8-1-3、ニューヨーク・メトの世界同時配信(061230)によるレヴァインのオペラ「魔笛」K.620、ジェームス・レヴァイン指揮NYメトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団、ジュリー・テイモア演出、06/12/30、ライブ公演、

−レヴァインの「魔笛」は通算して三度目の映像であるが、回数を重ねるごとに演出や仕掛けが大規模になり、その反面、音楽が遠く散漫に響くように感じられた。しかし、これは今回のテレビ用圧縮版のため、ライブの迫力が削がれたようである。−

8-1-3、ニューヨーク・メトの世界同時配信(061230)によるレヴァインのオペラ「魔笛」K.620、ジェームス・レヴァイン指揮NYメトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団、ジュリー・テイモア演出、06/12/30、ライブ公演を編集したもの、
(配役)タミーノ;マシュー・ポレンザーニ、パパゲーノ;ネサン・ガン、夜の女王;エリカ・ミクローシャ、パミーナ;イン・ファン、ザラストロ;ルネー・パーペ、パパゲーナ;ジェニファー・アイルマー、モノスタトス;グレッグ・フェデリー、
(07/06/16、NHKBS103CHでS-VHSテープにD-VHSデジタル録画したテープを利用)


 08年1月分の第三曲目は、最新のオペラであり、06年12月30日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場から全世界に初めてライブで放送配信されたジェームス・レヴァインの「魔笛」である。いかにもメッツらしい大型の派手な舞台とベストの歌手陣を揃えた豪華極まる「魔笛」であり、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」と同時にNHKBS103で収録している。レヴァインの「魔笛」はこれで三度目で、メトでの映像は二度目であり、一見した感じでは、機械仕掛けの豪華な舞台やメルヘン風の衣裳や歌手陣の威勢の良い歌を聴いて楽しむもので、いかにも大らかなアメリカ的な「魔笛」であると感じさせた。




 放送が始まると直ぐにメトロポリタン歌劇場の総支配人という人が顔を出し、この映像では、オペラとテクノロジーとの結合によって、ナマのオペラをリアルタイムで劇場などに配信したオペラ史上初めてのことを行っている。そして放送を通じて、アメリカばかりでなく、カナダ・メキシコ・ノルウエー・英国・日本など世界で同時に楽しまれていると挨拶していた。次いでナレーターが登場し、簡単に「魔笛」のあらすじとユニークな登場人物たちを紹介していく。高齢になったジェームズ・レヴァインの姿が映り、序曲が華やかに開始された。ミュージカル「ライオン・キング」でトニー賞を受賞したという気鋭の女流演出家のジュリー・テイモアが顔を出し、舞台上でオペラの小道具を準備する人々や巨大な動物たちをテストする風景が写し出され、序曲が進行していった。しかし、早めのテンポであり時々音がカットされるのが気になったが、今回収録したこの映像は、演出のテイモアによりテレビ用に2時間に編集されたものであったので、非常に残念であった。




 真っ暗な夜の舞台をよく見ると第一曲が始まっており、10人ぐらいの黒子に担がれた巨大な蛇が勢いよく暴れており、日本の王子姿の若者を追い詰めて気絶させていた。しかし、仮面を被った三人の従女たちにいとも簡単に倒され、三人の勝利の三重唱が始まったが、舞台では英語が使われていた。三人を良く見ると笑った顔、怖い顔、驚いた顔の白い仮面であり、顔は黒塗りの黒衣裳で白いマスクしか印象に残らず、彼女らの歌も誰が歌っているかが分からないので余り耳に入らない。三人が倒れているタミーノを見つけ女王に報告に行っている間に、子供が喜びそうなトリの衣裳のパパゲーノが登場し、鳥刺しの歌を歌う。しかし、黒子が走り回って鳥の飛ぶ姿を表現する動作が目に入り、どうも落ち着かない舞台であった。三人の従女が再び顔を出し、王子タミーノはパミーナの手鏡を渡され第三曲の絵姿のアリアを歌う。やや上ずった声であったがゆっくりと力強く歌われ合格。続いてもの凄い雷と轟音とともに巨大な派手な衣裳をまとった夜の女王が登場し、落ち着いたテンポでアリアを歌った。声に合わせて衣裳が舞い、三日月の印を額にした女王が必死に歌い、アレグロに入ってハイも決まり、実に堂々としていた。もの凄い拍手で舞台は沸きに沸いていた。



 ム・ム・ムと歌うパパゲーノの登場で子供たちは大喜びであったが、三人の従女に頭が上がらない。彼女らのマスク姿も面白いが、彼女らの表情が分からず残念であった。二人は魔法の笛と銀の鈴を受け取り、巨大な鳥に乗った三人の童子に道案内されるが、これから何が始まるか、この巨大な鳥に瞠目しながら子供たちをワクワクさせていた。  パパゲーノはパミーナが捕まっていたモノスタトスの部屋に潜り込んでしまい鉢合わせして、互いに「悪魔だ」と言って驚き合い大笑いとなるが、続くパミーナとの二重唱は残念ながら省略されていた。一方のタミーノは、三人の童子に案内され、忍耐・誠実・勇気の三つの徳を忘れずに勇敢に戦えと諭される。神殿に着くといきなり問答が開始され、女王に騙されたと教えられ、パミーナを救うには仲間に入れと忠告される。「パミーノは生きている」という闇の中からの声に勇気づけられ、王子が笛を吹くといろいろな大きな動物たちが踊り出して大騒ぎ。パミーナとパパゲーナもモノスタトス一向に捕まるが、銀の鈴の音色が響くと、一行は踊り出してどこかへ行ってしまうので大笑いが続いた。





   遠くからトランペットの音が響きザラストロの入場が始まる。逃げ出そうとするパパゲーノに対し、パミーナは急に凛とした姿勢で「ウソはいけないわ」となよなよしたお姫様から一変して、ザラストロと堂々と渡り合うが、「母と私のどちらを取るか」との問いに答えられない。ザラストロの歌と衣裳はこの役を何度もこなしているパーペの独壇場に見えた。タミーノとパパゲーノがヴェールを被せられ、試練の神殿に向かうところで幕となった。



 第二幕は映像では続けて始まる。ザラストロが行進曲に乗って入場し、新しい二人が仲間として相応しいか試練をしようということになり、イシスとオシリスの神々に荘厳なコラール風のアリアを捧げる。試練が始まり、暗闇の中で雷鳴が二人を襲いマスク姿の三人の従女が誘いをかけるが、男達は沈黙を守り通す。モノスタトスがパミーナを見つけ悪戯しようとアリアを歌うが、夜の女王が登場し、パミーナに短剣を渡して、ザラストロを刺せと第二のアリアを力強く激しく歌う。女王の赤い長い羽が目立ち、声に声量があって高い声が良く伸びていた。ザラストロが登場し、タミーノと結ばれたいなら二人で試練を受けよとパミーナを説得するアリアが朗々として素晴らしかった。再び暗闇と沈黙の世界となり、魔法の笛と銀の鈴を三人の童子に手渡され、沈黙を守るよう諭される。タミーナの笛を聞きつけてパミーナが現れ、語らない二人に死より辛いとアリアを歌うが、悲しみに満ちてはいたが、歌が映えずに残念であった。パパゲーノに会いたいパパゲーナが、銀の鈴を鳴らし、願いのアリアを歌うと背の高い鶴が二羽が踊り出し、二番三番ではさらに大勢の鳥たちが踊り出すので、軽妙な歌と共に観客は大喜び。映像では初めて見る大サービスであった。最後に、婆さんが登場し、握手しなければパンと水の世界に行くと脅されて、握手した途端に若くて鳥の姿のパパゲーナに変身し、期待を持たせてフィナーレへと進んだ。





 二人の衛兵が守っている恐怖の門にタミーナが現れると、遠くからパミーナの待ってと言う声がする。話をしても良いかと許しを求め、二人は初めて「タミーノ、私の愛する人」「私のパミーナ」と再会した。そして、笛を吹きながら、手を携えて、ピッチカートの伴奏に乗って感動の二重唱となる。笛とテインパニーの響きに乗って、笛を吹きながら「火の試練」を乗り越え、「水の試練」にも耐えて、危険に打ち勝った二人は神殿へと導かれ、大変な拍手で迎えられていた。
 一方のパパゲーノは、幾ら探してもパパゲーナが見つからず、首を吊るしかないぎりぎりまで来たところに、三人の童子から銀の鈴を鳴らすよう知恵づけられ、実に感動的なパ・パ・パの出合いが始まり、音楽も良し二人の喜びもひとしおで、舞台を大いに沸かせていた。大音響と共に夜の世界が地下深く沈められた後に、イシスとオシリスの神への賛歌の大合唱が始まり、太陽の世界が暗黒の夜を征服し、パミーナとタミーナ、パパゲーノとパパゲーナの二組がザラストロの前で祝福され、大賑わいの中で舞台を飾った大きな動物たち、背の高い鳥たちも集合して、二組を祝福しながら大団円となった。




 素晴らしいカーテンコールの中で、指揮者レヴァインが舞台に上がり、レヴァインは演出者テイモアを舞台に上げて、大歓声の聴衆に応えていたのが印象的であった。出演者は、貫禄十分のザラストロを始め、夜の女王が素晴らしかった。また、歌も踊りも出来るパパゲーノの自由な動きが目を惹いた。タミーノは声やスタイルは良いのであるがやや固すぎ、パミーナには歌と演技にもう一息の頑張りが必要と思われた。
 この舞台はオペラの世界に子供たちを誘うことを狙いとした、良い意味でアメリカ的な楽天的なメルヘンの世界であった。広いメト以外の舞台では考えられぬ巨大で贅を尽くした出し物が多く、巨大な蛇、夜の女王の輝くような衣裳、大きな動物たち、童子を載せる巨大な鳥、背の高い鶴の集団など、子供たちを惹き付けるには十分な魅力があった。今回の映像では、これらの大仕掛けの出し物を全て収録しきれておらず、やはりオペラはライブで見なければと言うことになるのであろう。
 このホームページでは、レヴァインの「魔笛」は今回が初めてであるが、今回のレヴァインの「魔笛」は通算して三度目の映像であり、それらの全てを大切に見てきた私としては、回数を重ねるごとに演出や仕掛けが大規模になり、その反面、音楽が遠く散漫に響くように感じられたのは残念であった。今回のテレビ用圧縮版ではどうやら全貌を捉えておらないようなので、新しいDVDが発売されたら見直しをしなければならないと思う。

(以上)(08/01/28)


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