7-8-3、クラシカジャパン「モーツアルトのある毎日」第15回、
フェルナーのピアノとスダーン指揮モーツアルテウム管弦楽団のピアノ協奏曲第23番イ長調K.488(1998)、およびバレンボイムとベルリンフイルによる弾き振りのピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491(1988)

−若いフェルナーのピアノの打鍵が鋭く鋭角的に響き、ピアノのパッセージの粒だちが美しいイ長調協奏曲K.488と、また、バレンボイムのじっくりと弾き込んだ見事な独奏ピアノと弾き振りによるベルリンフイルの弦や管とのアンサンブルがこの上なく美しいハ短調協奏曲K.491−


7-8-3、クラシカジャパン「モーツアルトのある毎日」第15回、
フェルナーのピアノとスダーン指揮モーツアルテウム管弦楽団のピアノ協奏曲第23番イ長調K.488(1998)、およびバレンボイムとベルリンフイルによる弾き振りのピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491(1988)、

(06年09月04日、クラシカジャパンCS736の放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)


 8月号の第3番目は、クラシカジャパンの「モーツアルトのある毎日」第15回のピアノ協奏曲のシリーズからの映像であり、第1曲がイ長調のピアノ協奏曲第23番K.488である。このHPでは初登場のフェルナーという若いピアニストがスダーン指揮モーツアルテウム管弦楽団と協演する1998年のモーツアルト週間における映像である。また。第2曲は、バレンボイムとベルリンフイルによるピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491であり、1988年に後期の一連の弾き振りのピアノ協奏曲シリーズとして収録されたものである。  両曲とも既に何曲かアップしてきた名曲であるが、それなりに楽しめる新旧ピアニストによる新しい映像が加わりコレクションが充実してきた。

 ピアニスト、テイル・フェルナー(Till Fellner)を検索すると、1972年ウイーン生まれで、1981年ウイーン音楽院で学び、1993年クララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝と出てくる。CDもいろいろあり、バッハの平均率ピアノ曲集第1巻を入れていたり、モーツアルトの協奏曲では19番と25番をヤニツエックとカメラータ・アカデミー・ザルツブルグと協演しており、どうやらモーツアルト週間では常連のピアニストになっているようだ。今回のイ長調のピアノ協奏曲第23番K.488演奏は、1998年のモーツアルト週間のスダーン指揮、トマージのコンサートマスターのモーツアルテウム管弦楽団との協演で、とても落ち着いた雰囲気の中で、しっかり弾かれたまずまずの好演奏という印象を得た。





 第一楽章は初めにオーケストラが第一・第二主題を続けて提示する協奏風ソナタ形式で、スダーンは例によって両手を上げ体を上下に揺すって早めのテンポで小刻みな指揮をしていた。オーケストラがひとしきり主題を提示した後、独奏ピアノが第一主題をなぞるように弾き始め、さらに自由な形で反復しながらオーケストラと協奏していくが、フェルナーのピアノはとてもクリアで、速いパッセージが美しい。続く第二主題もピアノで提示され、ヴァイオリンとピアノとの掛け合いの部分を経て、再び速いパッセージのピアノが続き盛り上がりを見せる。展開部では新しい主題が登場するが、オーケストラとピアノと木管でそれぞれ反復され、最後にはピアノの速いパッセージに移り、長身のフェルナーは常に落ち着いて主体的に主導していた。再現部ではフェルナーのピアノが常に登場しており、カデンツアでも技巧的な見事なパッセージを披露していた。





 第二楽章はゆっくりしたシチリアーノのリズムに乗って独奏ピアノがメランコリックにゆっくりと弾き始め、オーケストラとフルートに渡された後ピアノが主題を変奏し始める。さらに木管と第一ヴァイオリンにより新しい主題が提示され、ピアノが模倣しながらフォローし、いつのまにか初めの主題に戻るが、フェルナーのピアノが一音一音クリアでありとても美しい。中間部のクラリネットの伴奏の上にフルートが提示する新しい主題は、ピアノにより反復され、続いて木管とピアノの掛け合いが続くが、終わりのピッチカートの伴奏でピアノがゆっくりと進行する部分はこの上なく美しい。
 フィナーレは独奏ピアノが軽快に飛び出すロンド主題で始まるが、この主題が再現されるまでに、新しい主題がピアノ、木管、ピアノと次から次へと速いテンポで提示され、ピアノが常に先行する形で進行し、ロンド主題が登場して一息つく。しかし、一転して再びピアノによる見事なパッセージが始まり、ピアノの分散和音に乗ってクラリネットが新しい主題を提示しピアノがフォローするなど、目まぐるしい変化が続き、最後に再びロンド主題が登場して、華やかに力強く盛り上がってこの長い楽章が終結した。



 フェルナーのピアノの音は、鋭角的に打鍵が鋭く響き、この曲に多いピアノのパッセージに粒だちを与えていた。また、フルートとクラリネットが随処で顔を出し、ピアノと弦と木管とのやり取りが美しく、この曲を盛り上げていた。曲の終了とともに大変な拍手が沸き起こり、フェルナーは何回も呼び出されていたが、モーツアルト週間ではよく見られる暖かいグロッサーザールの風景がここでも再現されていた。



 第2曲は、バレンボイムとベルリンフイルによるピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491で、第一楽章はユニゾンで開始されバレンボイムは立ち上がって指揮をしていた。様々な動機を含んだこのハ短調の暗い主題は、反復され部分動機が展開されてから再びオーケストラで現れた後に、独奏ピアノが美しいアインガングで登場し、続けて第一主題をピアノとオーケストラで協演しながら提示していく。第二主題は変則的にピアノで呟くように現れ、オーボエが反復し、ピアノが速いパッセージで駆けめぐるが、バレンボイムの技巧が見どころで、更にフルートとピアノによるパッセージが冴え渡り盛り上がりを見せて展開部へと移行する。華やかで緊張感のある展開部でもピアノが技巧的な素早いフレーズで展開させつつ管弦楽と掛け合いながら複雑な冴えを見せていた。再現部ではピアノが活躍しながら型通り各主題を再現してバレンボイム独自のカデンツアを経て結ばれたが、終わりのピアノによる分散和音がことのほか美しかった。



 ピアノで始まる優しさに満ちたラルゲットでは、弦楽器と木管が掛け合い風に穏やかに進むが、ピアノも加わって美しく進行する。この主題はロンド形式のロンド主題であり、初めのエピソードはオーボエとファゴットで始まり、ピアノと弦楽器も加わって、三者が対話風に展開された。再び美しいロンド主題に戻った後、現れた第二のエピソードはクラリネットとファゴットで開始され、やはりピアノやオーケストラに渡されて再びロンド主題に戻っていく。可憐なロンド主題やエピソードに現れるバレンボイムのしみじみと歌うピアノの響きがことのほか優しく聞こえ、心に深く刻まれたように思った。



 フィナーレは一転して変奏曲。バレンボイムが立ち上がって指揮をするオーケストラの賑やかなアレグレットで早めのテンポで華やかに主題が提示された。第一変奏は独奏ピアノで始まり早くも技巧的なパッセージで変奏を進める。第二変奏は木管で始まり、ピアノが素早いパッセージを繰り返していた。第三変奏は付点リズムの力強いピアノの和音で始まり、その後フルオーケストラで盛り上がりを見せていた。続いてはクラリネットにより新しい主題が登場しピアノがこれに習って変奏する。第五変奏は再び主調に戻って、ピアノによりポリフォニックな技法により処理されていた。続いてはオーボエにより新主題が提示されピアノがこれを反復し変奏していた。第七変奏は初めの主題がオーケストラで登場してピアノがこれを彩り、短いカデンツアがあって、最終変奏に入りピアノによる新しいコーダ風のフレーズが示され、そのままコーダに入って賑やかに曲を閉じた。ピアノと弦楽器と木管とが互いに持ち味を発揮した変奏曲であった。

 クラシカジャパンによる「モーツアルトのある毎日」というシリーズによるK番号順の番組で、二つの後期の円熟したピアノ協奏曲を聴いてきたが、いずれも素晴らしい演奏でこれらの名曲を楽しむことが出来た。第一曲目のモーツアルテウム管弦楽団では、来日してお馴染みになっているコンサートマスターのトマージが元気な姿を見せていた。また、第二曲目のベルリンフイルでは、先月聴いた第22番変ホ長調K.482と同様にクラリネットが活躍し、ご存じのカールライスターが顔を見せていた。このようにご贔屓の奏者の演奏を楽しむことが出来るのも映像を見る楽しみの一つであり、演奏の付加価値を高めるものとなっている。

(以上)(07/08/11)


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