6-3-2、フレイジャーのピアノとアンドレーエ指揮TSIのピアノ協奏曲第5番ニ長調K.175ピピエーナ学術劇場89年4月、及びツアハリアスのピアノとジェルメッテイ指揮のシュトウットガルトRSOのピアノ協奏曲第6番変ロ長調K.238、89年5月シュヴェツインゲン宮殿ロココ劇場、


−明るくギャラントな輝きに満ちた第5番、軽快で歌謡的な渋さが目立つ第6番もともにまずまずの演奏であった−


6-3-2、フレイジャーのピアノとアンドレーエ指揮TSIのピアノ協奏曲第5番ニ長調K.175ピピエーナ学術劇場89年4月、及びツアハリアスのピアノとジェルメッテイ指揮のシュトウットガルトRSOのピアノ協奏曲第6番変ロ長調K.238、89年5月シュヴェツインゲン宮殿ロココ劇場、
−明るくギャラントな輝きに満ちた第5番、軽快で歌謡的な渋さが目立つ第6番もともにまずまずの演奏であった−
(06年1月8日、クラシカジャパンのCS放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)
 

 三月分の第2曲は、これもこのホームページで初出のもので、ピアノ協奏曲第5番K.175と第6番K.238の2曲である。演奏者も収録場所も異なる二つの映像を、モーツアルトの作品順に放送したものをそのまま収録したものであるが、初期の作品は演奏機会が少ないので貴重な記録であろうと考えている。この2曲の映像は、いずれも91年のモーツアルトイヤーの際に発売された「モーツアルト・オンツアー」と題したレーザーデイスクのピアノ協奏曲シリーズに含まれていたものである。ピアノ協奏曲は、20番台の円熟した作品よりも若い作品の方が先に「映像のコレクション」に登場してしまうが、24番〜27番のピアノ協奏曲のクラシカジャパンの1月特集を、ザルツブルグ行きのために留守録出来なかったので、再放送されるまでもう暫くお待ちいただきたいと思う。

 最初の曲は、スイス・イタリア語放送管弦楽団の本拠地ピピエーナ学術劇場ホールで収録されているが、2曲目は04年に現地で見てきたシュヴェツインゲン宮殿のロココ劇場で収録されているので、劇場の響きや装飾や壁画などがどう写されるか楽しみであった。「モーツアルト・オンツアー」は、アンドレ・プレヴィンが監修したようであるが、20曲近い協奏曲のピアニスト、指揮者、オーケストラ、演奏ホールが異なっており、18世紀頃の古い領主や貴族の宮殿みたいなホールを演奏会場にしていたので、映像を見るのに別の楽しみがあった。



 ピアノ協奏曲第5番ニ長調K.175は、最初の協奏曲らしく三楽章とも協奏ソナタ形式の枠組みをキチンと守って作曲されているが、全体的な印象は、軽快なイタリア風のギャラントなスタイルを持った耳に快く響く曲と言えよう。第一楽章は歯切れ良く快調なテンポでオーケストラにより第一・第二主題が提示されてから、独奏ピアノによりオーケストラの伴奏で両主題がキチンと繰り返され、とても分かり易い。フレイジャーのピアノは他のCDなどと比べると明るさや伸びやかさがやや不足気味であるが、しっかりと弾いている。画像は照明のせいか非常に暗く、画像のアングルも限定されていて、映像としては面白みのない平凡な出来であった。展開部は独奏ピアノのトレモロで入り、第一主題の冒頭部分が繰り返し技巧的なピアノで展開され、フレイジャーのピアノの出番が来たように鍵盤が写される。カデンツアも第一主題の変形が中心で自筆譜によるものであった。

 第二楽章は歌うようなアンダンテの主題がオーケストラで始まり、型通りピアノが変形を加えながら反復しており、相づちを打つようなホルンの響きが面白い。カデンツアでは第二主題のモチーブが使われていた。フィナーレは元気の良いアレグロの力強い主題が軽快にオーケストラで流れ出し、主題提示後に独奏ピアノが主題をカノン風に変形して進行する。展開部では冒頭主題がピアノにより繰り返し反復され、ピアノの力強さと技巧的なパッセージが示されていた。モーツアルトはウイーン時代にこの楽章をウイーンの聴衆好みに新しく作り直しているが、この原曲のフィナーレも素晴らしいものであり、新しいフィナーレのロンド楽章K.382は、やはり独立した曲のような感じがする。




   アンドレーエの指揮とフレイジャーのピアノは、これ一曲しか聴いていないが、型通りの演奏という感じで、もっと軽やかで爽やかな良い演奏がありそうな気がした。後日紹介したいと思うが、リヒテルの実直な演奏の方が好ましく思った。なお、フレイジャーは、録音後に急逝したピアニストのようである。

 ピアノ協奏曲第6番K.238は、1776年1月に作曲され、前曲第5番K.175からおよそ2年後に書かれており、さらに2月には第7番が、そして4月には第8番が完成されている。その前年にはヴァイオリン協奏曲が5曲も作曲されており、協奏曲の作品が目立つようになってきている。
 ジェルメッテイ指揮のシュトウットガルト放送交響楽団と言えば、シュヴェツインゲン音楽祭の中心的存在であり、音楽祭と言えばここの宮殿のロココ劇場を思い出すが、このピアノ協奏曲第6番K.238はツアハリアスのピアノでこの有名な劇場で演奏されている。



 この曲も第一楽章は型どおりの協奏ソナタ形式で、第二楽章は展開部のないソナタ形式で書かれている。第一楽章では、軽快で歌うような優しい第一主題で始まり直ぐに可愛らしい第二主題に移って一通りオーケストラで主題提示が行われてから、独奏ピアノが主導的にオーケストラ伴奏で第一・第二主題を提示していく。やがて展開部ではソロピアノが新しい主題を出しながら技巧を発揮してオーケストラを従えて弾きっぱなしのように目まぐるしく活躍する。ツアハリアスは体を上下左右に揺らしながら淡々と、そして技術的なゆとりを持って弾きこなしており全く安心して見ておれるピアニストであった。カデンツは短いが装飾の多いものを使っていた。

   第二楽章も歌謡風でオーケストラで始まりピッチカートが伴奏してゆくが、ソロピアノに直ぐ引き継がれ、弦により始まりピアノが引き継ぐ第二主題に移行していく静かなアンダンテである。ピアノが主体的な楽章なのでツアハリアスのピアノが見もので、最後の静かなカデンツアでのピアノの高音の玉を転がすような美しさにはウットリさせられる。フィナーレは、ピアノで始まりオーケストラが応えるロンド主題で始まり、型通りのロンド形式で軽快に進行する。中間部もピアノが主体の美しいエピソードが提示され、軽快にリズミックに進行するロンドであった。




 初期の2曲の協奏曲を聞き終わって、曲の作りは第5番の方が明るくよりギャラントな色彩に満ちていたが、演奏は第6番のツアハリアスのピアノの方が軽快で、技巧的にも冴えており心地よく、安心して聴くことが出来た。

 シュヴェツインゲンの評判のロココ劇場での演奏であったが、照明が非常に暗く、指揮者とソリストを映し出すのが精一杯であり、劇場内の装飾や天井画などは殆ど映し出せず誠に残念であった。やはり教会やオペラ劇場などの建物内の造形は、新しいハイビジョンカメラが入らなければ満足できる映像は得られないような気がした。なお、この映像のLDの「モーツアルト・オンツアー」は、DVD6枚組で250年記念として2万円で再発売されており、内容から見るとお買い得のモーツアルテイアン必携の映像であると思われる。

(以上)(06/03/26) 


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