6-4-3、プロムシュテッドとN響による交響曲ハ長調(第34番)K.338およびハ短調ミサ曲K.427、 06年02月03日、NHKホール、第1560回N響定期演奏、

−ブロムシュテッドとN響による力強く軽快なザルツブルグシンフォニーと、ソリスト達及び大合唱団に恵まれた壮大で豊かに響いたハ短調ミサ曲−

6-4-3、プロムシュテッドとN響による交響曲ハ長調(第34番)K.338およびハ短調ミサ曲K.427、 06年02月03日、NHKホール、第1560回N響定期演奏、
(ソリスト)幸田浩子(S)、半田美和子(S)、福井敬(T)、河野克典、国立音大合唱団、
(06年02月10日、NHKによるBS2放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)

−ブロムシュテッドとN響による力強く軽快なザルツブルグシンフォニーと、ソリスト達及び大合唱団に恵まれた壮大で豊かに響いたハ短調ミサ曲−


 4月分の第三曲目は、06年02月03日にNHKホールで演奏された最新のN響定期1560回の演奏会で、ヘルベルト・ブロムシュテッド(1927〜)の指揮による交響曲第34番ハ長調K.338とこの日の本命であるハ短調ミサ曲K.427の2曲をお届けする。このN響によるオールモーツアルト・プログラムは、生誕250年を意識したものに違いない。初めのシンフォニーはこのホームページでは、初めてアップするので期待していた。また、ハ短調ミサ曲では若手で活躍が期待されている二人のソプラノの幸田浩子と半田美和子が出演しているので楽しみであった。プロムシュテッドは久し振りのN響の指揮であり、宗教曲を得意にしている指揮者であるほか、ハ短調ミサ曲がこのホームページで久し振りの登場なので大いに期待していただきたいと思う。 

 初めの交響曲ハ長調(第34番)K.338は、ザルツブルグ時代の最後のシンフォニーであるが、3楽章形式の全てがソナタ形式で作曲されており、N響は3本のベースを軸にテインパニーとトランペットを加えた重厚な編成であった。第一楽章は、総奏のユニゾンで始まりトリルを持つ軽やかな主題が弦楽器で走り出す生き生きとしたアレグロ・ヴィヴァーチェであるが、ブロムシュテットは指揮台無し、指揮棒なしで、体でリズムを取りながら楽しげな表情で快調に進めていた。やがて弦が歌い出す第二主題へと移行していくが、この提示部には繰り返しがないようで、引き続き新しいテーマによる展開部がユニゾンで始まり、聴くものを驚かす。この曲の再現部はとても充実しており、プロムシュテッドは後半に緊迫感を保ちながら壮大に盛り上げて見事に終結させていた。




 第二楽章は弦楽器だけの物静かなアンダンテであり、ブロムシュテッドはゆったりとしたテンポで陰影をつけながら歌うように進め、リズミックな第二主題でも明るさを保ちながら優美に歌わせていた。対照的にユニゾンで力強く始まる急速なフィナーレでは、軽快な6拍子のリズムが快く、この楽章全体を支配しており、これぞモーツアルトアレグロの典型かと思わせる。第二主題も同じリズムで進行し、特徴あるオーボエの響きに加速されるように進むのが極めて印象的であった。久し振りに見たブロムシュテッドは80歳近いお年には見えぬ軽快な指揮ぶりで、この急速に進むフィナーレを楽しげに締めくくっていた。大変な拍手で何回も呼び出され、その変わらぬ健在ぶりには、休憩後のハ短調ミサ曲への期待がますます高まったように見えた。




 オーケストラの配置が変わりベースが4本になり、3本のトロンボーンとバロックオルガンなどが加わった。国立音大の合唱団が入場を始めるが、何と男性がざっと40人、女性が60人の大合唱団である。今度は指揮台が置かれ、コンサートマスターは客演のペーター・ミリング氏であった。青いドレスの幸田浩子などソリストが入場し、オーケストラと合唱団の間に座った。美しい弦の前奏が開始され女声合唱のキリエの歌声が哀愁を帯びて歌われ、男声合唱が加わって次第に力を増し高みに登るが、ブロムシュテッドは、古楽指揮者のように両手を使って一音一音刻むように指揮をしていた。やがて青いドレスの幸田浩子がクリステ・エレイスンを歌い始め、彼女の明るく澄んだ細い声が良く通り、この大ミサ曲の開始を告げていた。キリエの後半では、壮大なオーケストラと大合唱により深い響きを聞かせていた。

 グロリアは、アレグロの大合唱による迫力ある始まりであり、神への栄光を讃える晴れやかな音調に満ちていた。続いては第二ソプラノの半田美和子のコロラチューラが華やかにコンチェルタントに歌われ、オーケストラもリズミックに伴奏し、転がるような高い声とオーボエとが上手く重なって美しかった。グラテイアスでは、アダージョで二部に分かれたソプラノの荘重な響きが印象的であった。続く二人のソプラノにより歌われる二重唱は、神を讃える壮麗な美しい響きを持っており、後半の二人が競い合うように高い音を繋げるカノン風の二重唱は最高の美しさを持っていた。
 一転してクイトリスの二重の合唱団による重々しい荘重なラルゴは、重苦しい受難を思わせるように力強く響き、重々しく喘ぐように進む。ブロムシュテッドは、一音一音自分でも歌いながら心を込めて指揮をしており、大合唱団による威力が発揮されていた。続くクオニアムでは二人のソプラノにテノールを加えた三重唱で、ソプラノから順に加わりながら明るく歌い継がれていき、後半ではフーガ風に重唱されオアシスのような明るさを見せていた。グロリアの最後は、「イエスキリストよ」と歌われる全合唱と全オーケストラが参加するアダージョの重々しい序奏に続き、最後にはアーメンとフーガで斉唱される壮大な合唱となり、素晴らしい迫力でグロリアの神への賛歌が歌われた。




 小休止の後、クレドと叫ぶ力強い合唱と弦の合奏が交錯する賑やかなアレグロで始まり、ソプラノが二部に分かれて五部合唱でリズミックに歌われていた。続いてオルガンと弦の前奏のあとオーボエとフルートとファゴットによりエト・インカルナタス・エストの導入部が始められ、幸田浩子のソプラノにより明るく高らかに歌われた。幸田の細い透き通るような美声が玉を転がすように響き、まるで彼女のために作られたかのように歌われた。コロラチューラの部分ではオーボエのオブリガートがこれを模倣するように重なり、最後のカデンツアでは声と木管の見事な四重奏が繰り広げられていた。
 サンクトウスでは「聖なるかな」の大合唱とトロンボーンなどオーケストラとの合奏で三度厳かに歌われ、荘厳なホザンナの大合唱になる。最後のベネデイクトスでは、弦と木管のアレグロの前奏に続いてソプラノから順にバスも加わったソリスト達の四重唱となり、とても盛大に歌われた。やがてホザンナに入り、カノンで繰り返される大合唱がフーガ風に歌われ、壮大に盛り上がりを見せてこのホザンナでミサは終結する。中途半端な終わり方であるが、言葉が分からない演奏会形式であり、直ぐ拍手が入ってしまったため、この映像としては、アニュスデイがなくともこの荘厳な大合唱で十分に満ち足りた感じがした。




 凄い拍手で場内は溢れかえるようであったが、ソリスト4人と合唱指揮者2人とブロムシュテッドが何度も呼び出され、最後にはオペラ並みのカーテンコールが繰り返されていた。このハ短調ミサ曲は、最近よく使われるエーダー版で演奏されていて馴染みやすかったこと、100人近い大合唱団により力強い大合唱が繰り返されたこと、ソプラノ二人を中心とするソリストのレベルが高かったことが特筆される。また、宗教曲を得意とする指揮者が口ずさみながら、十分な間合いを取ってじっくりと取り組んでいたし、N響の弦楽器も素晴らしく、オーボエを初めとする木管や金管が良く揃い、十分に指揮者に応えていた。以上のことから、このミサ曲の大規模な演奏効果を狙ったライブの映像としては、かなり高い水準にあるものと思われ、同じ効果を習った過去の映像や録音に比べて余り遜色のない出来映えであったと思われる。

(以上)(06/04/24)


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