆で「自由万歳」の合唱になっていた。そして楽士たちが舞台に登場して、まずメヌエットが始まりマスクの二人が優雅に踊り出すと、ドン・ジョバンニはツエルリーナを捕まえてコントルダンスを踊り始めていた。一方、レポレロは嫌がるマゼットを捕まえて二人でドイツ舞曲を踊り出し、舞踏会は佳境に入り出していた。しかし、ドン・ジョバンニがツエルリーナを外に連れ去ろうとし、それを見たマゼットが追いかけようとしたので大騒ぎとなり、やがてツエルリーナの「助けて」という悲鳴が聞こえてきた。さあ大変!とばかりに一同が集まった所へ、ドン・ジョバンニが剣を抜いてレポレロを犯人にしようとしたので、それを良く見ていたマスクの三人が仮面を脱いでドン・ジョバンニにピストルを突きつけて「これで悪事は明白」と皆が一斉に責め出した。音楽が早いテンポに変わり、さすがのドン・ジョバンニも皆から悪事だと責め付けられて、途方に暮れていたが、まだ負けていないぞと強がりをいいながら逃げ出して、この大きなフィナーレは幕となっていた。

  




  第二幕が始まると、レポレロは殺されそうになったと「おいとまを」と文句をつけていたが、ドン・ジョバンニが気前よく金貨4枚を出したのでレポレロはコロリと変わり、エルヴィーラの召使いを口説くため、挙げ句の果てに服装まで交換させられてしまった。  バルコニーの下でドン・ジョバンニが改心した素振りの歌を歌うと、信じやすいエルヴィーラも歌い出し、三重唱となって迷いながらも騙されて降りてくきた。そしてドン・ジョバンニの衣裳でレポレロがジェスチャーをして抱きつくと仲直りをしたようになり、ドン・ジョバンニの大声で二人は逃げ出してしまった。
  ドン・ジョバンニはマンドリンの伴奏でエルヴィーラの従女に対し「愛しい人よ」とカンツオネッタを歌い出し、姿を見せてくれと歌っていると、その努力が実ったか、終わり頃には遠目には彼女の姿が現れていた。しかし、人声がして身を隠すと、マゼット一行がドン・ジョバンニを探しに来ており、またしても失敗。ドン・ジョバンニがマゼット以外を追い払って、マゼットを叩きのめしていると、ツエルリーナが悲鳴を聞いて駆けつけ、マゼットに「薬屋のアリア」を歌って、マゼットの機嫌を直してしまった。有名なアリアが二つも続いて、場内は笑いで賑やかであった。



  逃げ出したレポレロとエルヴィーラが暗い広場でウロウロと迷い込んで、暗くて死んでしまうと歌い出すと、ドンナ・アンナとオッターヴィオに気付かれ、その声を聞いてマゼットとツエルリーナも駆けつけて、六重唱になりレポレロが捕まってしまった。4人に許さないと言われ、エルヴィーラが「私の主人です」と謝ったが、死だとして許されず、レポレロは主人の衣裳を脱いで正体を現し、平謝りの六重唱が続いた。そしてレポレロは「どうかお慈悲を」とアリアを歌い出し、一人ひとりに主人の命令でこうなったと謝って、隙を見て脱兎のごとく逃げ出してしまっていた。ドン・ジョバンニが犯人だとやっと悟ったドン・オッターヴィオは、私が当局に訴えに出掛けますと歌い出し、「その間に私の恋人を」慰めてやってと声を張り上げて歌っていたが、このアリアが不安定で残念であった。



  場面が変わって、ドン・ジョバンニは上機嫌で床下から出て来てレポレロと再会して、レポレロをからかいながら高笑いしていると「その声も今夜限りだ」と言う大きな声が響いて二人は仰天した。その声が騎士長の石像だと分かって、驚いた二人は二重唱で石像を夕食に招待するがどうかと尋ねると、レポレロが頷いたと驚いて腰を抜かしてしまう。そのためドン・ジョバンニが自ら石像に向かって尋ねると、「行こう」という大きな声が聞こえてきた。驚いた二人は、恐ろしくなり、夕食の支度だと言い訳をして逃げ出してしまっていた。一方、騎士長の銅像の前で、オッターヴィオがドンナ・アンナにどうして私を苦しめるのかと責めだしたので、彼女は激しくレチタテイーボ・アッコンパニアートで「私だって辛いのよ」と歌い出し、「私の信念を揺るがせないで」と歌うアリアになった。そして後半にはアレグロのコロラチューラが連続する技巧的なロンドになってドンナ・アンナの存在感を示すアリアに発展して大きな拍手を浴びていた。



  ドン・ジョバンニ邸内に舞台が移り、大勢の従者たちが食卓を用意し、料理番たちが食事の用意をしていたが、楽団員は舞台上にはいなかった。まず「コーサ・ラーラ」の音楽が始まり、ドン・ジョバンニが上機嫌で食事を始めていた。続いて「イ・リテイガンテイ」が奏され、マルツイミーノ酒が注がれて、ドン・ジョバンニはワインを飲みながら旺盛な食欲を見せていた。続いてフィガロの「もう飛ぶまいぞ」が始まると、ドン・ジョバンニは口笛を吹きながらますます上機嫌になって、音楽に合わせて「レポレロ」と呼び掛けてからかっていた。そこへエルヴィーラが飛び込んできて、ドン・ジョバンニの前に座り込み、最後のお願いに来たという。ドン・ジョバンニはどうしたかと驚くが、「生活を変えろ」という話なので相手にせず、始めから「女性万歳」「ワイン万歳」とからかっていた。勝手にせよと逃げ出したエルヴィーラが入口で大きな悲鳴を上げ、それを見に行ったレポレロも大声を上げて、驚きの余りダンダンダンと口を動かすだけであった。ドン・ジョバンニが「わしが行く」と立ち上がって見に行こうとすると、もの凄い大きなオーケストラの響きと共に騎士長の姿が現れて、序曲の音楽が鳴り響き、足音の音楽とともに「来たぞ」と叫んでいた。そして驚くドン・ジョバンニと怖がるレポレロとの三重唱となって、重大な話があると言い、「今度は私の晩餐に来るか」と呼び掛けた。臆病だと思われたくないドン・ジョバンニは、必死となって勇気を振り絞って「行こう」と返事をし、約束の握手をした途端に、「何と冷たい手だ」と震え上がり、苦しみだした。騎士長は「悔い改めよ」と叫び、ドン・ジョバンニは「いやだ」と叫ぶ。何回か拒絶を繰り返すうちに、苦しくて倒れ込み、合唱とフルオーケストラの響きの中で、大暴れしながらやがて「ああー」という絶叫と共に、煙が漂っている中で、騎士長とともに地下深くに吸い込まれてしまっていた。




  まだ煙が漂っている舞台で、レポレロが一人、何も分からずに取り残されていた。嵐が去って五人が駆けつけて、レポレロにドン・ジョバンニはどこへ行ったかと尋ねるが遠くに行ってしまったとさっぱり要領を得ない。やがて合唱は六重唱となり、ドン・ジョバンニが天罰でいなくなったことが知らされた。オッターヴィオが愛しい人よと呼び掛け、これ以上悩ませないでというと、ドンナ・アンナは1年待ってくれとのつれない返事。エルヴィーラ、マゼットとツエルリーナ、レポレロは、それぞれの道を歩もうと決意し、最後に明るい六重唱となっていた。音楽のテンポが変わって六人が平和が戻ったことを喜んで歌っていると、死んだはずのドン・ジョバンニが地下から姿を現し、リンゴを囓りながら舞台をウロウロして最初に出て来た奥のドアから退場していく姿が映し出され、賑やかに終幕となっていた。




  この映像はモーツアルトが1787年10月29日にこのオペラを初演したエステート劇場で、恐らく当時の舞台や衣裳も記録に残されたものと同じようにしつらえたもので、音楽もプラハ版が採用されていた。指揮者のマッケラスは、序曲のオーケストラの響きからピリオド風の演奏スタイルで、歌手陣も繰り返しでは装飾をつけて歌うという工夫がなされていた。
  この劇場の奥行きの長い舞台をどのように使うかに関心があった。このオペラでは、騎士長邸の前、町の広場、邸内、バルコニーのある家の下、墓地、などがリブレットに明示されていたが、背景は薄暗い背景として邸内・外を区別した程度であり、器械仕掛けがないので、机やテーブル、石像の台などの小道具の移動は人海戦術で、カツラと制服姿の合唱団員が使われ、それらしく場面設定がなされていた。重要な地獄落ちの場面では、舞台上の地下入口から吸い込まれるように姿が見えなくなる工夫がなされていた。登場人物が堂々と登場するときは、舞台の一番奥のドアからゆっくりと登場し、急いで出入りするときは左右の壁から自由に出入りしていた。また左右の両側には、ギリシャ風の彫像が何体か置かれていたようであるが余り使われていなかった。登場人物の衣裳はとても優れており、貴族風、庶民風の区別も当時に似せたもので納得できるものであった。

  このオペラは、最初からスター歌手のアンドレイ・ベスチャスニーを中心にしたものであり、この主人公が劇場に入ってくる所から、舞台上の主役の演技を終えて、劇場を去る場面まで収録されると言う凝ったものであった。さらに目立ちたがり屋のドン・ジョバンニが、リブレットにない独自の行動を取る場面が方々に散見できた。それ以外の歌手陣はチェコでは有名な方々なのであろうが、大オペラ劇場の選ばれた歌手陣と異なり、動きは良いのであるがスケールや声が物足りない面が見られた。ドンナ・アンナ、レポレロは素晴らしいと思ったが、エルヴィーラ、オッターヴィオ、ツエルリーナ、騎士長にはもっと声に張りをと思う場面があった。

       マッケラスの指揮はこのHP初登場であったが、レクイエムやシンフォニーなどのCDはいくつかあり、モダン楽器で古楽器風な演奏というイメージ通りであった。このオペラでの聴きどころと言える二つのフィナーレも非常に迫力があってまずまずの出来であり、このモーツアルトイヤーの記念公演を成功させていたと思う。残念であったことは、画像の繊細度が今一つであったことであり、放送されたものをS-VHSの3倍速で録っているので、42インチの画面では写真写りが最低に近いものになっていた。お許し頂きたい。

(以上)(10/01/09)


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