7-11-2、ウイーン少年合唱団の「孤児院ミサ」K.139と珠玉の宗教曲小品集、
ミサ・ソレムニスハ短調K.139「孤児院ミサ」(1989)、3曲のオッフェルトリウム(K.277、K.72、K.198)、グラドウアーレK.273、アヴェ・ヴェルムK.618、(1990)、

−ウイーンの教会におけるウイーン少年合唱団による伝統的なミサ・ソレムニス(孤児院ミサK.139)と珠玉の宗教曲の小品集−映像により教会内での演奏が視覚的な魅力を増した少年たちの精一杯の演奏に拍手を−


7-11-2、ウイーン少年合唱団の「孤児院ミサ」K.139と珠玉の宗教曲小品集、


ミサ・ソレムニスハ短調K.139「孤児院ミサ」(1989)、3曲のオッフェルトリウム(K.277、K.72、K.198)、グラドウアーレK.273、アヴェ・ヴェルムK.618、(1990)、
ハラー指揮ウイーン少年合唱団、ウイーン国立合唱団男性メンバー、


−ウイーンの教会におけるウイーン少年合唱団による伝統的なミサ・ソレムニス(孤児院ミサK.139)と珠玉の宗教曲の小品集−映像により教会内での演奏が視覚的な魅力を増した少年たちの精一杯の演奏に拍手を−

(フイリップスのDVD、UCBP-1023を利用)




 11月号の第二曲目は、ウイーン少年合唱団の1989年にウイーンの宮廷礼拝堂で収録された「孤児院ミサ」ハ短調K.139と、1990年にバーデンの市教区教会で収録された珠玉の小品集である。これは1992年にレーザーデイスクで発売されたソフトであるが、私はクラシカジャパンの放送をS-VHSに収録していたので、LDを購入する必要がなかった。しかし、2002年に新たなメデイアとしてのDVDでレヴァインの「魔笛」などとともに再発売されたので購入したものであった。S-VHSやLDと較べると、DVDの方が扱いやすく、画質も音質も優れていることが確認できる。宗教曲の映像は限定されているが、教会内の映像は非常に見どころがあるので、是非、早い機会にアップしたいと考えていた。5曲の珠玉の宗教曲小品集も3曲のオッフェルトリウムは、このHP初出であり、素晴らしいウイーン少年合唱団のソロや合唱を楽しむことができた。




 最初のミサ・ソレムニス「孤児院ミサ」ハ短調K.139(47a) には、アバードによるLP時代の名盤があり、冒頭の静寂の中のキリエの合唱の厳粛な響きが頭に刷り込まれているが、この映像でも第一曲ではトウッテイによる厳かなキリエの序唱でトロンボーンが写ったりして、期待通りに厳かに始まった。二部のアレグロに入って、3拍子のオーケストラの前奏の後に勢いよくキリエ・エリイソンの合唱が力強く歌われひとしきり続いた後、三部としてソリストたちの四重唱で穏やかにキリエが歌われ、再びアレグロの大合唱がダ・カーポされた。宮廷礼拝堂の背景の壁面の飾りが素晴らしく、変則的な4トランペットや3トロンボーンが一列に並んだ姿が見え、その後にソプラノの少年合唱団と男声合唱団が中央の4人のソリストの左右に並び、ミサ・ソレムニスとしての迫力に満ちた美しい映像であった。



 第二曲のグローリアは、細かく七つの部分に分かれており、第一はグローリアと歌う荘厳な大合唱であるが、アレグロで短く終わり、第二のアンダンテに移る。オーケストラの美しい前奏に続いてアルトとソプラノのソロがそれぞれ歌われ、進むにつれ二重唱となり少年たちの清らかな声が響き渡る。第三はグラテイアスで重々しいアダージョの大合唱の部分と活気のある対位法的な合唱の部分があった。第四はドミネ・デウスで美しい弦の伴奏で穏やかなテノールとバスのソロと二重唱であった。第五はクイトリスでアダージョのテンポで合唱が始まり、半音階で上昇する哀願するような合唱となり低音のリズミックな伴奏も重々しく印象に残る曲であった。第六はクオニアムで軽やかな弦の伴奏でソプラノが明るくアリア風に独唱していた。第七はフィナーレで大合唱による壮大な4声のフーガとなり終わりにはアーメンが連唱されて厳かに終了した。一曲一曲の性格が異なり、変化に満ちており、風格すら感じさせる素晴らしいグローリアであった。



 第三曲のクレドも、やはり七つに分けられ、大曲の証しである。第一はクレド「われは信ず、唯一の神」とプレストの力強い合唱で始まり、速いテンポで強く告白する部分である。第二の「エト・インカルナタス」はアンダンテで、ソプラノとアルトが明るく二重唱を歌う。シチリアーノ調のゆっくりとした歌で、弦とベースの伴奏が美しい。第三は弱音器付きのトランペットの序奏で始まるハ短調の悲痛なアダージョの合唱を前奏とし、第四に入ってソプラノの短いソロの後に盛大な合唱で盛り上がる。第五は明るく穏やかな弦の伴奏でテノールがソロを歌うが、後半には四重奏になって結ばれる。第六はクレドの終曲で堂々たる晴れやかな合唱が続き、第七に入って4声の壮大なフーガの合唱となって終わりにアーメンで盛り上がって終息する。長大なしかし堂々たるクレドであった。



 第四曲はサンクトス(聖なるかな)の大合唱で荘重にアダージョで三度繰り返されて進んでいくが、合唱がアレグロになってホザンナが華麗に数回繰り返されていく。第五曲はベネデイクトスでソプラノのソロとホザンナの合唱が続き、繰り返されて、最後にサンクトスの結尾に戻ってホザンヌが繰り返されていく。
 終曲のアニュス・デイは、二つの部分に分かれており、第一はトロンボーンの伴奏でアンダンテの厳かな序奏の後にテノールのソロでアニュス・デイが歌われ、合唱で厳かに引き継がれてから、同じテンポでソリストの四重唱となる。美しい穏やかな部分である。最後にオーケストラの伴奏でドーナ・ノービスがアレグロの合唱で高らかに歌われ、ドーナの大合唱で壮大に盛り上がって、この大ミサ曲は終結した。




 この曲は楽器編成も大きく、12歳の少年の作としては信じ難い大曲で、ケッヒエルはK139の番号を与えていたが、ザルツブルグではみられない2部のヴィオラや金管の編成が見られ、レオポルドの残した作品目録と一致すること、自筆譜の鑑定結果が1760年代末と出たこと、最初期のミサ曲K.49、K.65、K.66を書ける少年なら書けたであろうという推測のもとに、新全集では4年遡ってK.49aという番号が与えられている。聴けば聴くほど凄い作品であることが分かるが、つい最近M22で聴いた二つのオペラ(K.50及びK.51)を同じ時期に書いているので、書く力量を十分に備えていたと考えざるを得ない。





 会場が変わって珠玉の小品曲集では、第一曲が聖母マリアのためのオッフェルトリウム(奉納曲)「うるわしき創造主なる神のみ母」K.277(272a)であった。曲はソプラノのソロでアレグロで始まり合唱が後を追って全体が繰り返されてから、アルトとソプラノとテノールの三重唱が入る。聖母マリアへの敬虔さが滲み出た美しい賛歌であり、再び、ソプラノのソロ、合唱、アルトのソロ合唱などが続き、二重唱の後に最後は合唱で終っていた。
 第二曲は聖母マリアの祝日のためのグラドウアーレ(昇階曲)「主のみ母、聖マリア」K.273であり、4声の合唱と弦楽とオルガンの編成の美しい曲である。冒頭からサンクタ・マリアの明るい合唱で始まり、流れるようなリート風の味わいの深い旋律が続きとても親しみやすい。途中の弦楽器の伴奏が美しく、「アヴェ・ヴェルム」を想起せざるを得ない部分がある。後半から終わりにかけてのアーメンの繰り返しも印象的であった。このウイーン少年合唱団のサンクタ・マリアは、4声のバランスが良く見事な歌いぶりを見せており、最高の出来映えであると思われた。






 第三曲は、洗礼者聖ヨハネの祝日のためのオッフェルトリウム「女より生まれしもののうち」K.72(74f)であり、四部合唱と弦楽とオルガンの構成の曲である。オーケストラのリズミックな素晴らしい前奏に続いて民謡調の優雅な合唱が続く。全曲が陽気な行進曲風で親しみやすい曲調が溢れている。終わりに繰り返されるハレルヤの斉唱も美しい。
 第四曲は、オッフェルトリウム「主の保護のもとに」K.198(158b→Anh.C3.08)であり、過去に真偽に関するいろいろな議論があって、現在は新全集で収録されたものであるが、曖昧さを含む曲のようである。しかし音楽の方は、弦楽とオルガンによる長い前奏の後に二人のソプラノが一人ずつ交互に歌い次第に二重唱になるが、この二声部のアンダンテは実に愛らしい美しさがあった。この少年合唱団向きの曲であり、最後には完全に二重唱で歌われていた。
 第五曲は、モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618であり、四部合唱と弦楽とオルガンの構成の曲である。弦とオルガンのみによるソット・ヴォーチェのさり気ない前奏から静かに歌い出される合唱の響きは澄みきっていて、喩えようもなく美しい。この曲を収録したバーデンの市教区教会は聖シュテファン教会とも言い、コンスタンツエが世話になったアントーン・シュトルは、この教会の合唱指揮者であった。モーツアルトは彼のためにこの曲をバーデンで作曲しており、結果的にこの曲は、この教会で彼により初演されている。私はこの教会に2度訪問しているが、このことを記載したプレートが合唱の合間に写し出されていた。

 

   指揮者のクリステイアン・ハラーはこの合唱団の中堅指揮者として活躍しており、奇をてらわない的確な指揮ぶりで評価が高いようであり、ミサ曲にしても小品集にしても全く安心して見て居れる指揮者であった。ウイーン少年合唱団によるミサ曲では、本格的なプロの合唱団と比較すると、合唱でもソロでも幼さや若さの面で劣っているが、教会におけるミサ曲では彼らにより伝統的に歌われてきた訳であり、地域の教会に密着した独特の美しさや良さがある。しかし、アバードの「孤児院ミサ」のように、ウイーンフイルを用い、歌劇場の合唱団やヤノヴィッツがソロを歌うコンサートホールでの本格的な演奏と較べるのは酷であるが、伝統的な教会音楽としての教会内の演奏であり、教会音楽としては、十分に満足すべき水準にあると言える。

(以上)(07/11/19)


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