(最新のHDD録画より;初期の四重奏曲K.158とフォルテピアノのK.283)
18-3-1、アキロン弦楽四重奏団による初期の弦楽四重奏曲(第5番)ヘ長調K.158、2017年10月20日、第一生命ホール、および、ロナルド・ブラウティハムのフォルテピアノによるピアノソナタ(第5番)ト長調K.283、
2017年2月7日、トッパンホール、東京、

−この初めのアキロン四重奏団の弦楽四重奏曲ヘ長調K.158は、4声が良く揃って、終始、若々しく明るく明快に曲を進行させており、この若造りのイタリア風の軽快な四重奏曲を引立てるように演奏していた。彼女らには、後半のドビュッシーやラヴェルの難しい曲よりもお似合いであり、今後若いモーツァルトの珍しい作品を積極的に取り上げて欲しいとの期待を抱かせていた。一方のグラウティハムのフォルテピアノによるピアノソナタト長調K.283は、全楽章を通じて、フォルテピアノの生き生きとした軽やかなリズムと響きがよく分かるように演奏されており、彼の確かな信念が伝わってきた。このフォルテピアノの音声は、これまで収録されてきた他の演奏よりも明快で、やっとフォルテピアノの良い響きが、書斎の中でも楽しめるようになってきたように思われた。ー

 (最新のHDD録画より;初期の四重奏曲K.158とフォルテピアノのK.283)
18-3-1、アキロン弦楽四重奏団による初期の弦楽四重奏曲(第5番)ヘ長調K.158、2017年10月20日、第一生命ホール、および、ロナルド・ブラウティハムのフォルテピアノによるピアノソナタ(第5番)ト長調K.283、
2017年2月7日、トッパンホール、東京。
 (2018/01/22、および2017/10/17のNHKクラシック倶楽部をHDD-5に収録、)

       その3月分の最初のソフトは、いずれも最新のハードデイスクHDD録画からであり、2018/01/22、および2017/10/17のNHKクラシック倶楽部の放送を録画したものであり、第1曲はアキロン弦楽四重奏団による初期の弦楽四重奏曲(第5番)ヘ長調K.158、であり、この演奏は2017年10月20日、第一生命ホールにて演奏されたコンサートの第1曲目の曲である。この弦楽四重奏団は、このHP初めての団体であり、この55分間のクラシック倶楽部では、ドビュッシーの弦楽四重奏曲作品10と、ラヴェルの四重奏曲の第2楽章が収録されていた。この団体はフランスの若き4人により2010年パリ高等音楽院在学中に結成されたグループであり、2016年ボルドー国際弦楽四重奏コンクールに優勝してデビューしている。
       一方の第2曲目は、オランダのピアニストのロナルド・グラウティハムのフォルテピアノ・コンサートの映像で、ピアノソナタト長調K.283を演奏したものである。この映像では,この曲の他にベートーヴェンのピアノソナタの「悲愴」と「テンペスト」が収録されていた。



         初めの弦楽四重奏曲第5番K.158は、第3回イタリア旅行の1,773年10月の旅行途上で作曲された全6曲の四重奏曲の第4曲目にあたり、10月28日のボルツァーノからの手紙に「あの子は退屈なので四重奏曲を書いている」と書かれていた。全6曲は11月4日のミラノ到着前に始められ、その後歌劇「ルチオ・シッラ」の完成を待って、翌年の初めにかけて書かれたようである。6曲ともディヴェルティメント風に3楽章のスタイルで自由にイタリア風に伸び伸びと歌唱的旋律性をもって書かれている。この曲は、第一楽章はアレグロのソナタ形式、第二楽章はアンダンテのソナタ形式で、第三楽章がメヌエット・フィナーレとなっている。



        演奏者の若くて女性ばかりのアキロン四重奏団は、コンクールの優勝がゴールではなく、その過程が重要であったと言う。彼女らは同じ曲を何ヶ月も集中して取り組んで仲間意識が出来上がったし、まるで家族のようにいつも話し合い、新しいものを求める集団である。優勝のお陰で、こうして新しい国を巡り、楽しく新しいものを吸収しているという。短いインタヴューの時間にも、若い彼女らは何でも吸収してしまうような新鮮さを持って語っていた。



        この曲の第一楽章は、第一主題の冒頭が飾りのついた小モチーブが方々で即興的に現われて全体を支配しているような面白い曲であった。この小モチーブが問いかけて答えるわずか4小節の主題で始まって繰り返されるように進んでから、直ぐに第一ヴァイオリンが柔らかな伴奏に乗って歌い出す第二主題に引き継がれ、明るく盛り上がるように進んで呈示部が終了していた。この演奏ではこの呈示部が繰り返されて、この小モチーブが強く印象づけられてから,展開部となり新しい主題がユニゾンで現われてから、このモチーブが各声部で展開されて再現部へと移行していた。再現部では型通りに第一、第二主題が再現されていたが、最後にこの小モチーブの第一主題が現われて改めて印象づけていた。



        第二楽章はアンダンテで始まるが、第一主題は第1ヴァイオリンのソロパートを4声で順に追っていく厳格なカノンで構成されてゆっくりと進行するものであり、続いて第二主題は第一ヴァイオリンが明るく刻むように進行する穏やかな主題が流れて呈示部が構成されていた。アキロン四重奏団は、4声が実に明瞭に音を刻んでおり、実に新鮮に聞こえていた。ここでも呈示部は繰り返されて、ひとしきり落ち着きを取り戻していたが、短い推移的な展開部の後に、再現部はここでも型通りに主題が再現されていた。



                   第三楽章は6曲のセットのうち二つ目のメヌエット楽章のようであり、全体のバランスで生まれたメヌエット・フィナーレのようである。曲はメヌエット部が、第一楽章で現われたように、第一ヴァイオリンが問いかけてから自らそれに答えるような調子で進行する明るいメヌエット部であり、雰囲気が第一楽章の前半と共通していた。スコアにはトリオと明記されていないため、ロンド形式と見間違えるような譜面であったが、このトリオも第一ヴァイオリンを中心に進行する明るいトリオであった。再びメヌエット部に戻って曲はまだ続きがあるかのような雰囲気で終わっていたが、明るく楽しい曲であった。

           このアキロン四重奏団は、終始、4声が良く揃って明るく明快に曲を進行させており、この若造りのイタリア風の四重奏曲を引立てるように演奏していた。彼女らには、後半のドビュッシーやラヴェルの難しい曲よりもお似合いであり、今後若いモーツァルトの珍しい作品を積極的に取り上げて欲しいとの期待を抱かせていた。
 (以上)(2018/03/04)



       続く第2曲目の演奏は、オランダのピアニストのロナルド・グラウティハムのフォルテピアノ・コンサートの映像であり、ピアノソナタト長調(第5番)K.283を演奏したものである。このコンサートの曲目は、モーツァルトの1曲に続いて、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲そう」と第17番ニ短調作品第31第2「テンペスト」のほか、最後のアンコールとして「エリーゼのために」が収録されていた。彼は、現在、ベートーヴェンのソナタの全集に取り組んでいるのだろうか。大きな身体をゆすりながら、フォルテピアノが潰れそうなくらいの勢いで力強く弾いていたが、彼はモダンピアノは、腕や肩の動きが重要であり、強い体が必要であると語っていた。



          一方、フォルテピアノについては、対照的に指によるアタックの強さとタッチの速度が重要だと語っていた。彼はモーツァルトが書いたスケールやアルペジオは、FPで弾くと身体がリラックスし、音がより軽く、歯切れ良く、刺激的になるという。少し早く(MPより)弾けるので、音楽が際立つのだと、実務者らしい話をしていた。
楽器の選択は演奏者がどのように弾きたいかで決まるが、モーツァルトをMPで弾くと華麗であるが、FPだと刺激的で若々しく愛らしい。FPを弾くとモーツァルトになったような彼との強い絆を感じます。FPはペダルでなくヒザを使いますが、モーツァルトも同じように弾いていました。作曲家に一歩近づくことで、音楽の真実に近づこうと努力しています。FPの意義は、その一歩を後押ししてくれることですと、熱意を込めて語ってくれた。彼は1980年代後半に、MPでモーツァルトを弾くことに疑問を感じていた。自分の音が好きになれずに悩んでいたときに、このFPを作ったポール・アクナルテイに出会い、納得出来ましたと語っていた。彼は今、ベートーヴェンに向っているが、ベートーヴェンについてはどう語るであろうか。



    東京の狭いトッパンホールに早足で登場して、ロナルド・グラウティハムが黒のユニホーム姿でにこやかにフォルテピアノの前で挨拶をしてから頭を下げて着席し、第一曲のピアノソナタ第5番ト長調K.283が始まった。この曲は、アレグロ−アンダンテ−プレストの通常のスタイルであり、全ての楽章がソナタ形式で書かれている。第一楽章の第一主題は、いきなり3拍子の問いと答えを繰り返すような親しみやすい対話的な主題で始まるが、グラウティハムは早めのテンポで開始しており、歯切れの良い美しい音で丁寧に踊り出すような雰囲気で弾いていた。やがて華麗な16分音符のパッセージの後に、リズミックな軽やかな変化を持つ第二主題が現れて軽快に進んでいたが、グラウティハムはフォルテピアノの歯切れのよいリズム的な変化や軽やかな響きを意識して楽しんでいるかのように弾いていた。繰り返しでは特別に装飾音などを付けずに真面目に譜面通り弾いていたが、大柄なのに誠実に丁寧に、やや硬い表情を見せながら余裕のある繰り返しを見せていた。続いてさりげなく始まる展開部では新しい主題が出ていろいろ展開されていたが、いつの間にか第一主題が再現されていた。しかし、忠実な再現は最初だけで、直ぐに主題が変化して第一・第二主題とも提示部とは異なった形で再現されていた。この楽章を聴いただけで、グラウティハムがフォルテピアノを使って表そうとしている生き生きとした軽やかなリズムと響きが分かるように思われ、彼の確かな信念が伝わってきた。このフォルテピアノの音声は、これまで収録されてきた他の演奏よりも明快で、全く歪なく美しく再生されており、やっとフォルテピアノの良い響きが、オーデイオでも楽しめるようになってきたような気がした。恐らく、トッパンホールの響きの良さと収録技術の向上のせいであろうと思われた。



    第二楽章では、スタッカートで始まる淡々としたさり気ない第一主題と直ぐ続いて親しみやすい第二主題で構築されたアンダンテであり、グラウティハムはここでは音の粒立ちを意識しながらゆっくりと丁寧に弾いており、提示部の最後のフェルマータで一呼吸して見事なパッセージを残していた。しかし、珍しく繰り返しを省略しており、直ぐに展開部に入っていたが、形だけの一瞬のうちに終わるような短い展開部を経て、再現部では装飾的な音形変換を加えながら二つの主題が巧みに再現されていた。グラウティハムは、やはり淡々としてモーツァルトをザッハリッヒに弾くタイプか、繰り返しをやめて、フォルテピアノの響きに細心の注意を払いながら静かに収束していた。



  フィナーレは一転して軽快なテンポで進行する3拍子のメヌエット風なプレストとなっており、グラウティハムは早いキビキビした第一主題を弾きこなし、軽やかな表情を見せる第二主題も明るく進行させていた。繰り返しは珍しく省略されて、直ぐに減7の分散和音が激しく響く展開部に入り、グラウティハムはここぞとばかりに勢いを持って弾き進んでいたが、再び冒頭の第一主題が明るく躍動的に再現されていた。この楽章は、隅々にリズム的な工夫が凝らされており、グラウティハムは明るくリズミックに見事に弾き進み、大きな高まりを持ってゆとりある表情で最後のコーダの2和音は崩すようにアクセントをつけてこの楽章を終えていた。

  凄い拍手に応えて、グラウティハムは大きな体を折り曲げて、頭を下げて拍手に応えていたが、このホールではフォルテピアノを聴こうとする熱心な方々の集まりのように見えていた。全楽章を通じて、これはグラウティハムのフォルテピアノのペースのト長調ソナタであり、急・緩・急と進む三楽章の構成もフォルテピアノを生かした豊かなバランスであり、さすが見事なプロの演奏と思われた。先にも述べたが、フォルテピアノの響きがとてもよく、演奏も優れているので、次のベートーヴェンも楽しみなコンサートであった。

(以上)(2018/03/06)


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