(最新入手のDVD記録;ヘンヒェン指揮C.P.E.バッハ室内楽団のモーツアルト)
9-2-1、デイヴェルテイメント変ホ長調K.113(初出)、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466、(ピアノ;P.ヴラダール)、交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551、 ベルリン・コンツエルトハウスのライブ、06/11/13、

−ヘンヒェンの徹底した古楽器的な指揮法の下に、全員が起立して演奏するため、皆が一体になりやすい演奏形態を取っており、バッハの演奏を通じて学習した見事なアンサンブルの技法を、モーツアルトの各曲にも発揮させ成功させていた−

(最新入手のDVD記録;ヘンヒェン指揮C.P.E.バッハ室内楽団のモーツアルト)
9-2-1、デイヴェルテイメント変ホ長調K.113(初出)、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466、(ピアノ;P.ヴラダール)、交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551、 ベルリン・コンツエルトハウスのライブ、06/11/13、
(08年12月EUROARTS盤の大量発売、RBB-205508806、)

 2月号の第一曲目は、ヘンヒェン指揮C.P.E.バッハ室内楽団によるモーツアルト・コンサートであり、ベルリンのコンツエルトハウスで05年11月に収録された新発売DVDである。曲目は最初にデイヴェルテイメント変ホ長調K.113という珍しい曲であり、このHPでは初出の曲であった。二曲目はピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466で、ピアノはP.ヴラダールという若いピアニストが弾いていた。そして三曲目は交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551であった。この室内オーケストラの特徴は、モダン楽器で二台のコントラバスで合奏規模が構成されており、全員が立って演奏するという所にあった。このオーケストラと共に長く埋もれてきたC.P.E.バッハの作品を再生させてきた指揮者ヘンヒェンが、生誕250年に向けてのモーツアルトへの挑戦とも思われる演奏会であった。ここではバッハ作品で見せたと同様に、研究的なスタンスに基づいた古楽器的奏法を取り入れて、新しいスタイルで演奏されていたが、好き嫌いはあるものの私には好ましい新鮮な演奏のように思われた。彼らのモーツアルト演奏は、既に102年のブリリアントのCDのM全集のコンサート・アリア編に含まれていたし、モーツアルト週間で彼らのライブ演奏を聴いていた。



 このコンサートの最初の曲はデイヴェルテイメント変ホ長調K.113であり、明るい4つの楽章よりなるデイヴェルテイメントであった。第一楽章アレグロは短いながらソナタ形式で書かれ、全奏による明るいファンファーレのあとに弦楽器による踊るように軽快な第一主題がアレグロで始まり、後半は二つのクラリネットとホルンが応えるように進む。続く第二主題も小刻みする繊細な弦のあとに管楽器が明るく応えて軽快に進行していた。この室内楽団は立って演奏しているので、指揮者ヘンヒェンの動きに応じて身体を揺すりながらヴァイオリンを弾いている姿が目に入り、初めは落ち着かないが、踊るように軽快に進むときにはそのリズムが体に現れて、見る側も思わず自然に合わせてリズムを取って見ていた。
 短い展開部のあと再現部に入り、再び弦楽器と管楽器とが交互に合奏を繰り返しながら終息していた。素晴らしい開幕のアレグロ楽章であった。



 第二楽章はアンダンテであるが、二つのクラリネットがデュエットでチェロとコントラバスの低域の伴奏により穏やかに三拍子の主題を提示する明るい楽章。後半からホルンや弦が加わって美しいセレナーデ風のアンサンブルを提示していた。前半部も後半部も譜面通り、几帳面に繰り返しを行って優しく演奏していた。第三楽章は早いテンポのメヌエット楽章で、総奏で力強く進行するメヌエットに中間部では管楽器のファンファーレが入り、トリオでは弦楽器により早いテンポで同じ長さの合奏が続いて、軽快に素速く一気に終了していた。一方、フィナーレはクラリネットが明るく軽やかにおどけた主題を提示するアレグロ楽章で、続いて弦が軽快に第二主題を弾き始めるが後半にはクラリネットが相づちを打つように進む爽やかな楽章。これも短い展開部のあとに、再び軽快なアレグロが進み、爽やかに終結した。
 このデイヴェルテイメントは、楽器編成はシンフォニーと同じであるが、曲調は実に明るく伸びやかな娯楽作品であり、一見、協奏曲風な所もある快適な曲であった。ヘンヒェンはこの合奏団の名の通り、C.P.E.バッハの作品の第一人者のようであり、恐らくバッハの作品の中にはこのようなセレナーデ風の明るい作品の演奏を得意にしているのであろうと思われた。このDVDの解説に第一稿と書かれており譜面でも間違いないかチェックしているが、演奏者を見ると低域にファゴットが一人加わっていたのが、少し気になった。

 

 このコンサートの第二曲はピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466であり、このHPではこの曲は久し振りの登場である。ヘンヒェンとピアニストのステファン・ヴラダールが登場して第一楽章が直ちに開始された。喘ぐような不安な情調を示す第一主題が弦全体のシンコペーションのリズムで静かに始まるが、何とヴラダールが弾く低弦と同じピアノの音が良く聞こえ、面白い始まりであった。フォルテピアノの古楽器演奏ではピアニストが冒頭から参加することが良くあるが、恐らく小規模な室内楽団なので良く聞こえたのであろう。続いてオーボエとフルートによる美しい副主題が現れてオーケストラは淀みなく進行し経過部を経て提示部が終了した。そして独奏ピアノの美しい明快なアインガングがゆっくりと始まる。ヴラダールはこの主題を丁寧にクリアに弾き進み、続いて冒頭の重々しい第一主題を勢いよく弾き始め、不気味なリズムに支えられてピアノが細やかなパッセージで鍵盤上を駆けめぐる。続く副主題ではオーボエにピアノが美しく答えて繰り返し、やがて独奏ピアノが晴れやかな第二主題を初めて弾き始める。そしてピアノソロから木管に受けつがれてから、独奏ピアノは軽快に走り出し、技巧的なパッセージを繰り返しながら進行していた。ヴラダールのピアノはしっかりと弾かれておりオーケストラとも良く馴染んで明快であった。
 展開部ではアインガングの主題に始まり、第一主題の冒頭部が独奏ピアノにより力強く展開され盛り上がってから、再現部へと突入していた。カデンツアは恐らくヴラダールのオリジナルカルか、4つの主題を巧みに組みあわせた技巧的な響きを聴かせていた。続くコーダでもこのオーケストラはヘンヒェンの流麗な指揮の下に力強い響きを見せてこの楽章を静かに閉じていた。



 第二楽章のロマンスは私の大好きな楽章。ヴラダールの独奏ピアノで美しく始まるが、余り甘えず淡々として弾き進み、オーケストラに移っても早めのテンポで淡々と進んだ。やがて第二主題が独奏ピアノで現れるが、ヴラダールはここでも甘えずしかし一音一音丁寧に弾いており、繰り返し調になってから軽く装飾を付けて変化を見せていた。一転して中間部の一撃で始まる独奏ピアノによる嵐の部分では、木管の巧みな伴奏で独奏ピアノが鍵盤上を駆けめぐるが、映像では見事なピアノ技巧の見せ場になっており、迫力あるピアノが捉えられていた。嵐が治まって第一部の再現が始まると再び独奏ピアノは淡々としたペースに戻り、静かに終結していた。ヴラダールはこのHP初登場でモーツアルト週間などでも出遭っていない気鋭のピアニストであるが、この楽章を見てセンスに溢れた正統的なしっかりした新しいピアニストであるという確信を持った。  フィナーレでは威勢の良いロンド主題が独奏ピアノにより飛び出し、オーケストラが直ぐに主題を受けついでいくが、この楽章はがっしり出来ており、ロンド形式ではなく展開部のないソナタ形式か。再びロンド主題にピアノが入るとあとは独奏ピアノの独壇場。新しい主題が次から次へとピアノで提示され、オーケストラと交互に主役が替わり変化しながら先へと疾走する。カデンツア風のソロで一息ついてから、再び冒頭に戻って同じような経過でピアノが走り回り活躍していた。独自のカデンツアのあとでも独奏ピアノが技巧を発揮しており、威勢の良いフィナーレを飾っていた。
 終了すると大変な拍手でピアニストが迎えられ、人気のある協奏曲を見事に弾き上げたピアニストに惜しみない拍手が送られていた。



 このコンサートの第三曲は、交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551であった。最後部にテインパニーと二つのトランペットが加わって、第一楽章の冒頭の三和音が開始され、一息おいて再度三和音がくり返され、堂々と「ジュピター」を象徴する和音がフルオーケストラで響きわたる。ヘンヒェンは早めのテンポで進め、少人数ではあるが響きは厚い。オーボエとフルートが伸びやかに歌い継いでから第二主題が弦で細やかに提示され豊かに展開されて行き、一呼吸置いてからブッファ風の軽快な結尾主題に至るまで一気に進められて提示部を終了したが、ヘンヒェンはこの提示部を丁寧に繰り返していた。展開部では先の軽やかな結尾主題が早いテンポで様々に繰り返され、冒頭主題も力強く展開されて、再び冒頭の三和音が再現されていた。小規模な編成のオーケストラであるが、全員が体を揺するようにして力強く演奏しており、モダン楽器でありながら古楽器風な小気味よいテンポで軽やかに進むジュピターであった。ホールはベルリン・コンツエルトハウスという素晴らしく美しい大きなホールであったが、充分にこのホールを響かせているように見えた。



 第二楽章は静かに厳かな感じの主題が第一ヴァイオリンで提示され淡々と進むが、オーケストラの流れが厚く、重厚な感じがした。木管群も良く音を響かせていた。続く第二主題も重々しく弦がうねるように進行するが、この室内楽団のアンサンブルが透明で明るく32音符の流れも美しく聞こえる。ヘンヒェンはこの単純なソナタ形式の提示部を繰り返して丁寧に演奏していた。そして短いうねるような展開部を経て再現部でも厳かな主題が続き重々しく終結していた。一転して第三楽章のメヌエットでは、ヘンヒェンは早いテンポでメヌエット主題をリズミックに突き進め、トランペットが鳴り響き木管が一頻り歌い出す場面もあって、ここでも重々しさを保とうとしていた。トリオでも同じような早いテンポで、フルートのあとにオーボエと弦が合奏するユーモラスな場面のあとに第一ヴァイオリンと木管が合奏しながら流して趣を変えてから、再びリズミックなメヌエットに戻っていた。 フィナーレはド・レ・ファ・ミの四つの音から作られるアレグロの堂々たるフーガ主題に始まり、続く威勢の良い主題が繰り返されるごとに、次第に威勢良く高められていき、壮大なドラマを造り上げていく。ヘンヒェンは全身でこのオーケストラを盛り上げるように指揮をしており、オーケストラもこれに応えるように堂々たる響きを聴かせていた。この壮大なフィナーレがオーケストラ全体の圧倒的な力で盛り上がりを見せて終結すると、凄い拍手が湧き起こり、指揮者は何度も呼び出されていた。これは人々を揺り動かす音楽の素晴らしい力に会場は沸き返ったものと改めて感じさせた。

 

 このヘンヒェンと室内楽団の演奏は、ヘンヒェンの徹底した古楽器的な指揮法の下に、全員が起立して演奏するという皆が一体になりやすい演奏形態を取っており、バッハの演奏を通じて学んだ見事なアンサンブルの技法を、モーツアルトの各曲に適用させ、成功させていたと言えよう。この室内楽団は弦楽合奏に力強さと透明感があり、木管が音を良く響かせる特徴があって、良く学習された団体であった。最初のデイヴェルテイメントは、この楽団には最も良く合った室内楽であり、最後のジュピター交響曲では、フルオーケストラに比してスケール感では及ばないものの、大オーケストラにはない生きの良いきめ細かな音造りをしていた。ヴラダールのピアノと合わせて、楽しめたDVDであったと思う。

(以上)(09/02/04)


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