6-8-2、ルプーのピアノとジンマン・ドイツカンマーフイルによるピアノの協奏曲第19番ヘ長調K.459、ミュンヘン・ソフィエンザール90/7/18、およびオメロ・フランセシュのピアノとアルブレヒト・ドイツカンマーフイルによるピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537、「戴冠式」クリステイアン・ツアイス・ザール、ヴィースバーデン、90/12/2、

−ルプーの明るく伸びやかなピアノによる生き生きした19番ヘ長調協奏曲と、フランセシュの伸び伸びした軽快なピアノによる華麗で優雅な二つの「戴冠式」協奏曲−


6-8-2、ルプーのピアノとジンマン・ドイツカンマーフイルによるピアノの協奏曲第19番ヘ長調K.459、ミュンヘン・ソフィエンザール90/7/18、およびオメロ・フランセシュのピアノとアルブレヒト・ドイツカンマーフイルによるピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537、「戴冠式」クリステイアン・ツアイス・ザール、ヴィースバーデン、90/12/2、


−ルプーの明るく伸びやかなピアノによる生き生きした19番ヘ長調協奏曲と、フランセシュの伸び伸びした軽快なピアノによる華麗で優雅な二つの「戴冠式」協奏曲−

(06年05月26日、クラシカジャパンの放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)


 8月分の第二曲目は、ラドウ・ルプーのピアノ、デヴィッド・ジンマン指揮のドイツカンマーフイルによるピアノ協奏曲第19番ヘ長調、K.459およびオメロ・フランセシュのピアノとゲルト・アルブレヒト指揮のドイツカンマーフイルによるピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537であり、2曲とも「戴冠式」と呼ばれることと伴奏するオーケストラとが共通している。前者は1990年7月18日のミュンヘン・ソフイエンザール、後者は1990年12月2日のヴィースバーデンのクリステイアン・ツアイス・ザールにおけるライブ映像であり、アンドレ・プレヴィンが監修した「モーツアルト・オン・ツアー」の中の映像であった。この映像によりこのシリーズのピアノ協奏曲は、全てこのホームページにアップロードしたことになる。
 ルプーのピアノによる19番ヘ長調協奏曲は、ジンマンの指揮により活発で生き生きとしており、明るく伸びやかなルプーのピアノと調和して気持ちよい演奏スタイルであった。 もう一曲の26番ニ長調協奏曲は、フランセシュの伸び伸びした軽快なピアノが、アルブレヒトの振るドイツカンマーフイルの厚みのある弦の響きに融け合って、華麗で優雅な「戴冠式」を聴かせてくれた。両曲とも古い映像であるが、このホームページの「映像のコレクション」では初出であり、欠かせない重要な映像であると考えている。



 19番ヘ長調協奏曲は、付点音符の行進曲風の出だしでオーケストラで威勢良く始まり、ジンマンは軽快な早めのテンポで主題提示を進める。やがてルプーのピアノが第一主題をそのまま繰り返しながら登場してオーケストラと絡み合った後に、新しい主題を弾き始める。ルプーは軽やかなテンポで丁寧に弾いており、この後の木管とピアノのやり取りや弦楽器との交錯が実に美しい。ピアノが激しく和音を弾き鳴らす展開部では、真剣な表情のルプーが素晴らしい技巧を見せており、さすがヴェテランのピアニストであると感じさせた。カデンツアはモーツアルトの聴き慣れたものであった。

 第二楽章はオーケストラで早めに優雅な主題が流され、そのあと独奏ピアノが装飾や変化を加えながら繰り返してゆくが、ルプーのピアノは細やかな表情を見せる。フルートとファゴットが追いかけ合うように現れる新しい主題はこれにピアノも加わって夢を見るような雰囲気をかもし出す。さらにオーボエとフルートが新しいエピソードを提示し、これにピアノが加わって素晴らしい対話が繰り返されていくが、まさにルプーの持ち味を生かした華麗なアレグレットであった。フィナーレはいきなり楽しげな独奏ピアノが飛び出す軽快なロンド主題で始まるが、それにオーケストラが重々しく弾みをつけ、さらに新しい主題がピアノを中心に速いテンポで現れる典型的なロンド楽章である。中間部で現れるヴァイオリンとオーボエによる明るい主題が美しく、ピアノが引き継いで絢爛としたフィナーレを完成させていた。



 10番台の協奏曲のうち、この曲と16番ニ長調とは、人それぞれの好みにもよろうが、私には馴染みずらい地味な曲との印象が強く、積極的に自分から聞くことは少なかった。しかし、ジンマンとのコンビでルプーのピアノで聴くと、華やかな面も多い重厚な曲というこれまでと少し異なった印象を受けた。8月のクラシカジャパンの「モーツアルトのある毎日」では、この19番K.459はベームとポリーニのピアノによる演奏であるので、どういう演奏であるか楽しみにしている。

   26番二長調協奏曲は、テインパニーやトランペットなども備えた「戴冠式」の名に相 応しい祝典的な感覚に溢れた華麗な作品である。しかし、この名は実は1790年10月にレ オポルドニ世の戴冠式の式典期間中に、先の19番へ長調K.459とともに作曲者自身によ り演奏されたという作曲後の事実に由来している。また、これまでの作品に見られた管弦楽と独奏ピアノとの複雑な関係は見られず、むしろ単純化されており、分かりやすさと表面的な華やかさ故に親しまれてきた曲と見なされている。さらに独奏ピアノの声部が不完全のままに終わっており、特に第二楽章の左手のパートの伴奏的部分は自筆譜では殆ど書かれていないなど問題の多い曲のようである。

さてここで登場する ピアニストのオメロ・フランセシュ(Homero Francesch)は、このホームページでは初めてのピアニストであるが、彼のモーツアルトのピアノ協奏曲はシリーズでいくつかCD化されており、私は第14番、15番、16番の3曲を収録したCD(1991)を持っている。1947年ウルグアイのモンテヴィデオ生まれで、ミュンヘンの音楽大学で学び、独仏などヨーロッパで活躍している中堅ピアニストとされる。




 この曲の第一楽章は、弦楽器中心に軽快なテンポで第一主題が飛び出し、管楽器が加わって次第に盛り上がり快調に進行するが、アルブレヒトは笑みを浮かべながら、指揮棒なしの手慣れた様子で指揮をしていた。やがて第二主題も弦楽器で軽やかに提示され、さらに新しい主題も加わって高まりを見せ、歯切れ良く力強く長い第一提示部を終える。満を持したように独奏ピアノが登場し、第一主題を奏でるが、直ぐに名人芸的な華麗なパッセージを披露する。フランセシュのピアノはくっきりとして明快であり、次から次へと技巧を示しながら華やかにそして変奏を加えながら走り回るように進行する。第二主題に突入してもオーケストラとともに軽快さは継続し、歯切れ良く盛り上がって提示部を終結する。展開部では、この終結部のモチーブを中心にピアノが強烈な和音を重ねながら力強く進行するが、フランセシュは堂々と華やかに弾きまくりその指使いには見応えがあった。カデンツアは初めてのもので、長くてややうんざり気味であった。

 この曲の第二楽章はいかにもモーツアルトらしい愛らしいラルゲットで、独奏ピアノが呟くように刻むピアノが美しい。オーケストラで繰り返された後、ピアノがころころと転がるように鳴り響き実に快い。中間部の主題は対照的にリズミカルであり、フランセシュのピアノは装飾音を付けながらゆっくりと味わうように丁寧に弾かれていた。フィナーレは、独奏ピアノにより軽快に飛び出すロンド主題が快適であり、オーケストラに渡ってこれぞモーツアルトと言いたくなる万人に愛されそうな軽快なアレグレットが続く。独奏ピアノが次々に新しい主題を提示しながら転がるようにピアノが突き進む。実に伸び伸びした楽しい気分に溢れており、ピアノのパッセージが華やかで明るい色調で終結する。



 「戴冠式」協奏曲は、LP初期の時代にカサドジュのピアノの名盤があり、繰り返し聴いていたため良く耳に馴染んでいるが、身構えて構造的に聴き直したのは初めてのことであった。今回の映像は指揮者アルブレヒトとオーケストトラのせいか軽快な中にも重厚で堂々たる響きを見せており、フランセシュのピアノも華やかさを見せながらもじっくりと弾きこんでいた。古い映像で画像が暗くカメラアングルが限定されていたが、この曲の映像は限られているので、この曲を理解するための貴重な映像であろうと思われる。

(以上)(06/08/22)


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