(最新のBDCHより;ハーデイング指揮のハ短調ミサ曲K.427ほか、)
18-6-3、ダニエル・ハーデイング指揮によるオール・M・コンサート;交響曲(第32番)ト長調K.318、コンサートアリア(テノール)K.431及びコンサートアリア(バス)K.612、およびミサ曲ハ短調K.427、
2018/04/21、BDCHのライブより、フイルハーモニアホール、ベルリン、

−ハーデイングは最初の交響曲の軽快感を実に良く現わして、テインパニーやトランペットなどの鋭い響きや4ホルンの重厚な響きを引き出し、この序曲風の交響曲を優雅にまとめて、いつものように格好の良い指揮振りを見せていた。続いてテノールとバスの珍しいコンサートアリアの充実した歌唱力十分のアリアが続いてから、待望のハ短調ミサ曲が始まったが、ハーデイングの生き生きした新鮮な指揮振りがとても印象的であり、ベルリンフイルも合唱団も4人のソリストたちも、それぞれ素晴らしい演奏をしてくれたので、とても満足出来る楽しいコンサートになっていた−

(最新のBDCHより;ハーデイング指揮のハ短調ミサ曲K.427ほか、)
18-6-3、ダニエル・ハーデイング指揮によるオール・M・コンサート;交響曲(第32番)ト長調K.318、コンサートアリア(テノール)K.431及びコンサートアリア(バス)K.612、およびミサ曲ハ短調K.427、
2018/04/21、BDCHのライブより、フイルハーモニアホール、ベルリン、
(Solist) S;Lucy Crowe、Ms;Olivia Vermeulen、T;Andrew Staples、B;Georg Zeppenfeld、
(BDCHのアーカイブより2018/05/19アップ)

       2018年4月21日のベルリンフイルのデジタル・コンサートホールで聴いた最新のハーデイングのオール・M・コンサートより、久し振りでハ短調ミサ曲の素晴らしい名演奏をアップロードすることが出来た。このコンサートは、ハ短調ミサ曲では出番が少ないテノールとバスの2曲のコンサートアリアが含まれていた。そして、最初にコンサートの序曲的な交響曲ト長調K.318も含まれており、いずれも選曲が良いので、最近にない素晴らしいコンサートになっており、さすがベルリンフイルと感動させられた。



          初めの交響曲(第32番)ト長調K.318は、フルート2、ホルン4、トランペット2、テインパニーと、変わった構成の特徴あるシンフォニーであり、コントラバスが3本のオーケストラがどんな響きを聴かせてくれるか楽しみであった。この曲は、荒々しい第一主題がフォルテで軽快に始まり、勢いよく繰り返されるように進んで、この力強い音形が元気よく発展してから、チッチッチッチと第一ヴァイオリンが鳴き出す軽快な特徴ある第二主題が弦で開始され、ひとしきり演奏されていた。コンサートマスターは、長身の若いバルグリーと樫本の二人の体制であり、指揮者ハーデイングは、この弦の楽しげな主題をフレッシュに響かせて、ピアニッシモからフォルテイッシモへと盛り上がらせてから、冒頭の動機に戻って提示部を終えていた。続いて第一ヴァイオリンによる第三の主題が現れて管楽器の付点のリズムにより激しい盛り上がりを見せてその頂点に達したかに思われた。



          しかし、突然に、フェルマータに続いてアンダンテの第2楽章にがらりと変わり、早速、ゆっくりした第一主題が第一ヴァイオリンと後半はフルートにより歌うように現れた。続いて第二主題がオーボエと四つのホルンの重奏の形で現れていた。これらの主題がゆっくりと繰り返されたところで、再び突然に、第三楽章のアレグロに突入して驚かされた。フォルテとピアノの交替する激しいトレモロの経過部を経て、第一楽章のあの楽しげなチッチッチッチの第二主題が思い出したように明るく現れて、ひとしきり進んでから、曲は直ぐにまとめに入り、冒頭主題が飛び出してコーダになり、全体が力強く終結していた。



           この曲は急緩急の三つの部分で出来ていたが、それぞれが楽章として独立せず、最初のアレグロでは二つの主題が提示され、展開部が終わったところでアンダンテに入っていた。また、ここでも二つの主題が提示されてから、急にアレグロに移行し、最初のアレグロで使われた主題によりフィナーレをまとめるという、全体が一つのソナタ形式の曲のように構成されていた。ハーデイングはこの曲の軽快感を実に良く現わして、テインパニーやトランペットなどの鋭い響きや4ホルンの重厚な響きを引き出し、この序曲風の交響曲を優雅にまとめて、いつものように格好の良い指揮振りを見せていた。



         このコンサートの第2曲目は、テノールのために書かれたレチタテイーヴォとアリア「あわれ、お、夢か、うつつか」、「あたりに吹くそよ風よ」K.431であり、テノールのアンドリュー・スティプルズが歌うものであった。
          この曲は、1783年12月にウイーンで作曲され、同月22日と23日に宮廷劇場で開催された退職音楽家協会の慈善演奏会で、「後宮」のベルモンテ役を歌ったアダムベルガーが演奏したという記録がある。このレチタテイーヴォとアリアのテキストは、どのオペラから取られたか、誰の作詞かなどは不明である。その内容は、愛人と別れて死に向かう絶望的な男が、陰惨な下界に達して、亡霊どもに地獄の門を開けろと歌うものである。



          レチタテイーヴォでは、ゆっくりしたオーケストラの序奏で始まり、「哀れな私、これは夢を見ているのか現実か」、続いて「自分はただ一人、いよいよここで果てるのか」と嘆き、地獄の扉を開けよと叫んでいた。これに続くアリアでは、 「あたりに吹くそよ風よ、わが愛しい人にこの溜息を届けてくれ」とアンダンテ・ソステヌートで歌っていた。後半部は、アレグロ・アッサイになって感情は高まりを見せ、絶望感と悲痛さを増して「まわりの無数の亡霊とその声が私を悩ませる。何たる恐怖。何たる残忍な運命か」とその恐怖を歌っていた。
           テノールのアンドリュー・スティプルズは、絶望的な心境をレチタティーヴォで歌い、ゆっくりしたテンポで「この溜息を届けてくれ」と強くアリアを歌い、終わりに速いテンポで助けを求めるようにこの不気味な激しい曲を歌っていた。モーツァルト・オペラのテノール4役の中では、ドン・オッターヴィオ向きかなと思われた。



           このコンサートの第3曲目は、バスのためのコンサートアリア「この美しい手に」K.612であり、ミサ曲では4重唱1曲しか出番のないバス歌手のゲオルグ・ゼッパーフェルトが歌ったものである。この曲は、コントラバスのオブリガート付きのバスアリアで、「魔笛」のザラストロ役であったゲールとコントラバスの名手だったビシュルベルガーのために作曲されている。アリアの内容は、愛の告白であって、前半のアンダンテでは、この美しい手に愛を誓うと歌い、後半のアレグロでは、喜んでいるのか、その顔をこちらに向けてくれと歌う。しかし、コントラバスの伴奏といい、音楽の内容といい、ユーモアに溢れたパロデイ的な遊びの要素が入った曲である。



このライブでは、コントラバス奏者と、バス歌手と、ハーデイングが最後に登場して拍手の後に、早速、オーケストラの前奏が始まっていたが、直ぐに、コントラバスがぎすぎすとオブリガートの伴奏を始めてから、バスが「この美しい手に、私は愛を誓う」とお馴染みのアンダンテのアリアを歌い出していた。アリアの途中でもオブリガートが時々入って賑やかであったが、後半部に入るとアレグロになって「喜んでいるのか、嫌いなのかを語ってくれ」と歌っていた。しかし、歌う区切れごとにコントラバスが相槌を打つように参加しており、明るく結ばれていたが、その堂々たる歌いっぷりに満場から大拍手を浴びていた。声の穏やかさ、長身の身振りなどから、ザラストロか騎士長がお似合いのバス歌手かなと想像してみた。



          コンサートの最後は、いよいよハ短調ミサ曲K.427であり、会場ではオーケストラの配置が変わり、ベースが3本で変わらないが、3本のトロンボーンとバロックオルガンなどが加わっていた。スエーデン放送合唱団は男女合わせて約40人くらいか、地味なユニフォームで既に整列しており、4人のソリストたちとハーデイングが入場してきたが、ソリストたちは日本と異なり、オーケストラの後ろ、合唱団の前の4つのイスに着席しようとしていた。ハーデイングの一振りで、静かに美しい弦の前奏が開始され女声合唱のキリエの歌声が哀愁を帯びて歌われ、男声合唱が加わって次第に力を増してゆっくりと進み、力強く高みに登っていたが、ハーデイングは指揮棒を片手に、一緒に歌いながら、一音一音、刻むように指揮をしていた。



            やがて地味なドレスの第1ソプラノのルーシィ・クロウがクリステ・エレイスンと歌い始め、バロック・オルガンに支えられて、彼女の明るく澄んだ細い声が良く通り、オラトリオのアリアの様に厳かに美しく歌われて、この大ミサ曲の開始を堂々と告げていた。後半では、壮大なオーケストラと大合唱により深い響きを聞かせており、再びキリエがソプラノの合唱で開始され、続いて壮大なオーケストラと大合唱により深い響きを聞かせてから、やがて静かにこの楽章を閉じていた。素晴らしいミサの開始を告げるキリエの合唱であった。



             男声合唱団員の一人がグロリア・イン・エクシエルシスとグロリアの開始を告げると、フルオーケストラでグロリアの大合唱が激しく始まり、アレグロ・ヴィヴァーチェで晴れやかに「グロリア」と神への賛歌が歌い出され、やがてそれがフーガになり、壮麗に大合唱が続けられた。ハーデイングは自分でも歌いながら、目まぐるしく指揮棒を動かしていた。やがてエト・イン・テルラで急変してピアノになるが、再び神への栄光を讃える晴れやかな大合唱となって、最後には再びピアノになって静かに結ばれていた。
               続くラウダムス・テでは弦五部の軽快な前奏で始まり木管も加わった後に、第二ソプラノのオリヴィア・フェルモーレンが軽やかなテンポで明るく歌い出した。赤いドレスがよく似合う彼女の歌は、次第にコロラチューラの部分を含んだ華麗なアリア風になり、威勢よく明るく歌われていた。彼女の声はオーケストラにしっかりと支えられ、オーボエなどとも良く合って見事な歌声を見せ、第一ソプラノに負けぬ技巧を示しながら、二人揃ってソリストとして堂々と存在感を示していた。



               続くグラテイアスでは女声のソプラノが二部に別れる5部合唱でアダージョの力強く歌われる厳かな大合唱であるが、前後の曲とはがらりと変わって時にはバッハ風の不協和音も飛び出す重厚そのものの短い合唱であった。
               ドミネ・デウスでは弦五部の前奏による明るいアレグロで始まるソプラノの二重唱であるが、始めに第1ソプラノのクロウが明るく歌い出し、次いで第二ソプラノのフェルネンレンが繰り返すように歌って行くが、やがて二人の斉唱となり、アーアーと二人が声を揃えてゆっくり歌う場面は、神を讃えるような壮麗な美しい響きを持っており、まるでモーツァルトの残した最高の二重唱とも思える美しさを秘めていた。



                一転して、クイ・トリスでは二重の合唱団による重々しい付点音符の八部合唱で進む荘重なラルゴであり、ハーデイングは渾身の力を込めて一音一音力強く、自らも歌いながら進めていた。フォルテで進むところとピアノで消えるように進むところが交錯し、重苦しい受難を思わせるように、重々しく喘ぐように進んでいた。
                続くクオニアムでは、かなり長いオーケストラのアレグロの前奏で始まり、第二ソプラノ、第一ソプラノ、テノールの順に歌い出して三重唱となり、フーガ風に続いてひとしきり互いに競い合うように歌っていた。中間では第一ソプラノ、第二ソプラノ、テノールの順に歌い出しており、変化しながら再現が行われ、後半ではフーガ風に重唱され伸びやかに明るさを見せながら、最後は素速いオーケストラで結ばれていた。



               グロリアの最後は、「イエスキリストよ」と歌われる全合唱と全オーケストラが参加するアダージョの重々しい序奏に続き、クム・サンクト・スピリトウス(聖霊とともに)の本番では、非常に力強い大合唱となり、複雑な構成のフーガとなって展開されていた。そして最後にはアーメンとフーガで斉唱される壮大な合唱となり、素晴らしい迫力でグロリアの神への賛歌が歌われて、最後はアーメンで締めくくられていた。
                このグロリアだけで30分近くを要し、大司教によりミサ全体が30分以内で終わるように指示されていたモーツァルトにとっては、コンスタンツエとの結婚のためこのミサ曲の作曲を自発的に決意しており、この神への賛歌を制約なしに自由に、精一杯書き上げたものと思われる。そのせいか、残念ながら、後半が力尽きたか未完に終わるという結末になってしまった。



                クレード・イン・ウーヌム・デウムと男声合唱団員の一人がクレドの開始を告げると、いきなりハーデイングの一振りで弦と管が交互に繰り返されるフルオーケストラの力強い賑やかなアレグロで始まり、クレドと叫ぶ力強い合唱と弦の合奏が交錯する形で進行した後、ソプラノが二部に分かれた五部合唱でリズミックに歌われていた。二部に別れたソプラノの歌声が良く響き、唯一なる神への信仰を高らかに歌う明るい歌声であった。



               続いてバロック・オルガンと弦の前奏のあとオーボエとフルートとファゴットによりエト・インカルナタス・エストの導入部が始められ、ハーデイングが笑みを見せながらひとしきり歌わせた後に、おもむろに第1ソプラノのクロウが美しい声を張り上げて歌い出した。ソプラノの明るい声がコロラチューラのパッセージを歌い出すとオーボエがこれを模倣し、彼女の抑制の効いた艶やかな歌声が会場に漲って素晴らしい効果を挙げていた。最後のカデンツアでは、木管三重奏とソプラノの声が何重にもこだまするように響き、この上ない美しさを醸し出していた。



                サンクトウスでは二部に別れた八部合唱で「聖なるかな」の大合唱が、トロンボーンなどオーケストラとの合奏でラルゴのゆっくりしたテンポで力強く、三度、厳かに歌われた。そして、ヴァイオリンの小刻みな伴奏に伴われて、八部合唱でドミナス・デウスが静かに歌われ続け、やがて荘厳なホザンナの大合唱が早いテンポで開始されて大きく盛り上がりを見せて終息していた。



               最後のベネデイクトスでは、弦と木管のアレグロの長い前奏に続いて、ソプラノから順にバスも加わったソリスト達の四重唱となり、ベネデイクトスの言葉が何回もソリスト達により四重唱で繰り返されてとても盛大に発展していた。ハーデイングは笑みを見せながら軽快に進めており、やがてホザンナに入り、カノンで繰り返される大合唱がフーガ風に歌われていた。そして壮大に盛り上がりを見せてこのホザンナでミサは終結していた。ここでミサ曲としては、中断する形となったが、ここでは、ホザンナによる堂々たる終息の仕方で、一斉に拍手が湧き起こり、アニュス・デイがなくとも、言葉が分からないわれわれには、この荘厳な大合唱で十分に満ち足りた感じがした。

               さすがミサ曲で終わるこのオール・モーツァルト・コンサートには、会場では大変な拍手が湧き起こり、舞台は騒然として大拍手が続き、改めて舞台に登場したハーデイングやソリスト達には花束贈呈が行われていた。また、合唱指揮者も顔を出し、はるばるスエーデンからやって来た合唱団も全員起立して挨拶を繰り返していた。


           今回のハーデイングによるこのオール・モーツァルト・コンサートは、とても選曲が良く、序曲風の短いシンフォニーに始まり、中間にテノールとバスのためのコンサートアリアが2曲組み込まれ、最後にハ短調ミサ曲となっていたが、ハーデイングの生き生きした新鮮な指揮振りがとても印象的であり、ベルリンフイルも合唱団も4人のソリストたちもそれぞれ好演してくれたので、とても満足出来る楽しいコンサートであった。その観衆の喜びが、この盛大な拍手になったものと思われ、久し振りで、充実したコンサートのアップロードが出来たと喜んでいる。

(以上)(2018/05/21)



目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ


名称未設定