(最新のBD「王様の魔笛」より;指揮者グッテンベルクの「魔笛」K.620)
18-5-3、エーノッホ・ツー・グッテンベルク(指揮・監督・演出)による歌劇「魔笛」K.620、
クラング・フェルヴァルトゥング・オーケストラ、ノイボイエルン合唱団、2013/11、ブリンツレゲンテン劇場、ミュンヘン、
(配役)本当のパパゲーノ(俳優);ゲルト・アントホフ、ザラストロ(ルードヴィッヒ2世);タレク・ナズミ、タミーノ(フランツ・ヨーゼフ1世);イエルク・デュルミューラー、夜の女王(ゾフィー大公妃);アンテイエ・ピッターリヒ、パミーナ(皇妃エリーザベト);スザンネ・ベルンハルト、パパゲーノ(バイエルン大公マックス・エマヌエル);ヨッヘン・クプファー、モノスタトス(プロイセン宰相ビスマルク);マルティン・ベツォールト、ほか、

− 私はルードヴィヒ2世の三つのお城の現地に行っており、またウイーンのシシー博物館などにも行って、それぞれの写真集などが手元にあり、このHPにもこれらの旅行記を残しているので、このオペラの時代背景にはとても興味があり、老パパゲーノの市民的批判の呟きも面白く聞えていた。そのため、このような1880年代後期の時代設定をした、当時の宮廷オペラのスタイルによる王様方に愛された古くさい「魔笛」の舞台は、この時代背景に馴染んだり関心のある方には滅法面白いと思われ、素晴らしい記録を残してくれたと思う。しかし、そうでない方や興味のない方には、現代的な「魔笛」の方が面白いし、楽しいものと思われる−

(最新のBD「王様の魔笛」より;指揮者グッテンベルクの「魔笛」K.620、)
18-5-3、エーノッホ・ツー・グッテンベルク(指揮・監督・演出)による歌劇「魔笛」K.620、
クラング・フェルヴァルトゥング・オーケストラ、ノイボイエルン合唱団、2013/11、ブリンツレゲンテン劇場、ミュンヘン、
(配役)本当のパパゲーノ(俳優);ゲルト・アントホフ、ザラストロ(ルードヴィッヒ2世);タレク・ナズミ、タミーノ(フランツ・ヨーゼフ1世);イエルク・デュルミューラー、夜の女王(ゾフィー大公妃);アンテイエ・ピッターリヒ、パミーナ(皇妃エリーザベト);スザンネ・ベルンハルト、パパゲーノ(バイエルン大公マックス・エマヌエル);ヨッヘン・クプファー、モノスタトス(プロイセン宰相ビスマルク);マルティン・ベツォールトほか、
(2018/04/25、ファラオ・クラッシックス、KKC9287、5000円、)

           5月号の第3曲目は、4月25日に購入したばかりの、新発売のBD盤であり、オペラ「魔笛」のライブ映像であって、レコード芸術誌5月号で「特選盤」に推奨された映像であった。「王様の魔笛」と題されたこの映像は、指揮者グッテンベルクが、企画・音楽監督・演出を兼ねて上演した「魔笛」であり、バイエルンの国王ルードヴィヒ2世にまつわる史実と、当時の王を取り巻く貴族たちに流行していたオペラ上演とを重ねて企画されたものであり、ヘレンキームゼー音楽祭で2013年に上演したところ好評だったので、その年の11月にミュンヘンのプリンツレゲンデン劇場で再演したものを映像化したとされている。



             このオペラは、国王ルードヴィヒ2世が建設中のヘレン島にあるお城で、最新の人工照明を施した野外劇場でオペラ上演を試みたという史実を生かし、そのオペラの登場人物に、ザラストロがルードヴィヒ2世本人、タミーノにはオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世を充てるとなると、パミーナは、当然、シシーの皇妃エリザベートとなり、夜の女王はいつも国境争いをしている隣国のオーストリアのゾフイー大公妃となって、まさに東西対決の布陣にならざるを得ないような構図になっていた。そうなると戦略家の宰相ビスマルク(モノスタトス)やバイエルン大公ヘルツォーク(パパゲーノ)も加担するという大袈裟なお話しのようであり、当時の衣裳や髪型で登場していた。
そしてその当時に「本当のパパゲーノ」を演じたという俳優のゲルト・アントホッフが、ジングシュピールのセリフの代わりに進行役となり、同時に自分の体験から歌手や観客に、当時の貴族階級、男性優位社会、フリーメーソン、東西対立などを批判的立場で子供たちにも分るように面白く語るという趣向の風変わりな「魔笛」であった。しかし、二つのフィナーレは、俳優の語りはなく音楽だけが見事に通しで流れて、音楽的に素晴らしい効果を挙げていた。歌手たちの歌と演技やグッテンベルク指揮の演奏は、ドイツ本流の伝統的なスタイルで水準は高く、音楽的にはとても優れていた。しかし、アントホッフの洒落た語りを理解するには、われわれ外国人にとっては、当時のバイエルンの国情や歴史などの高度の知識が必要であり、子供が単純に喜ぶメルヘンオペラとは一線を画していた。



           映像はこの「王様の魔笛」を説明するために、オープニングでルードヴィヒ2世とローソクに代わる人工照明を劇場に試作した技術者を登場させ、そのやり取りで、当時の最新技術の舞台照明を使った広い城内劇場で、当時の貴族たちによるお遊びのオペラ「魔笛」が開演されることを説明していた。それが終わると、オーケストラと舞台の全体がが写されて、制服の衛兵が登場して「国王陛下は、本日ご参加の皆さまを心から歓迎しておられる。それではこれから「魔笛」を開演する」と簡単に挨拶をし、指揮者により華々しく序曲が開始されていた。冒頭で始まる三和音は堂々と見事なファンファーレとなって立体的に鳴り響き、続いてアダージョの序奏が荘厳な響きを持って厳かに進行していた。
そして映像では、早速、出演者の紹介がなされていたが、何とタミーノがフランツ1世、パミーナはシシーの皇妃エリザベート、ザラストロはルードヴィヒ2世ご本人などと紹介が始まっていた。続いて、アレグロになって弦楽器が爽やかな合奏を始めるとオーケストラが画面に現われて、コントラバス3台のクラングフェルヴァルトゥング管弦楽団が素晴らしい響きの勢いを見せていた。どうやらこの新しいBDのDolby Atmosシステムは、3D的な豊かな響きを再生しており、我が家の書斎においてもこのオーケストラが部屋中に鳴り響いていた。再び三和音のファンファーレが鳴り響いてから、舞台では、三人の侍女らしい貴婦人が現われて準備を始めたり、説明役の老人が何やら動きを始めていた。



               序曲が終わって第一曲の序奏が始まり「助けてくれ」と皇帝の衣裳を着けたタミノーが飛び出してきて倒れてしまったが、そこへ三人の侍女が頭に被っていた怪獣の頭を投げつけて、「勝った」と歌いながら登場して来た。そして倒れている髭面のタミーノを見て、誰が女王様に報告に行くか、女らしい争いをして一息ついていた。この三人の侍女は、それぞれ**貴族の00貴婦人と名のある名前で登場していたが、プロの女性たちが堂々と歌って歌唱力は抜群であった。そこへ昔、パパゲーノ役をやったという老パパゲーノが出てきて、その昔パパゲーノとして舞台に出た話やこの場面の解説を始めだしたが、パパゲーノの笛が突然聞こえて来てアリアの序奏が始まったので、慌てて引っ込んでいた。



                  パ パゲーノはバイエルンのマックス大公扮する鳥刺しスタイルで笛を吹きながら第2曲の鳥刺しのアリアを歌っていたが、普通の舞台では険しい岩山から登場するいつものスタイルと違う舞台に戸惑いながら、リブレット通りのセリフで歌い、三人の侍女を見つけて「娘っこを捕まえたい」と陽気に歌っていた。歌は立派で堂々と歌われ、歌い終わるとタミーノの隣に座り込んだ。そこで老パパゲーノが、この舞台は俺たちの舞台と違って間違いだらけだと言いながら本来の筋書きを語り出したが、長いのでここでは省略するとして、最後に三人の侍女の一人が、パゲーノが嘘をついた罰として大きな口栓をしたり、タミーノには有名なシシーのプロマイドを見せて手渡していた。



      フランツ・ヨーゼフ1世の姿をしたタミーノは、シシーの姿をしたプロマイドのパミーナを食い入るように見つめて、第3曲目の「絵姿のアリア」を朗々と歌い出した。1853年夏、バート・イシュルで、23歳のフランツ・ヨーゼフ皇帝の誕生日のお祝いにシシーと姉のヘレネと母の三人が訪問したが、この目的は皇帝の母とシシーの母が姉妹であるところから、自然な皇帝の花嫁選びであったとされた。そこで皇帝は本命であったヘレネではなくシシーのエリーザベトに一目惚れをしたという有名な史実が残されていた。このアリアはこの史実を再現するかのごとくに見事にゆっくりと心を込めて歌われた。ブラボーのかけ声と拍手が湧き起こり、老パパゲーノが出てきて、夜の女王であるゾフィー大公妃の話をすると、早速、女王様のお出ましとなっていた。



      そして直ぐ第5曲目の夜の女王のアリアとなり、タミーノは立ちヒザで畏まって聞いており、女王はこのコロラチュアの難曲を力強く堂々と歌って、拍手喝采を浴びていたが、女王が歌いながらタミーノに「お前があの子を救いに行くのです」と命令した時には直立不動の姿勢で、敬礼までして答えていた。一方のパパゲーノは殺されてしまうと尻込みしており、口枷のお陰で「む、む、む」と馬鹿な振りをしていた。タミーノの力では口枷は取れず、遂に見かねた侍女の一人が、口栓を外してくれ、二重唱から賑やかな第5曲目の五重唱が始まった。



                パパゲーノは2度と嘘をつかないと約束させられ、一方のタミーノには、パミーノを救いに行くために女王さまからの贈り物の「魔法の笛」をプレゼントされていた。パパゲーノはザラストロが怖いと聞いていたので厭がっていたが、三人から 「魔法の銀の鈴」を送られて、渋々行くことになり、五重唱は終りとなっていた。しかし、 最後に「三人の童子」が道を案内すると紹介されて、二人はパミーノを救うため、元気よく出発することになった。



                場面が変わって、突然、宰相ビスマルクが扮するモノスタトスがパミーナの手を引いて登場し、パミーナとの二重唱が始まり、パミーナは倒れ込んでしまった。そこへひょっこりとパパゲーノが現われて、モノスタトスと鉢合わせ。第6番の睨み合いの三重唱が始まっていたが、二人はお互いの姿を見較べて怪物だと思い込んで驚いて逃げ出した。しかし、パパゲーノはパミーナを助け出し、絵姿でパミーノであることを確認し、二人がしっかりと仲良くなってから、第7番のパパゲーノとパミーナの「愛の二重唱」を歌い出した。素晴らしい二人の歌声にウットリしていると、老パパゲーノが出てきて、「俺は、パミーナさんにあの時、恋をしてしまったんだ」と正直に語って、大笑いとなっていたが、これからのフィナーレでは、このうるさい老パパゲーノの語りはお休みで音楽一筋の素晴らしい舞台が展開されていた。



             フィナーレに入って、タミーノが三人の童子たちに案内されて舞台に現れ、そこで三人に「不屈・忍耐・沈黙」と男らしくと教わった。ザラストロの宮殿の前庭に到着したタミーノは、パミーナを助けようと決意を固め、宮殿に入ろうとして「下がれ!」と脅されたがひるまずに繰返し、やっと出てきた弁者と押し問答を開始した。そこでザラストロは聖人で、お前は女に騙されていると言われ、タミーノは途方に暮れていた。思わず「パミーナは?」と口に出すと、弁者は答えない。しかし、見えない声が聞こえてきて、「パミーナは生きている」という返事があった。



     タミーノは感動して、見えない声に感謝して魔法の笛を吹くと、動物たちが沢山出てきた。喜んでもっと吹いているうちに、パパゲーノの笛が応えてきた。勇気100倍になり、パパゲーノたちを見つけようとしていたが、場面が変わって、そこに現れたパパゲーノとパミーナがモノスタトス一行に捕まってしまった。そこでパパゲーノが手にした銀の鈴を鳴らしてみると、ラ、ラ、ラ、の美しい音楽が鳴り出して、一行は踊り出し、戦う心を失って、どこかへ行ってしまっていたので大笑い。



     場面が変わり、「ザラストロ万歳」の大合唱が始まり、ザラストロが階段から下りて皆の前に登場してきた。パミーナは怖がらずに、急にしっかりした王女の口調で、正直に真実を語ろうと決意を固めていた。現われたザラストロはルードヴィッヒ2世に扮しており、パミーナが恋をしていることを理解していたが、彼女が母の名を口にすると、自由を与えることは出来ないと釘を刺していた。



       そこへモノスタトスがタミーノを逮捕して登場したので、そこでタミーノとパミーナが初めて顔を合わせていた。しかし、モノスタトスの報告に対し、ザラストロは彼に足の裏に鞭打ち77回の刑を与えて処罰していた。そして最後に、タミーノとパパゲーノは目隠しをされ、「試練」を受けることになって宮殿に導かれ、パミーナは折角二人に合ったのに見送ることになり、ここで第一幕は終了となっていた。
                    フィナーレに入ると、舞台は連続して動いており、少しうるさくて饒舌な老パパゲーノが口を出さなくなったので、安心して筋書き通り進む音楽に集中することが出来て、とても楽しむことが出来た。



       第二幕は厳かな第9番の行進曲の前奏がゆっくりしたテンポで開始され、舞台では宮殿の建物を背景に、大勢の制服をまとった僧侶たちが入場を始めて立体的に整列していた。ザラストロが登場し、三つの和音が響いてから、「イシスとオシリスの神に、彼らに叡智の心を与えたまえ」とゆっくりと第10番のアリアを歌い出した。ザラストロの敬虔な落ち着いた調べは堂々としており、続いて青い僧服の合唱団たちによる僧侶の祈りの声も間に挟まれて、いかにも「魔笛」らしい荘厳な宗教的な行事のように見えた。しかし、口うるさい老パパゲーノは、ザラストロの博愛主義を怪しいとくさし、モノスタトスへの刑罰も酷すぎるとこき下ろし、タミーノが彼らの仲間になろうとしているのを心配していた。



     一方、暗闇の中のタミーノとパパゲーノは、雷鳴により脅されて大騒ぎしていると、二人の僧侶が登場し、第11番の二重唱でタミーノに試練を受けることを確認したり、パパゲーノはザラストロが用意した自分に似た女の子のパパゲーナに会えることを楽しみに試練に加わった。そして「賢い男も女の策略にかかる」と沈黙と女の企みに気をつけろと、踊りながら二重唱で教えていた。早速、暗闇の中から三人の従女が現れて、女王様が来ていると頻りに誘う第12番の五重唱が始まって男二人を誘っていたが、パパゲーノも何とか頑張り通したので、三人の侍女は諦めて消え去った。



     暗闇の中でモノスタトスが登場し、月明かりの中で寝込んでいるパミーナを想像して、「惚れれば楽しいさ」と第13番の早口のアリアを歌い出していた。そして、パミーナにいたずらをしようと考えていたが、折から現れた夜の女王に見つかって、「お下がり!」と一喝されてしまった。そこで、老パパゲーノが出てきて、夜の女王の話をして、彼女の亡くなった夫が「七重の太陽の輪」をザラストロに遺贈したことから、夜の国と太陽の国とが戦争状態になっていると話していた。そこへ夜の女王が登場し、コロラチューラで歌う第14番の華やかなアリアを歌っていたが、自分の娘に「ザラストロに復讐しなければ、お前は私の娘でない」と酷いことを歌って立ち去っていった。素晴らしいアリアに大変な拍手になっていたところに、再び老パパゲーノが現われ、こんな酷い内容の歌に大拍手するなんてと怒りだし、この異常な復讐心が彼女と彼女の国を滅ぼしてしまうと呟いていた。



     そこへザラストロとパミーナが一緒に現れて、母親の罪を許してやって欲しいと訴えるパミーナに、ザラストロは慰めるように「この聖なる殿堂には、復讐を思う人はいない」と第15番のアリアを歌い出してパミーナを慰めていた。この美しいアリアは名調子でパミーナには優しく歌われ、ルードヴィヒ2世は気をよくして朗々と歌って、大変な拍手を受けていた。そこで老パパゲーノがパミーナを捕まえて、タミーノと俺は、昔、真っ暗な鉱山の跡地のような所を二日間も出口を探してさまよい歩いたと聞かせていた。そこへ三人の童子が登場して、ようこそ、ザラストロの国へと歌い出し、食べ物を差し入れしてくれ、魔法の笛と銀の鈴を届けてくれて、沈黙を守るように注意して、ゴールが近いから頑張れと激励して、第16番の三重唱を歌って二人を励ましてくれていた。
   そこで老パパゲーノが良く覚えていないが、王子が手にした笛を吹いたので、パミーナが現われたのだと呟いていた。



     画面では、三人の童子に連れられて、パミーナが一緒に登場して、タミーノにつれなくされて第17番の悲しいアリアを歌い出した。その理由を老パパゲーノが、パミーナが話しかけても、タミーノが全く返事をしなかったからだと説明していた。彼女は、最後には絶望して、思わず「ああ、確かにもう終わりなのね」と歌って、無視されるのは死ぬほどつらいと恨めしそうに歌っていた。彼女が立ち去ると、そこへ三つの和音が鳴り響き、舞台には僧侶たちが集まってきた。その中心に、何とザラストロもおり、僧侶たちの第18番の合唱が始まっていた。合唱は、「イシスとオシリスの神よ、何という喜び」と祈っていたが、しかし続けて良く聞いていると、後半には「若者は我らの仲間になるであろう」と歌っていた。



       そこで場面が変わり、ザラストロが登場して「王子よ、冷静であった」と語り、まだ最後の厳しい試練があることを伝えていた。そしてパミーナを呼んで、それから三人で第19番の別れの三重唱が始まっていた。パミーナが危険だと言い、タミーノは別れがつらいと歌う二人に、ザラストロは何事も神々のご意思だと歌う三人それぞれの心を歌う見事な三重唱になっており、歌い終わると三人はそれぞれ立ち去っていた。



      そして独りぼっちになった老パパゲーノがまた語り出す。暗闇の中で、進もうとすると「下がれ」と脅され、どうしようもなくなって困り果てていたが、そこで俺はふとパパゲーナのことを思い出していた。そこで手にした「銀の鈴」を鳴らしてみると、素晴らしい鈴の音が聞こえて来て、パパゲーノは元気を取り戻し、第20番のアリア「パパゲーノは若い娘が欲しいな」という有名なアリアを歌い出していた。このアリアの歌詞は3番まであり、最後にはパパゲーノはすっかりご機嫌になり、「銀の鈴」の回し方も覚えて陽気に踊り出していた。歌い終ると、再び老パパゲーノが舞台に出てきて、世界が昼の国と夜の国があるのはザラストロのお陰だという人がいるが、それはとんでもない。「全てはパミーナのお陰であり、彼女が王子と火の中、水の中で命をかけ、彼女が夜の女王とザラストロに勝ったのは「愛の力」のお陰で、それから昼と夜とが共存する毎日となったのさ」と語り、満場から大拍手を浴びて、舞台から退散していた。



      いよいよ第20番のフィナーレに入って、三人の童子たちが「朝の訪れを告げる太陽が輝く」と明るく歌い出していたが、彼らは様子がおかしいパミーナを見つけて近づいた。パミーナは母から渡された短剣を持ち、悲しみの余り自殺しそうな様子でふらふらしていた。三人はタミーノに会わせてあげると彼女のご機嫌を取り、隙を見てナイフを取り上げ、4人で連れだってタミーノを探しに出発した。



         場面が変わって、暗闇の中で二人の怖そうな衛兵がこの背後の入口の門を守っており、「この道を来たるもの、火、水、大気、そして大地で清められる」とコラール旋律で歌っていた。タミーノがそこへ登場し、勇敢に前へ進もうとしていると、パミーナの声が遠くから聞こえてきた。二人は会話することが初めて許され、「私のタミーノ」「私のパミーナ」と互いに劇的な再会をしてから、ピッチカートの伴奏に乗って、二人の愛と魔笛の力で試練の道を克服しようと相談をした。



    パミーナの提案で、彼女が案内をしながら、タミーノが笛を吹き二人で立ち向かおうと腹を決めた。しかし、衛兵が先頭に立って導いてくれ、初めに「火の試練」をクリアした。そして二人は元気で戻ると、続いて衛兵の案内で「水の試練」に立ち向かい、無事、元気に戻って来た。そうすると場面は大勢の人が集まってきて、二人は大合唱で勝利を祝福され、神殿へと迎えられていた。



      一方、場面が変わって、プロマイドしか見ていない若いパパゲーナを探して、パパゲーノが笛を吹きながら暗闇の中を駆け回って、パパゲーナと歌っていたが、どうしても捕まらない。遂に諦めて首吊りでもしようかと思って、用意していた首吊りのロープを取り出して、枝に掛けて、1、2、とゆっくり数えてから首を吊ろうとしても、誰も声を掛けて助けてくれない。諦めて思い切って3と数えて首を吊ろうとしたときに、三人の童子の声が聞えて来て、銀の鈴を鳴らせという。忘れていたとばかりに、パパゲーノが勢い込んで鈴を鳴らすと、後ろのカーテンの陰から可愛いいパパゲーナが姿を見せ、二人は劇的な「パ、パ、パ」の二重唱となって顔を合わせていた。この演出では、小さいパパゲーノとパパゲーナが沢山出てきて舞台を駆け巡り、観客の笑いを誘っていた。



      暗闇の中でモノスタトスの案内で夜の女王の一行が、ザラストロに復讐しようと神殿の地下に忍び込んで来たが、それを警戒し待ち構えていた一行による雷鳴や稲妻により一撃で地下深く沈められていた。そこでザラストロは「太陽の光」の勝利宣言を行い、集まった僧侶たち一同による勝利の祝福の大合唱が始まっていた。



    広場の中央には、三人の童子たちが正面に並び、ザラストロがその後方中央に起立しており、若き王子のタミーノと王女のパミーナが揃って登場して階段を上がり、高い席に二人揃って整列していた。そして全員が揃って、イシスとオシリスの神々への大合唱が始まって、神々に深く感謝を捧げて、終幕となっていた。この最後の場面は、お城を背景にした二段式の舞台を利用し、上段に若い王子と王女を中心に、青い制服の僧侶たちが階段を利用して整列し、下段にはザラストロを中心に色とりどりの服装の大合唱団が並んで、若い王子と王女の誕生を祝った賑やかな合唱が続いていた。この大団円には、通常、登場する動物たちや、パパゲーノ・パパゲーナなどの大勢の子供たちの姿が見えず、三人の童子たちだけが目立った大団円となっていた。しかし、続いて行なわれたカーテンコールでは全員が姿を見せており、指揮者や老パパゲーノも加わった賑やかなカーテンコールとなっていた。

    この新しい{王様の「魔笛」}は、従来の「魔笛」と趣向を変え、バイエルン国王ルードヴィヒ2世(1845〜1886)が最後に建設したフランス式庭園を取り入れ、ヴェルサイユ宮殿を小さくしたヘレンキームゼー城における史実に基づいて、当時の貴族たちが行なったであろう「魔笛」をここで再現したらどうなるかということを考えて上演されたものである。1880年代後半を意識した時代設定であるので、その舞台は、当時の動きのない固定舞台と暗いが最新技術の人工照明が施された舞台で上演され、そのオペラの内容には、大きく次の二つの特徴があった。その第1は、当時の貴族たちの趣向として、各配役には当時実在の有名人物を当てて、当時のオペラの真似事をしていること、第2には、当時の舞台で実際に演じたという年取った老パパゲーノが登場して、このオペラ特有のダイアログ(対話)をカットして説明役の語りにしたことに特徴がある。

      その結果として、初めにワグナーの崇拝者でありオペラ好きなルードヴィッヒ2世が登場し、建設中のお城に野外劇場を設営するとともに、自らがオペラの主人公のザラストロを演ずるという王様の発想が生まれたものと思われる。バイエルンの王様がザラストロだと、夜の女王は隣国オーストリアの女王様になるであろうし、その王子フランツの恋人役はシシーと決まっており、この「魔笛」の4役が史実から見事に想定できるのが、オペラ好きにはとても面白いところであった。そしてその当時の舞台で演じた老パパゲーノの語りが、当時の王様の贅沢や貴族社会への批判、偉ぶったザラストロの社会などを現代の目で、子供たちにも分かり易く批判するという痛快さがあり、楽しませてくれた。その語りの反面において、やや何回も見ると饒舌なダイアログのない二つの長大なフィナーレのオペラ音楽が、実に音楽的に純粋に聞え、このオペラの良さと歌手陣の素晴らしさが極めて印象づけられたと考えられる。

     このオペラの歌手たちは、対話がないのでアリア部分だけを、当時の衣裳と身なり、大袈裟な帽子と髭面らなどで歌うだけの役割であったが、皆さんが残されたイメージ通りの人物を描いて楽しかったが、音楽の方もそのスタイルでは考えられないほどの豊かな声量で堂々と歌っていたのがとても面白かった。歌手陣は、殆どがバイエルン地方の意気に感じた方々であろうと思われるが、例えばルードヴィヒ2世などは残された写真とそっくりであり、それぞれが力を発揮しておられた。舞台の演出・衣裳など当時の南ドイツの古い伝統的な「魔笛」のスタイルが良く理解でき、現代の舞台では得られない古さが良い舞台を拝見できた。当初、ヘレンキームゼー音楽祭で上演し、好評だったのでミュンヘンのプリンツレゲンデン劇場で再演したものを収録したとされていたが、この企画・演出・監督・指揮に当たったグッテンベルクの見識には、深く経緯を払いたいと思う。

       私はルードヴィヒ2世の有名な三つのお城の現地に行っており、ウイーンのシシー博物館にも行って、それぞれ写真集などが手元にあり、このHPにも旅行記を残しているので、このオペラの時代背景にはとても興味があり、老パパゲーノの市民的批判の呟きも面白く聞えていた。そのため、このような時代背景に馴染んでいる方には滅法面白いと思われるが、そうでない方や興味のない方には、現代的な「魔笛」の方が面白いし、楽しいものと思われる。

(以上)(2018/05/15)



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18-6-0 平成30年/2018年6月初めの近況報告−より、以下を抜粋する。


    18-6-1) ルードヴィヒ2世などが「魔笛」に登場し、初めての試みで面白かった。

          つい先日にグッテンベルク(指揮・監督・演出)の{王様の「魔笛」}(18-5-3)をアップロードしたばかりであるが、私はこのオペラの要約に「1880年代後期の時代設定をした、当時の宮廷オペラのスタイルによる王様方に愛された古くさい「魔笛」の舞台は、この時代背景に馴染んだり関心のある方には、滅法面白いと思われる」と書いている。実は、私は過去のウイーン旅行などにおいて、ルードヴィヒ2世の三つのお城の現地に行っており、またウイーンの王宮やシシー博物館などにも何回も行って、それぞれの写真集などが手元にあり、このHPにもこれらの旅行記を残しているので、このオペラの時代背景にはとても興味があった。中でもこのオペラの最後に登場して来たルードヴィヒ2世、フランツ・ヨーゼフ皇帝とその妃エリーザベト皇妃の3人の晴れ姿が、博物館に残された著名な絵画の衣裳と全く同じであることに気がついたからである。



           そのため、この三名の著名な絵画のコピーしたものをここにお見せするが、これとこのオペラ内での三人の姿とを比較して見ようと思いついた。バイエルンやオーストリアの人々がその姿を見ると、一目で誰かが分かり、その時代を彷彿と思い浮かべる絵画であるからである。上記の三人の著名な絵画の写しと、以下に掲げるこのオペラの映像から撮った写真を、それぞれ良く見較べていただきたい。このオペラの人物設定が髭面や衣裳の形や色合いで決められた事情が良く理解出来るであろう。



           恐らく同様のことがモノスタトスのプロイセン宰相ビスマルクおよびパパゲーノのバイエルン大公マックスの髭面や衣裳も、同じ趣向でドイツの方なら直ぐ分る姿となっているのであろうが、彼らや夜の女王のゾフィー大公妃の絵姿などが入手出来ないので、残念ながら、外国人のわれわれには、勉強しなければ分らないことのようである。この映像は、ジングシュピールのセリフ部分を削除し、それを老パパゲーノに扮した俳優による語りで補い、かつ当時の貴族社会や男性優位社会やフリーメーソンなどを批判したり、子供たちにも分るように配慮して改作しており、大変なグッテンベルクの労作である。バイエルンの周囲の方々の理解と協力を得て、従来にない新しい王様の「魔笛」を制作したものであるので、是非、新発売のBDをご覧いただきたいと思う。


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