(懐かしい映像記録;ハイテインク指揮、91年イースター音楽祭の「フィガロの結婚」)
10-1-2、ハイテインク指揮、ベルリンフイルハーモニー管弦楽団&ウイーン国立歌劇場合唱団、ミヒャエル・ハンペ演出による「フィガロの結婚」K.492、1991年3月23日のザルツブルグ・イースター祭におけるライブ公演、オーストリア放送協会(ORF)、

−この映像はハンペの伝統的な分かり易い演出をベースにして、ハイテインクが実に穏やかなテンポで全体を進め、歌手を良く歌わせる伝統的な指揮振りであって、とても後味の良い好感の持てるライブ演奏であった。しかし、BS放送の初期の古い映像であり、音声はまずまずであったが映像の質が最低の状態だったのが残念であった−

(懐かしい映像記録;ハイテインク指揮、91年イースター音楽祭の「フィガロの結婚」)」)
10-1-2、ハイテインク指揮、ベルリンフイルハーモニー管弦楽団&ウイーン国立歌劇場合唱団、ミヒャエル・ハンペ演出による「フィガロの結婚」K.492、1991年3月23日のザルツブルグ・イースター祭におけるライブ公演、オーストリア放送協会(ORF)、
(配役)フィガロ;フルッチョ・フルラネット、スザンナ;ドーン・アップショウ、伯爵;トーマス・アレン、伯爵夫人;リューバ・カザルノフスカヤ、ケルビーノ;スザンネ・メンツアー、マルチェリーナ;クラーラ・タカーチ、バルトロ;ジョン・トムリンソン、ドン・バジリオ;ウーゴ・ベネルリ、バルバリーナ;尾畑真知子、
(1991年3月24日、NHK衛星放送を、S-VHSアナログテープに3倍速で収録)

   2曲目はあと残された3種類のオペラ「フィガロ」のうちの1曲、ハイテインク指揮、91年モーツアルトイヤーにおけるザルツブルグ・イースター音楽祭の「フィガロの結婚」K.492である。この音楽祭はベルリンフイルが遠征してきて演奏をするザルツブルグの音楽祭であり、カラヤンがベルリンフイルを振っていた時代からの歴史的産物であった。この映像はハイテインク指揮のものとしては2度目になるが、古い映像記録だったので殆ど記憶に残されていなかった。しかし、この映像を改めて見直して、若いフルラネットとドーン・アップショウのフィガロとスザンナがお似合いの映像であったことを直ぐ思い出し、トーマス・アレンが伯爵として活躍し、日本人の尾畑真知子がバルバリーナで出演していたことが思い出された。沢山のこのオペラを見てきた今現在、この映像を改めて見直して、どのように私の目に映るかが楽しみで、じっくり味わってみたい。




   映像はザルツブルグ城を背景にしてイースター音楽祭の説明から始まっていたが、ハイテインクの指揮で序曲が始まっていた。序曲は颯爽として軽快に進行しており、序曲の間中ハイテインクがベルリンフイルを指揮する姿が連続して映し出されていたのは珍しかった。序曲が終わって横開きに幕が開く。フィガロが大きな寝台の骨組みを運ぶのに大忙しであり、スザンナも鏡を見ながら頭の飾り付けのセットに忙しく、大きな椅子も中央に目立っていた。ハンペの演出は、数多いこのオペラの中でこのビデオだけのようであるが、基本に忠実で分かり易い演出に見えた。フィガロからベッドがこの部屋にとスザンナが聞いて彼女は怒りだし、フィガロがデインデインと歌い出すと、スザンナがドンドンと3歩で悪魔が来ると歌って、フィガロは慌てて考え出す。レチタテイーボでスザンナからいろいろ話を聞くうちに、フィガロは次第に怒りだし、チェロとチェンバロの伴奏で次第に勇気づけられ、測っていた物差しを刀にして「ご主人さまよ」と決闘をしそうな素振りで、元気よくカヴァテイーナを歌って拍手を浴びていた。フルラネットは非常に人気があり、彼の深い低い声が一際良く響いていた。

   


   マルチェリーナとバルトロが登場して、バルトロが「復讐だ、こちらに勝算あり」と元気よく歌っていたが、何とワグナー歌手として売り込み中の若いトムリンソンが歌っており、格好の良いバルトロを演じていた。続くマルチェリーナとスザンナの口論の二重唱は、二人の仕草と表情がいかにも意地悪そうで面白く、スザンナの「さっさとお行き、うるさい婆さん」のセリフでスザンナの勝ち。
   スザンナが一息する間もなくケルビーノが飛び込んできて、手にした伯爵夫人のリボンを取り上げて「自分が自分で分からない」とケルビーノが歌い出す。このアリアはゆったりとテンポを落として感情を込めて歌われていたが、メンツアーが実に可愛いケルビーノを演じていた。そこへ突然殿様が現れ、誰もいないのを見ていきなりスザンナを口説き出した。そこへバジリオも現れたので、殿様も隠れて様子を見ていたが、話が伯爵夫人の噂話となって、殿様が思わず立ち上がってしまったので、おかしな三重唱が始まった。スザンナが驚いて気絶しそうになったり、二人に助けられたり、隠れていたケルビーノが見付かったりして、バジリオに「コシ・ファン・トッテ」と歌われて、スザンナはピンチであったが、フィガロが連れてきた村人たちの合唱に救われた。
   フィガロの作戦で、殿様の初夜権の廃止を讃え、二人の結婚を祝福して、殿様にヴェールを被せてもらおうとしたが、殿様がやりかけて「まだ早い」と途中で止めてしまったので、見ていた全員を怒らしてしまった。終わりにケルビーノが殿様から罰として連隊の士官に命ぜられたが、フィガロが「もう跳べないね、恋の蝶々さん」と歌いだして、しおれるケルビーノに軍隊調の激励をし、最後にはマーチになって第一幕が終了していた。




第二幕はゆっくりしたテンポの序奏で美しく始まり、伯爵夫人がベッドから起きあがって悲しげに歌い出していたが、その「愛の神よ」と表情豊かな美しい歌に、思わず会場から拍手が湧き上がっていた。フィガロが奥様のお化粧直しに登場し、スザンナと三人で殿様を懲らしめる作戦会議。しかし、ケルビーノを女装させて伯爵を騙すところが女性二人の気に入り、ケルビーノを直ぐに寄越すと、鼻歌まじりでフィガロが退場。早速、帽子を被った兵隊姿のケルビーノが現れて、スザンナのギターの伴奏で「恋の歌」が高らかに歌われた。ケルビーノの名調子に彼の歌を初めて聴いた奥様は、ブラボーを連発して大喜びであった。スザンナは彼の背丈を確認して、早速、着せ替えのアリアを歌い出し、ケルビーノをからかいながら、コルセット姿にしていた。ケルビーノが傷口に巻いていた奥様のリボンが見つかって、取り上げられそうになったので、ケルビーノがこれから戦地に行くので、記念に欲しいと駄々をこねて、二人が思わず抱き合ってしまったところへ、伯爵の声が聞こえ、ドアがうるさく叩かれた。さあ大変。



  伯爵が夫人が何か隠していると伯爵が疑って「スザンナ、出て来なさい」と三重唱が始まった。鍵を渡さずドアを開けさせない夫人に業を煮やして、伯爵が工具を取りに部屋を出た瞬間に、スザンナが「早く早く」とケルビーノを逃がそうと二人の二重唱の挙げ句に、ケルビーノが窓から飛び降りて逃げ、衣裳部屋にスザンナが変わりに入った。
  伯爵と夫人が工具を持って戻ってから、観念した伯爵夫人がケルビーノだと白状すると、伯爵はまたかと怒りだし「出てこい、無礼な小僧」と歌い出して、場面はフィナーレに突入した。伯爵が押し問答の夫人との二重唱の末にドアを開けようとすると、「シニョーレ」とスザンナが現れたので、二人はビックリ仰天。スザンナが夫人にケルビーノが逃げたことをコッソリ伝えたので、女二人は強くなり、伯爵の平謝りの美しい三重唱が長々と続いていた。そこへフィガロが現れたので、伯爵はしめたとばかりにフィガロに手紙のことで責めだして、四重唱になった。そこへアントニオが「窓から人が降ってきた」と伯爵に抗議しておかしな五重唱になって、伯爵は上手くフィガロを責め続けたが、女二人の協力でフィガロに上手く逃げられてしまった。しかし、困った伯爵の前に、マルチェリーナ、バルトロ、バジリオの三人組が伯爵に契約の履行を求めて来たので伯爵は大いに喜び、大声で反抗するフィガロ、スザンナ、伯爵夫人に「静まれ、静まれ」と歌う賑やかな七重唱となって、大騒ぎで盛り上がりながら第二幕は終了となっていた。







  第三幕になって、これから裁判が始まるのか、伯爵との判決内容の打ち合わせであろうか、関係者の集まりから伯爵が一人、取り残されて考え事しながら呟いていた。そこへ伯爵夫人から何かしら頼まれて、スザンナが殿様に近づいて、しなを作って殿様の気をひいていた。伯爵が、早速、口説き始めるとスザンナは持参金の話に触れて「殿の望みは私の望み」と答えたので、伯爵は「ひどい奴だ、なぜ私をじらせた?」と二重唱が始まった。スザンナは「嘘をつくことをお許し下さい」と歌いながら、逢い引きの約束を上手に取り交わしていた。しかし、別れ際にフィガロと会って一言語ったのが伯爵にバレて、伯爵をカンカンに怒らせ、伯爵は「私の名誉は」と素晴らしいアリアを歌っていた。これはトーマス・アレンの本日最高のアリアで、元気な姿を味わうことが出来、観衆を喜ばせていた。




  場面が変わり、判決が出てフィガロが一人反対して、俺は貴族の子だから親の同意がなければ結婚できないと騒いでいた。みんながフィガロをからかいながら証拠はあるのかと騒いでいるうちに右腕の痣をマルチェリーナに見せた途端、「私の息子のラファエロだ」と言うことになって、六重唱が始まった。お金を持って現れたスザンナが、抱き合っているフィガロとマルチェリーナの姿を見て、フィガロを殴り倒してしまった。これも愛情のなせるワザと、マードレ・パードレの六重唱が続き、スザンナはやっと納得。この四人は二組の結婚式を挙げようとはしゃいでいた。
  続いて伯爵夫人が正装で登場し、レチタテイーボで自問自答しながらオーボエの伴奏で「あの幸せなときは何処に」とアリアを歌っていたが、後半にはアレグロとなり「あの人の心を変えてあげたい」とばかりに強く歌って、本日最高とばかりに拍手を浴びていた。伯爵夫人はスザンナから伯爵との逢い引きの話を聞き、場所を手紙で知らせようと言うことになって「松の木の下で」と二人で復唱するように歌われる有名な「手紙の二重唱」が歌われて、二人の声が良く揃い観衆を喜ばせていた。




  続いて娘たちの合唱が始まり、娘たちがお花を持って伯爵夫人に捧げようとしていたが、そこにケルビーノも女装して加わっていた。しかし、アントニオに見つかってしまい、ケルビーノが二階から飛び降りたこともバレてしまう。しかし、バルバリーナが体を張って伯爵に泣きついて伯爵の面目をつぶしてしまう。そこへ現れたフィガロが不機嫌な殿様とにらみ合って一触即発となったが、折りからの行進曲に救われていた。
  フィナーレに入って、行進曲に乗って二組の夫婦が入場し、二人の若い娘たちによる祝福の二重唱が歌われたが、その一人はバルバリーナの尾畑真知子であった。伯爵夫妻から二人の花嫁がひざまずいて純白のヴェールをいただいていたが、その間にスザンナは伯爵に例の手紙をこっそり手渡していた。やがて二組の夫婦を中心に踊りが始まっていたが、伯爵はピンで指を刺したりしながら手紙を見て上機嫌になり、盛大にこの結婚式を祝福しようとこのパーテイをなか締めする挨拶を行って、第三幕は終了した。







  第四幕はバルバリーナが一人で歌いながらピンを探しているが、見つからず泣き声になっていた。それを見ていたフィガロがピンを見つけて手渡し、伯爵が松の木の下でスザンナと密会することを知り、怒りだし騒ぎ始めていた。マルチェリーナが裏に何か訳があると諫めるがフィガロは聞かない。騒ぎを聞きつけて、バジリオやバルトロが駆けつけて、バジリオがフィガロをなだめながら、珍しく普段省略される「ロバの皮」のアリアを歌い出した。アリアは暗闇の中で歌われ、アンダンテ・メヌエット・アレグロと続いてフィガロの短気を戒めるアリアであったが、ロバの皮の意味が今一つ不鮮明であった。続いてフィガロが「目を見開け、愚かな男達よ」とスザンナの裏切りを怒るアリアを調子よく歌って大拍手であり、フルラネットの人気の高さを示していた。続いて学芸会の最後の真打ちとしてスザンナが登場し、「やっとその時が来た」とレチタテイーボを歌い出した。このアリアは、三拍子のピッチカートとオーボエのオブリガートに支えられながら「どうか直ぐに来て、素晴らしい喜びよ」と美しく歌われており、本日のスザンナの最高のアリアとなって、大拍手を浴びていた。




  いよいよフィナーレに入って、伯爵夫人がスザンナに化けてウロウロしているのをケルビーノが見つけてからかい始めていた。伯爵もスザンナを探して登場するが、ケルビーノが邪魔でしびれを切らし、ケルビーノに殴りかかるとそれが隠れていたフィガロに当たり一騒動。その後、伯爵は首尾良くスザンナを捉まえて上手く口説き始め、しなやかな指などとお世辞を言いながら煽てて、気前よくダイヤの指輪までサービスしてしまった。しかし、フィガロの通行人に阻まれて、それ以上のことは出来ずにスザンナに逃げられてしまった。フィガロは伯爵夫人を見つけ、私の妻がと話しかけているうちに声でスザンナが伯爵夫人に化けていることに気付き、復讐とばかりスザンナをからかったが、やがて二人は仲直り。そこでスザンナを探して現れた伯爵の前で、二人は伯爵夫人と従僕のラブシーンを演じたので、伯爵は夫人の浮気の現場とばかりに大声を上げ、謝る二人の前に全員を呼び出してしまった。平謝りの二人に対し、皆の前で「絶対に許さない」と大声を上げたところに、陰から伯爵夫人がダイヤの指輪をかざしながら現れたので、伯爵は驚いて初めて自分の誤りに気がついた。伯爵は跪いて奥方を見上げながら心から謝罪したので、奥方も皆の手前、素直に伯爵の謝罪を受け入れた。この一連の流れを陰でハラハラしながら見ていた一同は、このめでたい結末に胸をなで下ろし、対立は全て消え失せて、全員が安心して喜びを歌う11人の明るい合唱となって終幕となっていた。


 

この映像は91年のモーツアルトイヤー時における古いライブであったが、ハンペの伝統的な分かり易い演出をベースにして、ハイテインクが実に穏やかなテンポで全体を進め、歌手を良く歌わせる伝統的な指揮振りであって、とても後味の良い好感の持てるライブ演奏であった。残念なのはBS放送の初期の映像であり、S-VHSの3倍速で収録していたため、音声はまずまずであったが写真でお分かりの通り、映像の質が最低の状態であった。このビデオはLDやDVDで未発売のものなので貴重な存在であるが、オーストリア放送協会が持つ原画をデジタル化すれば、十分な画質が得られるものと期待される。











  この映像の良さは、第一にハンペの演出の素晴らしさにあり、リブレットに忠実なよき時代を反映したものであるが、中にはハッと思わせるこの演出特有の工夫が見られ感心させられることにある。例えば、第一幕の冒頭でフィガロが重いベッドの骨組みを持って出てくるシーンであるとか、第二幕でフィガロが伯爵夫人の部屋で夫人の髪結いをしている場面は、この物語がセヴィリアの理髪師の続きであることを思い出させていた。第三幕の冒頭では、裁判の前の伯爵と取り巻きのシーンがさり気なく現れたりして、その後の判決の様子を暗示させていた。これらの演出の細部は、ライブでは気がつかないが、繰り返し見る映像では味のある演出と感心させられるものであった。また、リブレットに忠実な演出は好感が持て、省略はマルチェリーナのアリア1曲だけであった。
  ハイテインクが手慣れたベルリンフイルを振っていたことも、好演の一因とされるであろうし、ハイテインクのテンポ感は私にはピッタリであり、ケルビーノ・スザンナ・伯爵夫人などの大好きなアリアが、ゆっくりしたテンポで伸びやかに歌われていたのが嬉しかった。

歌手陣では、やはりフルラネットとアップショウの若いコンビが歌も良く動きも良く素晴らしかった。また、トーマス・アレンの伯爵が貫禄を見せていたし、ケルビーノのメンツアーがとても可愛いケルビーノを演じていた。これらの面々が、人気もあって随処で大きな拍手を受けていた。終わりに、ただ一人の日本人の尾畑真知子のバルバリーナが大活躍し、二重唱のうちの一人も歌っていたが、当時としては極めて珍しかったので、良く記憶していた。

(以上)(10/01/18)


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