(最新のHDD録画より;ミラノ・スカラ座の「クリスマス・コンサート」2017、)
19-1-3、ジョバンニ・アントニーニ指揮ミラノ・スカラ座O&Chorによる「クリスマス・コンサート」2017、(曲目)1、歌劇「ルチオ・シッラ」序曲K.135、2、モテット;「踊れ、喜べ」ヘ長調、K.165、3、ハ短調ミサ曲K.427、
2017/12/21&23、ミラノスカラ座、
(ソリスト)S;ブレンダ・ラエ、S;ロベルタ・インヴェルニッツイ、T;ミケーレ・ペルトージ、B;ブランチェスコ・デロータ、

−今回のアントニーニによるこのオール・モーツァルト・コンサートは、ミラノの人々が誇りにしている選曲が行なわれていた。最初の序曲はまさにミラノで作曲されたオペラのイタリアン・シンフォニーであり、第2曲はこのオペラで歌ったカストラートのためのソプラノ協奏曲であった。最後の曲は、モーツァルトが愛妻との結婚を期して書かれた未完の大曲のハ短調ミサ曲であったが、スカラ座のオーケストラと合唱団の力量を発揮するのに相応しい大曲であり、指揮者アントニーニもよく体を動かして軽快な指揮をしており、スカラ座の大合唱団たちも4人のソリストなども充実した演奏をしてくれたので、とても満足出来る楽しいコンサートであった。 最近のミラノ・スカラ座の映像のモーツァルトは、指揮者は全て異なっているが、いずれも他のオペラ劇場にない新鮮な映像を送り続けており、注目に値する −

(最新のHDD録画より;ミラノ・スカラ座の「クリスマス・コンサート」2017、)
19-1-3、ジョバンニ・アントニーニ指揮ミラノ・スカラ座O&Chorによる「クリスマス・コンサート」2017、(曲目)1、歌劇「ルチオ・シッラ」序曲K.135、2、モテット;「踊れ、喜べ」ヘ長調、K.165、3、ハ短調ミサ曲K.427、
2017/12/21&23、ミラノスカラ座、
(ソリスト)S;ブレンダ・ラエ、S;ロベルタ・インヴェルニッツイ、T;ミケーレ・ペルトージ、B;ブランチェスコ・デロータ、
(2018/12/02のクラシカジャパンの放送をHDD-5に収録)

        2019年の第3曲目は、これもクラシカ・ジャパンからの最新の映像で、2018年12月2日に収録したミラノ・スカラ座の「クリスマス・コンサート2017」と称する「オール・モーツァルト・コンサート」であった。さすがにミラノは、この地でモーツァルトが作曲した曲を加えて、第1曲目が「ルチオ・シッラ」K.135、第2曲目がモテット「踊れ、喜べ」K.165であり、第3曲目がハ短調ミサ曲K.427のオール・モーツァルトであった。指揮者は、最近、演奏機会を増しているジョバンニ・アントニーニであり、ミラノ・スカラ座のオペラ・シーズン中の2017年12月21&23日にスカラ座で演奏されている。モテットを歌った第一ソプラノは、ブレンダ・ラエであり、若きスカラ座の逸材と思われた。折から、2018年ベスト・ソフトの選定中であったが、2017年も1月分のソフトは、3曲ともノミネート候補に列挙されており、このコンサートも、オール・モーツァルトが少ないことから、極めて有力な映像であると思われた。


     最初の第一曲のオペラ「ルチオ・シッラ」K.135の序曲は、第一部モルト・アレグロ、第二部アンダンテ、第三部モルト・アレグロに分かれたシンフォニアであり、この映像が始まると同時に、この軽快な第一部のモルト・アレグロの主題が流れていた。ジョヴァンニ・アントニーニは、前にベルリンフイルとピアノ協奏曲第24番の指揮をしていた(18-7-2)ので記憶に新しいが、さすがに本場のスカラ座の舞台に立つと、実に颯爽とした指揮ぶりを見せていた。第一部の演奏中に、画面ではこのコンサートの出演者たちが紹介されており、続いてアンダンテ楽章となり、これが静かに終わって、第三楽章の3拍子の舞曲風のロンドとなって、威勢よく序曲が終了していた。


        

   続く第二曲は、モテット「踊れ、喜べ」K.165であり、この曲はオペラ「ルチオ・シッラ」で主役を演じたカストラートのラウツィーニのために、ミラノで作曲し、1773年1月17日にそこの修道参事会教会で初演されたという。曲は高度なコロラチュアの技巧を要するドラマティックなソロカンタータであり、二曲目の前に長いレチタティーヴォを持つ三曲からなるモテットであるが、最近では演奏会形式で、ソプラノのための協奏曲のように演奏されることが多い。


このモテット「踊れ、喜べ」K.165の第一楽章は、オーケストラのトウッテイにより軽快に始まるが、続いて弦の和音にオーボエが相づちを打つような第二主題が面白く、明るく主題提示部が前奏のように進んでから、ソプラノが輝かしい声で「喜びなさい」と朗々と歌い出す。このHP初出の若いソプラノのブレンダ・ラエは、次のハ短調ミサ曲の第一ソプラノを兼ねていたが、落ちついた声で、しっかりと歌っていた。特に、コロラトウーラのフレーズが続く場面では、彼女は譜面を見ながら慎重に声をコントロールしながら歌っていたが、この映像では彼女の顔が大きく執拗にクローズアップされ、気の毒な位であった。最後のカデンツアは短い初めて聞くもので、若くて元気なせいか、声に余裕のある歌い方をしているように思われた。


       バロック・オルガンの伴奏で静かにソプラノの透き通るようなレチタティーヴォがひとしきり続いた後に、弦楽器だけで第二楽章の歌うようなアンダンテが始まり、二つの主題の提示部が終えて独唱が始まる。ソプラノのラエの声はとてもよく響き、ゆっくりしたテンポで第一主題を歌い、続いてなだらかに下降するような第二主題を快いテンポで歌って、コロラトウーラの部分が続き、この歌謡的なアンダンテの楽章を見事に歌い上げていた。簡単な短いカデンツアのあと、切れ目なく第三楽章のハレルヤが軽快に勢いよく始まった。明るく喜ばしい曲調が溢れる華やかな軽やかな楽章であり、彼女は、声を張り上げてハレルヤと繰り返しながら高らかに歌い、コロラトウーラの技巧を見せながらこの素晴らしいアレグロを喜び一杯の表情で仕上げていた。


       素晴らしい拍手で、演奏が終了していたが、このモテットは、コントラバス3台のフルオーケストラで歌われており、オペラ劇場の舞台を沸かせるような迫力があり、ソプラノのブレンダ・ラエも朗々として晴れ晴れしく歌っており、気分が乗ったに違いない。しかし、残念ながら映像はここで直ぐに切れて、次の曲のために、4人のソリストたちと指揮者のアントニーが登場してきた。スカラ座の合唱団はすでに整列しており、制服を着た男女合わせて約60人くらいか、オーケストラの後方に4列で並んでいた。そして、オーケストラはベースが3本で変わらないが、3本のトロンボーンやテインパニーなどが目立っており、ミサ曲ハ短調K.427が開始されようとしていた。


  

指揮者のジョヴァンニ・アントニーニが、舞台全体を見渡してから最初の一振りで、静かに美しい弦の前奏がゆっくりと厳粛に開始され、女声合唱のキリエの歌声が哀愁を帯びて歌われ、男声合唱が加わって次第に力を増してゆっくりと進み、力強く高みに登っていたが、アントニーニは指揮棒を片手に、一緒に歌うように体を動かしながら、一音一音、刻むように指揮をしていた。


        やがて緑の同じドレスの第1ソプラノのブレンダ・ラエが、クリステ・エレイスンと歌い始め、バロック・オルガンに支えられて、彼女の明るく澄んだ声が朗々と響き渡り、オラトリオのアリアの様に厳かに美しく歌われて、この大ミサ曲の開始を堂々と告げていた。やがてコロラトゥーラの歌声が高らかに響いてから、壮大なオーケストラと大合唱により荘厳な深い響きを聞かせていた。後半では、再びキリエがソプラノの合唱で開始され、続いて壮大なオーケストラと大合唱により深い響きを聞かせてから、やがて静かにこの楽章を閉じていた。素晴らしいミサの開始を告げるキリエの合唱であった。


     続くグロリアでは、その第1曲がフルオーケストラの伴奏で「グロリア」の大合唱が激しく始まり、アレグロ・ヴィヴァーチェで晴れやかに「グロリア」と繰り返しながら、神への賛歌が歌い出され、やがてそれがフーガになり、壮麗に大合唱が続けられた。アントニーニは、自分でも歌いながら、目まぐるしく表情を豊かにして勢いよく指揮棒を動かしていた。やがてエト・イン・テルラで急変してピアノになるが、再び神への栄光を讃える晴れやかな大合唱となって、最後には再びピアノになって静かに結ばれていた。
         続くラウダムス・テでは弦五部の軽快な前奏で始まり木管も加わった後に、第二ソプラノのロベルタ・インヴェルニッツイが軽やかなテンポで明るく歌い出した。黒いドレスがよく似合う若い彼女の歌は、次第にコロラチューラの部分を含んだ華麗なアリア風になり、威勢よく明るく歌われていた。彼女の声はオーケストラにしっかりと支えられてよく伸び、オーボエなどとも良く合って見事な歌声を見せ、第一ソプラノに負けぬ技巧を示しながら、二人揃ってソリストとして堂々と存在感を示していた。


          続くグラテイアスでは女声のソプラノが二部に別れる5部合唱で、アダージョの力強く歌われる厳かな大合唱であるが、前後の曲とはがらりと変わって時にはバッハ風の不協和音も飛び出す、重厚そのものの緊迫感を漂わす短い合唱であった。
         ドミネ・デウスでは弦五部の前奏による明るいアレグロで始まるソプラノの二重唱であるが、始めに第1ソプラノのブレンダ・ラエが、明るく晴れ晴れと歌い出し、次いで第2ソプラノのインヴェルニッツイが繰り返すように歌って行くが、やがて二人の斉唱となり、後半の二人が声を揃えてゆっくり歌う場面は、神を讃えるような壮麗な美しい響きを持っており、まるでモーツァルトの残した最高の二重唱とも思える美しさを秘めていた。


         一転して、クイ・トリスでは二重の合唱団による重々しい付点音符の付いたオーケストラ伴奏で、厳かに八部合唱で進む荘重なラルゴであり、アントニーニは渾身の力を込めて一音一音力強く、自らも歌いながら進めていた。フォルテで進むところとピアノで消えるように進むところが交錯し、重苦しい受難を思わせるように、重々しく喘ぐように我らを憐れみたまへと進んでいた。
         続くクオニアムでは、かなり長いオーケストラのアレグロの前奏で始まり、第二ソプラノ、第一ソプラノ、テノールの順に歌い出して三重唱となり、フーガ風に続いてひとしきり互いに競い合うように歌っていた。中間では第一ソプラノ、第二ソプラノ、テノールの順に歌い出しており、唯一の聖なる方と変化させながら再現が行われ、後半ではフーガ風に重唱され伸びやかに明るさを見せながら、最後は素速いオーケストラで結ばれていた。


          グロリアの最後は、「イエスキリストよ」と歌われる全合唱と全オーケストラが参加するアダージョの重々しい序奏に続き、クム・サンクト・スピリトウス(聖霊とともに)の本番では、非常に力強い大合唱となり、複雑な構成のフーガとなって展開されていた。そして最後にはアーメンとフーガで斉唱される壮大な合唱となり、素晴らしい迫力でグロリアの神への賛歌が歌われて、最後はアーメンで締めくくられていた。
         このグロリアだけで30分近くを要し、大司教によりミサ全体が30分以内で終わるように指示されていたモーツァルトにとっては、コンスタンツエとの結婚のためこのミサ曲の作曲を自発的に決意しており、この神への賛歌を制約なしに伸び伸びと、精一杯書き上げたものと思われる。そのせいか、残念ながら、後半のクレドなどで力尽きたか未完に終わるという結末になってしまったのかも知れない。


          続くクレードでは、アントニーニの一振りで、いきなり弦と管が交互に繰り返されるフルオーケストラの力強い賑やかなアレグロで始まった。クレドと叫ぶ力強い合唱と弦の合奏が交錯する形で進行した後、ソプラノが二部に分かれた五部合唱でリズミックに歌われていた。二部に別れたソプラノの歌声が良く響き、唯一なる神への信仰を高らかに歌う明るい歌声であった。
          続いて弦楽器とバロック・オルガンとの美しい前奏のあとオーボエとフルートとファゴットによりエト・インカルナタス・エストの導入部が始められ、アントニーニが全身を使ってひとしきりオーケストラを歌わせた後に、おもむろに第1ソプラノのラエが美しい声を張り上げてソロを歌い出した。ソプラノの明るい声がコロラチューラのパッセージを歌い出すとオーボエがこれを模倣し、彼女の抑制の効いた艶やかな歌声が会場全体に漲って素晴らしい効果を挙げていた。最後のカデンツアでは、木管三重奏とソプラノの声が何重にもこだまするように響き、コロラチューラのこの上ない美しさを醸し出していた。


          サンクトウスでは二部に別れた八部合唱で「聖なるかな」の大合唱が、トロンボーンなどオーケストラとの合奏でラルゴのゆっくりしたテンポで力強く、三度、厳かに歌われた。そして、ヴァイオリンの小刻みな伴奏に伴われて、八部合唱でドミナス・デウスが静かに歌われ続け、やがて荘厳なホザンナの大合唱が早いテンポで開始されて大きく盛り上がりを見せて終息していた。アントニーニはここぞとばかりに力を込めて指揮をしており、スカラ座の大合唱団がこれに応えて素晴らしい盛り上がりを見せていた。


    最後のベネデイクトスでは、弦と木管のアレグロの長い前奏に続いて、ソプラノから順にバスも加わったソリスト達の四重唱となり、ベネデイクトスの言葉が何回もソリスト達により四重唱で繰り返されてとても盛大に発展していた。アントニーニは、体全体を使って軽快に指揮を進めており、やがてホザンナに入り、カノンで繰り返される大合唱がフーガ風に歌われていた。そして壮大に盛り上がりを見せてこのホザンナでミサは終結していた。ここでミサ曲としては、中断する形となったが、ここでは、ホザンナによる堂々たる終息の仕方で、一斉に拍手が湧き起こり、アニュス・デイがなくとも、言葉が分からないわれわれには、この荘厳な大合唱で十分にミサ曲を堪能した満ち足りた感じになっていた。


         さすがミサ曲で終わるこのオール・モーツァルト・コンサートには、会場では大変な拍手が湧き起こり、舞台は騒然として大拍手が続き、改めて舞台に登場したアントニーニや4人のソリスト達にはもの凄い声援が送られていた。また、合唱指揮者も顔を出し、ユニホームに身を包まれた大人数の合唱団のメンバーたちも全員起立して挨拶を繰り返していた。今回のアントニーニによるこのオール・モーツァルト・コンサートは、ミラノの人々が誇りにしている選曲が行なわれていた。最初の序曲はまさにミラノで作曲されたオペラのイタリアン・シンフォニーであり、第2曲はこのオペラで歌ったカストラートのためのソプラノ協奏曲であった。最後の曲は、モーツァルトが愛妻との結婚を期して書かれた未完の大曲のハ短調ミサ曲であったが、スカラ座のオーケストラと合唱団の力量を発揮するのに相応しい大曲であり、指揮者アントニーニも生き生きした新鮮な指揮振りがとても印象的であり、スカラ座の皆さんも4人のソリストたちもそれぞれ好演してくれたので、とても満足出来る楽しいコンサートであった。

        最近のミラノ・スカラ座の映像のモーツァルトは、指揮者は全て異なっているが、いずれも他のオペラ劇場にない新鮮な映像を送り続けており、注目に値する。それはメインのグローバルな歌手たちが元気なばかりでなく、主役をサポートするスカラ座の若手を含む層の厚さによるものといつも感心させられていた。つい最近アップした2018年ベストソフトのトップの金賞には、ミンコフスキーのオペラ「ルチオ・シッラ」K.135(18-1-3)があるし、佳作にはメストの「フィガロの結婚」K.492(18-2-3)が選ばれていた。また、前回の見たばかりのスカラ座のアダム・フイッシャーの「魔笛」K.620(17-9-3)でも感じたことであるが、イタリアには歌劇場が多く、若い歌手陣がどこでも層をなして出番の機会を伺っているような気がした。

(以上)(2019/01/15)



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