(デジタルテープ06年と07年収録;札幌PMFでのファゴット協とオーボエ協の記録)
9-7-1ゲルギエフ指揮06年PMF-POとダニエル・マツカワによるファゴット協奏曲変ロ長調K.191 、06年7月29日札幌キタラホール、およびムーテイ指揮07年PMF-POとM.ガブリエルによるオーボエ協奏曲ハ長調K.314、07年7月9日札幌キタラホール、

−07年のウイーンフイルのガブリエルによる、さすがと思わせる熟達振りを見せた最高のオーボエ協奏曲と、ソリスト誕生を思わせた新人らしい06年のダニエル・マツカワ(フィラデルフイア管弦楽団奏者)のファゴット協奏曲であった−

(デジタルテープ06年と07年収録;札幌PMFでのファゴット協とオーボエ協の記録)
9-7-1ゲルギエフ指揮06年PMF-POとダニエル・マツカワによるファゴット協奏曲変ロ長調K.191 、06年7月29日札幌キタラホール、およびムーテイ指揮07年PMF-POとM.ガブリエルによるオーボエ協奏曲ハ長調K.314、07年7月9日札幌キタラホール、
(06年12月2日および07年8月14日、NHKウイークエンド・シアター103CHのHV放送をS-VHSテープにD-VHSレコーダーのLS-3モードによりデジタル録画)

  7月号の第1曲は、二つのコンサートからファゴット協奏曲変ロ長調K.191とオーボエ協奏曲ハ長調K.314の2曲をお届けする。いずれも06年と07年に行われた札幌PCM音楽祭のキタラホールでの演奏会から抜粋してきたものである。06年のメイン指揮者はワレリー・ゲルギエフであり、彼の指揮でダニエル・マツカワ氏(フィラデルフイア管弦楽団奏者)によるファゴット協奏曲と、バレエ音楽「ペトルーシカ」およびチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されていた。一方、07年のメイン指揮者はリッカルド・ムーテイであり、マルテイン・ガブリエル氏(ウイーンフイル団員)によるオーボエ協奏曲と「運命の力」序曲、シューベルトの交響曲第9番が演奏されていた。
  ファゴット協奏曲を演奏するソリストのダニエル・マツカワ氏は、日本人を両親にアルゼンチンで生まれ、ジュリアードとカーテイス両音楽院に学び、19歳の時にカーネギー・ホールでデビューした逸材であった。PMFには1992年から3年連続して参加しており、05年から室内プログラム主任として活躍し、その経験からソリストを務めており、各楽章のカデンツアは、彼オリジナルな長大な技巧的なものを演奏していた。  一方のオーボエ協奏曲のマルテイン・ガブリエル氏は指導者としてPMFに登場しているウイーンフイルの首席奏者であり、お馴染みの方も多いと思う。今回もムーテイの指揮に乗って素晴らしいヴェテランの味をご披露してくれている。



   7月号の第1曲目は、ファゴット協奏曲変ロ長調K.191であり、明るく伸びやかな第一主題が第一ヴァイオリンで奏されて第一楽章が始まるが、直ぐ続いて第二主題が第一ヴァイオリンで現れ華やかなコーダになる。オーケストラは四本のベースで弦の人数が多く、ゲルギエフは指揮台なし、指揮棒なしのスタイルで、手に表情をつける穏やかな指揮振りであった。続いて独奏ファゴットが伸びやかに第一主題を歌い出し、最低音から最高音に推移したり、レガートからスタッカートへと変化したりファゴットらしい技巧を見せながら進行してから、おもむろに第二主題へとソロが続く。マツカワは自在に独奏ファゴットを操り、ソリストとして充分な安定した技巧を見せていた。そのまま独奏ファゴットが第二主題に突入し充分に歌ってから、ファゴットのソロが活躍しながら弦楽器と応酬し合う展開部に入っていた。フェルマータの後に始まる再現部では、トウッテイと独奏ファゴットとが交互に現れながら再現されていた。終わりに第一主題を変奏した長いカデンツアがあり、マツカワはいろいろな技巧を示すものの長すぎてやや間延びした感じがしていた。



   第二楽章は、冒頭が「フィガロ」の伯爵夫人のアリアを思わせる優雅なアンダンテ・マ・アダージョであり、弦の軽やかな伴奏にのったファゴットのほのぼのとした音色が実に印象的であった。続く第二主題では、独奏ファゴットに美しい二本のオーボエの伴奏もつけられて、ファゴットとオーボエが対話する瞑想的な響きが素晴らしく、これもとても印象的であった。展開部のないソナタ形式のせいか、全体がゆったりと自然に再現されていき、ソロとトウッテイとが交互に繰り返されて行き、しっとりとした雰囲気の楽章であった。ここでもカデンツアがあり、マツカワは調子に乗りすぎて長すぎ、いらいらさせていた。
  フィナーレでは軽やかにオーケストラで始まる舞曲的なメヌエット主題による「ロンド」テンポ・デイ・メヌエットとされており、このメヌエットのロンドテーマが繰り返し顔を出すが、ファゴットのソロが変奏曲のように次から次ぎに変化して登場する。再びオーケストラがロンド主題を奏でると、ファゴットのソロが繰り返し現れる。マツカワは軽快にソロをこなしていたが、終わりにごく短いカデンツアの後、自らソロでロンド主題を弾きだし、この楽章をひときわ華やかなものに仕上げ、最後はトウッテイで堂々と豊かに結ばれていた。



  曲が終わると嬉しそうに笑顔がほころび、指揮者と抱き合って喜び合い、周りのヴァイオリンと握手攻めであった。新人らしさを前面に出していたが、どうやらここにファゴットのソリストが一人誕生である。所属するフィラデルフィア管弦楽団で今後大いに活躍して欲しいと思った。


  第二曲目のオーボエ協奏曲ハ長調K.314は、ソリストのマルテイン・ガブリエル氏は指導者としてPMFに9年連続して活躍しているウイーンフイルの首席奏者であり、先生であるヴェテラン・ソリストが行う模範演奏とでも解釈できようか。




    第一楽章は協奏曲風のソナタ形式で書かれており、オーケストラで第一主題・第二主題が呈示された後、オーボエのソロが両主題を呈示し発展させていくスタイルであった。オーケストラと言っても弦5部と2本のオーボエとホルンであり、曲は第一主題が颯爽と軽やかにオーボエと第一ヴァイオリンで示されてから、第二主題が第一ヴァイオリンにより静かに表情をつけて呈示され、元気の良い終結句で主題の提示が終わっていた。ムーテイは、オーケストラの微妙な音の強弱を手の表情で操作するような仕草で、ご機嫌な様子で指揮をしていた。そこで独奏オーボエが装飾をつけながら登場するが、第一ヴァイオリンが美しく主題を提示している間、オーボエは高いハ音を4小節に渡って歌い続けて、そのまま独奏オーボエが16分音符の速いパッセージを奏して曲の主導権を握り、新しい第三の主題を提示し、何度も変奏し、発展させていた。ガブリエルのオーボエは、明るく伸びがあり、実に軽快にオーケストラを引っ張っていた。やがて一段落してから、第二主題がオーボエのソロにより提示され、次から次へと早いパッセージの経過部を経て、オーケストラの元気の良い終結句で、展開部に入った。
 短い展開部は第三の主題を独奏オーボエが何回か力強く繰り返すもので、ガブリエルのオーボエが独壇場で、早いパッセージの技巧を示していた。再現部では第一主題はヴァイオリンで再現され、第二主題は独奏オーボエで豊かに再現される型どおりのものであったが、独奏オーボエが絶えず主題を変奏しながら形を変えて活躍しており、軽快に一気にカデンツアまで到達していた。カデンツアでは二つの主題をそれぞれ変形しながらオーボエの特徴を高らかに示すもので、ガブリエルは技巧を駆使しながら簡潔に上手くまとめていた。






    第二楽章は弦楽器のユニゾンで優雅に流れ出すが、それを受けてオーボエが美しく主題を提示し美しく展開していた。第二主題は第一ヴァイオリンに独奏オーボエが掛け合って、実に優雅な響きをもたらし、ガブリエルがここぞともう一度繰り返しながら、第一ヴァイオリンと交互に歌い合っていた。独奏オーボエによる短い中間部を過ぎてから再現部に再び移行していたが、ここでは直ちに第二主題から入り趣を変えていた。ここでも短いカデンツアが用意されており、終わりは冒頭の主題により荘重にして優雅に締めくくられていた。
  フィナーレ楽章は、これぞモーツアルトと言えそうな飛び切り明るい主題が独奏オーボエで高らかに提示された。トウッテイで反復されると、オーボエとホルンに先導されて、独奏オーボエが新しい主題を次から次へと提示して軽快に流れていく。まさに独奏者ガブリエルの天国とも言えそうな華やかさを持って快調に疾走していた。この冒頭主題は、オペラ「後宮」のブロンテのアリアに転用されているが、この主題は結びのカデンツアの前・後にも再帰され、実に軽快に明るく締めくくられていた。
大変な拍手で演奏を終了したが、ムーテイは何ごとも生じなかったような淡々とした表情で挨拶をしていた。この演奏は、名人ガブリエルのさすがと思わせる熟達振りを見せた最高の演奏であったと言えよう。



     私はこのふる里札幌のPMFを大歓迎しており、一度、このキタラ・ホールにも、真駒内にある緑溢れる野外会場の方にも出かけてこの音楽祭を楽しんだことがあった。このキタラ・ホールは、私が勤めていたコンサルタント(現在、「ドーコン」と呼ばれている)が設計コンペで優勝したものが原設計になっており、担当の建築屋さん方がヨーロッパにも調査に行ったりして、苦労したことを聞かされていたので、とりわけ愛着があった。今回の「バッハへの旅」でライプチヒのゲヴァントハウス大ホールに行ってきたが、このホールに良く似ていた。ゲヴァントハウスは、メンデルスゾーンも指揮をしたドイツ最古の楽団であり、この建物は1981年に再建されたもので、見てきたばかりのメンデルスゾーン・ハウス(住家)が直ぐ裏手に位置していた。

  今回の報告は、このバーンスタインが設立したPMFの06年と07年の夏季合宿の最終成果をご披露するメイン・コンサートを収録し、モーツアルトの協奏曲の部分をまとめてご報告したものであったが、06年はゲルギエフが、また07年はムーテイが、それぞれ、特徴のあるプログラムにより、力感溢れる演奏を行っており、とても良い記録が出来た。NHKでは毎年このハイライトをハイビジョンで放送してくれているので、私はいつもこの放送を期待している。

(以上)(09/07/16)


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