6-5-1、ムーテイとミラノ・スカラ座の「魔笛」K.620、95年12月、演出;シモーネ、ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団、

−主役に歌も演技も出来る役者を揃えた安心して見ていれるムーテイの本場スカラ座の「魔笛」−

6-5-1、ムーテイとミラノ・スカラ座の「魔笛」K.620、95年12月、演出;シモーネ、ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団、
(配役)タミーノ;ポール・グローヴス、パミーナ;アンドレア・ロスト、パパゲーノ;サイモン・キーンリサイド、ザラストロ;マテイアス・ヘレ、夜の女王;ヴィクトリア・ルキアネッツ、パパゲーナ;リサ・ラルソンほか、
−主役に歌も演技も出来る役者を揃えた安心して見ていれるムーテイの本場スカラ座の「魔笛」−
(06年03月04日、クラシカジャパンのCS放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードでS-VHSテープにデジタル録画) 


 5月分のソフト紹介では、第一曲目には、クラシカジャパンの3月のCS初放送として目玉ソフトとして扱われていたムーテイとミラノ・スカラ座におけるシモーネ演出の「魔笛」をお届けする。パンフにはパミーナとパパゲーノに世界的スターであるアンドレア・ロストとサイモン・キーンリサイドを筆頭に、グローヴス(タミーノ)、ヘレ(ザラストロ)、ラルソン(パパゲーナ)ルキアネッツ(夜の女王)など歌・演技・容姿の三拍子揃った歌手が出演すると紹介されていた。しかし、調べてみると私のデータベースでは、この映像はかって95年12月にNHKのBS11で放送されており、S-VHSに収録してあった。今回の映像が非常に暗い画面であり前半で音が歪みがちだったので、95年の映像にしては状態が良くないと判断して、古いS-VHSを取り出して再生して比較してみたが、むしろ今回のクラシカジャパンの方が良い状態であった。

 まだメガネをかけていない元気なムーテイが登場し、直ぐに序曲が始まる。ゆっくりした三つの和音が壮大に響き渡り、対照的に弦の刻むような速い動きで軽快に序曲が進行し、ムーテイのキビキビした指揮ぶりが映し出される。その間に映像では主役の出演者のほか、三人の従女、三人の僧侶なども顔写真入りで丁寧に氏名が紹介されていた。  序曲に続いて直ぐに幕が開き、雷鳴が激しい暗い画面の中でタミーノが怪物に追われ、まさに飲み込まれようとした瞬間に、槍を手にした三人の従女が岩山に現れ、怪物が倒されてしまう。画面は非常に暗いのであるが、どうやら大きな洞穴がある小山のような岩山を利用したメルヘン風の演出に見えた。三人の従女の歌声がやや歪んでかすれ気味に聞こえ残念であったが、この歪みはどうしてか第一幕が終わるまで続いていたようであった。



 剽軽な格好をした動きの良いパパゲーノが笛を吹きながら現れ、身軽に体を動かしながら鳥刺しの歌を歌う。次いで、見かけはごついが精悍な顔つきをしたタミーノが手鏡を渡され、絵姿のアリアを歌うが、ゆっくりと朗々と歌われて拍手を浴びていた。そこへ凄い雷鳴が轟いて舞台が一変し、夜の女王がせり上りで登場し、月夜の暗闇の中でタミーノに歌いかける。コロラチューラは劇的ではあったが、後半の早いロンドで声が上ずり、最高音はきつそうであった。魔法の笛と銀の鈴を手にしたタミーノとパパゲーノが三人の従女と五重唱を歌い、続いて三人の童子に導かれてパミーノを探しに出発する。舞台は一変して明るくなり、モノスタトスがパミーナを虐めており、やがてパミーナとパパゲーノの二重唱が始まるが、このロストとキーンリサイドの歌が見事に合って実に素晴らしい。どうやら、この「魔笛」の世界にはまってしまったようである。



 フィナーレに入ってタミーノが三人の童子に導かれ、暗い洞窟の中の神殿で弁者と禅問答を繰り返えした後に、パミーナは生きているという合唱の声に勇気づけられ、魔法の笛を吹き出すと動物たちが踊り出し、やがてパパゲーノがこれに答えるようになる。パパゲーノもパミーナとともに現れ、銀の鈴によりモノスタトスと仲間達を踊らせるうちに、テインパニーとトランペットの強奏による行進曲に乗って万歳の合唱の声とともにザラストロが登場する。ザラストロの声は凛として声量があり堂々と響き渡り貫禄十分。タミーノとパミーナが初めて目を合わせ互いに確かめ合って第一幕が終了する。



 第二幕は僧侶達の行進に始まり、厳かに響き渡る三つの和音が繰り返される。ザラストロが崩れた円柱のある廃墟で歌うイシスとオリシスの神に祈るアリアは、敬虔で格調高く歌われ、合唱も厳かで非常に感動的であった。暗い闇の中で、タミーノとパパゲーノの試練が始まり、うるさい三人の従女を雷鳴とともに奈落に追い払い次へと進む。第二幕では歪みがちであった音質が改善され、三人の従女の合唱も全く問題がなくすっきり再生された。モノスタトスが横になっているパミーナを見つけ唯一のアリアを歌った後、雷鳴とともに夜の女王が現れてパミーナに短剣を渡して死と絶望のアリアを歌う。このアリアはコロラチューラも良く決まって後半もほぼ完璧な出来で見事であった。



 パミーナに纏わり付くモノスタトスをザラストロが追い払い、パミーナを前にしてザラストロが歌う15番のアリアは堂々として厳かに響き快調であった。「18歳と2分」というパパゲーノと婆さんとの駄洒落が長すぎてウンザリした後、三人の童子の空を飛ぶ船からの「口を訊くな」と注意する三重唱が透明に聞こえとても美しかった。タミーノが吹く笛の音を聞きつけてパミーナが現れるが話が出来ず、パミーナはタミーノを前にして絶望の悲しみのアリアを歌う。また、襲ってきたライオンを笛で追い払い凛とした姿勢を示したタミーノに対し、僧侶達が18番の合唱を歌い、タミーノを歓迎する合唱のように聞こえた。ワインを片手にグロッケンシュピールを伴奏に歌うパパゲーノのアリアが三度繰り返され、握手した途端に婆さんが若いパパゲーノに変身するさまはとても楽しい。



 フィナーレに入って三人の童子が歌い出しパミーナの様子を見ながら自殺を思い止めさせる。厳かな雰囲気の中でタミーノが二人の鎧をつけた衛兵のコラール伴奏で試練を受け、更に男らしく前へ進もうとする。そこへパミーナが駆けつけて二人は再会を許され、「私のタミーノ」と互いに呼び合って、二人の愛と魔法の笛の音楽とによって恐ろしい次の試練を乗り越えようとする。試練は地下に潜って行われ、火の中、水の中での試練を乗り切って二人は成功する。一方、パパゲーノも銀の鈴を鳴らすことを教わって、首吊りを免れて「パパパ」とパパゲーノとの劇的な再会に成功する。夜の女王一行が雷鳴とともに暗闇に追い払われ、太陽の明るい輝きのもとでタミーノとパミーナが僧侶の大合唱の中で結ばれ、厳かな盛大な合唱とともに大団円となった。超満員のスカラ座の中で、カーテンコールが続く中でムーテイが一人で出てきて挨拶をし、さすがムーテイはスカラ座では顔であると実感させられた。

  

 この魔笛は映像としては全体として暗いイメージであるが、スカラ座の広い舞台を活用したメルヘン風の演出であり、フリーメースン的演出も加わってスカラ座の伝統的な舞台であろうと思われた。しかし、二本足の動物たちがザラストロ軍団の一味で、試練の仕事に参加したり、二人の衛兵の登場する場面でもタミーノが試練を受けていたり、タミーノがライオンを笛で追い払うなど目新しい場面も多かった。タミーノ・パミーナが揃っており、パパゲーノのキーンリサイドが歌も動きも超一流であり、ザラストロも夜の女王もまずまずの出来であって、全体的には楽しめる立派な舞台であると感じた。

   05年8月のザルツブルグ音楽祭でムーテイの「魔笛」を見てきたが、演出がヴィックの超モダンなものだったので、ムーテイの音楽までも毒されてしまったように感じてきたが、今年のムーテイの「魔笛」は演出が変わると報じられ安心した。また、06年1月27日に演奏された生誕250年の記念コンサートのフィナーレで、ムーテイ・ウイーンフイルによる「魔笛」の僧侶の大合唱が演奏されたが、この映像に負けないくらい堂々として素晴らしく感動的であったことを思い出した。やはりムーテイは伝統的な演出にこそ彼の力量が発揮されるものと思われる。

(以上)(06/05/15)


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