(アップを急ぎたかった収録ソフト報告;バレンボイム&WEDOの協奏交響曲K.297b)
9-11-4、ダニエル・バレンボイム指揮、WEDOオーケストラによる07ザルツブルグ音楽祭におけるモーツアルトのオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンのための協奏交響曲K.297b、変ホ長調、WEDO=West-Eastern Divan Orchestra、

−バレンボイム&WEDOのこのHP初登場であるが、4人の若いがなかなか切れ味の鋭い木管楽器ソリスト達を揃え、バレンボイムの暖かみのある指揮に恵まれて、充実した珍しい4管のための協奏交響曲の演奏を収録できた−

(アップを急ぎたかった収録ソフト報告;バレンボイム&WEDOの協奏交響曲K.297b)
9-11-4、ダニエル・バレンボイム指揮、WEDOオーケストラによる07ザルツブルグ音楽祭におけるモーツアルトのオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンのための協奏交響曲変ホ長調K.297b、WEDO=West-Eastern Divan Orchestra、
(ソリスト)Mohamed Saleh:Oboe、Kinan Azmeh:Clarinet、Sharon Polyak:Horn、Mor Biron:Fagot)
(08年9月28日、クラシカジャパンの放送をブルーレイデイスクBD-006にLPモードで録画)

  この映像は07年ザルツブルグ音楽祭においてユルゲン・フリム新芸術監督が呼んだWEDOオーケストラ(West-Eastern Divan Orchestra)の音楽祭への初登場であり、当時マスコミの話題を呼んだ三つのコンサートからの唯一のモーツアルト作品をご紹介するものである。このオーケストラは、ユダヤ系音楽家バレンボイムとパレスチナ系学者エドワード・サイード(03年に死去)の呼びかけにより、1999年ゲーテゆかりの地ドイツ・ワイマールで、イスラエルとアラブ諸国の若手音楽家で結成されたもので、中東の平和共存に向けて、お互いの音楽性を高めながら相互理解を深めることが目的であった。楽団名はゲーテの「西東詩集」に由来し、参加資格年齢は14〜28歳とされている。モーツアルテウムの大ホールで演奏され、三台のコントラバスをベースにした50人程度の中規模のオーケストラであり、4人の木管楽器ソリスト達は、若いがなかなかしっかりしており、まずまずの活気のある演奏を披露していた。



  写真でお分かりの通り、大ホールの舞台は楽団員で満席であり、4人のソリスト達は指揮者の周りを囲んでいるが、座っているので余り目立たない。しかし、この曲はCDで聴いてもソリストが何処で演奏しているか明確に分からないので、映像で見ながら聴く方が良く理解できる曲の一つである。第一楽章は協奏曲風のソナタ形式で出来ており、オーケストラで第一主題と第二主題が呈示された後に、独奏楽器を中心とした大きな第二提示部が展開されて行き、展開部・再現部と続く構成で出来ている。



  弦楽器のユニゾンで始まる第一主題が開始されたが、続いて第一ヴァイオリンとオーボエが掛け合いで始まる主題も特徴があり、行進曲風に進行した後、第二主題が第一ヴァイオリンで優美に現れる。直ちにオーボエとホルンに重ねられて堂々と進行していくが、このあたりは協奏交響曲と名付けられたように時には重低音を伴い協奏曲とは違う風格があった。バレンボイムは余り体を動かさず、ゆとりを持って流れるように指揮をしていた。やがて4つの独奏楽器がユニゾンで第一主題を開始するが、続く主題は4つの楽器のアンサンブルで進行し、実に美しく良く響く素晴らしい効果を挙げていた。再び冒頭主題がユニゾンで繰り返され、オーケストラに導かれて再び独奏楽器の組み合わせを変えて進行してから、第二主題がオーボエで現れ、クラリネットに受け継がれてさらに勢いを増し、堂々とした行進曲風のコーダに発展していた。独奏楽器はさすがにオーボエの出番が多く、クラリネットも良く活躍し、ファゴットとホルンも旋律的な出番がありながら、しっかりと低音を支えていた。   展開部ではファゴットとホルンが先の主題の一部を繰り返して始まり、4つの独奏楽器群が組み合わせを変えながら、技巧的な特徴を見せながら、繰り返し力強い主題の展開を行っていた。再現部は独奏楽器中心にコンパクトに纏められていたが、最後の4人のソリスト達によるカデンツアは長大であるが各楽器の出番が多く、舞台では若い4人が顔を揃えて、堂々と存在感ある演奏を示していた。



  この曲の第二楽章は4つのソロ楽器が実に良く歌い美しく絡み合って、まる夢を見ているような美しい楽章。初めは弦のユニゾンでゆっくりと第一主題が提示されるが、直ぐにファゴットが、そしてクラリネットが引き継いで歌い出し、オーボエに渡されると旋律的な動きになり、ホルン、クラリネットと歌い継がれて4つの独奏楽器の独壇場となり、互いに重なり合い絡み合いながら実に美しい情景を醸し出す。バレンボイムは何もせず4人に任せているような素振りで浸りきっていた。やがてオーケストラが顔を出し一息入れてから、第二主題がオーボエにより歌われ、クラリネットがこれを引き継いで、再び綿々とした4つの楽器の絡み合いが始まり、二つの主題が渾然一体となったような素晴らしい楽章となっていた。



  フィナーレは、すっかり趣を変えた主題と10の変奏曲であり、主題はピッチカートの伴奏に乗ってオーボエが陽気に主題を吹き出し、4つの独奏楽器の合奏で引き継がれたあと後半は、オーケストラが合奏で締めくくる面白い変奏テーマで、前半の4つの独奏楽器の部分がいろいろと変奏されて進められる形式の変奏曲になっている。第一変奏はクラリネットで始まりホルンとファゴットがこれを受け、交互に繰り返されていた。第二変奏はファゴットで始まり、途中で4管の合奏となり、これが繰り返される変奏であった。第三変奏はクラリネットとファゴットが活躍する変奏となり、他の2管は伴奏であった。と言うように四つの独奏楽器が互いに組み合わせを変えたり、テンポや技巧的なフレーズを追加して、飽きさせないように第10変奏まで続けられる変奏曲であった。映像で見ると、主役の楽器が絶えず変わり、調子の良い明るい曲なので、見ていて見応えのある楽しい楽章となっていた。



  このオーケストラは、管楽奏者に優秀な人を得たせいか、演奏機会の少ない面白い曲を取り上げたと思う。この日のコンサートでは、ソプラノ独奏によるシューマンやワグナーの歌曲集から数曲歌われたほか、ウエーベルンの管楽協奏曲やストラヴィンスキーの「兵士の物語」(7重奏曲)など管楽器が活躍する曲が多く取り上げられていた。   この中東の平和共存に向けたオーケストラ活動は、多忙な指揮者バレンボイムにとっては時間を要する大変な教育活動であったろうが、発足して10年にもなるようであり、メンバーも入れ替わって腕の立つ若い演奏家が育ってきたのであろう。時間の経過と共に人が育ち、当初の目的達成に向けて次第に理解が広がり、活動も盛んになるものと思われるので、われわれもこれからのWEDOの活動を注意深く見守りたいと思う。

(以上)(09/11/03)


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