6-4-2、ジェフェリー・テイトとイギリスCOの「ジュピター」交響曲ハ長調K.551シェンブルン宮殿、およびゲルト・アルブレヒトとドイツカンマーフイルの「プラハ」交響曲ニ長調K.504、90年12月クリステイアン・ツアイス・ザール(ヴィースバーデン)

−テートとアルブレヒトが室内楽団を指揮した、正面から取り組んだ伝統的な演奏スタイルのモーツアルト−

6-4-2、ジェフェリー・テイトとイギリスCOの「ジュピター」交響曲ハ長調K.551シェンブルン宮殿、およびゲルト・アルブレヒトとドイツカンマーフイルの「プラハ」交響曲ニ長調K.504、90年12月クリステイアン・ツアイス・ザール(ヴィースバーデン)
(06年01月01日、クラシカジャパンの放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)

−テートとアルブレヒトが室内楽団を指揮した、正面から取り組んだ伝統的な演奏スタイルのモーツアルト−


4月分の第二曲目は、3月にご報告したジェフェリー・テイトとイギリスCOのシェーンブルン宮殿コンサートの最終曲、ジュピター交響曲ハ長調K.551であり、これに加えて、ゲルト・アルブレヒトとドイツカンマーフイルによるプラハ交響曲ニ長調K.504の2曲をお届けする。テイトのジュピターについては、先月のシェーンブルン宮殿コンサート(6-3-3)に引き続いて演奏されたものである。また、アルブレヒトについては、現在では読響の常任指揮者として、特にモーツアルトの特別コンサートを企画するなどモーツアルトに造詣が深く、チェコフイル・プラハ室内楽団などとも共演することで知られている。しかし、この映像は90年12月2日のヴィスバーデンのクリステイアン・ツアイス・ザールという宮殿風の会場でドイツ・カンマー・フイルハーモニーを指揮したものであり、日本に来るかなり以前の映像であると思われる。2曲とも正面から取り組んだ伝統的な演奏スタイルのモーツアルトであり、いずれも30〜50人の室内管弦楽団であることと、宮殿のような装飾が多く天井が低い多目的なホールを使っていることなどに特徴があろう。





 テイトのジュピター交響曲はベース2本の手慣れた室内楽団による演奏であり、第一楽章の冒頭からゆっくりしたテンポの伝統的解釈によるジュピターであったが、やや音の厚みが不足する面があった。第一主題が堂々と進行し繰りかえされてから軽快な第二主題に移行するが、その後半にアリア風の軽やかな第三主題とでも言うべき主題で結ばれる。そして展開部でもこの主題が繰り返し展開され印象ずけられる。調べてみるとこの軽快な主題は、K.541の僅か2分足らずのバスのアリエッタであるが、この交響曲の日付のおよそ2ヶ月前に作曲された親しみやすい旋律であった。注意してよく聴くとこのようなことが時々行なわれている。




 第二楽章は、弦楽器による静かな歌うようなアンダンテであるが、テイトは体全体を使ってゆっくり歌わせており、時には顔の表情まで使って指揮をしている。この楽章でも各所でオーボエやフルートと弦の対話が美しい。メヌエットではこの曲に相応しく威風堂々と進行するが、テイトは後半の二つのオーボエを良く歌わせていた。一風変わったトリオも力強くこの壮大なメヌエットを力強く支えていた。
 フィナーレでは、冒頭からドレファミの音形を伴った力強い主題が軽快なテンポで繰り広げられ、さらにフーガの技法によって調和と混沌の複雑な世界に引きずり込まれる。この楽章の展開部は冒頭主題を多声的に用いた複雑さを持つが、テートは終始テンポを動かさずに各パーツの緊張を高めながら複雑な動きを制御していた。この楽章の最後の高まりも堂々としており壮大な盛り上がりを見せていた。


 テイトのこの演奏は、どの楽章を取っても正統的な進め方であり、安心して音像に浸れるが、強い個性的なところがなく教科書的な感じで推移していた。オーケストラの響きも強烈さが少ないので、多少音量を高めにセットする必要があった。


   第二曲目のアルブレヒト指揮のドイツカンマーフイルハーモニーによる「プラハ」交響曲ニ長調K.504は、3本のベースを中心とした40〜50人のオーケストラであり、冒頭の序奏から重厚な迫力ある響きを聞かせていた。序奏はゆっくりしたテンポで始まり、次第に緊張した高まりを見せながら終息してから、第一主題が軽快に弦楽器で開始される。アルブレヒトは、古楽器指揮者のように指揮棒を持たずに、両手を使って小刻みに指揮をしていた。展開部では長い第一主題の断片が次ぎつぎに対位法的な変化を見せ、アルブレヒトは入念にこの長大で充実した展開部をこなしていた。オーケストラの規模は大きくないが、終始堂々として厚みのある音を響かせていた。




 第二楽章のアンダンテでは、第一主題がゆっくりしたテンポで弦楽器により静かに歌い出され、美しい動機による経過部を経て第二主題が弦により提示される。軽やかな主題でフルートやオーボエが弦と対話しながら進行していた。アルブレヒトは、両手を細やかに使い体の動きを使いながら、細心の注意を払って奏者を制御していた。
 プレストのフィナーレでは、冒頭の主題がオペラの「フィガロ」の旋律に極似しており、ロンド主題として速いテンポで小刻みに進行する。ジュピター交響曲と同様に調べてみると、第二幕のスザンナとケルビーノの二重唱「早く開けて」の旋律にとても良く似ていた。この曲も「フィガロ」の作曲の直後に書かれており、この旋律が頭の片隅にあったに相違ない。第二主題でも弦と管の美しい対話が目まぐるしいが、中でもフルートとオーボエがの活躍が際立っていた。
 アルブレヒトの指揮ぶりは、シンフォニー全体を通じて、整然とした重厚な指揮ぶりであり、オーケストラに信頼されている指揮者であるという感じがした。この交響曲は三楽章形式であるが、終わってみればそれを感じさせない充足感があり、形ばかりのメヌエット楽章は無くても、第一・第三楽章が充実していれば、それなりに満足できるように思われる。



 今回の二つの交響曲は、このホームページにとってはいずれも初出のソフトではあるが、評価する自分にとっては、過去にS-VHSに収録済みのものであって、新ソフトではなく、たまたまクラシカジャパンで特集的に放送されたものを、前後の脈絡がないまま、二つを一緒に取り上げたものである。過去に収録済みのソフトを沢山紹介していくためには、このように数曲をまとめてアップしていく必要があり、タイムリーさに欠ける面があることは承知の上ではあるが、お許し願いたいと思う。

(以上)(06/04/23)


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