(最新入手のDVD記録;コリン・デーヴィスの最新の「レクイエム」)
9-3-2、コリン・デーヴィス指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団&合唱団による「レクイエム」K.626、

−このレクイエムは、大規模で充実しているドレスデン国立歌劇場管弦楽団と合唱団を、コリン・デーヴィスが、彼等のホームグラウンドのゼンパー歌劇場で、壮麗にオーケストラを鳴らす伝統的な方法でその力をフルに発揮させようとした演奏であり、デーヴィス特有の暖かな円熟味を感じさせる新録音であった−

(最新入手のDVD記録;コリン・デーヴィスの最新の「レクイエム」)
9-3-2、コリン・デーヴィス指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団&合唱団による「レクイエム」K.626、2004年2月11〜15日、ゼンパー歌劇場ドレスデンにて収録、
(ソリスト)ウタ・ゼルビックS、ベルナーダ・フィンクA、ステイーヴ・ダヴィスリムT、アラステア・マイルズB、
(09年2月11日発売、ドリームライフ、DLVC-8106) 

 3月号の第二曲は、コリン・デーヴィス指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団&合唱団による「レクイエム」K.626であり、2004年2月11〜15日に、ドレスデンのゼンパー歌劇場にて収録されたものである。「レクイエム」K.626については、2月号においてコープマンのピリオド奏法による演奏とスウェーデン放送合唱団による演奏をアップして、私のコレクションにある全26組のうち映像の12組みのホームページへのアップロードを終えて、完成宣言を行った数少ない曲の一つであった。皮肉なことに完成の宣言をした直後に新規のソフトが現れるという経過をたどったが、コリン・デーヴィスはこのHPでお馴染みのモーツアルト指揮者であり、安心して聴ける「レクイエム」として、コレクション上の重要な一曲として、早速取り上げることにした。



 一聴したところでは、ドレスデンのゼンパーオーパー歌劇場を使い、広い舞台を活用して、コントラバス4本の標準規模の歌劇場管弦楽団のオーケストラの後に階段状に5列の大合唱団およそ90人が位置しており、これらを舞台上でじっくりと壮大に鳴らす伝統的なレクイエムであった。デーヴィスの風格あるしっかりした指揮振りに乗って、ゼンパーオーパーの歌手たちや合唱団が手慣れた自分たちの舞台上で整然と歌う落ち着いた感じのする「レクイエム」であった。



 「イントロイトス」ではデーヴィスはゆっくりしたテンポで始め、バスクラリネットの音が実に明瞭に澄んだ音を出し厳かな序奏を奏したあとに、合唱団がバスから順に合唱が混然と始まり、深く弦の引きつるような伴奏に乗って進行していくが、エト・ルクス・ペで全員の斉唱となり、一瞬明るくなったように感ずる。ソプラノのソロがレクイエムの開始を告げるように朗々と歌われてから、厳粛な合唱が堂々と進み、後半部では二つのレクイエム主題による二重フーガとなり、悠然とした響きとなって堂々と進行していた。終わりに小休止のあと最後のフレーズをテンポを落として丁寧に終息していた。

 「キリエ」ではテンポは幾分早まり、男声合唱に続いて女声合唱が追いかけるように始まり、冒頭から壮大な二重フーガの形で早めに進行していた。大合唱にもかかわらずそれぞれの声部の重なり合いが明瞭であり、後半のキリエの大合唱も堂々として壮大に歌われて、合唱団の水準の高さを感じさせていた。ここでも、終わりにフェルマータのあとの最後のキリエ・エリースンをアダージョで、テンポを落として重々しく終結していた。






 「セクエンツイア」に入って、第一曲目は「デイエス・イレ」と叫ぶように歌う激しい勢いの大合唱で始まり、テインパニーがけしかけるように響き、弦が鋭くうねるように鳴り響き、女声と男声が交互に激しくぶつかるようにリズミックに進行していた。デイヴィスは大声で叫びながら「怒りの日」をむき出しに全身で激しい指揮振りを見せていた。





 第二曲の「トウーバ・ミルム」では、一転してトロンボーンの柔らかな明るい音色のソロが厳かに響いてから、バスがじっくりとトロンボーンを伴奏に朗々と歌い出し、一瞬、救われたような感覚になる。次いでテノールも明るく力強く歌い始め、アルトの順に続いたが、アルトは左端で歌っており、このような配列は初めてで驚いた。最後にソプラノが金髪をなびかせて高らかに締めくくるように歌いだし、最後は豊かな四重唱になって静かに終息していた。この曲はいつ聴いても心を落ち着かせてくれる曲であると思った。





 第三曲の「レックス・トレメンデ」では、激しい弦楽器とトロンボーンの付点音符の前奏の後に、「レックス」の大合唱が続き、デイエス・イレの再現のように響くが、ここではもっとリズムの激しさが特徴であった。デーヴィスはここでも歌いながら激しく指揮をしており力強く進行するが、最後には音調を急変させて、ソプラノの合唱で「お許し下さい」とばかりに、悲痛な声で祈るように歌われて、実に印象的に終えていた。





 第四曲は、四重唱で歌われる「リコールダーレ」。チェロとバスクラリネットによるしめやかな感じの前奏に続いて、アルトとバス、ソプラノとテノールとが順に厳かにゆっくりと歌い出す平穏な曲。しかし中間部からテンポがやや速まって非常に豊かな響きの深みのある四重唱となり、激情の溢れるレクイエムの中にあって一服の清涼感のある厳かな雰囲気を醸し出していた。



 第五曲の「コンフターテイス」では、ジャラン・ジャンジャン/ジャラン・ジャンジャンという全オーケストラの荒々しい伴奏で激しい男声合唱が雄叫びを上げるように歌い出してから、一転して救いを求めて悲鳴のように聞こえるソットヴォーチェの女声合唱が対照的に歌われ、そして始めから繰り返されて聴くものを呆然とさせる。その間に、間をおかず4声が一緒になって「死に際の苦しみを救ってくれ」と悲痛な叫びを上げ、激しく胸に迫るものがあった。そして切れ目なしに続いて第六曲の「ラクリモサ」がヴァイオリンの切々たる音で静かに始まる。デーヴィスは余り引き摺らずに冷静に淡々と一音づつ進め、合唱が少しずつクレッシェンドで次第に高まりを見せ、8小節を超えてさらに高まりを見せながら、終盤にバスクラリネットとトロンボーンが厳かに響いて、最後の燃焼に達していた。終わりのアーメンの合唱が実に厳かに結ばれ、起伏の大きかったセクエンツイア全体が締めくくられていた。ここで一息を入れて小休止のあと、続くオッフェルトリウムが始まっていたが、私のレクイエムはここで終了した。



 デーヴィスの演奏は、大規模で充実しているドレスデン国立歌劇場管弦楽団と合唱団を、ホームグラウンドのゼンパー歌劇場で、伝統的な方法でその力をフルに発揮させようとした演奏であり、デーヴィス特有の暖かい円熟味を感じさせるレクイエムであった。この曲には随処に緩急・強弱の変化を伴っているが、デーヴィスは常に中庸を得た指揮振りに徹していたようであり、聴くものには安心して落ち着いて聴けるレクイエムであった。
 合唱団は男女合わせて90人位の大規模なもので勢いがあり、レクイエムの難しい二重フーガなどを力強く歌いこなしていた。また、ソリストたちもいずれも初めての方々であるが、余裕たっぷりに朗々と歌っており、素晴らしい歌唱力を感じさせていた。

 このデーヴィスのレクイエムの映像で13種類目となった。このDVDは音声がPCMの2CHだけであるが、映像は新しいだけにハイビジョン並で、最高の出来映えと言っても過言でない。カラヤン・ベーム・バーンスタインの三大映像が音声・映像共に古さを感じさせるようになってきているので、それらに変わる新しいフルオーケストラの伝統的なレクイエムとしてこのDVDを推薦したいと思う。

 余談となるが、今回のドレスデン国立歌劇場管弦楽団と前回9-3-1のライプチヒ・ゲバントハウス管弦楽団の二つの旧東ドイツの伝統あるオーケストラをそのホームグラウンドで聴いてきたが、本年6月、加藤浩子先生のご案内の「バッハの旅」で私は初めて訪問することとなり、大層期待している。特に、ゼンパーオーパーの「フィガロ」と聖トーマス教会の「ロ短調」と「マタイ」を聴けることは最高であり、今から楽しみにしている。今回のDVDはオケや合唱団の顔まで良く見えてしまうので、DVDの学習効果がどう役立つか楽しみにしている。

(以上)(09/03/23)


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