(最新のDVD報告;ガーデイナーのノーベル・コンサートのハ短調ミサ曲K.427)
9-10-1、ガーデイナーとミア・パーションのノーベル賞・コンサートのハ短調ミサ曲K.427、王室ストックホルム管弦楽団、モンテヴェルデイ合唱団及びエリック・エリクソン合唱団、

−ノーベル賞受賞者を祝福する特別コンサートであり、貴賓席には王室関係者始め受賞者が勢揃いする中で、ガーデイナーの指揮で、スエーデンを代表するオーケストラ・合唱団・ソプラノのミア・パーションなどにより演奏された輝くようなハ短調ミサ曲であった−

(最新のDVD報告;ガーデイナーのノーベル・コンサートのハ短調ミサ曲K.427)
9-10-1、ガーデイナーとミア・パーションのノーベル賞・コンサートのハ短調ミサ曲K.427、王室ストックホルム管弦楽団、モンテヴェルデイ合唱団及びエリック・エリクソン合唱団、08年12月8日、ストックホルム・コンサート・ホール、
(09年05月、石丸電気にてDVD購入、Noveimedia  medeici arts 2057438)

 この映像は輸入盤であるので、レコード芸術では、残念ながら、掲載されなかったが、2008年12月8日ストックホルム・コンサート・ホールで開催された「ノーベル・プライズ・コンサート」のライブで、演奏されたドボルザークの交響曲第7番ニ短調作品70と ハ短調ミサ曲K.427の2曲が収録されており、ボーナスフィルムとしてノーベル賞受賞者のインタビユーが含まれていた。インタビユーは英語で行われ、日本人の受賞者の方は含まれていない。受賞記念コンサートだけあって、中央二階のロイヤルボックスには国王ご夫妻のほか王室関係者が、その隣の貴賓席には受賞者ご夫妻が大勢列席しており、日本人の方々もチラチラ写っていた。
 ここでは2曲目のハ短調ミサ曲K.427を取り上げるものであるが、ガーデイナーとしてはこの曲は91年12月5日の没後200年の記念日にスペインで演奏したライブに続く2度目の演奏で、これもノーベル賞受賞の記念日のライブ演奏である。前回はオーケストラはイギリス・バロック管弦楽団という古楽器オーケストラであったが、今回は地元の王室ストックホルム管弦楽団であった。共通なのはモンテヴェルデイ合唱団だけであるが、前回から17年も経っているのでメンバーは殆ど変わっているであろうと思われる。ソプラノに、今売れっ子になってきたご当地のミア・パーションが歌っているのが特徴である。久し振りに聴くガーデイナーの指揮振りは円熟しており、ソリスト達のソロ・二重唱・三重唱も満足でき、合唱団も威勢が良く、楽しめるハ短調ミサ曲K.427になっていた。



  映像ではオーケストラのチューニングの後に、突然、テインパニーが鳴り響き、オーケストラも客席も全員が起立する中で、王室の貴賓席に国王ご夫妻の他関係者が入場し、厳かにスエーデン国歌が演奏された。拍手の中でご夫妻が着席し、やがてガーデイナーが入場して、この記念すべきコンサートは、ドボルザークの交響曲から開始されていた。ハ短調ミサ曲は、この曲が終わって休憩の後に開始された。
  ガーデイナーの穏やかな顔つきが一変して、キリエが弦五部の前奏で静かに開始され、キリエの合唱がソプラノより順次歌い始められて、キリエ・エレイソンと合唱で歌い継がれてから、ミア・パーションがクリステ・エレイソンと呼び掛けるように朗々と歌い出した。低い声から高い声に至るまで美しい声が響きわたり、ひとしきり歌われた後、再びキリエがソプラノの合唱で歌われた。そして、壮大なオーケストラと大合唱により深い響きを聞かせてから、やがて静かにこの楽章を閉じていた。合唱団の中に3本のトロンボーンが別々に潜り込むようにして吹いているのがとても珍しかった。


  男声合唱団員の一人がグロリア・イン・エクシエルシスとグロリアの開始を告げると、フルオーケストラでグロリアの大合唱が始まり、アレグロ・ヴィヴァーチェで晴れやかに歌い出されてフーガになり、壮麗に大合唱が続けられた。ガーデイナーは自分でも歌いながら、目まぐるしく指揮棒を動かしていた。やがてエト・イン・テルラで急変してピアノになるが、再び髪の栄光を讃える晴れやかな大合唱となって、最後には再びピアノになって静かに結ばれていた。続くラウダムス・テでは弦五部の軽快な前奏で始まり木管も加わった後に、第二ソプラノが軽やかなテンポで明るく歌い出した。歌は次第にコロラチューラの部分を含んだ華麗なアリア風になり、威勢よく明るく歌われ、第一ソプラノに負けぬ技巧を見せており充分に存在感を示していた。続くグラテイアスでは女声のソプラノが二部に別れる5部合唱でアダージョで歌われる厳かな大合唱であるが、前後の曲とはがらりと変わって時にはバッハ風の不協和音も飛び出す重厚そのものの短い合唱であった。


  ドミネ・デウスでは弦五部の前奏による明るいアレグロで始まるソプラノの二重唱であるが、始めにミア・パーションが明るく歌い出し、次いで第二ソプラノが繰り返すように歌って行くが、やがて二人の斉唱となり、アニュス・デイと声を揃えてゆっくり歌う場面は神を讃える壮麗な美しい響きを持っており、まるで夢を見ているように美しかった。一転して、クイ・トリスでは二重の合唱団による重々しい八部合唱で進む荘重なラルゴであり、ガーデイナーは渾身の力を込めて一音一音力強く、自らも歌いながら進めていた。フォルテで進むところとピアノで消えるように進むところが交錯し、重苦しい受難を思わせるように、重々しく喘ぐように進んでいた。続くクオニアムでは、かなり長いオーケストラのアレグロの前奏で始まり、第二ソプラノ、第一ソプラノ、テノールの順に歌い出して三重唱となり、フーガ風に続いてひとしきり互いに競い合うように歌っていた。中間では第一ソプラノ、第二ソプラノ、テノールの順に歌い出しており、変形的に再現が行われ、後半ではフーガ風に重唱され伸びやかに明るさを見せながら、最後は素速いオーケストラで結ばれていた。グロリアの最後は、「イエスキリストよ」と歌われる全合唱と全オーケストラが参加するアダージョの重々しい序奏に続き、クム・サンクト・スピリトウスでは非常に力強い合唱となり、複雑な構成のフーガであった。最後にはアーメンとフーガで斉唱される壮大な合唱となり、素晴らしい迫力でグロリアの神への賛歌が歌われた。





  クレード・イン・ウーヌム・デウムと男声合唱団員の一人がクレドの開始を告げると、ガーデイナーの一振りでクレドと叫ぶ力強い合唱と弦の合奏が交錯する賑やかなアレグロで始まり、ソプラノが二部に分かれた五部合唱でリズミックに歌われていた。二部に別れたソプラノの歌声が良く響き、唯一なる神への信仰を高らかに歌う明るい歌声であった。続いてバロック・オルガンと弦の前奏のあとオーボエとフルートとファゴットによりエト・インカルナタス・エストの導入部が始められ、ガーデイナーが笑みを見せながらひとしきり歌わせた後に、おもむろにミア・パーションが美しい声を張り上げて歌い出した。ソプラノの明るい声がコロラチューラのパッセージを歌い出すとオーボエがこれを模倣し、彼女の抑制の効いた艶やかな歌声が会場に漲って素晴らしい効果を挙げていた。最後のカデンツアでは、木管三重奏とソプラノの声が何重にもこだまするように響き、この上ない美しさを醸し出していた。サンクトウスでは二部に別れた八部合唱で「聖なるかな」の大合唱が、トロンボーンなどオーケストラとの合奏でラルゴのゆっくりしたテンポで力強く、三度、厳かに歌われた。そして、ヴァイオリンの小刻みな伴奏に伴われて、八部合唱でドミナス・デウスが静かに歌われ続け、やがて荘厳なホザンナの大合唱が早いテンポで開始されて大きく盛り上がりを見せて終息していた。




  最後のベネデイクトスでは、弦と木管のアレグロの長い前奏に続いて、ソプラノから順にバスも加わったソリスト達の四重唱となり、ベネデイクトスの言葉が何回もソリスト達により四重唱で繰り返されてとても盛大に発展していた。ガーデイナーは笑みを見せながら軽快に進めていた。やがてホザンナに入り、カノンで繰り返される大合唱がフーガ風に歌われ、壮大に盛り上がりを見せてこのホザンナでミサは終結した。堂々たる終息の仕方で、一斉に拍手が湧き起こり、アニュスデイがなくとも言葉が分からないので、この荘厳な大合唱で十分に満ち足りた感じがした。




 さすが記念コンサートだけあって会場は騒然として大拍手が続き、舞台ではガーデイナーやソリスト達に花束贈呈が行われていた、やがて拍手は整然とした規則正しい拍手に代わり、全員が起立して拍手を送っていた。ガーデイナーが第二ヴァイオリンの女性のトップに花輪を渡したので、全員が喜んで拍手が盛り上がっていたが、やがて貴賓席の国王ご夫妻が立ち上がったので、さすがの盛り上がった会場も終息となった。ノーベル・プライズ・コンサートは初めての映像であったが、貴賓席に並んだ受賞者の姿も映像に時々映し出され、彼らの名誉ある受賞を讃えた実に心温まる演奏会であった。恐らく休憩時間などは、受賞者と一般市民との和やかな交換風景が繰り返されたに違いない。















  ガーデイナーのハ短調ミサ曲は、17年前のピリオド集団によるきめの細かい演奏と異なって、今回はモダン楽器の大オーケストラによる堂々たる力強い演奏であり、合唱団も手勢のモンテヴェルデイ合唱団の他にスエーデンを代表するエリック・エリクソン合唱団が加わった大集団であって、記念式典のフィナーレに相応しい実に迫力ある力感溢れる悠然とした演奏であったと言えよう。久し振りで見るガーデイナーの表情は顔つきが少しふっくらしており、神経質さが薄れて円熟味を増したような感じがし、それがどことなく指揮振りに現れているような気がした。

  スエーデンのスター歌手であるミア・パーションは、ストックホルム大学修了後に、ストックホルム王立歌劇場と契約し、ロンドンでグラインドボーン音楽祭やコヴェントガーデン歌劇場などで活躍している逸材で、既にフィオルデリージ役(8-7-3)パッパーノとのスザンナ役(9-3-3)などで評価を高めており、このホームページでは3度目の登場であった。今回のハ短調ミサ曲K.427の第一ソプラノ役は、最初のキリエでも、エト・インカルタナス・エストでも期待通りの立派な歌い方であり、グロリアのドミネ・デウスにおけるソプラノ二重唱もとても美しく、彼女の活躍がとても印象的であった。

(以上)(09/10/07)


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