8-8-3、95年ライプチヒ・オペラ劇場における「フィガロの結婚」、ウイルドナー指揮、ゲヴァントハウス管弦楽団、ジョン・デユー演出、1995年6月収録、

−現代風の奇抜な衣裳と現代人的な行動の早さなどに怖れを抱きながらこの舞台を見ていたが、繰り返して映像を確かめながら見ている時には、18世紀とは異なる時代の変化と斬新でスピーデイな舞台の動きを楽しみながら見ている自分に気が付いた−

8-8-3、95年ライプチヒ・オペラ劇場における「フィガロの結婚」、ウイルドナー指揮、ゲヴァントハウス管弦楽団、ジョン・デユー演出、1995年6月収録、
(配役)伯爵;T.メーヴェス、伯爵夫人;E.バートリ、フィガロ;R.ハイマン、スザンナ;G.ロスマニート、ケルビーノ;A.マルケルト、その他、
(106年09月05日クラシカジャパンのモーツアルト連続放送より、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。) 

 八月号の第三のソフトは、95年ライプチヒ・オペラ劇場における「フィガロの結婚」であり、クラシカジャパンでモーツアルトイヤー06年に「モーツアルトのいる毎日」でK番号順に放送を続けた際に初めて収録したものである。ウイルドナーがゲヴァントハウス管弦楽団を指揮し、ジョン・デユーが演出したもので、予想通り現代風の演出で、最初の場面が蝶ネクタイを締めた背広姿のフィガロが、パソコンを叩きながら5、10、20、と計算をしていたので、初めは驚かされた。しかし、95年6月の収録なので、時代を現代に置き換えただけで、最近の演出のようにリブレットを大幅にいじるような過度な演出は行われていなかった。ライプチヒのオペラ劇場の舞台は、ダ・ポンテ三部作など過去に収録済みであるがこのHPでは初めてなので、是非とも紹介しておきたかった。



 指揮者ウイルドナーが早足で登場し威勢良く指揮を始めるが、颯爽とした早いテンポで軽快に進む序曲であった。第一幕の舞台は、中央に大きな椅子を置いた部屋があり、ドア一つで右隣に伯爵の部屋、左側が奥さまの部屋になっていた。蝶ネクタイで背広姿のフィガロが部屋に入ってきてパソコンに向かい、歌いながら5、10、20...と始める。パソコン入力で何やら忙しそうで、洋服姿のスザンナが「私の飾りを見てよ」と言っても、顔を見上げられない。しかしスザンナから、ひとっ飛びで部屋に来れる旦那の話を聞いてフィガロは待てよと怒り出す。激しいレチタテイーボに続いて、第3番の「もし踊りを踊るなら」を隣の部屋で横になっている旦那の傍まで行って歌いはじめ、ドスの効いたアリアが堂々と歌われて伴奏のオーケストラも威勢が良く、これからどのように展開するか、激しすぎないか、少し心配であった。
 若造りをしたマルチェリーナに煽てられて、しっかりとバルトロが復讐の決意のアリアを歌った後に、マルチェリーナとスザンナが口喧嘩をし、スザンナが見事に追っ払ってしまった。やれやれとしたところに、野球帽でジャンパー姿の男っぽいケルビーノが飛び込んできた。そして「自分で自分が分からない」と歌いながらスザンナを抱きしめた所に、隣の部屋から旦那が現れたのでさあ大変。ケルビーノは大慌てで椅子の陰に隠れてしまう。



 伯爵がスザンナを口説き始めると、バジリオが部屋に入ってきて、奥さんの噂話をし始め、それに驚いた伯爵がバジリオと鉢合わせとなり、スザンナは仰天して失神してしまう。困惑するスザンナ、怒る伯爵、調子を合わせるバジリオの三者三様の面白い三重唱が続き、ケルビーノが見つかってしまって「女は皆こうしたもの」となった。スザンナは釈明一方の有様。そこへフィガロが仲間を連れてきて大合唱が始まった。フィガロの計略に気付いた伯爵は少し時間をくれと自分の部屋に逃げ出してしまった。しかし、そこでケルビーノの辞令を作成し、また現れて直ぐに赴任せよと命令する。ガッカリするケルビーノに対して軍隊生活を教育するフィガロのアリアが堂々と歌われて、第一幕がスピーデイに終了した。





 第二幕は伯爵夫人の豪華な居間で、伯爵夫人が「愛の神様」とゆっくりしたテンポで歌い出したが、声が良く歌い方が正調そのものであった。服装は現代風であるが、物語の内容面ではリブレットに忠実で安心して見て居れる。ケルビーノのアリアも男の子らしくしっかりと歌われたが、最後に椅子の上で夫人を抱きしめてしまうところが現代風。スザンナの着せ替えのアリアも明るく楽しく歌われ、ケルビーノに高いハイヒールを履かせて思わぬ大女になる所も面白い。伯爵が突然現れて大騒ぎとなって、ケルビーノとスザンナの慌てふためく小二重唱も楽しく、フィナーレに突入した。



 伯爵と夫人の押し問答の二重唱でフィナーレが始まると、ドアからスザンナが出てきたので二人はビックリし、平謝りの伯爵に対し女二人が優勢の三重唱となった。そこへフィガロが現れたので伯爵は手紙の件で責め立てる四重唱となり、アントニオがバルコニーから人が飛び下りたと訴える五重唱に発展した。辞令の印鑑もれの件がスザンナの機転で落ち着いたところに、マルチェリーナ、バルトロ、バジリオの三人組の伯爵の味方が駆けつけ、裁判の履行を求めたので形勢が逆転し、伯爵夫人、フィガロ、スザンナの三人組との七重唱になり、互いに言い争って大混乱のまま幕となった。



 第三幕は伯爵が考え事をしながら一人で歩き回っていると、スザンナが気付け薬を取りに姿を出し、「嘘をつきますがお許し下さい」と、伯爵と庭で会うことを約束する二重唱となった。しかし、伯爵は別れ際でのスザンナの言葉に不審を感じ、強い怒りのレチタテイーボに続いて「召使いの幸せを黙って見ているのか」と復讐を誓う激しいアリアを歌い拍手を浴びていた。そこへ判決が出たとマルチェリーナ、フィガロなどが登場し、フィガロは親の承認がいると異議を申し立てているうちに、右腕の絵文字の痣が決め手となって、バルトロとマルチェリーナとの間に出来た攫われた子であることが判明し、事態は一変して「マードレ・パードレ」の珍妙な六重唱になった。スザンナはマルチェリーナと抱き合っているフィガロに怒って「金けり」を喰らわせダウンさせるが、最後には「私ほどの幸せ者はいるかしら」と喜びを全身に表していた。



 伯爵夫人が着替えてきて、「あの幸せな時は何処へ」とゆっくりとしたテンポで有名なアリアを朗々と歌い、格調が高い本格的な歌い方で拍手を呼んでいた。続いてスザンナと早めのテンポの手紙の二重唱を歌い出し、「お庭の松の木の下で」と同じ旋律を一人ひとり復唱する様に美しく歌って楽しませてくれた。そこへバルバリーナがリーダーとなって、お屋敷の女の子達がいろいろな衣裳で集合し、伯爵夫人にお花を捧げていたが、その中に、何とケルビーノが女装しており、駆けつけたアントニオと伯爵に捕まってしまう。しかし、バルバリーナが怒る伯爵を得意の武器で堂々と宥めてしまうのも至って現代風に感じた。
 行進曲が始まってフィナーレの結婚式の場になるが、二人の娘達が花輪を持って歌う祝福の二重唱がとても美しく、続いて全員の踊りが始まり、スザンナが伯爵に上手に手紙を渡していた。この席では伯爵が「豪勢な祝宴をしよう」と格好良く挨拶し、伯爵を讃える皆の高らかな合唱で第三幕のフィナーレは終了した。



  第四幕は真っ暗な庭園の騒動 であり、バルバリーナが懐中電灯の光で可愛いアリアを歌いながら何かを探しているが見つからない。出てきたフィガロがピンを見つけてバルバリーナに渡すと、殿様から「松の木の封印だ」と言ってスザンナに返せと言われていることを喋ってしまう。続く二つのアリアは省略されたが、舞台ではフィガロがスザンナの浮気だと単純に思い込んでしまい、新婚初夜だというのにと大変な剣幕。そしてスザンナの裏切りを怒る本日一番の激しいアリアを歌った。一方のスザンナは自分を疑うフィガロをからかうために、「いよいよ時がきた」とピッチカートと木管のオブリガートに乗ってこれも最高のアリアを歌い、大変な拍手を浴びていた。
 フィナーレに入っても暗闇が続き、スザンナの新婚衣裳を着た伯爵夫人が現れると、ケルビーノがスザンナと思ってからかい付きまとう。それを見つけた伯爵は、ケルビーノを平手打ちにするが監視していたフィガロに当たってしまう。そして、夫人扮するスザンナをやっと捉まえて、喜びの余り指輪まで与えてしまう。それを見ていたフィガロは気が転倒して伯爵夫人に訴えるが、それが夫人に扮したスザンナであることに気づき、仲直りした後に、伯爵の目の前で二人でラブシーンを演じて見せた。伯爵は夫人の不倫をみて大声で皆を集め、謝る二人に大声で「絶対に許さない」といきり立ってしまった。そこへスザンナの衣裳の伯爵夫人が登場し、ダイヤモンドのあげた指輪もしていることに気が付いて、「奥方よ、許しておくれ」と平謝りとなった。この場面の最後の音楽は、実に真面目にゆっくりと歌われ、また伯爵夫人の言葉も実に丁寧であったので、二人を心配して見守っていた全員が安心して、全員が最後とばかり踊って楽しく終わる大団円となった。しかし、この幕切れのちょっとした騒ぎの中でも、伯爵とバルバリーナがいちゃついていたので、伯爵夫人が伯爵に平手打ちを喰らわすと言うもう一つの幕切れも用意されており、このスピーデイな現代劇を象徴したような笑いで締めくくられた。



 現代風の斬新な演出に怖れを抱きながらも終幕まで見終わったが、終わってみれば派手で奇抜な衣裳と現代人的な行動の早さなどに驚きつつも、外見だけの変更で、内容的には大きな変更がなかったので安心して見ることが出来た。そして、繰り返して映像を確かめながら見ている時には、18世紀とは異なる時代の変化とスピーデイな舞台の動きを楽しみながら見ている自分に気が付いた。ジョン・デユー演出の舞台は、「ドン・ジョバンニ」も「コシ・ファン・トッテ」も、S-VHSのアナログ映像であるが収録されているので、これからは余り敬遠しないで見ることにしたいと思う。
 指揮者のウイルドナーとゲヴァントハウス管弦楽団の演奏は、キビキビとしたテンポで全体を進行させていたが、重要なアリアでは実にゆっくりと歌わせたり、自在に緩急の変化を付けていた。この指揮者はオペラ全体の総監督的役割を果たしていたようである。

 歌手陣ではフィガロのハイマン以外は初めての方々であったが、フィガロは多少線が細い感じであったが歌唱力は充分であった。スザンナは実に良く気が利いて動き回り色気も充分で適役であった。伯爵も伯爵夫人も現代衣裳で高貴な人物を良く表しており、まずまずの出来映えで、アリアもそれぞれ歌いこなしていたように思った。ケルビーノのマルケルトは、本物の男の子のように充分に演じ歌っており、今後に期待を寄せたいと思った。マルチェリーナ、バルトロ、バジリオ、バルバリーナなども良く動き歌っており、これらの役の人々の活躍が揃ってこのオペラが初めて楽しめるものであることに気付かされた。ドイツの地方劇場も層の厚い歌手陣を揃えていて、それなりに十分楽しめたことに改めて敬意を表したいと思う。

(以上)(08/08/08) 

 
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