5-1-1、ロリン・マゼールとウイーンフイルのヴァイオリン協奏曲第三番K.216、1965年、


−若きマエストロ・マゼールの記録に残されたヴァイオリニストへの挑戦−


5-1-1、ロリン・マゼールとウイーンフイルのヴァイオリン協奏曲第三番K.216、1965年、

(04年11月17日クラシカジャパンの放送を、D-VHSのLS-3モードでS-VHSテープにデジタル録画)

−若きマエストロ・マゼールの記録に残されたヴァイオリニストへの挑戦−


 8歳でヴァイオリニストとしてデビューしたと言われるロリン・マゼール(1930〜)の35歳の時の珍しい映像で、ウイーンフイルとの弾き振りである。ヴァイオリニスト・マゼールの本HPの初登場であり、バッハのブランデンブルグ第四番とモーツアルトのヴァイオリン協奏曲第三番K.216が演奏される。マゼールはこの新年のウイーンフイルのニューイヤー・コンサートに登場するが、前回と同様にヴァイオリンを片手に持って指揮をすることが予想される。その弾き振りのルーツをこの映像で確かめようとして、新年の第一曲に選んでみた。


 なお、マゼールはNHKのラストシンフォニーの2004年音楽祭にもニューヨークフイルとともに来日しており、ドヴォルザークの「新世界」をNHKホールで振っていた。5.1CHで録画してあるが、その流麗な指揮振りはとても75歳には見えぬ格好の良さがあった。ニューイヤー・コンサートでは、勝手を知った場所なので、どんな指揮振りを見せるか楽しみである。

 さて、若きマゼールの映像であるが、音はモノラルで古めかしい音であり映像は白黒であったが、名門のウイーンの楽友協会ホールでのライブであった。そこには音楽界の話題になりそうな35歳の若いマゼールの当時から格好の良いスマートな姿があった。ヴァイオリンを持って登場し、舞台で軽くヴァイオリンのチューニングをする。ヴァイオリンを片手に持ちながら、右手を振り上げて指揮を始める。第一楽章はかなり早いテンポなので、オーケストラがやっとついていく感じで進み、やがて独奏ヴァイオリンが始まる。ややぎすぎすした感じの細めの音で、ひとしきり独奏が続いてから、オーケストラが独奏ヴァイオリンとやっと一体になってきて、安心して見ていれるようになった。



 展開部でのオーケストラと独奏ヴァイオリンとのやり取りは、活気があって独奏者と指揮者が一体であるメリットが見えていたが、続く再現部との間に入れた短いカデンツアがやや不安定で水をさした。この楽章の最後でも自作のカデンツアを弾いていたが、弾けることを誇示しようとしたせいか、長すぎてウンザリするようなものであった。ヴァイオリニスト・マゼールは、当時は指揮も出来る類い希な人と評価されたのであろうし、この演奏記録も当時の彼の意気込みを示す極めて珍しいものであろう。しかし、本職のヴァイオリニストに任せた方が無難な部分もあり、マゼールが弾かなければ治まらないという感じではなかったように思う。

 第二楽章は美しいヴァイオリンの合奏と低弦のピッチカートで始まり、独奏ヴァイオリンが主題を優雅に奏でる。マゼールはゆっくりと落ち着いて弾いているが、やはり独奏ヴァイオリンの線が細く、もっとふくよかに朗々と弾いて欲しいと思う。この楽章にも最後にカデンツアがあるが、やや白けてしまうような長いカデンツアで、がっかりしてしまう。
 第三楽章は明るいロンド楽章であり、オーケストラで前奏されて独奏バイオリンが軽やかにリードしていく筈であるが、テンポが速いせいもあってマゼールは弾くのが精一杯の感じであり、余り弾まずにロンドが進行してしまう。後半の特徴あるエピソードも、ロンド主題との明暗がはっきりしないままに、ただ弾いただけであっさり過ぎてしまった。

 しかし、終わってみれば、聴衆の拍手は盛大であり、その大部分はヴァイオリニスト・マゼールへのものであるので、この弾き振りのコンサートは大変な成功であったに違いない。しかし、当時の記録と今日の独奏者の高い技術水準とを客観的に較べれば、この成功もレパートリに直ぐに限界が来て、一時的なものであったろうと思われる。ご本人が自らヴァイオリンを捨てて指揮の道を選択したことがこれを証明している。しかし、現在ではヴァイオリンも弾ける器用で幅の広い数少ない大指揮者と評価されており、若き日の苦労や努力は決して無駄ではなかったものと思われる。



 この曲の前にはブランデンブルグ協奏曲第四番が演奏されていたが、この曲は二つのフルートとヴァイオリンが独奏者となり、大きめのオーケストラで演奏されていた。この曲では二つのフルートほど独奏ヴァイオリンが目立たず、マゼールにもまだ技術的にゆとりがあって、弾き振りとしてはモーツアルトよりも遙かに成功していた。

 大指揮者マゼールに素人が生意気なことを書いているが、この映像は40年前の記録であり、最近のコンクール育ちのヴァイオリニストとは技巧のレヴェルが異なっていることを気の付くままに申し上げたにすぎない。しかし、大指揮者マゼールは健在であり、今回のNHKのラストシンフォニーシリーズでも、新世界交響曲を振っていた。このニューヨークフイルの演奏が、あの広いNHKホールで、他のオーケストラよりも一番迫力ある響きを聞かせてくれたような気がしている。また、05年のニューイヤーコンサートでも、最後に近くなってピッチカート・ポルカや「ウイーンの森」などの曲でお得意のヴァイオリンを弾いており、マエストロ・マゼールの明るく楽しい新年のコンサートであったことをご報告しておきたい。



(追伸)このニューイヤーコンサートの映像は、素晴らしい出来で5.1CHのハイビジョンで収録できたので、マゼールのご機嫌な姿を追加して掲載することにした。この映像は既にDVDになって市販されている。マゼールの40年の違いを示す二つの写真をご覧頂けるわけだが、マゼールの元気な姿には驚かされる。

(以上)(05/01/10)(追加05/03/11)



目次3にもどる
目次2にもどる
目次1にもどる
私の新ホームページへ

名称未設定