7-6-2、クラシカジャパン「モーツアルトのある毎日」第10回、
(曲目)ピアノソナタ第10番ハ長調K.330、第11番イ長調K.331「トルコ行進曲付き」、第12番ヘ長調K332、ピアノ;ダニエル・バレンボイム(1990)、マックス・ヨーゼフ・ザール、ミュンヘン・レジデンツ、

−第一曲のハ長調K.330の初めの部分を除き、テンポ感、丁寧さ、クリアな音出しなどの私の好みを満たした模範的な演奏であった−

7-6-2、クラシカジャパン「モーツアルトのある毎日」第10回、
(曲目)ピアノソナタ第10番ハ長調K.330、第11番イ長調K.331「トルコ行進曲付き」、第12番ヘ長調K332、ピアノ;ダニエル・バレンボイム(1990)、
マックス・ヨーゼフ・ザール、ミュンヘン・レジデンツ、
(06年08月07日、クラシカジャパンCS736の放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。) 


    第二番目の7-6-2は、「モーツアルトのある毎日」からの映像で、バレンボイムのピアノソナタ全集の第4回目として、第10番K.330、第11番イ長調K.331「トルコ行進曲つき」、および第12番ヘ長調K332、の3曲を取り上げるものである。このシリーズは95年1月にクラシカジャパンより連続して放送され、既にS-VHSに収録していたが、改めてデジタルで収録し直している。これらは既に評価の定まった演奏であるが、ピアノソナタの映像は意外に少なく、このホームページでは第10番K.330および第12番ヘ長調K332が初出の映像となっており、極めて貴重なものと考えている。

  この3曲はモーツアルトのピアノソナタの中で最も好まれる曲たちであろう。かってこの3曲は1778年にパリで作曲され、「パリ・ソナタ」の愛称でフランス趣味の濃い曲集と解説されてきた。しかし、1970年代のプラートの筆跡研究、1980年代のタイソンの用紙研究の結果、1783年頃の作と推定されて以来、1784年にアルタリア社からソナタ1〜3番としてウイーンで出版された経緯と関連づけられ、現在の定説となっている。

  ピアノソナタ第10番ハ長調K.330は、明るく流麗に流れる第一楽章、愛らしいが深みのある第二楽章、軽快で楽しい第三楽章とも親しみやすい曲調で、どの楽章にも細やかなトリルや輝かしいパッセージが満ち溢れ、私の大好きなソナタの一つになっている。
  第一楽章では、バレンボイムは少し早めのテンポで入るが、本来、澄んだピアノの音が玉を転がすように響かなければならないのに、どこかに力が入っているのか滑らかに流れてくれずに残念であった。繰り返しでは少し良くなっていたが、CDのヘブラーやケイテインの流暢さに較べればやや不満足。この曲の展開部は簡単なスタイルで新しい主題が流れ深みを増しながら繰り返されて、滑るように再現部へと続いていたが、ここでは彼本来の滑らかさを取り戻していた。


 第二楽章は、独立してアンコールなどでも弾かれる美しい曲。ドルチェの美しい主題が流れ、バレンボイムは自然体で反復していた。次の部分も静かにゆっくりと流れてこれも反復され、次いで短調の舟歌のようなしみじみとした深い調べに入りこれも反復される。ソナタ形式でないアンダンテ楽章は初めてだろうか。再び始めに戻り、今度は反復がないまま流れていたが、バレンボイムの結びの沈んだ感じの終結部は味わい深いものがあった。
 フィナーレは、軽快で流れるような主題が走り出し、明るく楽しげなアレグレットになって、バレンボイムの調子がやっと出てきたような感じがする。第二主題も軽快そのもので、バレンボイムは勢いを増しながら躍動して進む。短い軽やかな展開部を経て再び初めの主題に戻り、曲は明るく盛り上がって終息した。
 大好きなソナタであるが、真に残念ながら出だしで今一つ物足りないところがある演奏であったのが惜しまれた。以上のように書き上げたけれども、私はこの演奏について、3年ほど前に3-12-2で次のように評価していたのを全く失念していた。この曲についてはデータベースの作成を忘れたため、直ぐにアップロード出来なかったことが、忘れた原因であると思われる。

   第二曲目の第11番イ長調K.331「トルコ行進曲付き」は、これまでの10曲とは異なり、一つもソナタ形式がなく、自由な形式を組み合わせたピアノソナタであり、第一楽章は主題と六つの変奏を持つ変奏曲である。また、第二楽章はメヌエット楽章であり、ピアノソナタでは珍しい形式をとっている。フィナーレは、標題の通りの「トルコ行進曲」であり、この時期にウイーンで流行したトルコ趣味を反映した華麗な楽章となっている。 バレンボイムの弾いたこの曲は、私のピアノソナタを聴く3条件(丁寧に弾く、早すぎないように弾く、音をクリアに弾く)を各楽章とも満たしており、地味ではあるが私の感覚に合致した名演奏であると思った。

   第一楽章は、明るい出だしの主題提示で始まり第一・第二変奏も軽快そのもの。短調の第三変奏は、バレンボイムのピアノの高音が美しい。第四変奏も両手が交錯して映像では見応えがあった。第五変奏では思い切って遅いテンポであるが実に穏やかであるばかりでなく力強さも示されていた。踊るように軽快な最後の変奏もすっきりしており、楽章全体を通じても、出色の出来と思われる。直ぐ続けて弾きだしたメヌエット楽章も軽やかに弾むように進み、中間部のトリオは対象的に沈んだ音色で、この楽章の優雅な趣を伝えていた。


  フィナーレのトルコ行進曲は、軽快に走り出し心地よいテンポで、終始堂々と進行した。小細工のない正面から取り組んですっきり弾かれた模範的な演奏。さすがは名人による安心できる堂々たる演奏ですっきりと弾かれていた。

     第三曲目の第12番ヘ長調K332は、再び3楽章ともソナタ形式に戻っており、各楽章には美しいメロデイや愛らしさや優雅さに満ちた旋律が多く、親しみやすいソナタである。バレンボイムの弾いたこの曲は、私の3条件をうまく満たしており、安心して楽しむことができた。第一楽章では、どこか暗い感じのしかし楽しげな第一主題が3拍子のリズムで跳ね回り、メヌエット風の主題や新しい元気の良い主題が次々と顔をだす明るい雰囲気で提示部を満たす。バレンボイムはテンポ良く軽快に丁寧に弾いており、模範的な演奏スタイルであった。短い新しい主題の展開部もすっきりしており、明るく全体が再現されていた。


 第二楽章は、ゆっくりしたアルベルテイバスにのったオペラのアリアのようなアダージョで進み、第二主題も明るい彩りのある旋律に満ちて、華やかさに溢れた楽章であった。バレンボイムは再現部では時には装飾音をつけながら穏やかに弾いていた。新全集ではこの楽章には2版が示され、バレンボイムは自筆譜の方ではなく小さな字の当初印刷譜の方を弾いていた。フィナーレは、激しい奔放なパッセージを持つ主題が先行し、続いて勢いのある主題が次々に現れて一気に進む技巧的な華やかな楽章で、バレンボイムは終始落ち着いて余裕を見せながら、この早い楽章を一気呵成に弾きまくっていた。

  モーツアルトの非常に人気のあるそれぞれ異なった三つの中期のピアノソナタを3曲続けて聴いたが、バレンボイムの演奏スタイルは、第一曲のハ長調K.330の初めの部分を除き、テンポ感、丁寧さ、クリアな音出しの私の好みの三条件をよく満たし、立派な演奏を示してくれた。バレンボイムのこのような模範的な演奏が頭にあって、色々なピアニストの演奏を聴くとその違いが分かり、それぞれの演奏をより深く楽しむことができる。LPではギーゼキングの、CDではヘブラーの2度目の録音、映像ではこのバレンボイムのソナタ全集が、私には、その役割を果たしているようだ。ただし、この4回目になる3曲のソナタの映像は、全体的に画面が暗く、カメラワークも単調であって、これまでの他の映像に比較して気になった。

(以上)(07/06/10)



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