(最新のHDD録画;エルトマンのソプラノによるリ−ト集など10曲)
19-1-1、モイツァー・エルトマンのソプラノによるリート9曲と1曲のコンサートアリアK.528、ピアノ伴奏;ゲッツ・ペイヤー、
曲目(演奏順に);1)満足K.349、2)すみれK.476、3)寂しい森の中でK.308、4)魔法使いK.472、5)ルイゼが不実の恋人の手紙を焼いた時K.520、6)静けさは微笑みK.152、7)喜びに寄せてK.53、8)春へのあこがれK.596、9)夕べの想いK.523、10)レチタティーヴォとアリア「止まれ、わが愛人よ」K.528、
2017年10月16日、サントリーホール、

−モイツァー・エルトマンはこのHP初登場で、リート9曲と1曲のレチタティーヴォとアリアを歌ってくれたが、エルトマンは透明感のあるリリックな声の持ち主で、彼女に合った曲ばかりが選定され、余力をもって各曲を歌いこなしていた。その上、彼女は美人で表情がとても豊かであり、また、日本語字幕がついていたので、歌の意味が良く理解できる映像となっており、とても優れたリサイタルの記録となっていた。お正月早々に、この艶やかで華やかな歌曲を丁寧に歌っているのを聴いて、とても清々しい気分になったことを、ご報告しておきたい −

(最新のHDD録画;エルトマンのソプラノによるリ−ト集など10曲)
19-1-1、モイツァー・エルトマンのソプラノによるリート9曲と1曲のコンサートアリアK.528、ピアノ伴奏;ゲッツ・ペイヤー、
曲目(演奏順に);1)満足K.349、2)すみれK.476、3)寂しい森の中でK.308、4)魔法使いK.472、5)ルイゼが不実の恋人の手紙を焼いた時K.520、6)静けさは微笑みK.152、7)喜びに寄せてK.53、8)春へのあこがれK.596、9)夕べの想いK.523、10)レチタティーヴォとアリア「止まれ、わが愛人よ」K.528、
2017年10月16日、サントリーホール、
(2018/11/09のNHKクラシック倶楽部の放送をHDD-2に収録、)

     2019年新春の1月号のトップは、モィッアー・エルトマンのリート・リサイタルであり、9曲のリートと1曲のコンサート・アリアを歌ってくれる。ピアノはゲッツ・ペイヤーであり、嬉しいことにリート6曲がこのHPの初出ということになり、データベースの作成が大変である。エルトマンは、2006年にオペラ「ツアイーデ」K.344でデビューしたようであるが、このHPでは不思議にご縁がなかった。今回のコンサートは、メンデルスゾーンの歌曲と一緒に歌っているが、リリックな声の持ち主で、実に繊細にリートを歌っていた。2018年7月3日の紀尾井ホールの来日公演で収録された、NHKのクラシック倶楽部の最新の映像であった。


初めにメンデルスゾーンの曲が3曲あるが、良く知っている「歌の翼に」は、素晴らしい声で軽快に歌っていたので、期待が持てた。モーツァルトのリートについては、彼女は「非常に無駄のない曲が多く、大げさな表現や余計なことをすると全てが壊れてしまうので、とても難しい。シンプルで透明感のある美しい響きを実現するのに苦労します」と、キラキラと目を輝かせながら語っていた。


第1曲は、原曲はマンドリンの伴奏の付いたリート「満足(Zufriedenheit)」K.349(367a)であり、このHP初出の曲である。原詩の作者はミラーであり、1971年11月にイドメネオの作曲中に生まれた2曲のマンドリン伴奏の初めの曲で、「神への感謝も大げさではなく、平静につつましく、しかし暖かく」と歌われる。曲は6節の有節詩によって、14小節のメロデイが、繰り返し歌われる落ち着いたごく自然な曲である。新全集にはマンドリン伴奏用とピアノ伴奏用の二つの譜面があった。エルトマンは、非常に澄んだ美しい声でうっとりと歌っており、残念ながら3節を歌って打ち切っていた。穏やかな落ち着いた曲であった。
第2曲は、お馴染みのリート「すみれ」K.476であり、エルトマンは、とても表情豊かにこの曲を歌っており、字幕の入った映像の素晴らしさを感じさせ、まるでオペラを見ているように、その情景が彷彿とさせる歌い方であって、お気に入りとなった。この曲の素敵なコレクションが出来たと思っている。


第3曲は、これもこのHP初出で、リート「寂しい森の中で」K.308(295b)である。1778年マンハイム滞在中にフルート奏者のヴェントリングの娘グストルからもらった詩につけられたもので、バラード風なアリエッタとされる。曲はテンポや調性に変化が多く、アダージョで始まり、アレグロになり、一転してプレストになってから、再び、最初のアダージョのメロデイが終結部に再現するものである。歌詞の内容は、森の中でまどろむキューピットをうっかり起こしたために、もう嫌いになっていた古い恋人と、もう一度、恋をしなければならなくなったバラード風なアリエッタである。エルトマンは、ドイツ語の歌詞を噛みしめるように優しく歌っており、キューピットが「厚かましくも、僕を起こしたのだから、お前は一生、彼女に恋をするのだ」と繰り返し、表情豊かに歌っていた。
続く第4曲は、ヴァイセの詩によるリート「魔法使い」K.472であり、1小節の前奏で始まって、うぶな娘が魅惑されたラブシーンを4節の歌詞で歌い上げる短いが内容に溢れた曲である。エルトマンは最後の節でお母さんに救われた娘の気持ちを実に上手に歌っており、やはり、リートは、アリアもそうであるが、母国語で歌わなければ、表現できないものがあると感じさせられた。


第5曲目は、これもこのHP初出の曲であり、有名なリート「ルイーゼが不実の手紙を焼いた時」K.520である。1787年5月にジャカン邸で書かれた曲で、女流詩人バウムベルクによるもので、彼女自身の失恋の痛手を歌ったものだとされている。大事に取っておいた恋人の手紙を燃やしながら、すっきりした気持ちの半面に、なお諦めきれない未練を歌っている。短い三節の詩であるが、第一節は手紙を燃やす情景であり、第二節は男に対する恨みであり、第三節は彼女の未練である。そのため、三回とも気分と伴奏の音形を変えて、丁寧に作曲されたドラマティックなアリア風の曲に仕立てられている。エルトマンは、アンダンテで始まるこの歌を、表情を込めてゆっくりと歌っており、わずか20小節の短い曲でありながら、ピアノの分散和音のざわめきと一体になって、劇的な歌となっていた。短いが素晴らしい曲であった。
第6曲目は、カンツオネッタ「静けさはほほえみ」K.152(210a)で、これもこのHP初出の曲であるが、良く馴染んだ曲であり、若いモーツァルトの優美な旋律が最も美しい形で結晶した作品の一つとされる。しかし、この曲については、何も知られてなく、新全集では純粋なリートとは区別して、巻末の付録に掲載している。イタリア語の2節構成の歌詞でできており、曲は第2節を中間部とし、第1節を反復する三部形式のラルゲットで書かれた優美な曲である。エルトマンは、この曲を実に優しく明るい声で歌っており、愛する人を想う心のうちを、そのまま歌い込んでおり、この曲はまるで彼女のための曲のように聴こえていた。コロラトゥーラのところは、愛する心が翼とともに舞い上がるような感じを与えており、歌詞と一体となった美しいアリエッタになっていた。


      続く第7曲目は、リート「喜びに寄せて(An die Freude)」K.53(47e)であり、この初期の作品も、このHP初出である。この曲は、1767年の秋にウイーンで作曲された40小節からなる小品であり、全7節の歌詞からできているが、エルトマンは最初の2節だけしか歌っていなかった。12歳で書かれた習作風のこの有節歌曲は、クラヴィーア伴奏の左手はバス声部で書かれているが、右手は通奏低音風の書法で書かれており、即興的な和声づけがなされても良いようになっている。歌詞の内容は、とても難しいのであるが、エルトマンは分かりやすく歌っており、この重々しい曲調を上手く表現していた。
      第8曲目は、1791年の最後の年に作曲された3曲のドイツの子供の歌の最初の曲で、リート「春へのあこがれ」K.596であり、この曲は、1月5日に完成したピアノ協奏曲変ロ長調K.595の第3楽章の開始主題として知られており、ドイツの子供たちの愛唱曲になっている。原作のオーヴェルペックの詩は10節になっているが、モーツァルトは2節を使って16小節の主題にして4小節の素敵な後奏を付けていた。エルトマンは、この明るい晴れやかな曲を、実に楽しく高らかに歌っており、歌詞の中身に相応しい味わいで清らかに歌っていたが、残念ながら、6節でお終いにしていた。
      リートの最後の第9曲目は、リート「夕べの想い」K.523は、彼の代表的なリートとして知られ、この世に別れを告げて憩いの国にあこがれる深い内容の歌になっている。エルトマンは、二小節のピアノの流れるような分散和音をベースに、実に穏やかに、このアンダンテを歌いだし、お墓の前で手を合わせるような切々とした諦めの気持ちを歌いあげていた。この曲の5小節のピアノの後奏が非常に印象的だった。


     このリサイタルの最後の曲は、ソプラノのためのレチタティーヴォとアリア「さらば愛しいものよ」、「止まれ、わが愛人よ」K.528であった。1787年にプラハで、ドウシェク夫人のために作曲されたこの曲は、「ドン・ジョヴァンニ」の次の番号になっており、二人の親しい関係を示す逸話が残されている曲でもある。エルトマンは別れを告げるような長いレチタティーヴォを、深い悲しみを込めて歌ってから、アンダンテで「止まれ」とアリアを切々と歌い出していた。アンダンテの後半部は難しく書かれている曲のようであったが、ここで別れの辛さを歌ってから、テンポがアレグロに変わって、一気に「もう耐えられない」と悲しみを燃焼させていた。エルトマンは、とても気持ちを込めて、この別れの歌を十分に歌っていたが、残念ながら、ピアノ伴奏によるこの曲は初めてであり、アリアとしては、やや寂しい感じがした。

     以上はリート9曲と1曲のアリアの紹介であったが、エルトマンは透明感のある声の持ち主で、彼女に合った曲ばかりを選定し、余力をもって各曲を歌いこなしていた。その上、彼女は美人で表情がとても豊かであり、また、日本語字幕がついていたので、歌の意味が良く理解できる映像となっており、とても優れたリサイタルの記録となっていた。お正月早々に、この艶やかで華やかな歌曲を丁寧に歌っているのを聴いて、とてもすがすがしい気分になったことを、ご報告しておきたい。

(以上)(2019/01/04)



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