6-7-3、二つの交響曲第1番変ホ長調K.16、サバリッシュ指揮NHK交響楽団、90年5月、およびコープマン指揮のアムステルダム・バロック・オーケストラ、91年5月、

−サヴァリッシュ快いテンポで軽やかに進める優しさに満ちた心温まる演奏およびコープマンの古楽器の特徴を生かしたキビキビとした軽やかな明るい演奏−

6-7-3、二つの交響曲第1番変ホ長調K.16、サバリッシュ指揮NHK交響楽団、90年5月、およびコープマン指揮のアムステルダム・バロック・オーケストラ、91年5月、
−サヴァリッシュ快いテンポで軽やかに進める優しさに満ちた心温まる演奏およびコープマンの古楽器の特徴を生かしたキビキビとした軽やかな明るい演奏−

(06年05月14日、NHK教育TV、N響アワーの放送を、DVDレコーダーのLPモードで、レコーダのHDDに録画。)


 7月分の第三曲目は、交響曲第1番変ホ長調であり、NHKのN響アワーで池辺晋一郎さんが、生誕250年のモーツアルト8歳の交響曲第1番と生誕100年を迎えた19歳のショスタコーヴィッチの交響曲第1番ヘ短調とを取り上げたものを収録した。モーツアルトの演奏は90年5月7日のサントリーホールでのサヴァリッシュ指揮の収録済みの古い映像であったが、快いテンポで軽やかに進める優しさに満ちた心温まる演奏であった。今回この曲を「映像のコレクション」で取り上げることにしたので、比較の意味でコープマンが91年に収録した交響曲全集の中から第1番を抜き出して同時にアップしてみることにした。この映像は元はハイビジョンの横長の優れた画面であったが、S-VHSの3倍速で録画したためかなり劣化していた。従って、6月分で紹介したデジタルの40番&41番よりもかなり状態は悪かったが、テンポが軽やかな古楽器の歯切れの良い明るい第1番であり、十分に楽しめるものであった。



 N響を指揮するサヴァリッシュは、15年前の映像なので背筋も伸びて若々しい姿を見せてくれた。N響はベースを4本にしたいわば中規模のオーケストラ編成であり、徳永二男さんがコンサートマスターをしている懐かしの映像であった。画面は暗いが当時としてはまずまずの映像。第一楽章は、軽やかなテンポで開始され、ユニゾンで力強く進行するが、サヴァリッシュは笑顔を浮かべながら楽しげに気楽にリズムを取っていた。続く第二主題もおどけたような表情で軽快に進み、全体が二度明るく繰り返される。後半も冒頭の第一主題で始まるが、変調されて趣を変えて提示され心憎い。さすがモーツアルトと言いたくなる風格を感じさせる楽章であった。



 第二楽章は、弦楽とホルンの合奏で進行する穏やかな楽章で、サヴァリッシュは厳かに格調高くゆったりしたペースで進行させる。ホルンのジュピター音形も鮮やかに刻まれ、サヴァリッシュのキビキビした演奏が胸に迫る。幼いモーツアルトが一生懸命書いたものであろうが、センスの良さを実感する楽章である。
 フィナーレはプレストで始まる元気の良い早い楽章。ドミソで始まる主題は、第一楽章のドミソの始まりとやはり関連づけられたのであろう。軽快に進行しサヴァリッシュはタクトを軽く上下するだけで、一気にこの短い楽章を終結させた。



 このサヴァリッシュの演奏は、中規模なオーケストラ編成による標準的な暖かみのある演奏で、モーツアルトの初めての交響曲を上品に格調高く演奏してくれた。
 曲が短いので、サヴァリッシュの演奏と比較する意味で、コープマンとアムステルダム・バロック・オーケストラによる91年5月の日本公演の交響曲全曲演奏から第一番を取り出して聴いてみた。6-6-3のジュピター交響曲で述べたように、コープマンの一連の演奏は、東京芸術劇場ホールで収録されたものであり、ベースが1本の最小限の弦の編成に2本のオーボエとホルンという構成であった。



 コープマンは指揮台にのらず、指揮棒なしの両手と両指を巧みに使い、体全体で指揮をする典型的な古楽器の指揮法であった。第一楽章はユニゾンで力強く第一主題が開始され、軽快なテンポで進行するが、古楽器特有の弦の引きずるような音が目立つ。コープマンは決して急がず軽やかに歌わせるように指揮しており、初期の作品にはなかなか良い。編成が小さいので途中のオーボエやホルンが強めに響いており、古楽器のバランスの響きであることが分かる。後半の繰り返しも、微妙に変化を見せながら精一杯の工夫が見られ、この曲を格調高くしていた。



 第二楽章は、サヴァリッシュよりも遅いくらいのゆっくりしたテンポで、弦が短調のメランコリックな旋律を奏で、オーボエとホルンがそれに合わせるようにジュピター音形の和音を奏でる。コープマンの指揮は弦のリズミックな調子を取りながら、全体としては和音を中心に悠然と落ち着いて進行させていた。古楽器でありながら余りギスギスと弾きこまず、むしろゆったりと歌わせる奏法がこの楽章の印象を高めていた。  フィナーレに入ると、弦の踊るような小刻みな主題が飛び出し、あたかもロンド主題のようにプレストで駆けめぐる。そして次から次へと新しい楽想が現れて目まぐるしく変化しながら展開されていく。僅か2分足らずの曲なのに、モーツアルトの軽快な小宇宙が築き上げられたような、コープマンの見事な指揮ぶりが見られた。



 今回は、サヴァリッシュの伝統的な演奏スタイルの演奏と、コープマンによる最小のオーケストラ規模の古楽器による演奏とを個別に聴いてみた。映像のコレクションでは、既にカール・ベームのウイーンフイルを使った大オーケストラによる伝統的な演奏(3-1-3)と、プラハ室内合奏団の指揮者なしの合奏団による演奏(2-10-2)がアップされているので、4種類の特徴ある演奏が揃ったことになる。どの演奏をとっても、この変ホ長調の交響曲の良さを味合うことが出来そうであるが、画像の良いプラハ室内楽団は、テンポが早めでホルンの出来が今一つであった。他の三種類は、演奏はそれぞれ特徴があって素晴らしいものの画質と音質が今一つのところがあった。コープマンの演奏がデジタルで録画されれば画質音質とも最上のものとなりそうであるが、私個人の好みで敢えて一番好きなものを選ぶとすれば、ここではベームとウイーンフイルの歴史的演奏をベストのものと考えたい。

(以上)(06/07/15)


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