6-6-1、ウイーン国立OP再開50周年記念ガラコンサート、05/11/05、ウイーン国立OP、

−全員が表情豊かに暗譜でオペラ並みに歌いまくり、本物より音楽に集中できた演奏会形式の「ドン・ジョバンニ」第一幕−

6-6-1、ウイーン国立OP再開50周年記念ガラコンサート、05/11/05、ウイーン国立OP、
(曲目)序曲「レオノーレ」第3番OP.72;小澤征爾、「ドンジョバンニ」第一幕抜粋;ズービン・メータ、
「薔薇の騎士」第三幕;テイーレマン、「アイーダ」第三・四幕;ダニエル・ガッテイ、「陰のない女」第三幕;メスト、「レオノーレ」第二幕抜粋;小澤征爾、
(配役)ドン・ジョバンニ;トーマス・ハンプソン、レポレロ;フェルッチョ・フルラネット、ドンナアンナ;エデイタ・グルベローヴァ、オッターヴィオ;ミヒャエル・シャーデ、エルヴィーラ;ソイレ・イソコスキー、ツエルリーナ;イルデイコ・ライモンデイ、マゼット;ボアズ・ダニエル、
(06年03月18日、NHKハイビジョン放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードでS-VHSテープにデジタル録画)
 
 6月分の第一曲は去る3月18日にNHKのハイビジョンで放送されたウイーン国立劇場の戦後の再開後の50周年を祝う「記念ガラコンサート」であり、05年11月05日に、ウイーン国立劇場で多数のゲストを招いて盛大に行われたものである。小澤征爾が冒頭に、序曲「レオノーレ」第3番OP.72を振って開演し、次いでズービン・メータの指揮で「ドンジョバンニ」第一幕の4つの有名なアリアとフィナーレが演奏された。その後テイーレマン指揮の「薔薇の騎士」第三幕抜粋、ダニエル・ガッテイ指揮で「アイーダ」第三幕・第四幕、再びテイーレマン指揮の「マイスタージンガー」前奏曲とザックスのアリア、メスト指揮の「陰のない女」第三幕抜粋、最後に小澤征爾の指揮で「レオノーレ」第2幕の抜粋が演奏された。これら7つのオペラは、50年前の再開時に上演されたもので、それらの有名な部分を抜粋して、5人の指揮者が交代で、この日は雛壇の形をした舞台上に勢揃いしたウイーンフイルの指揮をして、多数の歌手により演奏会形式でアリアや重唱を聴かせた全体で3時間半にわたる効果満点のガラ・コンサートであった。


 ここでは、メータの指揮で「ドンジョバンニ」第一幕の4つの有名なアリアとフィナーレを取り上げるものであるが、配役はドン・ジョバンニにはトーマス・ハンプソン、レポレロはフルラネット、ドンナアンナはグルベローヴァ、エルヴィーラはソイレ・イソコスキーなど懐かしい顔も見え、ツエルリーナにはイルデイコ・ライモンデイ、マゼットがボアズ・ダニエル、オッターヴィオがミヒャエル・シャーデという若い現役たちも揃っており、この組み合わせもガラコンらしい顔合わせで面白かった。また、全員が表情豊かに体の動きを交えてレチタテイーボを含めて全て暗譜でオペラ並みに歌いまくり、よく知った曲ばかりなので演奏会形式とは言え、オペラを彷彿とさせる舞台であった。特に、第一幕フイナーレでマスクの人の三重唱などが秀逸であったので、ここでご報告したいと考えた。


 「レオノーレ」序曲第三番は小澤征爾の指揮でアダージョの序奏で始まるが、開始すると戦災に遭い折れ曲がった鉄筋と瓦礫の山の悲惨な状態の劇場が白黒の映像で映し出される。やがてフロレスタンの有名な第2幕のアリアが木管で示されてから、カラーで照明が明るい現在のオペラ劇場の内装の数々がクローズアップで美しく映し出されていく。その後小沢の指揮姿が写されて、アレグロの第一主題が颯爽と開始された。ぶ厚い和音とうねるような弦の響きが素晴らしく、最上段に一列に並んだ8台のコントラバスの姿は頼もしく壮観であった。やがてトランペットのファンファーレがかすかに響き、オペラのフィナーレを思い出しながら力強い大序曲の音像に浸ることが出来た。終わると舞台は大変な拍手で迎えられ、ガラコンの第一曲は大成功であった。トップで指揮台に上がった小沢の面目は十分に保たれ、ガラコンのフィナーレに用意された「フィデリオ」第2幕への期待が一段と高まったように思われた。




 続いてフェルッチョ・フルラネットとズービン・メータが一緒に入場し、レポレロ役のフルラネットがチェンバロの早いリズムに乗って早口のレチタテイーボを歌い始め、やがて「マダミーナ」と第四番のカタログの歌を軽快に歌い出した。朗々と歌われたアレグロに引き続きテンポを緩めてアンダンテに入りヴェテランらしい味のある歌い方で進み、ガラコンのドン・ジョバンニの第一曲を盛大な拍手の中で終了した。続いてグルベロヴァが登場し、第2幕のドンナ・アンナの第23番レチタテイーボとアリア「いいえ違います。〜私はあなたのもの」を歌い出す。童顔の顔の表情は若々しく、細い声がより細くなったような気がしたが、後半のコロラチューラの部分もしっかりと歌われて、万雷の拍手を浴び年を感じさせぬ女王ぶりを見せていた。続いてドン・ジョバンニのトーマス・ハンプソンが登場し、第11番の「シャンペンの歌」を元気よく快活に歌った。有頂天の表情を見せながら、この人にピッタリの早口で豪快に歌い切って、これも満場から大拍手を浴びていた。




   第一幕のフィナーレに入る前にマゼットのダニエルとツエルリーナのライモンデイが表情たっぷりにレチタテイーボを交わし合い、ツエルリーナが第12番のアリア「ぶってよ、マゼット」と甘い声を出して歌い出す。オブリガートのチェロが良く歌い、クローズアップでチャメ気たっぷりのライモンデイが笑顔を作りながら歌い続け、ついにはマゼットと仲直りして終わり、観衆を大いに喜ばせた。
 引き続きフィナーレ(第13番)に入り、この二人がもめだして喧嘩の二重唱をしているうちにドン・ジョバンニとレポレロが登場して皆で元気を出して踊ろうと合唱をする。アンダンテになってツエルリーナが隠れようとしているうちにドン・ジョバンニ見つけられるが、ここではマゼットが監視していて何事も起こらない。仮面を付けない三人組が登場し見守るうちに、メヌエットがゆっくりと始まり、全員で合唱となって賑やかに歌われる。




 ここで急にアダージョの厳粛な雰囲気になり、仮面のない三人組の「神よ、お守り下さい」の素晴らしい三重唱が始まった。ソプラノのグルベローヴァの透き通るような声が全体をリードしながら、三人がそれぞれに歌う三重唱は実に豊かであり、演奏会形式の方が直接的なのでより音楽的に聞こえた。
 場面は一転してオーケストラがアレグロで快活に始まり、指揮者を中心に左手に三人組、右手にドンとレポレロにマゼット組の4人が並んで、「どうぞご自由に」というご挨拶の後に「自由万歳」の大合唱となる。そしてドンの「音楽をはじめろ」の掛け声で、再びメヌエットが始まり、次いでコントルダンスが加わり、踊りを嫌がるマゼットのためか第三のワルツも加わって複雑な不安定な音楽となる。この場面でも、舞台よりも演奏会形式の方が遙かに分かりやすく聞こえていた。そして、ツエルリーナの助けての悲鳴で、踊りの音楽は中止され場面は一転する。そして、ここでは一列に並んだ歌い手がそれぞれの声の役割を演じ、レポレロを犯人にしようとしたドンの企みも三人組に見破られ、二人は行き場を失ってフィナーレのエンデイングとなった。


   凄い拍手と歓声が沸き起こり、メータはまず左の三人と握手を交わし、次いで右の4人と握手してから、奥の合唱団とオーケストラの全員を起立させて挨拶を交わした。舞台上の右端の客席に大歌手クリスタ・ルードヴィヒの姿が見え、左端にはグンドラ・ヤノヴィッツの姿があり、歌手たちが通るたびに握手や挨拶が交わされて、とても賑やかで有名人が集うガラコンの雰囲気があった。ドン・ジョバンニの第一幕のフィナーレは、第二幕のフィナーレと共に音の洪水のような複雑さに満ちているが、私は演奏会形式の映像を見たのは初めてであり、オペラの舞台で歌手の動きを追うよりも、一列に静止して歌ってくれる演奏会の方が、歌う方も聴く方も音楽に集中することが出来るので、舞台から伝わってくる音楽的な感動がより深いように感じた。


 このガラコンサートは、この後「薔薇の騎士」、「アイーダ」、「マイスタージンガー」、「陰のない女」、「レオノーレ」などのオペラ抜粋が延々と繰り広げられたが、終わると歌手陣が全員舞台に一人一人登場して挨拶をしたので、大変に賑やかであり、歌手の人気を計る物差しになったような気がした。最後には小沢征爾を筆頭に5人の指揮者が一斉に登場して終わりとなったが、この記念コンサートでなければ味わえぬ豪華な雰囲気に充ち満ちていた。各オペラに登場して歌った歌手陣は、国立OPと親しい方々であるので、参考までに以下にリストアップすることにして、このソフト紹介を終えることにしたい。

「薔薇の騎士」第三幕(配役)元帥夫人;イソコスキー、オクタヴィアン;アンゲリカ・キルヒシュラーガー、ゾフィー;ケニア・キューマイヤー、ファニナル;ゲオルク・テイッヒ、
「アイーダ」(配役)第三幕アイーダ;ヴィオレタ・ウルマチ、ラダメス;ヨハン・ボータ、アムネリス;ナデイア・クラステワ、アムナズロ;フランツ・クルントヘーバー、ランフイス;フルラネット、第四幕ラダメス;プラシド・ドミンゴ、アムネリス;アグネス・バルツア、
「マイスタージンガー」(配役)ザックス;ブリン・ターフェル、
「陰のない女」第三幕(配役)バラクの妻;デボラ・ボラスキ、染物師バラク;ファルク・シュトルツクマン、皇后;リカルダ・メルベト、皇帝;ヨハン・ボータ、
「レオノーレ」第2幕(配役)フェルナンド;トマス・ハンプソン、ピッツアロ;ファルク・シュトルツクマン、フロレスタン;ヨハン・ボータ、フィデリオ;デボラ・ボラスキ、ロッコ;ワルター・フィンク、マルツエリーネ;イルデイコ・ライモンデイ、ヤキーノ;ヘルヴィヒ・ペユラロ、

(以上)(06/06/16)

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