6-9-3、アーノンクール指揮チュ−リヒ歌劇場のオペラブッファ「にせの花作り女」K.196、2006年2月23/25日、チュ−リヒ歌劇場シンテイルラ管弦楽団、

−アーノンクールの軽快で生きのいい音楽が続き、主役のエヴァ・メイが抜群で他の配役も良く、全体としてこれまでの四組の映像の中では最も納得できた−

6-9-3、アーノンクール指揮チュ−リヒ歌劇場のオペラブッファ「にせの花作り女」K.196、2006年2月23/25日、チュ−リヒ歌劇場シンテイルラ管弦楽団、
(配役)市長;ルドルフ・シャング、花作り女;エヴァ・メイ、伯爵;クリストリ・シュトレール、アルミンダ;イザベル・レイ、騎士ラミーロ;リリアーヌ・ニキテアニュ、セルペッタ;ユリア・クライター、ロベルト;ベルムデス、
(06年08月27日、NHKハイビジョンの放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)

 9月分の三番目の曲は、アーノンクールの久々の登場で、チュ−リヒ歌劇場によるオペラブッファ「にせの花作り女」K.196である。今年の06年2月23/25日の最新の演奏であり、恐らく生誕250年を記念するオペラであったに違いない。このオペラの映像はこれで4組目になったが、さすがアーノンクールのブッファは、音楽が軽快で魅力的であるばかりでなく、分かりずらいオペラを時にはセリフも交えたり工夫を加えて分かり易くしており、背広姿の現代風な演出にも拘わらず違和感がないすっきりとした舞台となっていた。
 今年の1月にザルツブルグのモーツアルト週間でこのオペラを初めて見てきたが、舞台は女流演出家デリーの超モダンの最新のガーデニング・スーパーの店内であり、市長官役がその店長に、騎士アルミンダがその助手、セルペッタとナルドはその店員という環境の中で、お客さんの伯爵とサンドリーナといういろいろな恋人同士の布陣で驚かされたが、今回のチューリヒの舞台では、衣装だけが現代風と言う簡素な舞台作りであった。さらっと見た一回目の視聴結果では、エヴァ・メイはさすが歌でも演技でも存在感を示し、伯爵役もそろって好演しており、全体がスムーズで分かり易く、これまでの三組を上回る出来映えと感じさせた。


 映像では主要な配役を写真で説明した後に、おでこを光らして元気そうな巨匠アーノンクールが登場し、直ぐに序曲が開始される。弦が良く揃い、鋭くなく軽快な出だしで、このテンポとリズムなら行けると直感する。軽やかにブッファらしく浮き浮きと進み、やがてアンダンテに入るが、弦が優雅に優しくしっとりと奏でて美しい。幕が上がり序曲のフィナーレのような調子で、第一曲が明るく軽快に始まる。まるで花壇に枯れ木の山の戦場のような舞台で、ラミロ、市長とセルペッタ、サンドリーナとナルドの組み合わせで、5人の合唱に始まり、それぞれが軽やかに歌い出す。この場面で、それぞれのセリフや洋服姿などで恋の悩みや役割が明確になるが、皆の語る悩みが暗いので市長は今日は婚礼なのだから元気を出せと励ましている。第三曲の市長のアリアは、二人きりになって大喜びでサンドリーナを口説こうと熱心で、フルートやオーボエが明るく歌って応援してくれたが、熱心さで心臓が苦しくなり、テインパニーやファゴットやコントラバスまで騒ぎだし、ひっくり返ってしまうので大笑い。舞台と珍しいオブリガートとがピッタリなので面白い。



 第4曲のサンドリーナは、花作りをしながら伯爵を捜しているのに災いばかりと、ナルドを相手に「女は哀れ」と美しい声で歌うが、身分を隠した女性らしくメイがうまく振る舞っていた。車が二台前後して到着し、アルミンダがエレベータでピンクの服装で派手に入場し、少し遅れて伯爵が大袈裟な前奏音楽で格好良く登場した。しかし、アルミンダを見つけて賛美のアリアを歌うが、間違えてセルペッタにキスしたり、肝心なところでよろけてしまって、舞台は駄目伯爵の姿に大笑い。アルミンダが男には騙されないわよと強気の第7曲を歌い、続いて伯爵が馬鹿にするなと家系を自慢するアリアを歌い、市長を納得させてしまう。次いでセルペッタが夫が欲しいと歌い、ナルドが君が望むならと応えるふざけた二重唱があり、続いてセルペッタが歌う第10番のレチタテーボやアリアでは、「コシ」のデスピーナと同じような「男は沢山いる」というセリフに気が付いて驚いた。





   サンドリーナが第11番で歌う「キジバトのアリア」では、ヴァイオリンの助奏とピッチカートを伴って優雅に歌われ万雷の拍手を浴びていた。そこへアルミンダが来て、ベルフィオーレ伯爵と今日結婚するという話を聞かされて、サンドリーナは驚いて失神してしまう。アルミンダが気付け薬を取りに行っている間に伯爵がサンドリーナを見て、愛人のヴィオランテであることに気づくが、互いに信じられない様子。そこでセルペッタが二人が抱き合ったと市長に報告したため、全員が舞台に現れて大騒ぎとなり、市長は怒り出して幕となる。






 第二幕は、アルミンダが愛しているのにと伯爵を責める第13番のアリアから始まり、続いてセルペッタがナルドをからかってプロポーズして見せてと言われて、ナルドが力んで得意になって歌う第14番の「イタリア語でなら」が面白いが、真面目に色々やってもセルペッタがさっぱり反応しないので怒ってしまい、大きな笑いと拍手があった。 やがてラミロが殺人犯ベルフィオーレ伯爵の逮捕状がミラノから届いたと言う。驚いた市長が騙されたとカンカンになり、アルミンダがかばうのを聞かず、裁判官として尋問をしようとする。伯爵がしどろもどろになっているところに、サンドリーナが現れて、私がヴィオランテ・オネステイですと名乗り、負傷しただけであり当人の自分が彼を許すと証言する。







しかし、皆が去った後、ヴィオランテは、アルミンダとの結婚に対して 怒っており、伯爵を絶対に許さず近づけない。そして、セルペッタがサンドリーナが逃げたと大騒ぎして、第20番のアリアを歌うが、二階の客席に登って真面目に「あるがままに」と自分の本心をしんみり歌うので驚かされる。逃げ出したサンドリーナが一人で暗い所で迷って、助けてと歌う半狂乱のアリアと、誰かが来ると洞穴に逃げて歌うアリエッタが二つ続き、第23番の第二幕のフィナーレとなるが、サンドリーナを探して洞穴の中で全員で歌う長い七重唱であり、「フィガロ」の第4幕のフィナーレの姿が見え隠れしていた。舞台は暗闇の中で大混乱のまま、互いに求める人を探そうとするが、最後にサンドリーナと伯爵が正気を失って狂乱状態であるのが分かりそのまま幕となった。舞台が暗いまま、コントラバスが短いソロの歌を弾き、それを合図に 第三幕が始まる。初めて確認する変わった趣向であった。





 舞台ではサンドリーナと伯爵がまだ半狂乱の状態で逃げだそうとしているが、ナルドが二人を引き寄せて、「月と太陽が」などと歌い出し、二人に「月が落ちる」「地球が揺れる」などと気付かせて、やがて二人に第24番の夢見の二重唱を誘い出し、寝かせてしまう。第25番の市長のアリアは省略されたが、第26番では騎士のラミロが背広姿で登場し、アルミンダと伯爵が結婚しないなら自分に譲れと市長に迫るが、市長がうるさいと逃げ出したため、冷たいアルミンダに対し、失恋の復讐のアリアを歌い退場する。  舞台はサンドリーナと伯爵が寝込んでいるが、やがて第27番の序奏の天国からの美しい音楽が聞こえてきて、二人が目を覚ます。「ここはどこ」「夢かしら」「ヴィオランテです」「花嫁ではありません」あたりで正気になり、「私はやがて市長の花嫁になります」と言う言葉あたりから元に戻って再びけんかの状態になるが、伯爵が「最愛の人よ、人の気も知らないで」あたりから音楽が変わり、やっと立派な二重唱となり、ためらいながらも少しずつ和らいで、「愛する力には抵抗できない」と歌い、愛ゆえに苦しみつつも元の鞘にやっと収まった。

 フィナーレでは、ナルドがお二人はやっと結ばれましたとヴィオランテと伯爵を紹介し、アルミンダもラミロさえ良ければと言い、市長にわかった、勝手にしろと言わせ、二組目の結婚が誕生した。そしてお互いの喜びの混じった複雑な思いの中で、幸せにと明るい7人の合唱となり、賑やかに終わりの行進曲で幕開けとなった。しかし、この演出ではセルペッタとナルドが横を向いており、結ばれたのは二組だけだった。




 

 この長いオペラで音楽の省略は、第18番のラミロのアリアと第25番の市長のアリアだけであり、アーノンクールの軽快で生きのいい音楽が続き、十分満足できた。配役もメイが抜群であったが、セルペッタ・ナルド・ラミロなども良く、全体としてこれまでの三組の映像の中では最も納得できるものとの印象を持った。私は日本語のリブレットを持っていないのでチェックは出来なかったが、セリフに変えられたり、レチタテイーボが変更された箇所は多いと思われ、それだけ現代的になりまた分かり易くなったものと思われる。このような恋の戯れのお話は、時代を超えた演出でも、音楽や内容さえ良ければ、十分に通用すると思われた。今回のチューリヒ劇場のハイビジョン映像は、前回の「テイト」の映像よりも画質・音質ともきめの細かさで上回り、カメラワークやクローズアップなども自然で優れていたと思う。

(以上)(06/09/15)


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