(最新入手のDVD記録;リッカルド・ムーテイ指揮シモーネ演出の「ドン・ジョバンニ」)
9-6-3、リッカルド・ムーテイ指揮、ロベルト・デ・シモーネ演出、ウイーンフイル及びウイーン国立歌劇場合唱団、99年ウイーン芸術週間の「ドン・ジョバンニ」K.527、1999年6月26,27日、アンデア・ウイーン劇場ライブ公演、

−この映像はムーテイにとっては2度目の映像であるが、前作の音楽と舞台とが一体となった素晴らしい劇的な印象が強すぎたせいか、この映像は衣裳などに余分な面が多く、前作ほどの満足が得られず残念であった−

(最新入手のDVD記録;リッカルド・ムーテイ指揮シモーネ演出の「ドン・ジョバンニ」)
9-6-3、リッカルド・ムーテイ指揮、ロベルト・デ・シモーネ演出、ウイーンフイル及びウイーン国立歌劇場合唱団、99年ウイーン芸術週間の「ドン・ジョバンニ」K.527、1999年6月26,27日、アンデア・ウイーン劇場ライブ公演、
(配役)ドン・ジョバンニ;カルロス・アルバレス、騎士長;フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ、ドンナ・アンナ;アドリアンヌ・ピエチョンカ、オッターヴィオ;ミヒャエル・シャーデ、エルヴィーラ;アンナ・カテリーナ・アントナッチ、エポレロ;イルデブランド・ダルカンジェロ、ツエルリーナ;アンゲリカ・キルヒシュレーガー、マゼット;ロレンツオ・レガッツオ、
(09年2月、スタンダードオペラ20としてDVD発売、DENON、TOBA-80910、)

  この「ドン・ジョバンニ」の公演は、1999年6月にウイーンのテアター・アン・デア・ウイーン劇場で上演されたものである。演出はイタリアのロベルト・デ・シモーネであり、解説によると日本でも新国立劇場がこの演出で、2000年1月と2001年11月に上演した馴染み深いもののようである。この演出の特徴は、舞台造りが時代に合わせた伝統的なスタイルであるが、登場人物の全員の衣裳が登場する場面とともに、次々と衣裳様式が変わっていくところにある。たとえば、最初のドン・ジョバンニとレポレロは、古くさいスペイン風の格好をしているが、フィナーレの自由万歳のあたりでは革命期の状態であり、第二幕の墓場の場面ではロマン主義の時代を反映し、フィナーレの六重唱では限りなく20世紀に近づいているように見える。そのため、最初に見たときは常にクローズアップで顔と見較べなければ、間違えてしまうことになる。映像では心配はないが、1回見るだけのライブでは、余程注意しなければ戸惑ってしまうであろう。
  私はこのような凝った演出が果たして必要かどうか分からないが、一見したところではその変化に気を取られる余り、全体がそして音楽の方がおろそかになりがちであった。しかし、ムーテイの音楽作りは、序曲から威勢が良く、早めのテンポで引き締まっており、これが全体を通じて一貫して流れているように感じた。ドン・ジョバンニのアルバレスはこのホームページで初めてであるが、レポレロのダルカンジェロもオッターヴィオのシャーデも3度目の登場であり、お馴染みである。私の好きなキルヒシュラーガーがツエルリーナで活躍しており、じっくり見直してご報告したいと考えていた。



 ムーテイが登場して直ぐに二つの重苦しい和音が炸裂して序曲が始まるが、ムーテイは相変わらず精悍な表情でメガネなしで指揮をしていた。主部のアレグロでは弦が素速い動きで良く鳴り、ウイーンフイルの腕の確かさを確認しながら進み、序曲がオペラ流に終わって直ぐに第一曲がレポレロの歌で開始された。レポレロは変な分厚い服を着て、見慣れぬ大きな帽子を被って剣を握っていた。そこへドンナ・アンナとドン・ジョバンニが争いながら登場したが、二人とも貴族の着る大袈裟な服装であった。もつれ合いの挙げ句、ドンナ・アンナが倒された所に、娘を離せと大柄な父親の騎士長が登場し、二人は剣を交わすが勝負はあっと言う間について、父親は倒れてしまった。そこへドンナ・アンナとオッターヴィオが駆けつけるが、父は既に息を引き取っており、二人の二重唱が始まり、気丈なドンナ・アンナはオッターヴィオに父の復讐を誓わせて、アレグロで激しく歌われて大きな拍手を浴びていた。



 場面は変わって服装を変えて軽装で出てきたドン・ジョバンニとレポレロは、相変わらず変な帽子を被っていたが、「女の香りがする」と様子を見ていると、ドンナ・エルヴィーラが一人で登場する。何とその服装はズボン姿の貴族スタイルでゴテゴテの男装の麗人といった姿で、ドン・ジョバンニを見つけたら心臓を抉り出してやると物騒なことを歌っていた。ドン・ジョバンニがシニョーレと近づくと、何と自分を追ってきたエルヴィーラなので、相手をレポレロに任せて逃げ出してしまった。レポレロはカタログを見せながら貴女だけではないとその事情を歌い出すとこれが名調子で、エルヴィーラも驚いて耳を傾け、この大熱演に万雷の拍手があった。



  大勢の若者たちが集まってお祭り騒ぎをしていたが、可愛い花嫁姿のツエルリーナにださい農民風のマゼットも踊っていた。そこへ赤いリンゴを手にした格好の良い騎士と従者が登場して、主役の二人に上手いことを云ってツエルリーナを連れ去ろうとした。脅されたマゼットが仕返しに文句のアリアを歌うが、力ずくで二人になったドン・ジョバンニはツエルリーナを口説きだし、次第にその気にさせ、フォルテピアノの甘い伴奏も効いてか、結婚しようの言葉を合図に「手を取り合って」の二重唱が始まった。そして上気したツエルリーナが「行きましょう」となってデイープキスになった時に、突然、エルヴィーラが気品ある貴族風の衣裳に着替えて現れた。そしてツエルリーナにドン・ジョバンニは「目も口も嘘ばかり」と気付かせて、その風格ある姿で彼女を救い出した。


慌てたドン・ジョバンニが今日はついていないとボヤいているところに、黒い喪服姿に体を包んだドンナ・アンナとオッターヴィオが現れて、父の復讐のために協力してくれと依頼された。そこへ再びエルヴィーラが現れて二人にドン・ジョバンニを信用するなと云って四重唱が始まった。この歌の最後にドン・ジョバンニがエルヴィーラを追おうとして、二人に「アミーチ・アデイオ」と言った言葉で、ドン・アンナが自分を襲った男が彼だと気がついた。そして彼が犯人だと激しくアリアを歌い、またオッターヴィオも復讐を求めるドンナ・アンナの「心の安らぎを得るのはわが願い」と素晴らしいアリアを披露して、ふたりにそれぞれ凄い拍手が寄せられていた。



  場面が変わってドン・ジョバンニの「盛大な宴を催そう」という有頂天になって歌うアリアとツエルリーナがマゼットのご機嫌を取る甘いアリア「ぶってよマゼット」の名アリアが二つ続いた後に、フィナーレが賑やかに始まった。ドン・ジョバンニが開会を宣言し音楽が始まると、三人のマスクの人が「神よ、お守り下さい」と見事な三重唱を披露し、レポレロの案内で自由な参加を許され、踊りと歌で「自由万歳」となった。楽隊が舞台に登場してメヌエットが盛大に始まって上品な踊りが始まったが、やがてドイツ舞曲やコントルダンスも聞こえてきて盛り上がったところで、ツエルリーナがドン・ジョバンニに連れ去られ、暫くして「助けて!」の悲鳴で舞台は大騒ぎ。気がついて舞台を見ると、何とドン・ジョバンニがレポレロを犯人として捕まえて剣を突きつけていた。しかし、三人のマスクの人にお芝居だと見咎められ、厳しく二人は追求されると次第に小さくなって、やがて逃げ出してしまい閉幕となっていた。



  第二幕は殺されそうになったとレポレロが文句を言い出して始まったが、金貨4枚でコロリと変わり、エルヴィーラの召使いを口説くため服装まで交換してしまうサービス振り。ドン・ジョバンニが改心した素振りの歌で簡単にエルヴィーラが騙されて、変装したレポレロについて行くという三重唱の無理筋は演出家泣かせか。エルヴィーラの召使いに贈るドン・ジョバンニのカンツオネッタが素晴らしく、また続いて殴り倒されたマゼットを駆けつけたツエルリーナが実に上手な「薬の歌」で直してしまう楽しい場面が続いていた。そして、変装したレポレロが皆にばれて捕まってしまった六重唱のあとに、レポレロが洋服を脱いでお許しをと平謝りするアリアが続き冗長な感じであった。しかし、オッターヴィオが「私の愛しい人を慰めて」と歌うアリアが素晴らしく朗々と歌われ、続いてエルヴィーラがドン・ジョバンニに天罰が下って当然と「あの悪者は私を裏切って不幸にした」と諦めの気持ちを歌うアリアが素晴らしく、それぞれ客席から大変な拍手があった。



 場面が変わって教会の墓場か、騎士長らしき人の騎馬に乗った立像が月に照らされていた。レポレロがまたしても殺され掛けた話をし、ドン・ジョバンニがレポレロをからかって高笑いしていると、「その笑いも今宵限りだ」という声が響きわたり、二人はビックリ仰天する。誰かと振り返れば、馬に乗った騎士長の銅像があり、二人は二重唱で騎士長を食事に誘うと「行こう」と返事があり、驚きながらも怖くなって二人は退散した。
  一方、ドンナ・アンナとオッターヴィオが登場し、オッターヴィオが彼女を慰め一緒になりさえすればと自分の気持ちをレチタテイーボで伝えるが、ドンナ・アンナは「つれないなどとは云わないで」とアリアで自分の愛情を精一杯伝えて、後半では華麗なコロラチューラのロンドとなって歌われ、観衆から大変な拍手を浴びていた。



  さて第二幕のフィナーレでは、ドン・ジョバンニは自分の宮殿の一室で豪華なガウンを着て、くつろぎながら晩餐の食卓に着いていた。楽士たちが「コーサ・ラーラ」を奏で始め、続いて「イ・リテイガンテイ」に進み、マルツイミーノ酒が注がれて、ドン・ジョバンニは旺盛な食欲を見せていた。音楽がフィガロの「もう飛ぶまいぞ」になると、音楽に合わせてレポレロと呼び掛けてからかい始め、ドン・ジョバンニは上機嫌。そこへエルヴィーラが新しいドレスで現れ、最後のお願いに来たという。ドン・ジョバンニは驚くが、生活を改めろという話なので、始めから「女性万歳」などとからかって相手にしなかった。



 エルヴィーラが立ち去ろうとして悲鳴をあげ、見に行ったレポレロも大騒ぎしていた所へ、突然、序曲冒頭の二つの大音響と共に騎士長の石像が現れた。驚くドン・ジョバンニに対し晩餐に招かれたから来たと言う。そして今度は自分が招待したいが、お前は来るかという。ドン・ジョバンニが行こうと返事すると、その証しに握手しようとなり、握手をすると、石像の手は驚くほど冷たい。石像は今こそ悔い改めよというが、ドン・ジョバンニは最後まで拒絶し、手を離しても苦痛に顔を歪め、倒れ込んでしまう。石像が諦めて立ち去っても、苦しみ続けて家には煙が立ちこめて、ドン・ジョバンニはやがて大声を上げて煙と共に消え去ってしまっていた。そこにはレポレロが一人、何も分からずに取り残されていた。



  嵐が去って五人が駆けつけて、レポレロにドン・ジョバンニはどこへ行ったかと尋ねるがさっぱり要領を得ない。合唱は六重唱となりドン・ジョバンニが天罰でいなくなったことだけが知らされた。オッターヴィオがこれ以上悩ませないでとの問いには、ドンナ・アンナは1年待ってくれとの返事。エルヴィーラ、マゼットとツエルリーナ、レポレロは、それぞれの道を歩もうと決意し、最後に再び六重唱となって、悪人は去って平和が戻ったことを喜んで賑やかに終幕となっていた。



    最近は現代風の演出のドン・ジョバンニばかり見続けて来たが、このオペラは1999年上演の新しいものであったが、伝統的な時代感覚でありながら衣裳がいろいろなスタイルで現れて、その意味が良く理解できず戸惑うところもあった。しかし、ムーテイの音楽は序曲から一貫して精力的にぐいぐいと進められ、この音楽に引っ張られて劇が進行している感じすら受けた。

 私の「ドン・ジョバンニ」のデータベースでは、最初のスカラ座のレーザー・デイスク(8712)が最初の録音であり、次いでウイーンフイルとのウイーン歌劇場のダ・ポンテ三部作のCD(1991)に含まれていた。今回のウイーンフイルとのウイーン芸術週間の映像は、1999年6月26,27日、アンデア・ウイーン劇場ライブ公演であり、相当のタイムラグがあったが、誤解を少なくするため配役などを以下に表示して整理しておこう。



 私は初めてこのオペラの映像を見たカラヤン・ランペの映像とこのムーテイ1・ストレーレルのLDに当初から強烈な印象を持っており、共に薄暗い画面の中で、巨大な石像が登場し、石像の恐怖に断固として立ち向かうドン・ジョバンニの壮烈な最期にこのオペラの前例のない偉大さを感じ取っていた。そして、ムーテイがウイーンフイルと蜜月状態になった時期のウイーン国立歌劇場のCDムーテイ2では、スチューダーやヴァネス、シメルやレイミーなどワグナーやヴェルデイを歌いそうな力強い歌手たちを揃えて、壮大な力強いドン・ジョバンニを作り上げていた。これらに対して、今回のムーテイ3では、アルバレス、ダルカンジェロなどのラテン系歌手がムーテイの歌わせ方に合っており、音楽の内容面では良いのであるが、演出面で余分なものが付きすぎて、私自身はどうしてもこのオペラ全体を楽しむことが出来なかった。この劇の中味を余り深刻に考えず、衣裳の変化を楽しんだり、おかしな石像やそれに刃向かうドン・ジョバンニの一途な姿を面白がるような見方をすれば、それなりに面白いところが多いように思った。 

  ファイルに表を加えてみたら、表の位置が固定されてしまい、表を自由に配置できなくなったほか、文章の位置も自由に配置できなくなった。新たに入力し直すことは大変な作業なので、格好は悪いがこれで完成型にしたいと思う。お許し頂きたい。

    (以上)(09/06/28)


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名称未設定

ムーテイの「ドン・ジョバンニ」のデータベース
ムーテイ1(LD)ムーテイ2(CD)ムーテイ3(DVD)摘     要
収録年月1987〜8年1990〜1年1999年6月
劇場名ミラノスカラ座ウイーン国立劇場アンテ゛ア・ウイーン劇場
オーケストラスカラ座Oウイーン国立劇場OウイーンフイルO
演出者G.StrehlerR.de Simone
Don GiovanniT.AllenW.ShimellC.Alvarez
CommendatoreS.KoptchakJ.H.RooteringF.J.Seleig
Donna AnnaE,GruberovaC.StuderA.Pieczonka
Don Ottavio F.ArizaF.LopardoM.Shade
Donna ElviraAnn Murray C.VanessA.C.Antoacci
Leporello C.DesderiS.RameyI.d'Arcangelo
ZerlinaS.MentzerS.MentzerA.Kirchschlager
MasettoN.deCarolisN.deCarolisL.Regazzo