7-7-3、クラシカジャパン「モーツアルトのある毎日」第13回、 ベームとポリーニによるピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459、およびバレンボイムとベルリンフイルによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482、

−ベームとウイーンフイルに対し、若いポリーニが存在感を示すように華麗に歌ったヘ長調協奏曲K.459。また、バレンボイムの独奏ピアノとベルリンフイルの弦や管とのアンサンブルが見事な変ホ長調協奏曲K.482−

7-7-3、クラシカジャパン「モーツアルトのある毎日」第13回、
ベームとポリーニによるピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459、およびバレンボイムとベルリンフイルによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482、

(06年08月28日&09月01日、クラシカジャパンCS736の放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)


 7月号の第三曲目は、二つのピアノ協奏曲であり、第一曲はカール・ベームとポリーニによるピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459であり、ウイーンフイルによるウイーン楽友協会ホールでの1976年の演奏である。ポリーニ35歳、ベーム82歳の時の映像であり、若いポリーニの端正な姿とベームの元気な姿を見る貴重な映像となっている。第2曲はバレンボイムとベルリンフイルによるピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482であり、このHPでは、彼の2度目の収録である。この演奏は、バレンボイムのシリーズで撮られている協奏曲の一環をなすもので、1980年の未公開のライブ演奏である。



 ベームとポリーニとが写った静止画像の上に、このソフト紹介の字幕が流れたまま映像が始まって、第一楽章のあの行進曲風のリズミカルな第一主題がベームの手により軽やかにオーケストラでゆっくりと開始された。画面を見るとコンサートマスターの亡くなったヘッツエルと次席の場所にいる若いキュッヒルとが並んでポリーニの後でヴァイオリンを弾いていた。やがてポリーニの独奏ピアノがこの主題で開始されるが、ピアノの音が粒だっていて実に美しい。ひとしきりポリーニのピアノが冴えを見せてから、新しい主題がピアノで現れ、ピアノとオーボエが対話をしながら活発に進行する。展開部ではピアノは華やかなパッセージを鋭く繰り返し、見事な技巧を見せさすがポリーニと思わせていた。カデンツアは聞き覚えのものを使っていたが、ベームがポリーニの弾く姿をじっと優しく見守っていたのが印象的であった。



 第二楽章は、オーケストラでさり気なく始まる8分の6拍子のアレグレットの楽章。ピアノで主題が美しく繰り返されてから、呟くようなピアノが何と可憐な美しさを秘めているかに気付く。やがてフルートとファゴットがカノン風に主題を変奏するが、そこにピアノも加わって木管とピアノとの素晴らしい対話が現れる。更にオーボエが先行しフルートが追従する新しい主題が始まり、ピアノが引き継いだ後、再び木管とピアノとの新しい色彩豊かな対話が繰り返され、聴くものをウットリさせてしまう。ベームとポリーニと木管群の見事な歌が繰り広げられるが、カデンツアなしで終わるこの楽章の結びもとりわけ美しい。
 フィナーレはピアノで軽快なロンド主題が飛び出すロンド形式で、オーケストラと再びピアノが交互にこの主題を歌い継ぎ、弦がひとしきり歌ってから、独奏ピアノが第一クープレで新しい主題を歌い出す。この主題から再びロンド主題に移行していくが、ここでのポリーニのピアノは止まるところを知らず一気に進む。この楽章は大きな完全なロンド形式で作られており、再びピアノが絢爛たる動きを見せながら第二クープレに入り、ピアノと木管が流れるように歌ってから、ロンド主題が再現していた。長いカデンツアも甚だ技巧的。ポリーニの達者な腕前が披露されてから、軽やかに終結した。





 この曲はベームの絶対的な支配下のもとに若いポリーニがウイーンフイルに挑戦をしていく演奏であり、ポリーニが存在感を示すように華麗に歌う姿が印象的であった。彼のピアノの弾き方は少しも難しさを感じさせないように手や指が自然に動いているように見えた。この組み合わせのもう1曲のイ長調K.488の協奏曲でも感じたが、ベームとピアノと木管の三重唱が各楽章でとりわけ美しく聴かれ華やかさを増していた。1976年の30年前の映像とは思えぬほどの画面や音響の緻密さが見られ、永遠に残る名画像であると感じた。



 第2曲目はバレンボイムとベルリンフイルによる弾き振りでピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482であるが、私のデータベースではバレンボイムは昨年のベルリンフイルによるプラハでのオールモーツアルトの記念コンサートでのライブの映像をアップ済み(6-11-1)であるので、この曲のバレンボイムの演奏は2度目の登場である。昨年の06年NHK音楽祭で上原彩子がルイージ指揮するウイーン交響楽団と実に爽やかにこの曲を演奏をしており、この曲は地味な存在であるが馴染み深い協奏曲になってきた。



 第一楽章はユニゾンのフルオーケストラで堂々と開始され、ホルンとファゴットが後を引き継いでから、ひとしきりシンフォニーのようにフルオーケストラで進行するが、バレンボイムは立ち上がって指揮をしていた。続いて第二主題が優しく提示されてから、満を持したように独奏ピアノの長いアインガングが入り、ピアノで堂々と冒頭の主題が提示される。バレンボイムは指揮もピアノも手慣れたもの。華やかに動き回るピアノに特徴がある展開部でもしっかりと弾かれていた。
 第二楽章はハ短調のアンダンテでゆっくりと静かにオーケストラで始められ、バレンボイムはやはり立って指揮をしていた。これは変奏曲の主題提示であり、続いて始まる独奏ピアノでは早くも主題を変奏しながら第一変奏を弾いていた。2本のクラリネットによる鄙びた木管群の第二変奏の後に、ピアノが弦を従えて力強い第三変奏が行われ、ひとしきり賑やかに盛り上がる。フルートとファゴットによる二重奏の第四変奏がはじまり後半には弦の伴奏が加わって美しく合奏される。次いでフルオーケストラとピアノにより堂々とした第五変奏が力強く演奏され、ピアノの長いトリルと弦楽器そして木管楽器との絶妙な音の配色が美しい。終わりのファゴットとピアノに弦が加わった静かな終わりが印象的。この楽章は初演時にアンコールされたと言うが、ロマン派を思わせるような美しい自由な曲風に終始していた。





 フィナーレは軽く戯れるような明るい独奏ピアノのロンド主題で始まり、オーケストラ、ピアノ、オーケストラと順番に入れ替わってからピアノがひとしきり歯切れ良くパッセージを連発する。やがてピアノのソロで第一の中間部の主題が弾かれ、木管と弦で繰り返されピアノに渡された後、明るく迅速にホルンに導かれてロンド主題が再現される。フェルマータで短いカデンツアのような奏句の後にゆっくりしたメヌエット風の第二中間部がクラリネットで現れる。続いて弦とピアノの合奏、クラリネットと木管のアンサンブルなどで再現され、ピアノの分散和音とピッチカートによる夢のようなカンタービレが続いた後、再び明るくロンド主題へと突入していった。この第二中間部でのバレンボイムのピアノは雄弁で、弾き振りのタイミングの良さが明確に現れており、彼がこの曲を得意とする一端を覗いたような気がした。

 この曲はクラリネットと木管アンサンブルの活用が顕著でありベルリンフイルの首席のカール・ライスターが健在で第一クラリネットを担当していた。また、各楽章に見られるピアノと木管との対話やアンサンブルが随処に見られ、モーツアルトが協奏曲における独自の境地を見つけ出したように思われた。特に、この曲の第三楽章の第二中間部におけるメヌエット風のアンダンテイーノ・カンタービレは、バレンボイムが入念にゆっくりとしたテンポで演奏しており、他の演奏に比してこの部分が傑出しているように思われた。

(以上)(07/08/04)


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