7-8-5、コンサートアリアによる愛の物語(オンブラ・フェリーチェ)、ヘルマン演出ラングレ指揮オーケストル・ドウ・ピカルデイ、
−(3)第三集 K.431(425b)、K.256、K.583、K.486a(295a)、K.374、K.621a(K.Anh245)−

制作;国際モーツアルト財団、2000年、(モンペリアOP、シャンゼリゼ劇場、リーユOPの共同製作)
出演者;ジーテン(S)、スッミッカ(S)、カンジェミ(S)、シュトウツマン(A)、ヤン・ブロン(T)、ドラホヴィッツ(Br)、(オペラ・コメデイ・ドウ・モンペリエ収録、CS736CH、

7-7-5、コンサートアリアによる愛の物語(オンブラ・フェリーチェ)、ヘルマン演出ラングレ指揮オーケストル・ドウ・ピカルデイ、 

制作;国際モーツアルト財団、2000年、(モンペリアOP、シャンゼリゼ劇場、リーユOPの共同製作)
出演者;ジーテン(S)、スッミッカ(S)、カンジェミ(S)、シュトウツマン(A)、ヤン・ブロン(T)、ドラホヴィッツ(Br)、
(オペラ・コメデイ・ドウ・モンペリエ収録、CS736CH、S-VHSテープでデジタル録画)


 本ソフトは、02年3月にクラシカジャパンで収録した「コンサートアリアによる世にも不思議な愛の物語(オンブラ・フェリーチェ)」と題する面白いモーツアルトのコンサートアリアのライブ演奏集であり、全17曲が収録されている。 当初に2-4-1として02年にアップしたときには、全17曲のうち、有名曲を4曲(K.272、K.316、K.513、K.612)のみを取り上げ、取りあえず第一集としてご報告してきたが、そのまま放置されてきた。  しかし、コンサートアリアのソフトが非常に少ないため、今回、このソフトを再視聴して、残りを2回に分けて、アップしようと考えた。このソフトは、ソプラノ3人、アルト1人、テノール1人、バリトン1人の6人により、交互に歌われていたが、ソプラノ3人の顔写真が撮れても、残念ながら顔と名前が特定できないという問題があった。
 第二集では、収録順に7曲(K.23、K.217、K.441、K.419、K.255、K.432(421a)、K.369)を取り上げたが、三人のソプラノの特定の問題は未解決のままであったので、後日に歌手名の識別を可能にするため、顔写真は曲別に添付するように心がけていた。

 第三集では、残りの標題の6曲(K.431(425b)、K.256、K.583、K.486a(295a)、K.374、K.621a(K.Anh245))を紹介することとしている。第二集と同様に、後日に歌手名を記載することが出来るように、各曲に写真を添付することにしていた。しかし、この作業中に、ふと思いついて、グーグルで歌手名で検索してみたところ、多くの検索物の中から、ArtistBioで顔写真付きの歌手紹介を見つけることが出来た。従って、この第三集からは、歌っている歌手の実名入りご紹介することにした。
 なお、文中の曲名などは、属 啓成著「モーツアルト」歌曲編のコンサートアリアを参考にした。 
 
1、K.431(425b)、テノール、レチタテイーフとアリア「あわれ、お、夢か、うつつか」、「あたりに吹くそよ風よ」、

 この曲は、1783年12月にウイーンで作曲され、同月22日と23日に宮廷劇場で開催された退職音楽家協会の慈善演奏会で、「後宮」のベルモンテ役を歌ったアダムベルガーが演奏したという記録がある。このプログラムでは「ロンドー」と記されており、また父宛の手紙にも同じ表現があるが、この曲は形式的に見てロンドとは言えず、この時歌われた曲がこの作品と断定する根拠にはならないようである。

 このレチタテイーフとアリアのテキストは、どのオペラから取られたか、誰の作詞かなどは不明である。その内容は、愛人と別れて死に向かう絶望的な男が、陰惨な下界に達して、亡霊どもに地獄の門を開けろと歌うものである。
 レチタテイーボでは、哀れな私、これは夢を見ているのか現実か、自分はただ一人、いよいよここで果てるのかと嘆き、地獄の扉を開けよと叫ぶ。これに続くアリアでは、 「あたりに吹くそよ風よ、わが愛しい人にこの溜息を届けてくれ」とアンダンテ・ソステヌートで歌う。後半部は、アレグロ・アッサイになって感情は高まりを見せ、絶望感と悲痛さを増して「まわりの無数の亡霊とその声が私を悩ませる。何たる恐怖。何たる残忍な運命か」とその恐怖を歌っていた。 
 テノールのヤン・ブロンは、絶望的な心境をレチタテーボで歌い、ゆっくりしたテンポで「この溜息を届けてくれ」と強く歌い、終わりに速いテンポで助けを求めるようにこの不気味な激しい曲を歌っていた。

 

2、K.256、テノール、ブッフォ・アリア「クラリーチェは、いとしのわが妻に」、

 続けてテノールのためのブッフォ・アリアがもう1曲。1776年9月ザルツブルグでテノール歌手パルミーニのために作曲された。ピッチーニ作曲のブッフォ・オペラに挿入するために書かれたとされる。
 筋のあらましは、守銭奴のテイモテオの息子レアンドロは、園丁の娘ラウリンダを愛し、彼女の兄ファッチエンダ大尉はレアンドロの妹クラリーチェに求愛している。このアリアは、大尉がクラリーチェの父テイモテオに、自分の学識教養を吹聴し、未来の妻クラリーチェの美点を途方もない能弁の早口でまくし立てるアリアである。始めに大尉は、「クラリーチェは、いとしのわが妻になる人、それは...」と立て板に水の調子でしゃべりまくるので、たまりかねたテイモテオが「もっとゆっくり」とレチタテイーボで頼むが、彼は構わず、相変わらずの能弁を続ける。
 旋律らしい旋律もなく、ただ自分の格好良いところを威勢良く見せたい一心の典型的なブッファ・アリアであり、ヤン・ブロンは見事にこの早口のアリアをこなしていた。


3、K.583、ソプラノ、アリア「私は行く、だがどこえ?」、

 この曲は、1789年10月にウイーンで、ソレールのオペラ「情け深い無骨者」の挿入曲として作曲されたもので、「コシ」のドラベラを歌ったルイーズ・ヴィエヌーヴのために、前曲のK.582とともに書かれている。テキストの作者は、ダ・ポンテとされている。

  アリアの内容は、ルチラ夫人の夫ジョコンドは日頃機嫌が悪く、その原因は彼の仕事が上手くいかない悩みにあった。彼は債権者たちから厳しく責められて、気まぐれで無骨男の叔父に助けを求めようとするが、ルチラはその事情を知り、夫を不幸に追い込んだ責任が自分にもあったことを感じて、その苦悩を訴えるものである。

 曲は始めに絶望感を持ったアレグロで、早足で「私は行く、だがどこえ?」と歌われていくが、後半にはアンダンテ・ソステヌートに変わり、悲しみに満ちた沈痛さを持って、「私から迷いを取り去ってください」と祈るように歌われた。ソプラノ歌手スツミツカの堂々たる歌いぶりが目立っていた。





4、K.486a(295a)、ソプラノ、レチタテイーフとアリア「もう沢山、あなたの勝ちだ」、「あ、私を捨てないで」、

 この曲は、1778年2月にマンハイムにおける3曲のアリアの最後の曲で、マンハイムのフルート奏者ヴェントリンクの妻ドロテアの求めに応じて書かれたとされる。歌詞はメタスタジオの「捨てられたデイドーネ」の第二幕第四場から取られているが、これを選んだのも夫人とされる。手紙では、このアリアの叙情豊かな美しさに、夫人は驚喜していたと書かれている。 

 レチタテイーボでは、デイドーネが、自分はこれほど愛しているのに、それを裏切って自分を捨てることがどうしてできようかと嘆き、さらにアリアのアンダンテイーノでは、「あ、私を捨てないで、わが愛しいあなた」と歌われ、中間で4小節の短いレチタテーボで「あ、私を捨てないで」を反復して、アリアが再現していく。アロイジアの曲を得意とするハイソプラノ歌手のジーデンが歌っているが、彼女には容易に歌える曲に見えた。


5、K.374、ソプラノ、レチタテイーフとアリア「あ、来たれわが胸に」、「天はいま、あなたを私に」、

このソプラノのためのアリアは、1781年4月にザルツブルグの大司教コロレド伯の本家(ウイーン)でブルネッテイの演奏によるK.373とK.379(いずれもヴァイオリンの曲)とともに演奏されたとされる。このアリアは、ザルツブルグの宮廷歌手のカストラートのチェッカレリの声に合わせて作曲され、本人により初演されたが、同夜の演奏でアンコールされたことが父宛の手紙で書かれている。

 このアリアのテキストは、ジョバンニ・デ・ガメラのリブレットによるパイジェッロのオペラ「蒙古のシスマノ」の第三幕第七場のテキストと一致している。蒙古の皇帝シファーチェとペルシャ王シスマノとの戦いで、シファーチェが勝利をおさめて凱旋する。待っていた愛人のゼミーラにそれを告げれば、彼女はそれは過ぎた苦しみと今再会の喜びをこのアリアで答えるものである。 

 このアリアはロンド形式で書かれており、ロンド主題は「天はいま、あなたを私に返してくださる。」と歌われ、前後3回現れ、穏やかで叙情性を持ったアリアである。ソプラノ歌手はヴェロニカ・カンジェミであり、カストラートの曲と思えない音域の幅が大きくない曲であった。
 




6、K.621a(K.Anh245)バス、アリア「私は別れていく、お、いとしき人よ、さらば」、

 自筆作品目録に記載されていないので、真作かどうか疑義のある作品である。しかし、現存する自筆譜は全体としてモーツアルトのもので、コンスタンツエの証言と異なっている点にも問題がある。この曲は1791年9月に「テイト」の初演に訪れたプラハで書かれ、ウイーンに帰る直前に、別れを惜しんで短い時間に書き上げたものとされており、別れの曲として演奏される機会が多く、ここでも最後の別れの曲として使われている。 

 この曲は、アリエッタともカヴァテイーナとも呼ばれる短い小さなアリアで、作詞者は不明であるが、その内容は、愛人と別れなければならない辛さを歌ったものである。 アリアはアダージオで、「私は別れていく、お、いとしき人よ、さらば」と歌われ、全体をもう一度繰り返してから、「アッデイオ、アッデイオ」で繰り返して終わる。感傷的で単純な中で、深い叙情を訴える曲である。

 ここでは、始めに道化役のピアノと歌による前奏があり、その後アルトのシュトウツマンがオーケストラの伴奏で厳かに歌っており、このコンサートアリア集の最後を飾る「アッデイオ」の、きめ細かく情感のこもった歌となっていた。

(以上)(07/08/25)



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