6-2-2、堀正文Vnと店村真積Vaのヴァイオリンとヴィオラの協奏交響曲変ホ長調K.364、05年11月23日、サントリーホール、


−N響のトップたちによる息の合った伸びやかで重量感のある堂々たる協奏交響曲−


6-2-2、堀正文Vnと店村真積Vaのヴァイオリンとヴィオラの協奏交響曲変ホ長調K.364、05年11月23日、サントリーホール、

−N響のトップたちによる息の合った伸びやかで重量感のある堂々たる協奏交響曲−

(05年12月16日、NHKBS102の放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)


 2月分の2曲目は05年11月23日のN響第1555回定期公演から、N響のコンサートマスター堀正文とヴィオラの首席店村真積の二人による協奏交響曲変ホ長調K.364が演奏されたのでお届けする。指揮は客演のイルジー・コウトであり、やや早めの軽快なテンポで細やかな指揮をしており、二人のヴェテランによるヴァイオリンとヴィオラとが、お互いに競い合ったり、重なり合ったりしながら、素晴らしい演奏を展開していた。12月18日の教育TVの池辺さんの番組でも取り上げられたので、全曲演奏が期待されていた。



 この定期コンサートは、第一曲が「フィガロの結婚」序曲、二曲目にこの協奏交響曲であり、休憩を挟んで三曲目がメインのブラームスの交響曲第4番となっていた。指揮者のコウトはこのホームページで初めてであるので経歴を紹介すると、1937年プラハ生まれでプラハ音楽院で学び、チェコの音楽界でキャリアーを積み、1973年にプラハ国民歌劇場の指揮者として活躍した。1976年には西ドイツに移り住み、デユッセルドルフ、ライプチヒなどの歌劇場で共演、1992年以降にはチェコのオーケストラと共演し、06年からプラハ交響楽団の首席指揮者に就任している。

 「フィガロの結婚」序曲は5本のベースのフルオーケストラの構成で、やや早めのテンポで軽快に始まるが、浮き立つような明るい雰囲気で進行し、とても気持ちの良い演奏であった。コウトも笑いを浮かべた表情で細やかに指揮をしており、第一曲は軽やかに楽しく演奏を終えた。


 休憩の間に管楽器などが縮小されたが弦楽器と5本のベースの編成は変わらない。二人のソリストと指揮者が登場し、一息ついてから、アレグロ・マエストーソの言葉通りに、オーケストラの全合奏で第一主題が堂々と開始された。次いでホルンとオーボエによる第二主題が弦楽器のピッチカートに支えられながら伸びやかに提示され、クレッシェンドを重ねて頂点に達するが、コウトの指揮ぶりはとても良く歌わせており、このオーケストラだけの主題提示部は、この曲の名の通りの豊かな交響曲的な響きであった。

 提示部の最後に独奏ヴァイオリンとヴィオラがオクターブで見事なアインガングで印象的に登場し、独奏の提示部に入ると、独奏ヴァイオリンがまず主題を提示しヴィオラが引き継ぐように進行する。そして、いつの間にか二つの楽器はそれぞれ対等であったり、お互いに模倣をし合ったり、オクターブ離れたり、重奏をしたりして、互いに存在を主張しつつきらめくような音色で新しい主題を提示していた。二人のソリストは実に息が合っており、お互いの動きを確かめ合い助け合うような様子で進行していたし、展開部では更に両楽器が競い合うように早いパッセージで力強く技巧的な展開を見せていた。
 再現部になってようやく冒頭の主題が再現するが、ヴィオラが先に主題を提示したり、豊富な主題の順序が提示部とは異なっており、この曲独自の複雑な構成を見せていた。この楽章の最後のカデンツアでも、二つの楽器が互いに追っかけ合う美しいもので、両楽器の弱音での微妙な重なりが素晴らしい音色を見せていた。この曲はモーツアルトの独りで湧き出るような楽想の連続という感じであり、二人の熱っぽい息のあった演奏にはさすがヴェテランと思わせるものがあった。



 第二楽章の深い憂いに満ちた美しさには、聴くたびに感動させられることが多い。オーケストラの静かな序奏のあとに、独奏ヴァイオリンがすすり泣くように主題を提示し、ヴィオラがオクターブ下で繰り返す。この後ヴィオラが変奏を始めると、ヴァイオリンも歌い出し、二つの楽器の綿々とした対話のようなやり取りには、思わず映像に釘付けになってしまう。堀は実に冷静な表情で溺れないようしており、時にはヴィオラを励ますように淡々と弾いているが、ヴィオラの店村はヴァイオリンを意識しながら、陶酔したような表情で体を動かしながら情熱的に弾いていた。二つの楽器の慰め合うような二重唱は綿々と果てしなく続くが、終わりにはカデンツアもあり、ここでの激しく応答し合う二重奏も素晴らしく、冒頭の序奏の変奏で静かに終結する。



 フィナーレは、明るく伸びやかな主題によるロンド楽章で、軽やかに進行するが、引き続いて快活な旋律が次から次に、独奏ヴァイオリンで始まりヴィオラに引き継ぐ形で、目まぐるしく進行する。速いテンポで、まるで楽想が独りでに沸き出るように繋がりながら、ロンド形式の中に収めてしまうやり方はこの曲だけに止まらない。内面的な緊張感を持った二つの楽章の後だけに、軽やかに快調なテンポで明るく終息するさまはいつもながら心地よい感じがする。

 終わってみれば、凄い拍手で迎えられ、二人の独奏者や指揮者にそしてN響のメンバー達に限りない拍手が送られていた。全く破綻がなく伸びやかに心から安心してこの素晴らしい曲に浸ることが出来たのは、この演奏者達のお陰である。二人の独奏者は何回か舞台に呼び戻されたが、舞台をよく見るとN響の皆さんも二人の熱演を讃えて、自分たちの先輩の独奏者にエールを送っていた。ヴァイオリンとヴィオラの共演という普段余り聴かれない組み合わせの曲なのに、この曲はいつもながらこうして深い感動を与えてくれる。

   最近購入したアンネ・ゾフイー・ムッターのヴァイオリン協奏曲全集の中に、彼女が指揮をしてヴァイオリンを弾き、名手バシュメットがヴィオラを弾いたこの曲が含まれており、これまでの演奏とはひと味違うヴァイオリンとヴィオラの技巧の冴えが示されていた。また、今回の生誕250年を祝する記念コンサートでザルツブルグで聴いたムーテイ指揮ウイーンフイルの伴奏でクレーメルとバシュメットの弾いたこの曲も、生涯忘れられないような情熱的な素晴らしい演奏で、特に第二楽章の優雅な二重奏は最高の名演と考えている。 この曲は過去にも意外に 「映像のコレクション」が多いので、今回のアップロードの機会にデータベースを整理してみたので、ご覧いただきたいと思う。

 この曲の後にはブラームスの交響曲第4番が開始されていた。指揮者コウトは、ドイツでの客演指揮者の経験が豊富なので、この曲を真っ正面から捉えた堂々たる指揮ぶりであった。この曲の演奏には好き嫌いがあって評価は難しいが、コウトのこの正統的な演奏には好感を持つ人が多いと思われる。

(以上)(06/02/22)


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