ラテン語喜劇「アポロとヒアチントウス」K.38、ヨーゼフ・ヴァルニヒ指揮、モーツアルテウム大学交響楽団、演出;ジョン・デユー、2006年ザルツブルグ音楽祭、

−かって11歳の春にザルツブルグ大学の依頼により作曲された曲が、時代を経て、同大学のオペラ科の門下生たちにより再演された意欲に満ちた舞台−

7-7-4、モーツアルト生誕250年「Mozart 22 DVDシリーズ(その12)」、
ラテン語喜劇「アポロとヒアチントウス」K.38、ヨーゼフ・ヴァルニヒ指揮、モーツアルテウム大学交響楽団、演出;ジョン・デユー、2006年ザルツブルグ音楽祭、

(配役)●オエバルス;マクシミリアン・キーナー、●メリア;クリステイーナ・カルク、●ヒュアキントウス;エカテリーナ・トレチャコヴァ、●アポロ;アニヤ・シュロッサー、●ゼピュロス;アストリート・モニカ・ホーファー、●司祭;ノルベルト・シュタイトル、
(07年3月21日、ユニバーサルGRAMMOPHON DVD-UCBG-1196、市販のDVD使用)

  第四曲目は、M22シリーズの第12番目のラテン語喜劇「アポロとヒアチントウス」K.38をお届けする。この曲については、シュミットガーデンとテルツ少年合唱団のCDとLDを持っており、映像としては2作目である。今回の音楽祭の映像は、ザルツブルグの皆さんによる演奏で、このグループによる「第一戒律の責務」K.35がとても面白かったので、期待していた。テルツ少年合唱団のものは、やはり少年たちの演奏であったので、もう少し年齢が上の音大生たちに歌って欲しかったという思いがあったが、今回の舞台はまさにそのような人達によるものであったので期待が深まった。



 この曲は1767年、11歳の春にザルツブルグ大学の依頼により作曲され、5月13日に同大学の講堂で学生たちにより上演されたという。この06年の音楽祭では、かってこの曲が初演された大学講堂で上演されたが、現代の講堂は、何度かの改築を経て、大学の種々の催しに適応する近代的コングレスホールになっている。今回の上演には、ザルツブルグ・モーツアルテウム大学のオペラ科の門下生の若手歌手たちが参加しており、時代は変われど、初演時の状態を再現しようという意欲に満ちていると思われた。

 序曲はアレグロの簡単なソナタ形式で書かれた短いもので、軽快な歯切れの良い主題で進み、副主題が続いて、展開部はなく、提示部が明るく再現されていた。



 舞台ではヒアチントウスが友人のゼピュロスとともにアポロ神の祭壇を準備し、そこへ国王オエバルスと娘メリアが登場して、全員でアポロ神への祈りを捧げようとする。第一曲は、「ラトーナから生まれた神よ」と全員の合唱で第一部が厳かに歌われ、続く中間部ではオエバルス王が「アポロよ、ラコニアを守り給え」と独唱し、再び合唱が反復される三部形式の曲であった。そこへ突然稲妻の一撃が祭壇を襲い、儀式が中断する。皆は神の怒りだと思うが、ヒアチントウスは落ち着いて、「しばしば神々は、怖れを抱かせる」と第二曲を歌い、皆を力づけていた。明るくアレグロで歌われ、中間部は3拍子になって「神々の威信は保たれている」と歌っていた。そこに羊飼いの姿に身をやつしたアポロが突然登場し、ホルンの伴奏で3拍子のアリア「私、アポロが羊飼いとして羊の群れを守ろう」と第三曲を歌い出し、この国を庇護することを約束する。皆はアポロの威厳と美しさに打たれ、特にメリアは感動するが、ゼピュロスは「アポロめ!僕のペットを奪うのか」と警戒していた。ここで、第一幕が終わり、このDVDではガリマテイアス・ムジクムK.32より第5曲の牧歌が流されていた。民謡調の牧歌的な短い調べであったが、羊飼いアポロの登場を暗示するものであろう。



 メリアが父を通じてアポロから求婚があったことを知り、第4曲目は「私は、喜び、戯れ、」と3拍子のリズムに乗って、彼女はその喜びを歌った。ハイソプラノの可憐なコロラチューラの技巧が華やかでカデンツアも見事に決まり、K.165の先取りの感じがあるアリアであった。一方、アポロとヒアチントウスは円盤競技を楽しんでいた筈だったが、ゼピュロスがアポロに嫉妬するあまり、ヒアチントウスに一撃を加え、「アポロが殺した。僕がこの目で見た」と報告する。王は怒り、メリアはまさかと悲しむ。ゼピュロスはアポロの悪口を述べ立て、メリアに結婚しようと言い寄り、第5曲「ご覧なさい。二人の姿があります」と歌い、「優しい男と人殺し、君はどちらを選ぶのか」と迫っていた。



 そこへアポロが来て、ゼピュロスの虚言をなじり、怒って風の神を呼んで、ゼピュロスを地獄に突き堕としてしまう。アポロはこれを見ていたメリアへ自分の思いを改めて告げようとするが、メリアはあなたが怖いと拒絶する。メリアとアポロの二重唱第6曲は「去ってください、無情な方よ」「私は無実。信じておくれ」と互いに必死の形相で歌われ、中間部ではアポロが「天からも追われ、地上でも追われるのか」と嘆いていた。ここで第二幕が終わり、このDVDでは幕間にガリマテイアス・ムジクムK.32より第1曲と2曲が演奏されていたが、とても良い趣向であった。



 瀕死のヒアチントウスを王が運んでくるが、ヒアチントウスは犯人はゼピュロスであったことを告げて息を引き取る。王は怒りと悲しみの中で第7曲「荒海を行く船は」と歌い、最愛の息子の死を嘆き、復讐を誓っていた。メリアが現れ、真相を父から聞いて、アポロを追い返したことを嘆きながら、二人はヒアチントウスの死とアポロが去ったことを嘆く二重唱第8曲を歌う。美しい祈るようなピッチカートによる前奏に乗って、父が歌い、メリアが歌って、お戻り下さいと二人で祈る二重唱は極めて美しく感動的であった。
 その願いを聞いてアポロが姿を現し、ヒアチントウスへの哀惜の思いを述べて、亡骸を美しい同名の花ヒアシンスに変えてしまう。小さな草花ではなく、お墓を暗示する花一杯の小さな木であった。アポロとメリアは再び絆が復活し、三人は喜びのうちにフィナーレの第9曲の三重唱「ついに、嵐と稲妻との後には、麗らかな平和が訪れる」と幸せな結婚を迎えることを喜び合い、王も満足して幕となった。



 素晴らしい第8曲に続いたフィナーレの三重唱は、フィナーレにしては意外にあっさりと終結し、劇作品としてはやや未熟に感じたが、11歳の時の二作目のオペラ作品としては、まずまずの作品と言わざるを得ない。この新しい映像と比較する形で、テルツ少年合唱団によるシュミットガーデンの映像を見たが、舞台や衣裳などは優れていたが、歌唱力がやはり弱く、新盤の方が味わい深いものがあった。しかし、レチタテーボに状況説明が任される舞台の変化が、一つの映像だけでは説明不足になりがちであったが、二つの映像を見ると互いに補い合う面があって、理解しやすくなったことを付け加えておこう。

(以上)(07-07-10)


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