3-6-1、パリ・オペラ座の「魔笛」、イヴァン・フイッシャー指揮、ベノ・ベッソン演出、


−豪華で色彩豊かなメルヘン風の舞台を楽しむ−


3-6-1、パリ・オペラ座の「魔笛」、イヴァン・フイッシャー指揮、ベノ・ベッソン演出、 
パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団、2000/12〜2001/1月、オペラ座ガルニエ宮、
(配役)ザラストロ;サルミネン、タミーノ;ピョートル・ベチャラ、夜の女王;ナタリー・デッセイ;パミーナ;ドロテア・レシュマン、パパゲーナ;デートレフ・ロート、パパゲーナ;ガエル・ル・ロワ、モノスタトス;ウーヴェ・ペパー、
(4月18日NHK102CHBS放送をD-VHSのLS-3モードでS-VHSテープにデジタル録画)



 この最新のパリ・オペラ座の「魔笛」は、クラシック専門のガルニエ座のもので、一見してさすがパリ・オペラ座とうならせる豪華な舞台と色彩鮮やかな衣装などを見せる映像である。始めから大きな岩山がそびえ立つまさにおとぎ話の「魔笛」の世界に飛び込み、王冠をかぶったタミーノが登場するなど、色彩豊かな舞台や出演者の豪華な衣装などには驚かされる。最近、古楽器風の演奏と簡素な舞台を見ることが多いが、この映像は伝統的なメルヘン風の演出と演奏で、ドイツ語で歌われており、安心して見ることが出来た。演出者はベノ・ベッソン、指揮者はイヴァン・フイッシャーであった。パミーナがベルリンオペラで活躍しているレシュマンで、ナタリー・デッセイの夜の女王の二人が呼びもののオペラであり、真に賑やかな明るい舞台であった。

 映像開始とともに、いきなり序曲が始まるが、最初の三つの和音はゆっくりとした出だしである。やがて始まるアレグロの主部は対照的に早めに感ずるが決して早すぎず、木管楽器を表情豊かに鳴らしており、じっくり歌わせるタイプの指揮者であると感じた。序曲に続いて直ちに舞台が始まり、驚くほど大きな岩山に続く王冠の王子タミーノや迫って来る大蛇に驚いているうちに、岩山が動き出して三人の侍女が登場するまで、息もつかせぬ迫力ある感じで、いきなりおとぎ話の世界に飛び込んでしまう。



 パパゲーノの最初のアリアはやや声量不足に聞こえたが録音の関係か。演技は達者で期待でワクワクするような剽軽さがあった。タミーノの絵姿のアリアは、甘い声がピッタリで、タミーノの歌・容姿とも一級品である。やがてもの凄い音とともに夜の女王が登場する。背の高い衣装を纏って顔だけ出したナタリー・デッセイが歌っており、やや声が細いがさすがコロラチューラの部分は見事で、当代の最高と言うべきか。


舞台が大きく変わり黒人ばかりの世界。頭に飾りをつけた可愛いいパミーナがモノスタトスにいじめられている。やがてパパゲーノが紛れ込んできて、出会いがとても面白く思わず笑いを誘う。続くパミーナとパパゲーノの二重唱は、じっくり歌われ快心の出来であったろう。フィナーレに入り三人の童子が高い吊りかごに乗って登場し、その案内でいつの間にかザラストロの宮殿の三つの門の前に来ている。弁者との禅問答のあと、タミーノが笛を吹くと、ライオン・クマ・トラ・ワニ・キリン・ウマ・イノシシなどの動物が一斉に登場しビックリさせる。やがてザラストロ万歳の合唱に乗って、ザラストロが広い舞台を生かして上空から登場し、パミーナを許し、タミーノを試練の場へと命ずる。サルミネンのザラストロは、豪華な衣装も加わって貫禄充分であった。ただ、合唱団全員が背広姿の現代衣装であったのが何となくちぐはぐの感じで気になった。



 第二幕は長いゆっくりした行進曲の後に、パリ・オペラ座の特徴ある赤い幕が上がると、従者達が整列しており、ザラストロの吹く三回の角笛が珍しく、引き続き歌うザラストロのアリアは、実に厳粛そのものであった。14番の夜の女王の復讐のアリアも貫禄充分、コロラチューラもこの曲の方が声が良く伸び、最高の拍手があった。17番のパミーナが「死ぬほど辛い」と歌うアリアも見事な出来で、この人気の二人が元気なのでこのオペラは上出来である。続く18番の地下室での僧侶の合唱が、実に素晴らしいアダージョであることに気がついた。

 この魔笛の出来は、第二幕のフィナーレが成功であるかどうか、タミーノとパミーナが上手く結ばれるかどうかに依存している。炎と滝の山の入口を守っている二人の衛兵に、タミーノは半狂乱になったパミーナに合うことを許され、「おお、私のタミーノ(パミーナ)!」と再会し、次第に高まっていくピッチカートの伴奏のもとで、「困難があっても挫けない」と誓い合い、パミーナの父が作った魔笛(マジックフルート)を吹きながら、勇敢に炎と滝の試練を受け、無事生還する。この演奏では、このピッチカートの高揚が実に明確で、一音一音高まっていく姿がよく分かり、フルートの演奏も丁寧で、実にこの場面を意識した演奏であったし、炎と滝の山も実にうまく作られ演出されていた。その後のパパパの二重唱もとても楽しく、終わりの全員集合の舞台は壮観な感じであり、長年のノウハウを積み重ねた考え抜かれた演出や舞台であったと思う。




 閉幕時の拍手はもの凄く、手拍子が長く続き、観衆を十分満足させた舞台であったことが分かる。拍手のしんがりを務めた歌手はパミーナのレシュマンであった。このパリオペラ座の「魔笛」を総括すると、やはり伝統的な豪華な装置・衣装・演出に特徴があり、観衆はメルヘン的な舞台を楽しんでいた。それを可能にしたのは、上下・左右に素早く動く舞台の機械装置の活用があり、この劇場だから出来た演出なのであろう。また、タミーノ・パミーナ、パパゲーノ・パパゲーナ、夜の女王・ザラストロなどの鍵になる役者が良く揃っていたことにもよる。 また、指揮者のイヴァン・フイッシャーが、やや遅いテンポであるが実に場面にあった指揮をしており、歌手陣を伸び伸び歌わせていたことにもよる。最後の全員集合の舞台の挨拶の時に、演出者と衣装担当が舞台で拍手を浴びていたが、二人とも指揮者よりも遙かに年輩で、大ベテランという風貌であった。非常に色彩豊かな舞台でクローズアップが多かったので、この映像がハイビジョンであったらもっと素晴らしかったであろうと思われた。



(以上)(03/06/18)



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