6-12-1、NHK音楽祭2006、ダニエル・ハーデイング指揮マーラー室内管弦楽団、交響曲ヘ長調(第6番)K.43、ピアノ協奏曲ニ短調(第20番)K.466、ピアノ;ラルス・フォークト、ブラームス、交響曲第2番Op.73、NHKホール、06/10/05、

−新鮮味のある生きの良い現代風なモーツアルトで、フォークトのニュアンスに富む正統的なピアノも印象的であった−

6-12-1、NHK音楽祭2006、ダニエル・ハーデイング指揮マーラー室内管弦楽団、交響曲ヘ長調(第6番)K.43、ピアノ協奏曲ニ短調(第20番)K.466、ピアノ;ラルス・フォークト、ブラームス、交響曲第2番Op.73、NHKホール、06/10/05、

−新鮮味のある生きの良い現代風なモーツアルトで、フォークトのニュアンスに富む正統的なピアノも印象的であった−


(06年10月21日、BS103CH、HV放送をD-VHSレコーダのHVモードにより、S-VHSテープに5.1CHサラウンドでデジタル録画。)


 ハーデイング・マーラー室内管弦楽団・ピアニストのラルス・フォークトの組み合わせのコンサートは、ここ数年はザルツブルグのモーツアルト週間の常連になっており、06年モーツアルト週間の報告(2)として、1月26日(木)のモーツアルテウム大ホールにおける演奏が既に報告されている。今回で収録したものは、モーツアルトの2曲は同じ組み合わせであったが、最後の曲が、田園交響曲からブラームスの2番に変更されていた。



初めの第一曲目の交響曲ヘ長調K.43は、41番までの旧番号では第6番で1767年ウイーン旅行中でのでの作とされている。アレグロ・アンダンテ・メヌエット・アレグロの4楽章の軽快に流れる気持ちの良い曲であるが、ハーデイングはこの番組の始めに、この曲の第二楽章には想像を絶する美しさやイマジネーションがあり、11歳のモーツアルトにどうしてこんな曲が書けたかのかという感想を漏らしていた。これがこの曲を取り上げた理由なのであろう。




 第一楽章は軽快に弾むようなアレグロの第一主題が飛び出し浮き浮きと進行する。しかし第二主題では、くねるような第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンとの絡み合いがあって、二つの主題のバランスが面白く聞こえた。第二楽章では、歌う第一ヴァイオリンにフルートが重なりながらピッチカート伴奏で穏やかに進行する美しい風景画を見ているようなアンダンテで、ハーデイングはホグウッドよりもゆっくりと歌わせながら指揮をしていた。メヌエット楽章は、優雅な弦の合奏で余り早くなく進む踊りのメヌエットであるが、トリオでテンポが速くなり面白い変化を見せた。フィナーレは、第一楽章に似た軽快なアレグロで弦が軽やかに気持ちよく直線的に進んで明るく終結した。
ハーデイングがこの曲をしばしばコンサートの冒頭に使うのは、誰にも気分をすっきりさせる軽快さとまとまりの良さをこの曲が持っているからであろう。



 1970年生まれのラルス・フォークトと1976年生まれのハーデイングによる若手同士のニ短調協奏曲は、思ったよりも遅めのテンポで終始しテインパニーとトランペットが少し目立つ古楽器風の指揮ぶりであったが、ザルツブルグで聴いた感触とほぼ同じであった。よく見ると、交響曲の時よりベースが3本に増え弦楽器も増加されて、中規模のオーケストラの構成になっていた。このオーケストラは若い女性が多いが腕が良く、指揮者の命令に忠実な楽団のようであり、日本人も4〜5人は含まれていた。



   第一楽章は、弦の喘ぐような低いシンコペーションのリズムを持った第一主題で開始されるが、ハーデイングはゆっくりしたテンポであるが歯切れ良くオーケストラを進める。副主題で出てくるオーボエやフルートの響きが実に美しく聞こえる。やがてフォークトの独奏ピアノが静かに始まり、次第にはっきりしたピアノを響かせる。続く副主題でもオーボエにピアノが応え、落ち着いたピアノがオーケストラとも良く馴染んで素晴らしい。独奏ピアノが提示する第二主題も実に美しく開始され、続いて軽やかな技巧的なパッセージを繰り返し、ピアノが縦横に活躍する。フォークトのピアノの響きは正統的なものでじっくり弾きこなすタイプであり、この曲に合っているという感じであった。
 展開部に入るとピアノの導入部の主題が繰り返され、次第にピアノがうねるように逞しく主題を繰り返し、再現部では途中から参加した独奏ピアノがいつの間にか先頭になって堂々と進んでいた。カデンツアは初めて聴くフォークトのオリジナルか、主題を巧みに使ったセンス溢れるものであり、ピアノがさらに輝やいて聞こえた。ハーデイングのゆっくりした歯切れ良いオーケストラと良く合った若さに満ちた堂々たるピアノであった。



 第二楽章は、ロマンスの名の通り美しく優雅な主題が独奏ピアノで繰り広げられる。フォークトは、ゆっくりとしたテンポであるが芯のある音でしっかり弾いている。やがて、主題はオーケストラに渡されいつの間にか再びピアノに戻されていく。ソロピアノで提示される第二主題は、何と美しいことか。フォークトは落ち着いた表情で一音一音玉を転がすように丁寧に弾いている。ここにはモーツアルトだけが聴かせる喜びがあり、今はやりの免疫力を高めるような心地よさが伝わってくる。やがてフルオーケストラで始まる爆発的な中間部では、独奏ピアノが息つくひまもないように鍵盤上を駆けめぐり、映像では技巧の見せ場になっているが、フォーグトは落ち着いて何事もないような表情で弾きまくっていた。嵐が過ぎ去ると再び静かにロマンスが再現されるが、フォークトは装飾音も付けずにしっかりと自分のペースで弾いていた。



 フィナーレではフォークトの独奏ピアノによるロンド主題で始まるが、直ぐに激しくテンポが速いフルオーケストラに渡され、躍動するように発展してから新しい主題がピアノに現れる。ここでは、ピアノ・オーケストラ・ピアノ・木管・ピアノと言った具合に絶えず主役が変わり目まぐるしく表現が変化しながら疾走する。フォークトの終わりのカデンツアは、短いが個性的で、耳慣れぬものだった。フォークトは、終始堂々としており、さすが汗だくで終わって挨拶するにこやかな表情がよく、指揮者とも肩を組んで、会心の出来に満足げ笑顔を浮かべていた。

 ハーデイングは、ウイーンフイルを振るときよりも、このマーラー室内管弦楽団の時の方が、ピリオド奏法の度合いが強く、テンポも早く生き生きとしているように思われ、この2曲のモーツアルトは、新鮮味のある現代風な演奏であった。またニ短調協奏曲におけるフォークトのピアノも、ハーデイングと呼吸のあった演奏であり、若さと溌剌さに溢れ、オリジナルなカデンツアなども新味を感じさせた。最後のブラームスでは4本のホルン、3本のトロンボーンのほかテユーバも加わって、室内楽団とは思えない布陣となり、ザルツブルグのグロッサーザールで聴いた田園の響きよりも遙かに充実しており、久し振りで5.1CHの厚みのあるオーケストラの響きを楽しむことが出来た。

(以上)(06-12-11)



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