(最新のBDより;ドミンゴ指揮・監督による「ドン・ジョヴァンニ」)
18-9-3、プラシド・ドミンゴ指揮・監督、国立劇場管弦楽団&合唱団、ネクヴァシル演出、によるオペラ「ドン・ジョヴァンニ」、
2017年10月27&29日、エステート劇場でライブ収録、プラハ、

−世紀の名テノールのプラシド・ドミンゴの指揮による「ドン・ジョヴァンニ」は、結果的には、アリアを大切にして丁寧に演奏するドミンゴの指揮ぶりによって、期待された「プラハ」版にはならずに、古い伝統的な衣装と演出による、美しいアリアを楽しむことに専念した舞台となっていた。しかし、ここまでそれが徹底すれば、それなりに意味のある特色を持った「ドン」であると思われるが、折角のエステート劇場でやるからには、もっと新鮮な演出で舞台を楽しみたいと思われた方々には、残念であった−

(最新のBDより;ドミンゴ指揮・監督による「ドン・ジョヴァンニ」)
18-9-3、プラシド・ドミンゴ指揮・監督、国立劇場管弦楽団&合唱団、ネクヴァシル演出、によるオペラ「ドン・ジョヴァンニ」、
20017年10月27&29日、エステート劇場でライブ収録、プラハ、
(配役)ドン・ジョヴァンニ;S.Alberghini、騎士長;J.Stava、レポレロ;A.Sampetrean、ドンナ・アンナ;I.Lungu、ドンナ・エルヴィラ;K.Knezikova、ツエルリーナ;J.Novikova、オッターヴィオ;D.Korchak、マゼット;J.Bruckler、
(2018/05/31、新宿タワーレコード、Cmajor LC15762、)

            9月号の第三のファイル18-9-3は、今年の5月31日にタワーレコードで購入した、プラシド・ドミンゴ指揮のプラハ・エステート劇場における「ドン・ジョヴァンニ」であり、2017年10月末に収録された最新の映像である。かねて指揮者と演出・舞台監督などを兼ねて、自分のオペラの舞台を作りたかったドミンゴが、このオペラを初演した会場のエステート劇場を任せられて、プラハの若い歌手たちからドミンゴが選んだスタッフを得て、古くて狭い劇場での古いコスチュームや舞台装置などの伝統的な舞台を得て、歌手たちの期待を集めた舞台となっていたが、いまどき、非常に凝った伝統的な演出でありながら、元気のよい斬新なライブ映像となっていた。オペラの表裏を知り尽くしたドミンゴの手による、ドミンゴの意のままに歌って動く若いスタッフたちによるまずまずの「ドン・ジョヴァンニ」であったが、ドミンゴの指揮が歌わせるだけで、もっと溌溂として威勢が良ければ、恐らくはもっと素晴らしい映像になったものと思われる。この初めての舞台が、プロの評論家の方々にどう評価されるか、とても興味深かった。


     この映像は、観光客の最大の名所になっているプラハのエステート劇場でプラシド・ドミンゴの指揮・監督での公演ということで、観光政策上も重要な公演であったと思われる。この劇場を利用した「ドン・ジョヴァンニ」の映像には、1991年のモーツァルト・イヤー時に、サー・チャールズ・マッケラス指揮によるプラハ国民劇場管弦楽団&合唱団の「ドン・ジョヴァンニ」K.527(10-1-3)があった。この公演は、1991年のモーツァルト・イヤー時の記念公演であり、プラハで初演された通りに演奏(プラハ版)し、ハベル大統領ご夫妻が臨席しているという評判になった映像であった。この映像では、ドン・ジョヴァンニを歌ったアンドレイ・ベスチャスニーが有名であり、他はプラハの国民劇場の面々であった。


          今回の映像は、ドミンゴ中心のオペラであるので、始まると直ぐにオーケストラ・ピットが映され、ドミンゴの入場から、ドミンゴが嬉しそうに拍手への挨拶をする様子も写されており、序曲のオーケストラ・ピットでの演奏全体が映されていた。ドミンゴは分厚いスコアをめくりながらの指揮ぶりであったが、序曲は幾分遅めのテンポで開始され、舞台の背景には石像の姿が大写しされていたが、アレグロの部分になると颯爽と進みだし、まずまずの出来映えで進行していた。ドミンゴは、終始、丁寧に腕を振っていたが、序曲を見る限り、オーケストラとの馴染みは、大丈夫なようであった。


  序曲が終わり続いて第一曲の序奏が始まると、薄暗い右脇の方からレポレロが荷物を持って登場し、「見張り役なんてゴメンだ」ともっともらしい顔つきで歌い始めていた。そこへ突然、派手なサングラスをかけた男が女性に追われて登場し、女性がくせ者と大声を上げて叫びだし、争いの場面になって三重唱となっており、女性はひるまずに争っていた。そこへ、「娘を放せ」と大声をあげて坊主頭の騎士長が大きな剣を抜いて登場し、ドン・ジョヴァンニに立ち会えと迫ってきた。驚いたドン・ジョヴァンニは、やむを得ず刀を抜いて立ち会っていたが、二人は刀を交わし始めると、あっと言う間に勝負が付いてしまい、騎士長は血を流して倒れこみ、いつの間にか、主人公とレポレロは逃げ出してしまっていた。


            そこへドンナ・アンナとドン・オッターヴィオに従者たちが駆けつけたが、ドンナ・アンナは騎士長が倒れているのを発見し、父の死を確認して気を失ってしまった。しかし、オッターヴィオに抱き起こされて気がつくと、健気にも復讐してくださいと開き直り、二人の二重唱となっていた。ドンナ・アンナは、とても気が強くドン・オッターヴィオに復讐を誓わせており、彼は「貴女の瞳と、二人の愛にかけて」復讐をすると元気よく溌溂と歌っていた。

     

            場面が変わって、主人公とレポレロが片隅で言い争いをしていると、「女の匂いがする」と言ってドン・ジョヴァンニが立ち止まり様子を窺っていた。そこへ赤い派手な姿のドンナ・エルヴィーラが二人の従者を従えて登場し、直ぐに「あの男は何処かしら」とアリアを歌い出した。見つけたら心臓をえぐってやろうなどと物騒なことを歌っていたが、彼女は姿も歌もよく似合って気の強さを示し、堂々とアリアを歌っていた。


    ドン・ジョヴァンニが気の毒に思って声を掛けたところ、前に別れたエルヴィーラだったので驚いていると、彼女が悪党・ペテン師などと騒ぎ出すので手に負えず、レポレロに任せて逃げ出してしまった。レポレロは、彼女を慰めながら、旦那は海千山千の男だと「カタログの歌」を歌い出した。怒り狂ったエルヴィーラも、レポレロのスペインでは1003人と言う名調子のアリアにはさすがに驚いて、カタログを見ながら、あの男に騙されたと復讐を誓っていた。レポレロのアリアは、さすが名調子でドミンゴがゆっくりと伴奏をするので朗々と歌われ、お客さんを喜ばせていた。
             場面が変わって大勢の若者たちが結婚式を迎えるツエルリーナとマゼットを囲んで大騒ぎしているところへ、主人公とレポレロが登場し、早速、花嫁のツエルリーナに目をつけて、皆のご機嫌を取りながらレポレロに命じて自分の館でご馳走をして追い払おうとしていた。邪魔なマゼットを脅して二人になろうとしたので、マゼットが怒りのアリアを歌ってツエルリーナに毒づいていた。

       

         やっと二人になってドン・ジョヴァンニはツエルリーナを煽てながら口説きだし、甘い二重唱を歌いながら裏の館で結婚しようと囁いていた。口説きに弱いツエルリーナはすぐその気になってしまい、「さあ行こう」となった時に、エルヴィーラが突然現れ、「この裏切り者から逃げなさい」とアリアを歌いだした。彼女はカタログを手にして、 驚くツエルリーナに言い聞かせて、一緒に連れ去ってしまった。


          ドン・ジョヴァンニは、「今日はついていない」とぼやいていると、そこへ喪服姿が良く似合うドンナ・アンナとオッターヴィオが現れて助けが欲しいと頼まれた。そこでドンナ・アンナを慰めていると、またしてもエルヴィーラが現れ、「この人を信じてはいけません」と歌い出して、四重唱が始まった。不思議がるドンナ・アンナに対して、ドン・ジョヴァンニがエルヴィーラを気違い扱いにして、二人だけにさせてくれと「アミーチ・アデイーオ」と別れたところ、ドンナ・アンナは「あの男よ!」と初めて自分を襲い、父を殺した犯人に気がついた。
           そして激しくレチタティーヴォ・アッコンパニアートで襲われた状況をオッターヴィオに説明し、続いて「これで分かったでしょう」と激しくアリアを歌っていた。オッターヴィオは騎士が大罪を犯すとはと驚き、復讐を誓うアリアを高らかに歌っていた。初演した劇場なので、プラハ版で通すかと考えていたが、ドミンゴはこのアリアが重要なのであろう。アリア重視の、「ドン・ジョヴァンニ」であることが良く分かった。


            ここでドン・ジョヴァンニがレポレロの報告を聞いて、よくやったと喜び「盛大な宴を用意しよう」という有頂天になって歌う「シャンペンのアリア」が歌われた。そして、ツエルリーナがマゼットのご機嫌を取って歌う「ぶってよ。マゼット」の2曲の有名なアリアが歌われて、ドン・ジョヴァンニの屋敷で賑やかな歌と踊りの盛大な宴のフィナーレに突入していた。


            マゼットとツエルリーナが争っているうちに、宴の準備が出来、ドン・ジョヴァンニは盛大にやろうと宣言して宴が始まった。ツエルリーナが隠れようとして直ぐドン・ジョヴァンニに捕まるが、マゼットが蔭で監視しているので何も出来ない。そこへ仮面を付けたエルヴィーラが「主人公の正体を見極めよう」と言って、ドンナ・アンナとオッターヴィオを導いて来た。三人の仮面の人は、レポレロに見つかるが、ドン・ジョヴァンニに舞踏会への入場が許されていた。
やがてメヌエットが始まり、三人の仮面の人もどうぞと許されて、三人は勇気を出して「神よ、お守り下さい」と復讐の三重唱を美しく歌い出していたが、赤が良く似合うエルヴィーラ、黒が良く似合うドンナ・アンナ、中央に青の衣装で固めたオッターヴィオの三人が朗々と歌う見事な三重唱となり、ドミンゴの良く歌わせるオーケストラの伴奏もあって、このオペラならでは貴族的な雰囲気を出していた。


     踊りが始まって、コーヒーだ、チョコレートだと騒いでいるうちに、マスクの三人はようこそと招かれて、「どなたもご自由に」と挨拶され、やがて皆で「自由万歳」の合唱になっていた。そして楽士たちが舞台に登場して、まずメヌエットが始まりマスクの二人が優雅に踊り出すと、ドン・ジョヴァンニはツエルリーナを捕まえてコントルダンスを踊り始めていた。一方、レポレロは嫌がるマゼットを捕まえて二人でドイツ舞曲を踊り出し、舞踏会は佳境に入り出していた。


     しかし、ドン・ジョヴァンニがツエルリーナを外に連れ去ろうとし、それを見たマゼットが追いかけようとしたので大騒ぎとなり、やがてツエルリーナの「助けて」という悲鳴が聞こえてきた。さあ大変!とばかりに一同が集まった所へ、ドン・ジョヴァンニが剣を抜いてレポレロを犯人にしようとしたので、それを良く見ていたマスクの三人が仮面を脱いでドン・ジョヴァンニにピストルを突きつけて「これで悪事は明白」と皆が一斉に責め出した。音楽が早いテンポに変わり、さすがのドン・ジョヴァンニも皆から悪人だと責め付けられて、途方に暮れていたが、頭が混乱しているとごま化しながら、まだ負けていないぞと強がりをいいつつ逃げ出して、この大きなフィナーレは幕となっていた。



   第二幕が始まると、レポレロは殺されそうになったと「おいとまを」と文句をつけていたが、ドン・ジョヴァンニが気前よく金貨4枚を出したのでレポレロはコロリと変わり、エルヴィーラの召使いを口説くため、挙げ句の果てに服装まで交換させられてしまった。バルコニーの下でドン・ジョヴァンニが改心した素振りの歌を歌うと、信じやすいエルヴィーラも歌い出し、レポレロも加わった三重唱となって、彼女は迷いながらも騙されて二階から降りてきた。そしてドン・ジョヴァンニの衣裳でレポレロがジェスチャーをして抱きつくと二人は仲直りをしたようになっていたが、ドン・ジョヴァンニの大声で二人は逃げ出してしまった。


            ドン・ジョヴァンニはマンドリンの伴奏でエルヴィーラの従女に対し「愛しい人よ」とカンツオネッタを歌い出し、姿を見せてくれと心を込めて歌っていた。美しいマンドリンの伴奏と美声により、その努力が実ったか、終わり頃には遠目には彼女の姿が現れていた。しかし、人声がして身を隠すと、マゼット一行がドン・ジョヴァンニを探しに来ており、またしても失敗。ドン・ジョヴァンニがマゼット以外を追い払って、マゼットを叩きのめしていると、ツエルリーナが悲鳴を聞いて駆けつけ、マゼットに「薬屋のアリア」を歌って、マゼットの機嫌を直してしまった。有名なアリアが二つも続いて、ドミンゴも良く乗って場内は笑いで賑やかであった。


            一方の逃げ出したレポレロとエルヴィーラが暗い広場でウロウロと迷い込んで、暗くて死んでしまうと歌い出すと、ドンナ・アンナとオッターヴィオに気付かれ、その声を聞いてマゼットとツエルリーナも駆けつけて、六重唱になりレポレロが捕まってしまった。4人に許さないと言われ、エルヴィーラが「私の主人です」と謝ったが、どうしても許されず、レポレロは主人の衣裳を脱いで正体を現した。レポレロは、エルヴィーラに平手打ちを食い、アレグロになって全員に平謝りの六重唱となっていた。
            そしてレポレロは「どうかお慈悲を」とアリアを歌い出し、一人ひとりに主人の命令でこうなったと謝っていたが、歌いながら隙を見て、終わりには脱兎のごとく逃げ出してしまっていた。


            一方、ドン・ジョヴァンニが犯人だとやっと悟ったドン・オッターヴィオは、私が当局に訴えに出掛けますと歌い出し、「その間に私の恋人を」慰めてやってと声を張り上げて歌っていたが、このアリアは本日の彼のアリアでは最高の出来で、終わると大変な拍手を浴びて、本人もドミンゴも満足そうであった。
             続いて、ウイーン追加曲のエルヴィーラの伴奏つきのレチタティーヴォとアリアが歌われていた。彼女は、ドン・ジョヴァンニを八裂きにしたいくらい憎む一方で、彼のために神の慈悲を乞い願う矛盾した気持ちを歌うアリアであり、彼女の優しい気持ちと激しい心を歌った名アリアとなっていた。


             場面が変わって、ドン・ジョヴァンニは上機嫌で現れてレポレロと再会して、レポレロをからかいながら高笑いしていると「その声も今夜限りだ」と言う大きな声が響いて二人は仰天した。その声が騎士長の石像だと分かって、驚いた二人は二重唱で石像を夕食に招待するがどうかと尋ねると、レポレロが頷いたと驚いて腰を抜かしてしまう。そのためドン・ジョヴァンニが自ら石像に向かって尋ねると、「行こう」という大きな声が聞こえてきた。驚いた二人は、恐ろしくなり、夕食の支度だと言い訳をして逃げ出してしまっていた。


              一方、騎士長の銅像の前で、オッターヴィオがドンナ・アンナにどうして私を苦しめるのかと責めだしたので、彼女は激しくレチタティーヴォ・アッコンパニアートで「私だって辛いのよ」と歌い出し、「私の信念を揺るがせないで」と歌うアリアになった。そして後半にはアレグロのコロラチューラが連続する技巧的なロンドになってドンナ・アンナの存在感を示すアリアに発展して大きな拍手を浴びていた。


                 フィナーレになって、ドン・ジョヴァンニ邸内に舞台が移り、食卓を用意し料理番たちが食事の用意をしていたが、ドン・ジョヴァンニは、六人の美女たちに囲まれて、上機嫌であった。まず「コーサ・ラーラ」の音楽が始まり、ドン・ジョヴァンニが女たちの相手をしながら、上機嫌で食事を始めていた。続いて「イ・リテイガンテイ」が奏され、マルツイミーノ酒が注がれて、ドン・ジョヴァンニはワインを飲みながら旺盛な食欲を見せていた。続いてフィガロの「もう飛ぶまいぞ、」が始まると、ドン・ジョヴァンニはますます上機嫌になって、音楽に合わせて「レポレロ」と呼び掛けて、「口笛を吹け」とレポレロをからかっていた。


              そこへエルヴィーラが飛び込んできて、ドン・ジョヴァンニの前に座り込み、最後のお願いに来たという。ドン・ジョヴァンニはどうしたかと驚くが、「生活を変えろ」という真面目な話なので相手にせず、始めから「女性万歳」「ワイン万歳」とからかっていた。勝手にせよと逃げ出したエルヴィーラが入口で大きな悲鳴を上げ、それを見に行ったレポレロも大声を上げて、驚きの余りダンダンダンと口を動かすだけであった。


             ドン・ジョヴァンニが「わしが行く」と立ち上がって見に行こうとすると、もの凄い大きなオーケストラの響きと共に騎士長の姿が現れて、序曲の音楽が鳴り響き、足音の音楽とともに遠くで石像が「来たぞ」と叫んでいた。そして驚くドン・ジョヴァンニと怖がるレポレロとの三重唱となって、重大な話があると言い、「今度は私の晩餐に来るか」と呼び掛けた。臆病だと思われたくないドン・ジョヴァンニは、必死となって勇気を振り絞って「行こう」と返事をし、約束の握手をした途端に、光線のようなものがドン・ジョヴァンニに当たって「何と冷たい手だ」と震え上がり、苦しみだした。


               騎士長は「悔い改めよ」と叫び、ドン・ジョヴァンニは「いやだ」と叫ぶ。何回か拒絶を繰り返すうちに、苦しくて倒れ込み、合唱とフルオーケストラの響きの中で大暴れしながら叫んでいたが、やがて「ああー」という絶叫と共に、煙が漂っている中で、地下深くに吸い込まれてしまっていた。


             まだ煙が漂っている舞台で、レポレロが一人、何も分からずに取り残されていた。嵐が去って五人が駆けつけて、レポレロにドン・ジョヴァンニはどこへ行ったかと尋ねるが遠くに行ってしまったとさっぱり要領を得ない。やがて合唱は六重唱となり、ドン・ジョヴァンニが天罰でいなくなったことが知らされた。オッターヴィオが愛しい人よと呼び掛け、これ以上悩ませないでというと、ドンナ・アンナは1年待ってくれとのつれない返事の二重唱が歌われていた。


            エルヴィーラ、マゼットとツエルリーナ、レポレロは、それぞれの道を歩もうと決意し、最後に明るい六重唱となっていた。音楽のテンポが変わって六人が平和が戻ったことを喜んで歌っていると、オーケストラ・ピットで指揮をしているドミンゴの元気な姿が映されて、このアリアを大切にしたドミンゴによるドミンゴのための「ドン・ジョヴァンニ」が、賑やかに終幕となって、盛大な拍手を浴びていた。


             直ちにカーテンコールが始まっていたが、初めにマゼットの仲間か合唱団の皆さんが整列して挨拶しており、続いて騎士長宅の従者やドン・ジョヴァンニ邸の美女たちなどがご挨拶していた。続いて、騎士長、マゼット、ツエルリーナ、エルヴィーラ、ドンナ・アンナ、ドン・オッターヴィオ、レポレロ、ドン・ジョヴァンニの順に登場して、それぞれが盛んに拍手を浴びていた。最後に、ドンナ・アンナに迎えられて、ドミンゴが舞台に登場していたが、ドミンゴは実に嬉しそうに挨拶をしており、疲れたであろうが充実した音楽作りに、満足したような表情をしていた。

              この映像は、モーツァルトが1787年10月29日にこのオペラを初演したエステート劇場で、恐らく当時の舞台や衣裳も記録に残されたものと同じようにしつらえたもので、音楽もプラハ版が採用されるものと私は考えていた。しかし、現代の名テノールのプラシド・ドミンゴという指揮者を得て、序曲のオーケストラの響きからピリオド風の演奏スタイルで、歌手陣も若手が揃ってどんな演奏になるか楽しみであったが、結果的には、アリアを大切にして、丁寧に演奏するドミンゴの指揮ぶりによって、通常の「ごちゃ混ぜ版」で、古い伝統的な衣装と演出による、美しいアリアを楽しむことに専念した舞台となっていた。しかし、ここまでそれが徹底されれば、それなりに意味のある特色を持った「ドン・ジョヴァンニ」であると思われるが、折角、エステート劇場でやるからには、もっと新鮮な演出で舞台を楽しみたいと思われた方々には、残念であった。

              この劇場の奥行きの長い舞台をどのように使うかに関心があったが、このオペラでは、騎士長邸の前、町の広場、邸内、バルコニーのある家の下、墓地、などがリブレットに明示されているが、背景は薄暗い背景として邸内・外を区別した程度であり、もっぱら舞台前面で歌手たちに照明を当てて、クローズアップで歌手の表情を追求するやり方で映像が決められており、機械仕掛けがないので、机やテーブルなどの小道具の移動は人海戦術で、カツラと制服姿の合唱団員が使われ、それらしく場面設定がなされていた。重要な地獄落ちの場面では、舞台下にドン・ジョヴァンニが吸い込まれるように姿が見えなくなる方法が取られていた。

             このオペラは、最初からスター歌手のいないドミンゴが、プラハで選定した若手の歌手陣で揃える方針だったようで、6人の主役たちはこのHPでは初めての若い方々であったが、全員が顔立ちやスタイルから歌いぶりまで、とても良く似合った方が選ばれており、それぞれがドミンゴのゆったりとした指揮の下で、伸び伸びと良く歌っていたので、とても楽しめた。中でも、ドンナ・エルヴィーラ、ドンナ・アンナ、ドン・オッターヴィオの三人がとてもお似合いで、それぞれが思い切って歌っておりなかなか立派であった。レポレロやドン・ジョヴァンニもまずまずの出来栄えであり、さらに、マゼットとツエルニーナも似合いのコンビであって、もっと声に張りをと思う場面があったが、それぞれが良く役割を果たしており、バランスの取れた「ドン・ジョヴァンニ」であったと思う。

(以上)(2018/09/09)



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