(最新入手のDVD記録;ムーテイ指揮ハンペ演出の「コシ・ファン・トッテ」)
9-7-3、リッカルド・ムーテイ指揮、ミヒャエル・ハンペ演出、ウイーンフイル及びウイーン国立歌劇場合唱団の「コシ・ファン・トッテ」K.588、1983年8月ザルツブルグ祝祭小劇場におけるライブ公演、

−このハンペ演出は、リブレットと正面から向き合った脚本に忠実な「コシ」であり、省略の少ない最も基本的な映像として重視したいと思った。今回の映像は、1983年の音楽祭ライブであるが、この演出の装置や衣裳の美しさ・豪華さは特筆すべきであり、また二組の恋人達の対照の妙が面白く、バランスの良さを痛感させた。また、ムーテイの指揮振りも、序曲の段階から生き生きとしており、声とオーケストラとのアンサンブルを重視した指揮振りが目立っていて、若いソリスト達の熱演・熱唱を導き出していた−

(最新入手のDVD記録;ムーテイ指揮ハンペ演出の「コシ・ファン・トッテ」)
9-7-3、リッカルド・ムーテイ指揮、ミヒャエル・ハンペ演出、ウイーンフイル及びウイーン国立歌劇場合唱団の「コシ・ファン・トッテ」K.588、1983年8月ザルツブルグ祝祭小劇場におけるライブ公演、
(配役)フィオルデリージ;マーガレット・マーシャル、ドラベラ;アン・マレイ、グリエルモ;ジェイムス・モリス、フェルランド;フランシスコ・アライサ、デスピーナ;キャサリーン・バトル、ドン・アルファンゾ;セスト・ブルスカンテイーニ、
(09年2月、スタンダードオペラ20としてDVD発売、DENON、TOBA-81240-1、)

  このDVDはデノンのスタンダードオペラの再発売シリーズであり、ムーテイの三種類の「コシ」の映像の最初に当たる1983年のザルツブルグ音楽祭の祝祭小劇場におけるライブ収録である。私の「コシ」の映像の最初のものは、ムーテイとミラノスカラ座のLD(1989)であったが、衛星放送が開始されて、私はNHKの衛星放送でこのDVDと同じものをモーツアルトイヤーの1991年10月にアナログテープに収録していた。しかし、衛星放送の最初期のものであったため画像の水準が悪く、これまでアップロードすることをためらっていた。また、別にダ・ポンテ三部作のボックス盤のCD を持っているが、このCDの「コシ」は、1982年の音楽祭のライブ録音であり、今回の83年のDVDとはドラベラとアルフォンゾの二配役が異なっていた。私のデータベースでは82年のCDをムーテイ1、83年の今回のDVDをムーテイ2、89年のスカラ座のLDをムーテイ3、既にアップした96年のデジタルテープをムーテイ4(4-11-1)として略記している。
  これまでザルツブルグ音楽祭では、「コシ」はベームが振るオペラとなっていたが、カラヤンがムーテイに目を付け、電話で「コシ」を振るように即決で要請したことは、ムーテイの語りぐさになっていた。そして、イタリア風の明るい日差しの中のハンペ演出の「コシ」が、ムーテイの手により音楽祭に定着していったとされる。その話題の最初のオペラ「コシ」が、今回のDVDのこのハンペ演出のものである。時代の推移と共に伝統的なベームの「コシ」に入れ替わって登場したとされるこの舞台を、今回じっくりと味わいたいと楽しみに考えていた。

  映像はハンペ演出のナポリ湾の晴天の海をイメージした画面に出演者などの字幕が写されてから、指揮者ムーテイが颯爽と登場する姿を写し、直ちに序曲が開始された。おどけた和音とオーボエが続いてから、コシ・ファン・トッテのゆっくりした和音に続いて、軽快に弦が動き出した。メガネなしの若いムーテイがエネルギッシュな手振りの指揮で序曲が進み、舞台では港が見える酒場でサーベルを持った軍服姿の若い二人の士官が老人と争っていた。もめ事は彼らの恋人達の貞節の事らしく三重唱となって、二人の兵士が怒って剣を抜きそうになっていた。老人は彼女たちは天使か女かと問い、女なら皆同じだと云うので兵士達は怒り出す。しかし、賭けようかと言うことになって、争いは一挙に解決し、互いに勝ったつもりで、鼻歌交じりのセレナータの三重唱になって、楽しい劇は始まった。
  場面が変わって海の見えるお屋敷の庭で、二人の姉妹の恋人達が、ロケット内の写真を見せ合って明るい声で二重唱を歌っていたが、そこへアルフォンゾが足早に来て、二人の恋人達が大変だという。戦場に直ぐに出征すると聞かされて姉妹は大騒ぎ。申し訳なさそうな顔つきをして男二人は姉妹をなだめ、美しい別れの五重唱となっていたところへ太鼓の音と共に出発の軍隊万歳の行進曲が始まった。毎日手紙を書いてと涙ながらに頼む姉妹をそれぞれ抱きながら別れを告げ、男二人はご機嫌で船に乗り込んで、アデユーと声高らかに歌いながら出発した。


  あっと言う間の急な別れに残された三人は、船を見送りながら「風よ穏やかに」と祈りながら歌う涙の三重唱が、何と美しいことか。姉妹の真面目そうな悲しみの姿を見て、一人になったアルフォンゾは、得意満面となり真面目な女ほど落ちやすいと、舌を出していた。
  場面が変わってデスピーナが登場し、朝食のココアをペロリと失敬して舌なめずり。そこへ二人の姉妹が血相を変えて部屋に戻ってきた。妹のアン・マレイがデスピーナを突き飛ばすような剣幕で、早口でまくし立てるように半狂乱のアリアを歌ってビックリさせたので観客から大拍手。デスピーナに何があったのか訪ねられ、出征したと答えて笑われて、二人は益々いきり立つ。するとデスピーナが、男は皆、同じようなものと陽気に励ますように歌い出した。デスピーナのキャサリン・バトルはさすがに演技上手であり、声にこの人特有の伸びと艶があって、客席は大喜びで大きな拍手を送っていた。



  アルフォンゾがデスピーナの力が必要と金貨一枚で買収し、ターバンと鬚ずらのごつくて元気の良いアルバニア人を紹介したが、彼女は男二人の変装に気がつかず一安心。喜んでいるところへ姉妹が登場し、こんな時に何故男がいるかと怒り出し、デスピーナと男二人は平謝り。これを見て、アルフォンゾが登場し、男二人と親友であったことを見せつけ安心させたが、男二人が続けてアモールとしつこく愛を迫ったので、女二人はカンカン。フィオルデリージの逆鱗に触れて、彼女は「岩のように」と歌い出し、わが心は不変ですとばかりにコロラチューラの技巧の入った大アリアを堂々と歌ったので大拍手であった。立ち去ろうとした姉妹にグリエルモがなおも求愛のアリアを歌い出すと、女二人は逃げ出してしまったので、男二人は賭けに勝ったとばかりに大喜びをした。またフェランドも勝ったとばかりに有頂天の鼻歌のアリアを歌っていたので、アルフォンゾは怒っていた。



  フィナーレでは、女二人が穏やかな明るい海を眺めながら、突然の不幸を二重唱で嘆いていたが、この種の音楽はモーツアルトがお得意で、夢を見ているように美しい。ウットリとして聴いていると、そこへ突然、嫌われた男二人が毒を飲んだと言って倒れ込んできたのでさあ大変。デスピーナを大声で呼ぶと、彼女は医者を呼びに行くから、二人は介抱をとテキパキと指示。恐る恐る近寄る二人の前に、デスピーナのお医者さんが登場し、強力な磁石を取り出し、伸びのある歌声で磁石を使って治療をすると、男二人は気がついて何とか動き出した。しかし、立ち上がると姉妹の手をつかみ、口説き始めた挙げ句に、テンポが変わってキスを求めだしたので、姉妹はあきれ果て、汚らはしいと怒りだし、挙げ句の果てに逃げ出してしまった。残った男三人はそれを見て大笑いの中で第一幕が終了した。









  チェンバロの音と共に幕が開き、デスピーナが姉妹に男との付き合い方や味わい方をレクチャーして、二人の反応を見ながら「女が15歳にもなれば」と明るく調子を上げて歌い出した。硬い表情の姉妹には良い励ましに聞こえ、バトルの演じるデスピーナは実に魅力的で、これまで見た最高のデスピーナのように見えた。二人はデスピーナの言い分に驚いたり、噂になったらデスピーナが犯人だと言えばなどの入れ知恵に安心して、ドラベラは遂に「私は黒髪の方が良いわ」と歌い出し、本音が出始めた愉快な二重唱となった。そこで、アルフォンゾの作戦で、美しい木管のセレナードが聞こえてきて、驚く二人が外に出ると豪華船が音楽を奏でており、そこから降りてきた頼もしげなアルバニア貴族風の紳士が姉妹を歓迎し、改めてご挨拶をした。アルフォンゾとデスピーナが改めて紳士と淑女のお付き合いのお膳立てをすると、二組のカップルはぎこちないながら、散歩をしましょうかとなってきた。



  フェランドとフィオルデリージのカップルが散歩に出かけた後に、グリエルモが心配そうにドラベラに声を掛けると、その気になっていた彼女の反応が良く、会話も弾むので試しにハートの贈り物を手渡すと、嬉しそうに受け取ってくれた。グリエルモが歌い出すと、二人の甘い二重唱となり、ドラベラは素敵な音楽の伴奏もあってすっかり彼のペースになってしまった。そして甘い言葉に乗せられて、大切なロケットを交換してしまった挙げ句、別れにはキスまでしてしまった。
  一方のフィオルデリージは、二人で出かけた散歩から蛇を見たとして一人で逃げ帰った。そして自分の心が新しい恋人に傾いていく罪の意識に不安を覚え、「お許し下さい」とアリアを歌い出した。ホルンの伴奏が入った見事なロンドのアリアで、彼女は立ち直ったかに見えた。それを見て「勝ったぞ」とフェランドが、さすがフィオルデリージと誉めて、大喜びのグリエルモに「ところでドラベラは」と尋ねた。そこでロケットを見せられて、フェランドはさあ大変。半狂乱になってグリエルモに質すが、自分も驚いているんだと云われ「女どもは良く浮気をする」と歌い出した。グリエルモに自分は君とは違うと云われ、フェランドは復讐の矛先はフィオルデリージを口説き落とすことだと覚った。フェランドは、ここでドラベラに「裏切られても」と歌い出し、でも自分はやはり彼女を愛していると本音を歌っていた。



  一方、恋人から新しいロケットを手にしたドラベラは、上機嫌で「恋は盗人」といたずらっ子のようなアリアを歌い出し、デスピーナに自慢しながらフィオルデリージにあなたも昔のことを忘れなさいと言い出した。一人悩んでいたフィオルデリージは、「皆が私をそそのかす」と歌い出したが、自分に勇気を与えるために、ふとグリエルモの制服を着て昔の恋人のところに行ってみようと思いつき、制服を着て帽子を被って自分を鏡に映して「もう少しの辛抱で」と歌い出した。そこへフェランドが現れて剣を差し出し、「あなたの心をくれなければ死を」と愛の二重唱になり、力がないなら手を添えようと必死に口説きはじめた。その真剣さに打たれて、フィオルデリージはオーボエの伴奏と共に「愛の神よ、お許し下さい」となって、フェランドの腕の中に落ち、キスまで許してしまった。
  アルフォンゾの得意な顔、泣き出すグリエルモ、やっと勝ったというフェランドの顔が並び、アルフォンゾが賭けに勝ったと「コシ・ファン・トッテ」と三人で合唱し、有無を云わせず直ぐに二組の結婚式を挙げようということになった。



     フィナーレの幕が開きデスピーナのひと声で、制服の合唱団の皆さんが一斉に結婚式の準備を始めた。アルフォンゾも歌っており、二組が入場し着席した。「二人の新郎に祝福を」とアルフォンゾが賭けたワインを注ぎ、ピッチカートの伴奏と共に四人の四重唱となり乾杯をした。フィオルデリージが祈るように美しく歌い出し、フェランドも続き、ドラベラも愛を込めてと歌い出すが、グリエルモ一人がまだショックから抜けきれず、横を向いてブツブツ呟いていた。やがてデスピーナの化けた公証人が結婚証明書を作り出し、姉妹がサインをしたときに、あの忌まわしい軍隊万歳の行進曲が聞こえてきた。あっと驚く4人。アルフォンゾが見に行って、さあ大変、あの二人が帰ってきたというので大騒ぎ。
  無事に帰ってきた二人は、帰ってきて嬉しいと挨拶しても、姉妹の様子がおかしく、言葉も出ない。やがて隠れていた公証人がデスピーナであることが分かり、結婚証明書も見つかってしまい、姉妹は絶体絶命。裏切りだと男二人が剣を抜いたので、姉妹は平謝りになったが、こうなったのはアルフォンゾとデスピーナのせいだと言っているうちに、アルバニアの紳士からロケットを返され、二人は初めてアルフォンゾの仕組んだ芝居だと分かった。そして、姉妹はしみじみと反省しながら、仲良く元の鞘に収まり、全員合唱の中で、めでたしめでたしとなっていた。





 
ムーテイの「コシ・ファン・トッテ」のデータベース
ムーテイ1ムーテイ2ムーテイ3ムーテイ4 摘   要
収録年月82008307(9-7-3)89049600(4-11-1)
メデイアCDDVDLDS-VHS-Tape
劇場名ザルツ祝祭小劇場ザルツ祝祭小劇場ミラノスカラ座アンテ゛ア・ウイーン劇場
オーケストラウイーンフイルOウイーンフイルOスカラ座OウイーンフイルO
演出者HampeHampeSimone
FiordeligiMarshallMarshallDessiFritoli
DorabellaA.BaltzaAnn MurrayD.ZieglerA.Kirchshrager
GuglielmoJ.MorrisJ.MorrisA.CorbelliB.Scoufs
Ferrando F.ArizaF.ArizaJ.KundlakM.Shade
Don AlfonsoJ.V.DamS.BrunscantinoC.DesdeliA.Corbelli
DespinaK.BattleK.BattleA.ScarabelliM.Bacheli


  このハンペ演出は、古い初期の映像だけに、リブレットと正面から向き合った脚本に忠実な「コシ」であり、「コシ」の最も基本的な映像として重視したいと思った。今回の映像は、1983年の音楽祭ライブで、映像としては非常に古いものであるが、このハンペ演出の装置や衣裳の美しさ・豪華さは特筆すべきであり、また二組の恋人達の対照の妙が面白く、ハンペ演出のバランスの良さを痛感させた。   また、ムーテイの指揮振りも、序曲の段階から生き生きとしており、声とオーケストラとのアンサンブルを重視した指揮振りが目立っていて、若いソリスト達の熱演・熱唱を導き出していた。



  私自身は、同じハンペ演出のスカラ座のムーテイ2の映像の方を繰り返し見てきているのであるが、オーケストラと6人の主役が変わったものの、この二つの映像は基本路線は変わっていないことが確認できた。今回DVDになって、私が1991年に録画したS-VHSテープよりも画像が鮮明になり、色彩も鮮やかになり、衛星特有のちらつきがなくなって、格段に見易くなっていた。この映像の魅力は、歌手陣にもあり、ワグナー歌手になったグリエルモのモリスが歌っていたり、モーツアルトオペラの常連のアライサが歌っているほか、アン・マレーが抜擢されているのも注目すべきであろうし、デスピーナのバトルが、スプレットの役として最高の演技と歌を披露していたのが目を惹いた。  これらを混同しないように、ムーテイの4種類の「コシ」のデータを整理すると以下の通りとなる。

(以上)(09/07/27)


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