(最新のHDD録画より;ランランのピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、)
19-1-2、ランランのピアノとフランツ・ウェザー・メスト指揮クリーブランド管弦楽団によるピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、
2018/09/29、ゼヴェランス・ホール、クリーブランド、創立100年記念演奏会、

−ランランの独奏ピアノは、体全体で弾いているように見え、顔の表情も曲の進行に合わせて豊かであり、彼の仕草が絵になっているように思われた。ピアニッシモも美しく、甘えるところは大きな仕草で甘え、早いパッセージもさり気なく弾きこなしていた。その意味では彼は映像のクローズアップに向いたピアニストなのであろう。ランランの独奏ピアノは、メストのオーケストラや管楽器とのアンサンブルもとてもよく、メストの指揮はこんな自由なピアニストを吸収してしまうような懐の深いゆとりのある指揮ぶりであった−

(最新のHDD録画より;ランランのピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、)
19-1-2、ランランのピアノとフランツ・ウェザー・メスト指揮クリーブランド管弦楽団によるピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、
2018/09/29、ゼヴェランス・ホール、クリーブランド、創立100年記念演奏会、
(2018/12/17のNHKプレミアム・シアターでHDD-1に収録、)

     2019年の第2曲目は、これも最新の2018年9月29日のクリーブランド創立100年記念演奏会における映像で、フランツ=ウエルザー・メスト指揮、ラン・ランのピアノによるピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491であった。ラン・ランはこの曲を得意にしており、 2006年のMイヤーの中国での式典の映像(8-3-2)が残されており、また、ザルツブルグでも実演を聴いている。アーノンクールが亡くなる直前に二人で共演したドキュメンタリーとその時の演奏がCDで残されており、個性の強い二人が好きなことをやっている面白い演奏であった。今回も、ランランはこの第24番ハ短調を取り上げているが、落ちつきはらったとても丁寧に弾いており、特有のラン・ラン臭をあまり気になさらない方には、まずまずの演奏ということになろう。この曲は、コンサートの第1曲目であり、メストらしくリヒアルト・シュトラウスやヨハンシュトラウスのワルツが含まれた多彩なコンサートであった。


     映像では、初めにこのオーケストラの100年の歴史を物語る短い白黒のビデオがあり、このオーケストラは、現在でも拠点として使われているセヴェランス・ホールの建設から始まり、ジョージ・セルの時代に発展を遂げたことが紹介されていた。      
     メストとランランがにこやかに談笑しながら揃ってゆっくりと登場し、コンサートマスターとにこやかに握手してから、メストが指揮台に上がり、ランランがピアノの前に着席していた。そして、曲は弦楽合奏で静かに開始されていたが、オーケストラをよく見ると、コントラバスは右奥に4台おり、この曲では良く活躍する2本のオーボエ、2本のクラリネットと1本のフルートの他に、さらに2本のトランペットにテインパニーも加わって、ピアノ協奏曲としては最大規模の二管編成のオーケストラが勢ぞろいしていた。


      第一楽章はハ短調の荘厳さを持った長い第一主題が弦楽器で重々しく開始され、ユニゾンで力強く反復されてゆくが、やがて管楽器が現れ、フルートが美しい音色を響かせて目立っていた。第二主題は現れずに、低弦で第一主題が顔を出してオーケストラによる提示部が堂々と進行していたが、メストは落ち着いた調子で軽やかに指揮を取っていた。続いてランランの独奏ピアノが華やかな澄んだ音色で登場して第一主題を弾き進み、続いてオーケストラとピアノが重い第一主題を仲良く歌って、独奏ピアノが技巧的なパッセージを弾き進んでいた。やがてピアノは単独で呟くように美しい第二主題を提示するが、オーボエが歌うようにこれを反復し、独奏ピアノが速いパッセージで引き継いでから、フルートとピアノによる競演が速いテンポで繰り広げられていた。その後は木管群の新しい主題提示とピアノがそれを模倣して早いパッセージで繰り返すパターンが賑やかで、ランランの独奏ピアノは、勢いが良く粒ぞろいの冴えを随処に見せながら提示部を終えていた。


  

      独奏ピアノのアインガングの音形で始まる展開部もランランの独奏ピアノがパッセージを重ねて大活躍していたが、後半のピアノの技巧的な走句とオーケストラとの掛け合いがうねるように続いて素晴らしく充実した展開部となっていた。再現部でもピアノが縦横の活躍をして素晴らしかったが、各主題が型どおり現れてから、ランランは長い独創的で技巧的なオリジナルのカデンツアを弾きはじめ、独奏ピアノによる分散和音の美しい走句がピアニッシモで現れて、ひとつの見せ場になっていた。そしてオーケストラによる重々しい第一楽章が静かに終結していたが、なかなかの熱演であった。


     第二楽章は独奏ピアノが優雅で愛らしい主題をラルゲットで奏し始め、続いて弦楽器と木管楽器が掛け合い風に穏やかに繰り返していくが、何とこの主題はABACAの構成のロンド主題Aであった。続いてオーボエとファゴットが対話をする第一の副主題が登場し、木管の三重唱を経て、ランランの独奏ピアノと弦楽器が主題を引き継いで爽やかに対話を重ねる。そして再び冒頭の優しい主題が独奏ピアノに戻ってから、第二のエピソードがクラリネットとファゴットで示されて、ピアノと弦楽器に渡されひとしきり対話が行われていた。この楽章でランランの独奏ピアノは、絶えず木管や弦楽器を相手にするアンサンブルを意識した丁寧な美しいピアノであったし、この楽章で随所に現れる木管の二重唱・三重唱・四重唱は他の曲では見られない華麗で豊かな響きを見せていた。


           フィナーレは第二楽章がロンドだったせいか、速目のテンポの変奏曲形式を取り、主題提示の後に8つの変奏曲の構成となっていた。始めにオーケストラで16小節の主題が提示されるが、第一楽章の冒頭の第一主題の部分動機のような関連主題であった。第一変奏は独奏ピアノのソロで速いテンポの変奏が行われ、ランランは軽快にこなしていた。第二変奏は木管群が主題を示し独奏ピアノが速いパッセージでフォローしていたが、これが見事に繰り返され、素晴らしいピアノのパッセージで纏められていた。第三変奏はピアノが力強く付点のリズムで変奏し、オーケストラも力強くこれを繋いで、これらが交互に繰り返されていた。第四変奏はクラリネットが新しい主題を提示し独奏ピアノがこれを模倣して変奏していた。


    第五変奏はがらりと変わって独奏ピアノだけのポリフォニックな演奏になっていたが、ランランの独奏ピアノはこういう変化が巧みであり、彼の柔軟なピアノの冴えが表れていた。第六変奏は新しい主題がオーボエで導かれ、フルートが反復して独奏ピアノに渡されて、ピアノが見事に仕上げをしていた。第七変奏は弦楽器が冒頭の主題を流しピアノがこれを彩り、終わりには短いカデンツアが奏されていた。変奏曲のフィナーレは、独奏ピアノによる速いテンポの変奏で、ランランは素晴らしいパッセージで第8変奏を終結させていた。この楽章でもピアノと木管群と弦楽器群とが互いに補い合って持ち味を発揮しており、アンサンブル音楽の妙味を見せていたが、ランランの独奏ピアノが常に中心になって見事なバランスが図られていた。


        終わると騒然としたもの凄い拍手の嵐の中で、ランランは指揮者やコンマスと握手を重ね、観衆に応えていたが、驚いたことに観衆は総立ちとなって拍手をしており、ステージの楽員たちも揃って拍手をしていた。これはランランがとても親しまれており、人気の高いピアニストであることを証明する風景であった。最初の曲のせいか、残念ながら、アンコールはなく、少し寂しい思いがした。

       ランランの独奏ピアノは、体全体で弾いているように見え、顔の表情も曲の進行に合わせて豊かであり、彼の仕草が絵になっているように思われた。ピアニッシモも美しく、甘えるところは大きな仕草で甘え、早いパッセージもさり気なく弾きこなしていた。その意味では彼は映像のクローズアップに向いたピアニストなのであろう。ランランの独奏ピアノは、メストのオーケストラやフルート・オーボエ・クラリネットとのアンサンブルもとてもよく相性が良いと思われた。

(以上)(2019/01/09)



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