(BDCHのアーカイブより;アンデルジェフスキーとポリーニの協奏曲、)
18-7-2、アントニーニ指揮ベルリンフイルとアンデルジェフスキーのピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、2015/10/24、フィルハーモニー・ホール、および、ポリーニのピアノとティーレマン指揮ベルリンフイルによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、
2012/12/01、フィルハーモニー・ホール、

−このアンデルジェフスキーの演奏は、まるで独奏ピアノを楽しんでいるように見え、大きくモーツァルトを捉えてまるでロマン派の曲のように弾きこなし、自在に装飾をつけたり独自の変化を見せたり、その自在振りが新しい演奏のように聴かせていた。もっといろいろな曲を弾いて欲しいし、これからが楽しみなピアニストであると思った。一方のポリーニの演奏は、2012年に収録されたアーカイブ映像であり、1942年生まれのポリーニの70歳の時の演奏である。少しも衰えを感じさせない堂々とした大家の演奏であり、指揮者のティーレマンとも共通する淡々とした冷静で情に溺れない現代的な演奏であり、甘い演奏になりがちな第二楽章もすっきりした演奏であった。それでいて、決して冷たい硬質な演奏ではなく、全体的には穏やかさをたたえた暖かな演奏のように思われるのは、指揮者とソリストの性格や演奏スタイルが反映されたものと思われる−

(BDCHのアーカイブより;アンデルジェフスキーのピアノ協奏曲第24番K.491)
18-7-2、ジョヴァンニ・アントニーニ指揮ベルリンフイルとピョートル・アンデルジェフスキーのピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、2015/10/24、フィルハーモニー・ホール、および、マウリツイオ・ポリーニのピアノとクリスティアン・ティーレマン指揮ベルリンフイルによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467、
2012/12/01、フィルハーモニー・ホール、
(2018/06/11、および2018/06/12、BDCHのアーカイブよりアップ、)

     18-7-2の最初の曲は、このところお付き合いが多くなったピアニスト、ピョートル・アンデルジェフスキーのピアノ協奏曲第24番ニ短調K.491であり、かねてBDCHのアーカイブにあったので、いつ、アップロードの順番が回ってくるか楽しみであった。彼とのお付き合いの第1号は、 パーヴォ・ヤルヴィとN響による第25番ハ長調K.503(17-4-1)であり、とても気に入っていた。第2の演奏は、今年のザルツブルグの祝祭大劇場であり、彼はウイーンフイルを相手にして、この第25番を堂々と渡り合っており(3-12参照)、現在最も元気に活躍しているピアニストに見えていた。ポーランドのワルシャワに1969年に生まれたと言うから丁度50歳であり、生気溢れる骨太の音作りが特徴なので、この曲に相応しい演奏になるのではないかと期待していた。



       この日のコンサートは、指揮者ジョヴァンニ・アントニーニのコンサートであり、ハイドンの二つの交響曲、第101番「時計」と第103番「太鼓連打」の間に挟まって、 このピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491が演奏されていたが、この曲は、通常の編成の他に2本のクラリネットと2本のトランペットにテインパニーも加わっており、ハイドンの交響曲とほぼ同じの二管編成のものであった。アントニーニの一振りで、第一楽章は短調の不気味な厳粛さを持った沢山の動機を持った長い第一主題がユニゾンで重々しく開始され、反復されてゆくが、続いて管だけがこれらの動機を奏でる世界となり、ここではフルートが美しい音色を響かせて目立っていた。第二主題は現われず、そのままフルオーケストラで盛り上がりをみせて呈示部を終えていた。



  やがて独奏ピアノが華やかなアインガングで登場し華麗なパッセージを響かせた後に、冒頭の重い第一主題がオーケストラで華々しく提示され、ピアノが部分動機を材料にひとしきり技巧を見せながら自由に動き回る。アンデルジェフスキーのピアノは、落ち着いているが華やかで、適度に装飾も含まれていた。やがてピアノは単独で呟くように美しい第二主題を提示するが、オーボエが歌うように反復し、ピアノが速いパッセージで引き継いで、フルートとピアノによる競演が速いテンポで繰り広げられる。木管群の新しい主題提示とピアノがそれを模倣して早いパッセージで繰り返すパターンが賑やかで、アンデルジェフスキーのピアノの技の冴えが随処で見られていた。



   ピアノのアインガングの音形で始まる展開部もピアノが大活躍し、再現部でもピアノが縦横の活躍をして、長い技巧的なオリジナルのカデンツアを経て、重々しい第一楽章が終結したが、くっきりした輪郭のピアノの音が冴え、歌うところも存分に歌わせて、やはりモーツァルトを得意にするピニストの表情が存分に現われていた。



   第二楽章は独奏ピアノが易しい主題をラルゲットでくっきりと奏し始め、続いて弦楽器と木管楽器が掛け合い風に穏やかに繰り返していくが、何とこれがロンド主題であり、ABACAの構成のロンド形式の始まりであった。続いてオーボエとファゴットが対話をする第一の副主題が登場し、ピアノと弦楽器が主題を引き継いで爽やかに対話を重ねる。そして再び冒頭の優しいロンド主題がピアノに戻り、アンデルジェフスキーは楽しげにピアノを弾いていた。続いて第二のエピソードがクラリネットとファゴットで示されて、ピアノと弦楽器に渡され、ひとしきり対話が行われていた。この楽章でアンデルジェフスキーが示したピアノは、絶えずアンサンブルの相手を意識した丁寧な美しいピアノであり、ベルリンフイルの管楽器の皆さんもここぞとばかり美しくピアノと競い合っていた。



       フィナーレはアレグレットの変奏曲形式であり、速目のテンポのオーケストラで主題が提示されるが、第一楽章の冒頭の第一主題の部分動機のような関連主題であった。第一変奏はピアノのソロで速いテンポの変奏が行われアンデルジェフスキーの優雅な世界であった。第二変奏は木管群が主題を示しピアノが速いパッセージでフォローしていた。第三変奏はアンデルジェフスキーの独奏ピアノが力強く付点のリズムで変奏し、オーケストラも力強くこれを繋いでいた。第四変奏はクラリネットが新しい主題を提示しピアノがこれを模倣して変奏していた。第五変奏はがらりと変わって独奏ピアノだけのポリフォニックな演奏でアンデルジェフスキーのピアノが呟くように歌っていた。第六変奏は新しい主題がオーボエで導かれ、フルートが反復してピアノに渡されていた。第七変奏は弦楽器が冒頭の主題を流しピアノがこれを彩り、短いカデンツアが奏され、フィナーレのピアノによる速いテンポの変奏で終結していた。この楽章でもアンデルジェフスキーのピアノと木管群と弦楽器群とが互いに補い合って持ち味を発揮しており、アンサンブル音楽の妙味を見せていたが、ピアノが常に中心になって見事なバランスが図られていた。



    騒然としたもの凄い拍手の嵐の中で、アンデルジェフスキーはご挨拶していたが、最初にステージに呼び出された時は花束を贈呈され、二度目に登場したときにはオーケストラ団員たちもアンデルジェフスキーを讃えるので、ごく自然体で彼はピアノの席に着き、バルトークの小品を弾きだした。おどけたピアノの楽しい曲でとても良い雰囲気の中で、そのまま映像が終わりとなっていた。
     このアンデルジェフスキーは、独奏ピアノを楽しんでいるように見え、大きくモーツァルトを捉えてまるでロマン派の曲のように弾きこなし、自在に装飾をつけたり独自の変化を見せたり、その自在振りが新しい演奏のように聴かせていた。もっといろいろな曲を弾いて欲しいし、これからが楽しみなピアニストであると思った。

(以上)(2018/06/11)




        18-7-2の第二曲目は、マウリツイオ・ポリーニによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467であった。ティーレマンのコンサートの2曲目に演奏されており、第1曲目のメンデルスゾーンの序曲に続いて行なわれ、休憩を挟んでリストの交響詩の第6番と第13番が演奏された面白い曲目のコンサートであった。メンデルスゾーンの序曲に続いて、ポリーニとティーレマンが舞台に登場して、一呼吸おいてから、行進曲のような曲調の第一楽章がオーケストラのユニゾンで堂々と開始された。アレグロ・マエストーソの指示通りフルオーケストラで明るくリズミックに進行し、ティンパニーとトランペットが力強く響いていた。ティーレマンは弦五部とティンパニーが刻むリズムに注意を払いながらやや早めのしっかりしたテンポで進めており、やがて弦と管の応答が続いてからトウッテイによる経過部がダイナミックに進行していた。途中からオーボエやフルートが明るい響きを見せる副主題が登場して、終始明るい響きの中でフルオーケストラによる行進曲が堂々と進行して、第一主題のみで提示部を短く終了していた。



    続いてオーボエ、ファゴット、フルートに順次導かれるように独奏ピアノのアインガングが始まり、ピアノが高らかにトリルを響かせているうちに弦楽器による第一主題が始まった。ポリーニの独奏ピアノは力強くこれを引き継いで、華やかなパッセージで威勢よく進行していた。久し振りで見るポリーニの鍵盤に向かう姿はしっかりしており、やや早めのテンポで弾かれるパッセージは丁寧に軽快に弾かれていた。やがて独奏ピアノが弾き出す新しい副主題が登場して繰り返し、明るく印象づけてから軽快な第二主題が独奏ピアノで歌うように現れた。ポリーニはこの主題を木管の合奏に応えるようピアノで繰り返してから、独奏ピアノが素晴らしいパッセージを見せながら急速に進行し、次第にオーケストラと競い合うように高揚しながら盛り上がりを見せて提示部を締めくり、展開部へと突入して行った。



      展開部ではポリーニは、もの悲しいトーンで独奏ピアノが進んでいたが、次第に早いパッセージに変わっていき、後半では独奏ピアノが激しさを増し、まさに絢爛たるピアノの技巧が示されていた。ここでは、ポリーニはオーケストラとも対等に向き合い、力強くピアノを弾きこなしていた。再現部では提示部とは主題の順序が異なっており、第一主題が呈示された後、直ぐに第二主題がピアノで再現されたり、後半で第一主題のトウッテイによる提示の後オーボエやフルートが明るい響きを見せる印象深い副主題が現れたりして、多彩な変化を見せた再現部となっていた。最後のカデンツアでは、ポリーニはいきなりオリジナルの早いパッセージから入り、お気に入りのパッセージを繰り返して技巧の冴えを示していた。
       眉毛まで白くなったポリーニのしっかりした姿は、気品ある態度でベルリンフイルと対等以上に堂々と渡り合って無難にこの第一楽章をこなしていたが、終始、冷静で落ち着いたテンポで進行しており、やや冷たさを感じさせる進行振りであったが、とても優雅な香りのする穏やかな演奏という感じを抱かせていた。



        第二楽章は弦楽合奏で始まる美しい静かなアンダンテ楽章であるが、ティーレマンは非常にゆったりとしたテンポで弦楽合奏が開始された。コントラバス3台の厚いピッチカートと第二ヴァイオリンとヴィオラの三連符による豊かな伴奏に乗って、第一ヴァイオリンが美しいテーマをゆったりと歌い出し、やがて木管も加わって、静かな美しいオーケストラの世界を築き上げていた。やがてポリーニの独奏ピアノが同じゆったりとしたテンポで左手で三連符を弾きながら登場し、弦楽合奏のゆっくりしたピッチカートによる豊かな伴奏に乗って右手でこの主題をゆったりと弾きだした。ポリーニは確かめるように、一音一音を明確に弾き、ひとしきり美しく歌っていたが、ポリーニの姿は冷静で、甘さを感じさせないすっきりした弾き方であった。中間部に入って新しい主題がピアノによって示されるが、淡々としたピアノの味わいは変わらず、ポリーニはここでも一音一音ゆっくりと確かめるように丁寧に弾いており、ピアノとオーケストラで交わす対話は、落ち着いた穏やかなささやきのように聞こえていた。再び冒頭の静かな主題に戻るが、ここでは始めから独奏ピアノとオーケストラで始められ、幾分変奏されて進行するが、独奏ピアノの方も幾分装飾を交えて弾かれており、ごく短いコーダの後にひっそりと静かに終息していた。ポリーニの落ち着いた穏やかなテンポによる淡々とした冷静な調べが印象に残る美しい楽章であった。



    第三楽章は、弦のスタッカートで軽やかに飛び出す第一主題がいきなり繰り返され、続いて弦と木管の応答が繰り返されて、フェルマータで一服する変則的楽章。この楽章は、どうやらアレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイとされたこのロンド風の主題で始まる展開部を欠いたソナタ形式であった。続いて独奏ピアノが短いアインガングで登場し、改めてこのロンド風の第一主題を軽快に弾きだした。そして再びオーケストラに主題を渡してから、独奏ピアノによる流れるような16分音符の副主題が走り出していた。ポリーニは勢いよく軽快にこの主題によるパッセージを弾き進めているうちに、オーボエに続いてフルートも加わった木管合奏で第二主題が始まった。ポリーニは、直ぐにピアノでこの主題を受けて、再び16分音符のピアノのパッセージが続いて、軽快なピアノのペースとなり、オーケストラと対話を重ねて提示部が終了していた。
      再びフェルマータで一服すると、独奏ピアノがロンド風な冒頭主題を弾き出して再現部に突入していた。今度は順序を変えてソロピアノ、トウッテイの順で第一主題が再現されていたが、それ以降は再び独奏ピアノが走り出し、第一主題・第二主題の順に再現され、独奏ピアノが鍵盤上を走り回るように駆けめぐって頂点に達し一気にカデンツアとなっていた。ポリーニのカデンツアは、これまで疾走してきたパッセージを改めて回想する短いものであり、最後は独奏ピアノによる音階の輝くような上昇で華やかにこのフィナーレを終結していた。



      この映像は、他の最近のベルリンフイル定期公演のものではなく、2012年に収録されたアーカイブ映像であり、1942年生まれのポリーニの70歳の時の演奏である。少しも衰えを感じさせない堂々とした大家の演奏であり、指揮者のティーレマンとも通ずるものがあるが、淡々とした冷静で情に溺れない現代的な演奏であり、甘い演奏になりがちな第二楽章もすっきりした演奏であった。それでいて、決して冷たい硬質な演奏ではなく、全体的には穏やかさをたたえた暖かな演奏のように思われるのは、指揮者とソリストの性格や演奏スタイルが反映されたものと思われる。この映像で、この曲の全ての映像のアップロードは完了しているが、これは非常に優れた演奏なので、果たしてどの演奏がベストになるのか、改めて考えなければならないと思われる。


(以上)(2018/06/12)



目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ


名称未設定