6-3-1、ジングシュピール「バステイアンとバステイエンヌ」K.50、 2004年テアトル・デ・ブッフォ=パリジャン、ニコラ・ポルト指揮ルアン室内楽団による弦楽四重奏、


−リヨンの子供達によるフランス語版・弦楽四重奏版のフランス流のジングシュピール−


6-3-1、ジングシュピール「バステイアンとバステイエンヌ」K.50、 2004年テアトル・デ・ブッフォ=パリジャン、ニコラ・ポルト指揮ルアン室内楽団による弦楽四重奏、
(配役)バステイアン;エマニュエル・リゾ、バステイエンヌ;エルザ・ジュルネル、コラ;シリル・リゴーニュ、演出;ハロルド・デイビッド、
(06年01月14日、クラシカジャパンのCS放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードでS-VHSテープにデジタル録画)

−リヨンの子供達によるフランス語版・弦楽四重奏版のフランス流のジングシュピール−


 三月分の第1曲は、このホームページで初出の少年時代のオペラ「バステイアンとバステイエンヌ」K.50である。私はこの曲は、レオポルド・ハーガーのモーツアルテウムを指揮し、エデイット・マテイスが歌った生真面目な懐かしいLPと、ハラー指揮のウイーン少年合唱団の歌ったとても明るく楽しいフイリップスのCDを持っているだけで、映像は勿論今回が初めてであった。



   この映像では、舞台上にある小舞台で主役の三人が演技するのを、取り囲むようにしてまわりで見ている子供達がおり、その子供達を喜ばせたり悲しませたりしながら進行していく舞台を巧みに映像化している。そのため見て喜ぶ子供達の目線で演出されており、さすがフランスものは芸が細かいと感心した。演奏は三人の10代の歌手と子供たちが合唱団をかねており、ルアン室内楽団のメンバーの弦楽四重奏によって行われている。また、冒頭から4つのカメラを使ったり、映像化の際に風景画やアニメ的なものを取り入れたりして、舞台だけでは不足するものを補っていた。



 12歳の少年が作曲した1幕もののドイツ古来のジングシュピールであるが、この映像では、フランス語で歌われたフランスの子供たちが演じているのが特徴であると思われる。しかしながら、このオペラは、当時フランスで盛んに行われ、ウイーンにも輸入されていたルソー(1712〜1778)の作詞・作曲した歌劇「村の占い師」などフランスの喜歌劇とも様々な点で密接なつながりがあったと言われており、今回の舞台も多分にフランス風にパロデイ化されているので、映像を見る限り不自然さは余り感じなかった。

   ベートーヴェンの「英雄」を思わせるメロデイの序曲が弦楽四重奏で始まると、画面では四重奏の演奏や、影絵による舞台の様子や風景画など四面が映し出され、演奏者の紹介があったり、元気な子供たちの歓声が聞こえてきてビックリする。やがて影絵により舞台が写され、どうやらバステイアンとバステイエンヌとが喧嘩している様子で序曲が終わる。第一曲は羊飼いの娘のバステイエンヌが登場し、恋人が冷たくなったと悩みながら美しいアリアをゆっくりと歌う。「冷たくなるなんて酷い人ね」といい、舞台を見ている子供たちに賛同を求め、寂しいので羊に会いに行こうと第二曲を歌う。そこへ占い師のコラが登場。彼は子供たちの人気者である。恋の悩みに気がつき親切に何でもお聞きと歌う。バステイエンヌは、昔は良かったのにバステイアンが冷たくなったと歌い、コラが「彼は都会の娘が好きになった」と教えると、「私も浮気をしようかしら」と明るく第六曲を歌う。

 コラは「少し冷たくすればいい、パリの婦人はそうしているぞ」と教え、初め嫌がっていたバステイエンヌも納得し、第七曲の後半は承諾の二重唱となった。コラが一人になったところへバステイアンがやっと第八曲目に満を持して登場する。彼は子供たちの人気者であり、コラにお礼を言いながら「バステイエンヌの愛だけが喜びだ」と真面目に歌う。コラが「バステイエンヌには好きな子がいるぞ」と言えば、バステイアンは転げるばかりに驚いて「それは嘘でしょう」と歌い出す。コラがバステイアンを占ってやろうと不思議な呪文を唱え、子供たちも喜んで第十曲の呪文の歌を合唱する。そしてそのうちに彼女に会えるから、会ったら優しくしてやれと耳打ちする。



   バステイアンは、「愛しい彼女の頬だけが、僕の望みを持たせてくれる」ともの悲しそうに歌う第十一曲目のメヌエットがとても美しく印象的で、合唱でも繰り返される。なお、この曲には歌詞を少し変えたリート「ダフネよ、お前のバラ色の頬に」K.46cが残されている。そこへバステイエンヌがやって来て、「彼は昔は誠実だったのに」と互いに心情を語るが、顔を合わせると互いに拗ねて噛み合わず、「僕はお城に行こう」、「私は街へ行こう」と対立した第十三曲目の二重唱になってしまう。バステイアンが、「君が僕を困らせるなら、川に飛び込むか首を吊るかだ」とアリオーソで脅しても、バステイエンヌはまだ頑張っている。



 二人でやり合っているうちに、二人とも気持ちは次第に歩み寄って、もう一度やり直そうと言うことになって、「愛し続けよう」の第15番の二重唱になり、フィナーレとなる。初めにコラが、「雨の後は晴れだ。これも魔法のお陰だぞ。」と歌い出し、合唱がこれを繰り返してから、コラが「二人は結婚せよ」と言えば、合唱が「コラさん、万歳、凄い魔術だ」と歌い、終わりに三重唱で「結婚できるのも、コラさんのお陰」となり、全員の拍手で結びとなった。主役三人と子供たちの合唱団が拍手を受け、次いで指揮者がそして演出者が挨拶をし、すっかり終わってから終わりの三重唱が再度繰り返されているうちに終わりの幕となった。

   このオペラは、現代のわれわれがこうしてテレビで見ていてもとても楽しく、これが200年以上昔に作られた舞台であるというような古さを少しも感じさせなかった。むしろ現代の子供たちが生き生きとしてこの劇に参加し、楽しんでいる姿が浮き彫りにされた。12歳のモーツアルト少年は、実に素晴らしい作品を残してくれたものだ。主役の三人の人間の気持ちを実によく音楽にしているからだ。ジングシュピールと言うよりも、フランス版の子供劇となっているが、ジングシュピールのままであると、退屈な劇に終始したのかも知れない。それは比較して聴いていたウイーン少年合唱団のCDを聴いていて、歌もオーケストラもこのビデオより上手なのであるが、ドイツ語のセリフが長すぎるところがあり、音楽も繰り返しが長く感ずるところがあり単調に聞こえたからである。
 本年、生誕250年を記念してザルツブルグでこのオペラも演奏されることになっているが、是非、ビデオで拝見して比較してみたいと思う。

(以上)(06/03/08)


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