(最新のクラシカ・ジャパン;アルゲリッチ&バレンボイム2016のK.497ほか)
18-5-2、アルゲリッチ&バレンボイムによる4手のためのピアノソナタヘ長調K.497、2016年7月31日、コロン劇場、ブエノスアイレス、およびロナルド・ブラウティハムのフォルテピアノ・リサイタルよりロンドイ短調K.511、
2017年2月7日、トッパンホール、東京、

−4手のためのソナタは、ウイーン時代の後期に近づいて来た重さを感じさせる深みを持った曲に聞えていたが、アルゲリッチとバレンボイムの二人のコンビは、三つの楽章の演奏を通じて、狭い鍵盤を指がぶつかり合うように、窮屈そうに弾いていた。しかし、アレグロでもアンダンテでも、二人は一体となって良く息が合っており、難しそうに見えるデュオのこの曲を、余力を持って弾きこなし、見事な堂々たる演奏となっていた。一方のブラウティハムのフォルテピアノによるロンドイ短調K.511は、ゆっくりしたテンポで一音一音、丁寧に弾かれており、この曲に実にピッタリと合った深みのある響きを見せており、モーツァルトのソナタにはフォルテピアノが欠かせないことを示すような模範的な素晴らしい演奏であると思った−

(最新のクラシカ・ジャパン;アルゲリッチ&バレンボイム2016のK.497ほか)
18-5-2、アルゲリッチ&バレンボイムによる4手のためのピアノソナタヘ長調K.497、2016年7月31日、コロン劇場、ブエノスアイレス、およびロナルド・ブラウティハムのフォルテピアノ・リサイタルよりロンドイ短調K.511、
2017年2月7日、トッパンホール、東京、
(2018/04/15、クラシカJによる放送をHD-2に、また2018/03/14、NHKクラ倶楽部による放送をHD-5に収録)

             5月号の第二曲目は、第一曲目と同様にバレンボイムが登場し、アルゲリッチとのピアノ・デュオのコンサートで、「4手のためのピアノソナタヘ長調K.497」を新規に収録したものである。この映像は、クラシカ・ジャパンの4月号の特集で、2014、15、16年の3カ年にわたるブエノスアイレスのコロン劇場での二人のデュオ・コンサートの映像の2016年版に含まれていたものである。これにはフランツ・リストの「ドン・ジョヴァンニの回想」(2台ピアノ版)も含まれており、とても面白かった。このリサイタルでは、彼は専用のバレンボイム銘柄のピアノを用いており、このコンサートは毎年続けられそうなので、新鮮な新曲が聴けて、しかも映像となって報告されるので、とても楽しみにしている。なお、 2014年のこのコンサートでは、彼らは二台のピアノのためのソナタニ長調K.448を演奏しており、既に報告済み(17-9-2)であった。



            この4手のためのピアノソナタヘ長調K.497は、1786年8月1日の日付けを持ち、「フィガロの結婚」の成功後に、ピアノ協奏曲イ長調K.488,ハ短調K.491、ハ長調K.503など成熟したピアノ協奏曲とほぼ同時期に書かれている。この種の4手の曲はザルツブルグ時代に素人向きに書かれて来たが、この4手のソナタは、形式的にも序奏を持つなど堂々たる構えを持った作品となっており、室内楽的な緻密なスタイルの書法の上に、協奏曲から得られたと思われるパッセージの華麗な音形、長調と短調の対比、強弱の大胆な変化などと構成上の工夫が加えられた優れた作品と考えられている。しかし、デュオのためか演奏機会に恵まれず、このHPでは初登場のソナタとなっている。
            この曲の構成は、第一楽章はアダージョの序奏を持ったアレグロ・デイ・モルトでソナタ形式となっており、第二楽章はアンダンテのソナタ形式、第三楽章はアレグロのロンド形式で書かれている。



             第一楽章のアダージョの序奏では、ピアノとフォルテが交替して出て来る短い単純なユニゾンのモチーブで始まり、これが次第に幻想風に発展してゆっくりと進んでいくが、これが必ずしも解決しない間に半休止となって、そのまま勢いよく溌剌とした第一主題が素晴らしい勢いで飛び出していた。この主題はプリモとセコンドとが良く揃って元気よく進んでから、優しげな第二主題が顔を出し、優雅に進んでいた。そして第一主題の後半部分が顔を出し、勢いよく呈示部が終了していた。ここで呈示部は繰り返されていたが、アルゲリッチとバレンボイムは指が触れ合うほどにして窮屈そうに鍵盤に向っており、颯爽として繰返しを終えていた。展開部は第一主題が対象となり、プリモが和音をセコンドが音階を弾いていたが途中で、逆転して交替して進んでおり長大な展開部となっていた。再現部では、呈示部とはセコンドとプリモが役割を変えて第一主題が提示されて進行しており、第二主題も同様に進んで、その意味ではほぼ原則通りであったが、二人はこの部分でも繰返しを行ない、実に丁寧に進んでから、コーダに入り威勢良く堂々と終息していた。初めてこの曲を聴く聴衆が多いせいか、終わると拍手が湧き起こって騒然としていたが、アルゲリッチとバレンボイムは平然としており、この演奏は、終始、二人が一体となって息が合い、早いアレグロを苦もなく弾きこなしており、まさに名人芸の演奏振りであった。



          第二楽章はアンダンテであり、落ち着いた和やかな第一主題が4手のピアノで提示されてから、装飾を加えて繰り返されるように進んでいた。続いて細かいパッセージが追いつ追われつの形で進む第二主題が現われて、これも繰り返すように進んでから静かな結尾主題で呈示部が結ばれていた。新しい主題による短い展開部の後に再現部に入っていたが、装飾音がよく響き、変奏されてゆっくりと進んでおり、この楽章においてもコーダで結ばれていた。実に落ち着きのある穏やかなアンダンテであり、二人の名人による演奏で軽々と弾かれているが、実際は難しい曲であろうと思われた。



           フィナーレ楽章は、標準的なロンド形式か、最初に軽快な6/8拍子の華やかなロンド主題が登場してプリモとセコンドがアレグロで繰り返すように進んで賑やかに提示されてから、第一の軽快な明るいエピソードが聞こえて来た。この主題はスタッカートのとても調子の良い曲で暫く進んでから再びロンド主題が始まっていた。続いて転がるような感じの第二のエピソードが続いていたがやがてロンド主題に変わっていた。再びスタッカートの最初のエピソードが顔を出してから、4度目のロンド主題となり、かなり変奏されながらこの楽章は結ばれていたが、華やかで明るくスピード感を持ったフィナーレで、曲全体が明るく華やかに結ばれていた。



           以上の三つの楽章の演奏を通じて、この曲はウイーン時代の後期に近づいて来た重さを感じさせる深みを持った曲に聞えていたが、アルゲリッチとバレンボイムの二人のコンビは、狭い鍵盤を指がぶつかり合うように、窮屈そうに弾いていた。しかし、アレグロでもアンダンテでも、二人は一体となって良く息が合っており、難しそうに見えるデュオのこの曲を、余力を持って弾きこなし、見事な演奏となっていた。



            このデュオ・コンサートは、これから二台のピアノによる演奏となり、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲(二台のピアノ版)Op.56b、リストの悲愴協奏曲S.258と難曲が続いていたが、最後にリスト編曲の「ドン・ジョヴァンニの回想(2台のピアノ版)」S.656であった。広い舞台上にも二台のピアノを囲んで客席が何重にも囲んでおり、熱気が溢れており、二人の人気の高さを裏付けていた。この2台のピアノのための曲では、バレンボイムは「バレンボイム銘柄」の彼の専用ピアノを用いており、正面しか金文字が書かれていないので、やっと写真を撮ることが出来た。この最後のドン・ジョヴァンニの回想は、始めて聴くものであったが、最初にパラフレーズ特有の和音と賑やかなパッセージによる極めて技巧的な導入部で始まり、第一のアリアがあの有名な第7番の「手に手を取って」の二重唱のメロデイが何回も形を変えて繰り返すように歌われていた。この変奏のパラフレーズが曲のメインであり、第二曲目が第11番の「シャンペンのアリア」であったが、このアリアは短いせいか、2回ほどの変奏で終了となり、コンサートは終了していた。終わると大変な拍手が湧き起こり、この広いコロン劇場が拍手の渦で包まれたようになり、ご当地出身のお二人は仲良く手を繋いで、ピアノの周りを一周して、挨拶を繰り返していた。3年連続のブエノスアイレスのこのコンサートの熱狂振りは、もの凄いものがあり、お二人の人気の高さをまざまざと見せつけるものであった。
(以上)(2018/05/05)




           続く第二曲目は、ロナルド・ブラウティハムのフォルテピアノ・コンサートからのロンドイ短調K.511であり、このリサイタルは、トッパンホールで、2017年2月7日に行なわれたものであった。既にピアノソナタ(第5番)ト長調K.283(18-3-1)として報告されていた。NHKが放送時間の都合で、2回に分けてクラシック倶楽部で放送したもので、今回はベートーヴェンのピアノソナタ第18番変ホ長調作品第31第3がペアで放送されていた。このロンドイ短調K.511もこのHP初めてのアップロードであり、このポピュラー名曲がと驚いている有り様である。この曲は、1787年3月11日の日付けを持った曲であり、もう一曲のロンドニ長調K.485と対照的に、静かな哀愁を帯びた美しい作品で、4手のソナタK.497やK.521などとほぼ同じ時期に書かれている。



            この曲はアンダンテで書かれており、形式はA-B-A-C-Aの標準的なロンドで、6/8拍子のシチリアーノ風のゆったりとしたリズムで始まった。親しみやすいAの部分は哀愁を帯びた曲調であったが、第一のエピソードでは半音階風な進行を見せて悲しげに進み、さらに第二のエピソードでは幻想風な展開を見せてなお一層の悲しさが深まり、メランコリーに満ちた展開のロンドであった。



ブラウティハムのフォルテピアノは、ゆっくりしたテンポで一音一音、丁寧に弾かれており、この曲に実にピッタリと合った深みのある響きを見せており、モーツァルトのソナタにはフォルテピアノが欠かせないことを示すような模範的な素晴らしい演奏であると思った。このような演奏に出遭うと、こうした短い曲でも、深遠な趣が心を捉えてウットリと和んでしまう。この人はフォルテピアノで、もっといろいろな曲を弾いて欲しいと思った。


(以上)(2018/05/06)



目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ


名称未設定