6-6-2、ピアノ協奏曲第20番ニ短調、K.466ピアノ:クラーンスキー、および第23番イ長調K.488、ピアノ:コチシュ、ピエロフラーヴェク指揮ヴィルテイオージ・デイ・プラハ、1990年8月、ワルトシュタイン宮殿、騎士の間、プラハ、

−クランスキーの個性的で即興性に富む逞しいニ短調協奏曲と、コチシュの軽快で颯爽とした柄に似ずきめ細かなイ長調ピアノ協奏曲−

6-6-2、ピアノ協奏曲第20番ニ短調、K.466ピアノ:クラーンスキー、および第23番イ長調K.488、ピアノ:コチシュ、ピエロフラーヴェク指揮ヴィルテイオージ・デイ・プラハ、1990年8月、ワルトシュタイン宮殿、騎士の間、プラハ、

−クランスキーの個性的で即興性に富む逞しいニ短調協奏曲と、コチシュの軽快で颯爽とした柄に似ずきめ細かなイ長調ピアノ協奏曲−

(06年04月11日、クラシカジャパンの放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)

 6月分の第二曲は、クラシカジャパンによる後期のピアノ協奏曲シリーズの一つで、ピエロフラーヴェク指揮ヴィルテイオージ・デイ・プラハというチェコの室内楽団が、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466をイヴァン・クラーンスキー(Ivan Klansky)のピアノで、また、ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488をゾルタン・コチシュ(Zoltan Kocsis)のピアノで演奏した二曲である。演奏会場は、プラハのワルトシュタイン宮殿の騎士の間で1990年8月に収録されており、どうやら91年に発売されたレーザーデスク「モーツアルト・オンツアー」の中の2曲のようである。このLDは、ごく最近にDVDで再発売されており、ピアノ協奏曲が14曲、いずれも古い宮殿の中の小劇場で収録されており、モーツアルトの協奏曲を味わうためにいずれも素晴らしい会場が選ばれていた。今年2月にプラハに行ったときに、このワルトシュタイン宮殿の前や中庭を通ってきたが、騎士の間に入ることは出来なかった。どのような会場かじっくり味わってみる必要がありそうな立派な会場のように思われた。



 天井が高く部屋の飾りが素晴らしい平戸間のホールの片面にオーケストラのヴィルテイオージ・デイ・プラハの皆さんが並び、反対側が客席になっている大きなホールでのライブ演奏であった。ピアニストのクランスキーは、私には初めての方であるが、調べると1967年ボルザーノ国際ピアノコンクールの上位入賞の経歴があり、トリオや室内楽でも活躍しているチェコのヴェテラン・ピアニストと言った風貌である。  ニ短調の協奏曲の第一楽章は、オーケストラの低いシンコペーションのリズムの第一主題で開始されるが、指揮者ピエロフラーヴェクは、終始穏やかなテンポでオーケストラを進める。ヴィルテイオージ・デイ・プラハは、2本のコントラバスをベースにした小規模な室内楽団であり、途中のオーボエとフルートで提示される主題が実に美しい。



 やがてクランスキーの独奏ピアノが登場するが、初めは実に慎重な弾き方であったが、直ぐにゆとりさえ感じさせる弾き方に変わり、笑顔を浮かべながら音を際立たせるように弾きながら導入主題を響かせる。独奏ピアノがリードする第二主題は、刻むように丁寧に美しく弾かれ、軽やかなパッセージを繰り返しながら明るく進行し、ピアノが縦横に走り回る。クランスキーは、クローズアップの映像のせいか、実に顔の表情が豊かなピアニストであるが、展開部に入ってピアノの音の強弱やテンポの急緩に合わせて楽しげに多彩な表情を見せ、次第に汗だくになる様子が良く窺えた。カデンツアは初めて聴く彼のオリジナルであり、この楽章で弾かれた主題を寄せ集めたような感じのもので、ピアノの技巧が輝くように示され、特に後半部ではピアノを力強く響かせていた。  第二楽章では、すっかり汗だくになったクランスキーが、楽しむような表情を見せながらこの上なく優しい主題を丁寧に奏でだす。大きな手でゆとりを持ってゆっくりと弾いている。オーケストラと独奏ピアノとが入れ替わりながら、再び独奏ピアノが第二主題を歌い出すが、クランスキーは一音一音確かめるように、笑いを浮かべながら歌うように弾いていた。嵐のような早い中間部では、両手が激しく鍵盤上を駆けめぐり、まだゆとりがありそうであったが、汗がしたたるような様子であった。



 フィナーレでは独奏ピアノが踊るような表情で激しく走り出すが、直ぐにテンポの速いオーケストラに渡され躍動するように力強く発展していく。新しい主題がピアノに現れ、オーケストラ・ピアノ・木管・ピアノと言うように絶えず主役が変わりながら、目まぐるしく疾走する楽章で、クランスキーは汗を拭う暇もない忙しさであった。最後のカデンツアは、左手一本で力強く始まり、そのまま左手だけで一気に弾き上げるオリジナルなもので驚かされた。クランスキーは、終始堂々と弾きまくっており、一汗かいたと言う表情を見せながら、拍手が鳴りやまぬ観衆ににこやかに挨拶をしていた。  クランスキーはピアノの表情を常に変化させる個性的なピアニストであると感じたが、カデンツアや装飾音などに即興性が発揮され、終わってみれば納得できる逞しい演奏になっていた。チェコでは、次に登場するコチシュの他にシフやラーンキなどのピアニストが著名であるが、彼らよりやや上の年代にも表に出ない実力者がいると感じさせた。




 二曲目のピアノ協奏曲第23番イ長調K.488は、名手ゾルタン・コチシュのピアノで弾かれる。同じ会場で同じ指揮者・オーケストラであり、カメラワークも同じであるので、同一のコンサートであったと思われる。この協奏曲は弦楽器の合奏で快調に開始されるが、小生にはやや速すぎるテンポであった。よく見るとコチシュはこの主題提示部でもオーケストラに合わせてピアノを弾いており、そのピアノの和音が微かに聞こえていた。やがて独奏ピアノが主題を弾き出すが、やはりテンポが早めで落ち着かない。しかし、コチシュのピアノは粒が揃ったきれいなピアノの音の連続であり、ピアノとオケとが一体になったり、競い合ったりしながら明るく輝くように進行していた。
 展開部では、新しい主題が弦で表れた後にピアノで呟くように繰り返され、さらにクラリネット、フルートと順番に相手を変えて主題を繰り返していくが、ピアノと木管が見事に揃って実に美しく主題が展開されていた。そして再現部に入るが今度はピアノが主導権を握ったように進行し、早めのテンポで目まぐるしい活躍をする。カデンツアは良く聴き慣れた通常のものを使用していた。



 一息ついてからピアノのソロで物憂げに開始されるシチリアーノのアダージョは、コチシュのペースで落ち着いて進むが、すぐにクラリネットやフルートに移行し、弦に移されて再びピアノに戻る。ピアノのソロが美しく、とても印象的に丁寧に弾かれていた。中間部のクラリネットとフルートの合奏と引き続くピアノとの掛け合いも素晴らしく、この曲の美しさを見事に再現していた。ピッチカートの伴奏が美しい最後の部分では、ピアノがこれにピッタリで実に優雅に弾かれ、この曲の一番美しい場面を印象づけてくれた。
  いきなりピアノが快調に飛び出すフィナーレのロンド楽章は、コチシュペースであり、オーケストラとピアノがピタリとあって実に気持ちがよい。次から次へとピアノで現れる副主題が魅力的であり、ソロとオーケストラが互いに競い合いながら破綻なく颯爽と進み、生き生きとしたフィナーレが展開されていた。



   コチシュはこの曲を聞く限り、大柄でもっそりとした風貌とは異なって、せわしげにキビキビと細かく動くピアニストであり、大きな手にも拘わらず音のきめが細かく感じた。演奏スタイルも、少し早めであったが軽快そのものであり、オーソドックスな弾き方をしていたが、私にはこの曲にはもっとゆったりとしたふくよかな味わいが欲しいと思った。ピエロフラーヴェクが指揮するヴィルテイオージ・デイ・プラハも、全体的に明るい爽快な演奏振りであり、名の通りの名人たちのようであった。さらにこのホールも室内楽的な協奏曲の演奏に向いた古くて豪華な見栄えのするホールであり、日本にはないヨーロッパの古式豊かな宮殿の良さを感じさせていた。

(以上)(06/06/22)


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