6-1-2、コリン・デーヴィスとバイエルン放送SOによる「ポストホルン・セレナード」K.320、92年6月20日、ヴユルツブルグ音楽祭、


−フルート、オーボエ、ホルンなど多彩な楽器の響きが心に浸みるこの曲唯一の映像−


6-1-2、コリン・デーヴィスとバイエルン放送SOによる「ポストホルン・セレナード」K.320、92年6月20日、ヴユルツブルグ音楽祭、

−フルート、オーボエ、ホルンなど多彩な楽器の響きが心に浸みるこの曲唯一の映像−

(05年10月23日、クラシカジャパンの放送を、D-VHSレコーダーのLS-3モードで、S-VHSテープにデジタル録画。)


 このコリン・デーヴィスとバイエルン放送SOによる「ポストホルン・セレナード」K.320は、92年6月20日、ヴユルツブルグ音楽祭におけるコンサートの最終曲であり、 前2曲の木管セレナードとファゴット協奏曲は、昨年11月にご報告済みであった。この 「ポストホルン・セレナード」K.320は、7楽章にわたる大曲であり、私が大好きな曲でもあって、CDはいろいろな素晴らしい録音が残されているが、映像ではこの演奏しか残されていないようなので、ここに1曲だけ独立させて報告するものである。



「ポストホルン・セレナード」K.320のデータベースは、先にアップロードしたばかりであるが、小生のコレクションではLPが一組、CDが6組、ビデオが一組の合計8組しかなかった。しかしこれらの中には、いずれも評価の高いベーム、ボスコフスキー、マリナー、デーヴィス、ヴェーグ、ホグウッドなどの名が見られ、この曲の素晴らしさをいろいろな演奏で楽しむことが出来る。



 この曲の魅力は7楽章もあり、その中にはシンフォニーのような堂々とした荘重な楽章があったり、フルートやオーボエが協奏曲楽章を歌ったり、各所でファゴットやホルンなどと競演したり、第二のメヌエット楽章では、ピッコロが出てきたり、標題のポストホルンが朗々と響いたりする。CDで音だけでも多彩な楽器の美しさを味わうことが出来るが、映像では、さらに演奏するソリスト達がクローズアップされ、音の美しさを視覚的にも味わうことが出来、とても楽しく見ることが出来る。

 今回のデーヴィスの映像は、今となってはやや暗く古さを感じさせる映像で、音質も録音レベルが低くCDと比べるとクリアーさに欠けているが、慣れてくると余り気にならなくなり、曲を味わう分には少し寂しいだけでおおむね支障はない。バイエルンRSOの木管奏者たちは、木管セレナード集として紹介したとおり素晴らしい腕達者なメンバーが揃っており、この多彩な曲を演奏するには相応しいオーケストラであると感じさせた。ただし、この曲の最近のCD録音では、前後にK.335.1とK.335.2とが演奏されているのが普通であるが、このコンサートでは、野外演奏でないせいか行進曲は割愛されている。



 第一楽章はアダージョ・マエストーソの短い序奏を伴った雄大な交響曲楽章である。6小節の強弱を伴った緊張感溢れる序奏の後に、奔流のように生き生きと流れ出すアレグロの第一主題に続いて、第一ヴァイオリンの旋律的な部分と行進曲風なリズムの部分からなる第二主題が提示されて、このリズムを中心に複雑に繰り返されていく。デーヴィスは自分でも歌うように伸び伸びと指揮をしていた。展開部の後半に再びアダージョの序奏が現れて、再び生き生きとしたアレグロが華やかに演奏される。
 第二楽章は明るいセレナーデらしく活気に溢れたメヌエット楽章であり、デーヴィスは踊るような仕草で指揮をしている。このトリオではフルートと次いでファゴットが華やかに独奏する。

 第三・第四楽章はコンチェルタンテ楽章であり、この曲ではフルートとオーボエのための協奏交響曲のスタイルを取っている。初めのアンダンテでは、第一主題を代表するちっちっちっちっというリズムの主題を第一ヴァイオリンが提示し、やがてオーボエとフルートが華やかにソロで引き継いでゆく。次いで弦の伴奏に乗って新しい主題がフルートで現れ、やがてオーボエに替わって提示される。これからは二つの楽器が入れ替わり立ち替わり二つの主題を変奏しながら現れ、実に美しい夢を見ているような競演を繰り広げていく。豊かな楽想が次々に湧き出てくるような思いがする素晴らしい楽章であり、最後には両楽器のカデンツアまで用意されていた。
 次のロンド楽章では三つのエピソードを持つロンドで、弦の伴奏に乗ってフルートが 明るいロンド主題を提示しオーボエが繰り返す。次の主題はオーボエに始まりフルートへと渡される。と言うようにここのロンドでは、フルートとオーボエが絶えず入れ替わり、競い合って絶妙な効果をもたらしている。デーヴィスは両腕で軽やかにリズムを取りながら、ウットリした表情で指揮をしていた。



 第五楽章は一転して暗い陰りを持つニ短調の主題で呻くように始まるアンダンテイーノである。経過句を挟んで第一ヴァイオリンで第二主題が現れオーボエがそれに応えていくが、明るさを取り戻すには弱々しく、やはり全体として暗い沈んだ楽章である。
 次の第六楽章は二つのトリオを持つ元気なメヌエット楽章であり、トランペットやテインパニーが存在感を示すように響き渡る。第一トリオはヴァイオリンの伴奏で珍しいピッコロが登場し、繰り返しを変奏しながら進行する。「ポストホルン」の独奏がある第二トリオでは、幾分哀愁を帯びたポストホルンのファンファーレが鳴り響く。この演奏では図鑑にある単純な形のポストホルンではなく、古いタイプのホルンで朗々と演奏していた。
 フィナーレでは素晴らしく威勢の良い生き生きとした主題が登場し、長い曲の締めくくりに相応しい華やかな展開をする交響曲的楽章である。デーヴィスは渾身の力を込めてこのプレストの早い楽章を指揮しており、充実感が湧き上がってくるような感じがするフィナーレであった。

 デーヴィスのこの92年6月のヴユルツブルグ音楽祭のコンサートでは、木管楽器が活躍する三曲が演奏されたが、この「ポストホルン」セレナードはこのコンサートの最後を飾る生きの良い素晴らしい演奏であった。18世紀風の飾りや彫刻類やシャンデリアの多い宮殿風の会場にも恵まれていた。モーツアルトは室内楽団でも演奏できるセレナードやデイヴェルテイメントを沢山残しているが、現在では演奏機会が少なく、映像ではなかなか残されていない。その意味でこの演奏は貴重な存在であり、この映像でソリストたちを確かめてCDを聞くようにすれば、曲への理解が高まるものと思われる。

  (以上)(06/01/07)


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