6-9-2、小曽根真とF.X.ロス指揮によるピアノの協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」、ベレゾフスキー父娘による「二台の」ピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365、ロシアグループによる「三台の」ピアノ協奏曲第7番ヘ長調K.242、ボワトウ=シャランド管弦楽団、東京モーツアルト・プレイヤーズ、

−「熱狂の日」のコンサートにふさわしい、白熱した、競い合う「一台・二台・三台」のモーツアルトのピアノ協奏曲K.271、K.365及びK.242−


6-9-2、小曽根真とF.X.ロス指揮によるピアノの協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」、ベレゾフスキー父娘による「二台の」ピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365、ロシアグループによる「三台の」ピアノ協奏曲第7番ヘ長調K.242、ボワトウ=シャランド管弦楽団、東京モーツアルト・プレイヤーズ、「熱狂の日」音楽祭よりライブ中継、06/05/05、

(06年05月05日、NHKBS-2の放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画し、DVD化した。)


 9月分の第2番目は、今年5月のあの「熱狂の日」の二つのピアノ協奏曲のコンサートを一つにまとめたものであるが、それぞれに特徴があって面白い演奏が揃っていた。始めにジュノム協奏曲K.271がジャズ・ピアニストとして名高い小曽根 真により弾かれたもので、まさに「熱狂の日」の出来事であった。ハラハラしながら映像を見ていたが、癖があるもののまずまずの出来映えで安心した。各楽章ごとのカデンツアでジャズの即興風のオリジナルを弾き見せ場を作り、少し長すぎた感もあったがスリリングでもあった。
 二曲目のベレゾフスキー父娘による「二台の」ピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365は、第一楽章だけであったが、二台のピアノが競い合うとても優れた演奏であったので、取り入れることにしたものである。娘が第一ピアノ、父が第二ピアノで、向かい合って弾いていたが、呼吸がぴったりであったので、なぜ第二・三楽章をカットしてしまったかが残念で、惜しまれる演奏だった。
 三曲目はロシアのピアニストグループ、B.ベレゾフスキー、N.ルガンスキー、A.メルニコフの三人のピアニストによる「三台の」ピアノ協奏曲第7番ヘ長調K.242であり、三人の技量が伯仲し、互いのやり取りがあり、客席を向いて三人が並んで演奏していたので、指揮者とも呼吸が合い、素晴らしい演奏に終始した。このようなピアノの配置は初めてであって、視覚的にも面白い演奏であった。
 指揮とオーケストラは、もうお馴染みになったF.X.ロスが指揮をし、ボワトウ=シャランド管弦楽団および東京モーツアルト・プレイヤーズの皆さんであった。



 始めに第一曲のジュノム協奏曲K.271のジャズ・ピアニスト小曽根 真については、クラシックも弾けることが知られた実力者であるが、このホームページでは初登場。彼の話では、フリ−ドリッヒ・グルダが良く共演しCDも出ているチック・コリアと、モーツアルトの「二台の」ピアノ協奏曲を弾いたことがあると言っており、この道ではやはり知られた存在であると思われる。「ジュノム」についてもかって披露した実績があり、楽しんで聴けるモーツアルトであるかどうかと、即興の緊張がどう言うところに現れるかなどに興味があった。

 第一楽章の始まりは、オーケストラと次いで独奏ピアノとが交互に現れるが、小曽根のピアノには軽さがある。オーケストラの長い主題提示の後に独奏ピアノが主題を軽やかに繰り返していくが、独奏ピアノによる第二主題の提示は実に美しい。独奏ピアノが目立つ展開部が過ぎて再現部が冒頭と同じ形で始まるが、再現部でのピアノ独奏では、小曽根は装飾をつけたり、パッセージを変えたり、意識的に即興風の変化を付けていた。カデンツアでは始まりは面白くないが、やがてジャズ風な即興的な遊びを入れたオリジナルを弾いて見せた。



 第二楽章では、静かなヴァイオリンの序奏でゆっくりと始まり、直ぐに独奏ピアノが装飾音をつけながら主題を奏で、オーケストラと対話をしながらゆっくりと進行する。小曽根のピアノは明るい表情で、キラキラと輝くように繰り返しではフリーに弾かれていた。カデンツアでは、何か変わったことをしようともがいているようにも思われたが、自由な雰囲気であった。続けて休みなしに軽快なフィナーレのロンド主題が独奏ピアノでプレストで始まるが、ピアノが見事なパッセージを見せながら明るく進行し、オーケストラとも絡みあって急速に展開される。やがて中間のロンド主題に入る前に、ジャズ風の小さなカデンツアが入り、おやと思わせた後に、この曲独特の中間部の美しいメヌエットがピアノで現れる。静かなピアノの語りで始まり、ピッチカートの甘い伴奏に乗ってピアノが主題を際立たせ、繰り返しの後半ではジャズ風の装飾を加えたりで余裕を見せながら存在感を示していた。最後のカデンツアでも自由なジャズ風の巧みなアレンジを見せており、小曽根らしさを際立たせていた。

 その熱演が観客にも伝わってか、大変な拍手で迎えられていたが、はらはらしながら見ていたものの、終わってみればジャズ風の遊びが加わった堂々たる弾きぶりで、モーツアルトとジャズとの変わった組み合わせに、面白さを感ずるところも多かったに違いない。まさに「熱狂の日」ならではの、お祭り気分の音楽祭にふさわしい演奏ぶりであった。





   第二曲目は、ベレゾフスキー父娘による「二台の」ピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365 であった。ロスの指揮する東京モーツアルト・プレイヤーズは、速いテンポで強弱の変化の激しい第一主題を快調に提示し、続いて軽快な主題を次々に颯爽と提示していく。長いオーケストラの後に、二台の合奏による短いアインガングがあって、第一ピアノの娘のエヴリン・ベレゾフスキーが第一主題を軽やかに弾き始め、続いて父のボリス・ベレゾフスキーがこの主題を繰り返し、それからは二台のピアノが互いに競い合うように早いパッセージが繰り返されていく。二人とも譜面なしの暗譜で弾きまくり、仲の良い父娘がモーツアルトらしい軽快さを持って、互いにパッセージの対話が続けられる。展開部では二台のピアノが力強く対話風に弾かれ、ダイナミックな迫力に満ちていた。カデンツアは、聞き覚えのあるモーツアルトのものであったが、ここでも対話風に進められ、二人の呼吸が見事に合っていた。

 二人の見事に息の合ったピアノで快調に第一楽章が終わったところで、画面が突然に変わって、司会者の方に戻されてしまう。そして何も説明がないままに、映像は再び三台のピアノが並ぶオーケストラの舞台に引き戻された。真に残念ながら、全体の時間のせいか、二台のピアノのための協奏曲は、映像としては第一楽章で終了してしまった。







 舞台では指揮者のロスと三人の黒い衣裳のピアニストが登場し、それぞれの席に着く。指揮者が観客に背中を向けて立ち、オーケストラが横長に並び、その後に三台のピアノが並んで、ピアニストは指揮者と対面するように座っている。左から第三ピアノのボリス・ベレゾフスキー、中央が第一ピアノのルガンスキー、右端が第二ピアノのメルニコフであった。このようなピアノの配置は始めて体験する合理的なものであり、舞台が広ければいろいろなことが出来ると思った。三人にはそれぞれ譜めくりの女性がつき、三人は譜面を見ながら、隣のピアノを気にしながら、互いに調子を合わせながら、にこやかにピアノを弾いていた。





 「三台の」ピアノ協奏曲第7番ヘ長調K.242の第一楽章は、トウッテイで型通りに第一・第二主題が提示されるが、導入の三台のピアノによる冒頭主題の斉奏は非常に力強く、直ちに第一ピアノに引き継がれ、続いて第二ピアノに渡されていく。第二主題は第一ピアノにより提示されてから三人のソリストに渡されていくが、オーケストラの手を殆ど借りずに三台のピアノにより進行する。三人は互いに調子を合わせながら、自分の存在を示しつつ、楽しそうに弾いていた。展開部でも殆どが三台のピアノにより力強く活発に推移し、再現部でも三台のピアノの存在が増していた。カデンツアは聴き覚えのあるモーツアルト作のものであった。

 第二楽章では、やはりオーケストラで美しい第一主題が提示されて第一ピアノに渡されるが、第二主題はいきなり第二ピアノにより提示される。この楽章では三台のピアノにより、歌謡風の主旋律が絶えず繰り返され、互いに入れ替わったり合奏したりして綿々と歌われており、三台のピアノの持ち味を生かした名品であると思う。この三人には、こうした雰囲気が良く演奏に現れており、素晴らしいと思った。短いカデンツアが三台のピアノの味わいをよく出していた。フィナーレでは、三拍子のメヌエットの踊り出すような早いテンポで、第一ピアノがロンド主題を提示するが、直ぐにオーケストラとピアノに渡され、さらに新たな主題が導かれて素早く展開されていく。この楽しげなロンド主題は全体で4回も現れ、華やかな雰囲気を印象づけて、盛大に盛り上がって終息した。







 演奏終了後には、盛大な拍手で迎えられたが、三人は立ち上がって顔を見合わせながら、笑顔で拍手に応えていた。三人も役者が揃うと、お祭り的な雰囲気が盛り上がり、この「熱狂の日」のコンサートにいかにもマッチしていた。
 このNHKのBS2の放送は、1時から6時頃まで続けて放送されていたが、この後に参加者によるモーツアルトの作品の人気投票が行われており、第一位はK525、第二位はK.492、第三位はK.626などが選ばれていた。この番組では、ほんの一握りの部分を放送したに過ぎないが、いつも人混みが溢れており、この東京のど真ん中のクラッシックの音楽祭としては、モーツアルト人気を受けて、成功したものと思われる。

(以上)(06/09/09)


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