(最新のHDD録画より;ホープリッジのクラリネット五重奏曲K.581ほか)
18-2-1、エリック・ホープリッチとロンドン・ハイドン弦楽四重奏団によるクラリネット五重奏曲イ長調K.581、
2017年9月27日、ヤマハホール、および管楽八重奏団による「魔笛」のハルモニー音楽、序曲ほかアリア3曲、1996年10月16日、木曽文化会館ホール、長野県木曽福島町、第22回木曽音楽祭、

−今回のエリック・ホープリッジのクラリネットとロンドン・ハイドン弦楽四重奏団による演奏は、ホープリッジのクラリネットが、新しいバッセトホルンによるものだったので、この曲の性格や特徴を改めて良く捉えており、この曲の魅力を引き出して、充実した演奏を聴かせてくれた。また、ロンドン・ハイドン四重奏団もまだ若い団体なのに実に落ち着いてゆとりのある音を響かせており、特に、独奏クラリネットが右端に位置して、第一ヴァイオリンと向き合っており、そのせいか、古楽器の第一ヴァイオリンとバセットホルンとの掛け合いが多いこの曲では、実に美しい対話が行なわれており、この演奏を最高の形で盛り上げていた。一方の「魔笛」の序曲とアリア3曲ではあっという間に終わってしまい物足りなさが残されたが、日本のメンバーは、皆さん真面目な方が多いせいか、演奏もあまりくだけたところがなかった。もっとこの種の音楽を楽しむ雰囲気があって欲しいと感じざるを得なかったー

 (最新のHDD録画より;ホープリッジのクラリネット五重奏曲K.581ほか)
18-2-1、エリック・ホープリッチとロンドン・ハイドン弦楽四重奏団によるクラリネット五重奏曲イ長調K.581、2017年9月27日、ヤマハホール、および管楽八重奏団による「魔笛」のハルモニー音楽、序曲ほかアリア3曲、
1996年10月16日、木曽文化会館ホール、長野県木曽福島町、第22回木曽音楽祭、
 (2017/11/23、NHKクラシック倶楽部をHDD-5に収録、および1996/10/15、NHKクラシックアワーの放送をVHS201に収録、)

       2月号の第1曲は、エリック・ホープリッチとロンドン・ハイドン弦楽四重奏団によるクラリネット五重奏曲イ長調K.581であり、これは昨年9月のヤマハホールでの演奏会からで、11月23日にNHKクラシック倶楽部で放送されたものであった。ホープリッジは、昨年8月に有田正広指揮東京バッハ・モーツァルト・オーケストラによる協奏交響曲変ロ長調K.297bで、クラリネットを吹いていたが、これは古楽器演奏の初期の録音(1992)(17-8-3)であったので、25年前のものであった。彼は当時から古楽器の世界的名手であったばかりでなく、楽器の研究・製作にも熱心で、すっかり白髪になった今回の彼のクラリネットは、1794年の版画を基に再現・製作したものとされ、3度低い音が出るという説明がなされていた。一方、伴奏のロンドン・ハイドン弦楽四重奏団は、2000年に結成された古楽器四重奏団で、ハイドンのロンドンでの活躍に因んでの出発で、次第にレパートリーが広がっている団体である。



       映像は初めにハイドンの四重奏曲「ひばり」の第一楽章が演奏されていたが、、ひばりをイメージさせる第一ヴァイオリンの瑞々しい音が印象的で、これがこの楽団の象徴的な音かと思わせていた。続いてホープリッジが今回使用したバッセトホルンを見せながら解説をしていた。折れ曲がった通常のバセットホルンとは違い、先端に球状ベルがついた直線的なごつい楽器であった。



続いてクラリネット五重奏曲の第一楽章は、ソナタ形式のアレグロであり、第一主題は弦楽四重奏によるコラール風の荘重な出だしで始まるが、これを受ける後半のクラリネットの美しく上昇する分散和音が絶妙な音色でバランス良く成り立っており、聴くものを一気に捕らえてしまう。この絶妙な第一主題がもう一度繰り返され、ホープリッジのクラリネットのソロと第一ヴァイオリンが対話しながら進み、クラリネットによる輝くような経過部に聞き惚れているうちに、ピッチカートの伴奏で第一ヴァイオリンに続いてクラリネットが美しい第二主題を提示し始めていた。このドルチェで始まるホープリッジの独奏クラリネットはやや影を帯びた暗い音色で進むが、音は楽器のせいか太めで柔らかく透明であり、低音も高音も良く安定して響き、実に美しい。さらに発展的に進行してドルチェのヴァイオリンで始まり、クラリネットに引き継がれる結びの主題が続いて提示部を終えていた。ここでもう一度振り返るように、冒頭から全体が再現されていたが、各パーツは装飾音などを加えながら伸び伸びと再現しており、特にクラリネットの哀愁的な響きが、提示部全体を支配しているように思われた。



         展開部では冒頭主題の前半をクラリネットが美しく提示してから、後半部の主題を、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの順に、各声部が執拗に激しく展開しながら提示されるもので、クラリネットは後半から顔を出して分散和音で応答していたが、低音から高音にいたるクラリネットの響きは力強く、実に魅力的な展開部になっていた。再現部で第一主題はクラリネットが前半を、後半は弦と役割を変更して再現されており、第二主題は第一ヴァイオリンに続いてクラリネットにより見事に変奏されて哀調に富む独自の雰囲気を醸し出していた。ここでピリオド演奏のせいか、展開部から丁寧に繰返しが行なわれていたが、実に豊かな音色に溢れていた。ホープリッジの独奏クラリネットはしっかりとしたバセットホルンの太めの音調であり、全くまろやかに美しい音色をちりばめて、それに華やかさも加わって、この曲の魅力を高めていたように思われた。



第二楽章はラルゲットの楽章であり、主題が展開される珍しい中間部を持つ三つの部分からなる三部形式であった。ホープリッジのクラリネットの美しい穏やかなラルゲットの主題で始まり、弦の伴奏でひとしきり歌われた後に、ドルチェの第一ヴァイオリンの下降する音形に対し、上昇するクラリネットの音形が答える美しい応答が繰り返され、実に和やかな雰囲気が続いていた。やがて中間部に入ると、クラリネットの下降音形に対し今度は第一ヴァイオリンの上昇音形が展開風に繰り返し答えて行き、二人の対話が暫く続いた後、後半はクラリネットの独壇場のようであった。ホープリッジのクラリネットは実にしっかりしており、再現された第一部においても見事に主導的な役割を果たしており、後半でもドルチェの第一ヴァイオリンとクラリネットとの対話が実に美しく、素晴らしい幻想的なラルゲットになっていた。

        

              続いて第三楽章のメヌエットが早いテンポで明るく威勢良く始まった。このメヌエット楽章は、全5声が一体となって合奏する堂々たるものであり、珍しく二つのトリオを持った壮大で華やかな楽章であった。メヌエット主題はクラリネットと第一ヴァイオリンで導かれる活発で晴れやかなものであり、堂々とリズムを刻んで進んでいた。第一トリオは、弦楽器でだけで綿々と歌われるが、ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いで進められていた。再びメヌエット主題の後に始まる第二トリオは、ホープリッジのクラリネットが大活躍し、民族舞踊的な音調でクラリネットが明るく高らかに美しいメロデイを奏でてから、再び、朗々とメヌエットが繰り返されていた。二つのトリオが生かされた風格あるメヌエット楽章であった。



       フィナーレはアレグレットの主題と四つの変奏に加えてアダージョとアレグロの二つの自由な変奏部分から構成されていた。主題はクラリネットと弦の合奏で明るく活発に提示され、前半の第4変奏までは(8小節*2)で構成され、キチッと繰り返しが行われていた。第一変奏は弦による主題提示をクラリネットが明るく変奏しながら彩りを添えるもので、繰り返しではホープリッジの装飾音符やトリルなどが目立っていた。第二変奏は前半が弦楽器だけの付点リズムによる変奏であり、後半はそれにクラリネットが彩りを付けていた。第三変奏も弦楽器による変奏で第一ヴァイオリンのオクターヴ跳躍とヴィオラの分散和音により終始リードする変奏であったが、第四変奏はクラリネットの速いテンポによる変奏で十分な技巧が発揮されていた。 続いては一転してアダージョの変奏となり、ここではホープリッジのクラリネットが低音を響かせながら憂いのこもった素晴らしい響きを見せてひと休止の後に、最後にアレグロの変奏となり、主題の前半を五声で変奏しながら、アレグロのコーダに入り、この魅力的な変奏曲を充分に歌い上げて楽しく終結させていた。

       このクラリネット五重奏曲は、クラリネットの明るい魅力に溢れた第一楽章や、異常に美しい第二楽章に加えて、後半の二つのトリオを持ったメヌエットや、フィナーレの楽しい主題と充実した変奏によって、非常に豊かなイメージを持った五重奏曲に仕立てられている。今回のエリック・ホープリッジのクラリネットとロンドン・ハイドン弦楽四重奏団による演奏は、ホープリッジのクラリネットが、新しいバッセトホルンによるものだったので、この曲の性格や特徴を良く捉えており、改めてこの曲の魅力を引き出して、充実した演奏を聴かせてくれたと考えている。また。ロンドン・ハイドン四重奏団もまだ若い団体なのに実に落ち着いてゆとりのある音を響かせており、特に、独奏クラリネットが右端に位置して、第一ヴァイオリンと向き合ってチェロの隣に座っていたのは当を得ており、そのせいか、第一ヴァイオリンとクラリネットとの掛け合いが多いこの曲には、実に良い掛け合いや対話が行なわれており、この演奏を最高の形で盛り上げていた。
         今回のこの演奏で、ホープリッジが元気な姿を見せていたが、新しい楽器との相性も良く、今回は最高の演奏を聴かせてくれており、コンチェルトも聴かせて欲しいと思わせた。 (以上)(2018/02/12)



       第二曲目は、全く趣を変えて、古いVHSのテープの中に管楽八重奏でオペラアリアをハルモニー音楽で演奏しているものを見つけ出したので、非常に珍しいと思ってアップロードを試みたものである。テープには室内楽の祭典「第22回木曽音楽祭」と名付けられており、1996年10月15日のBS3のNHKクラシックアワーで取り上げており、中仙道の宿場町である木曽福島町(長野県)における木曽文化公園ホールで1996年8月23日にライブ演奏されたものであった。



曲目は歌劇「魔笛」より管楽八重奏版(ハイデンライヒ編曲)による木管アンサンブルのアリア集であり、序曲のほかアリアが三つで、いずれもパパゲーノがからむ曲で、「私は鳥刺し」、「恋人か女房があれば」および「パパパの二重唱」の四曲が演奏されていた。演奏団体は明記されていなかったが、NHKの放送なので顔触れを見るとN響の面々たちのようであり、この音楽祭に楽しみながら出演しているような雰囲気であった。舞台では、左から2クラリネット、2ホルン、2ファゴット、2オーボエの順に並び、ファゴットの後ろにコントラバスが控える布陣であった。



     第一曲目は、「魔笛」の序曲であり、例によってアダージョの序奏で始まるが、全員がゆったりと座って、最初の重々しい三和音は全員合奏でゆっくりと始まり、全員でファンファーレのように響かせていた。アレグロに入るとクラリネットが第一主題を歌い出し、ファゴットが引き継いでやがて全奏で一気に進行していた。そして途中からはクラリネットとオーボエが交互に顔を出して堂々と進行し、全員合奏で前半を終えていた。後半では再び三和音がゆっくりと全員合奏で始まってから、アレグロの主題が顔を出して一気に駆け抜けるように進行していたが、木管八重奏の響きはいかにも軽快で楽し気であり、この序曲の演奏は実に表情豊かに楽し気に聴こえていた。



                   序曲に続く第一曲は、パパゲーノが笛を吹きながら歌う第2曲の「私は鳥刺し」のアリアであり、最初に第一オーボエが歌い出し、続いて第一クラリネットが歌い出してから交互に主題を奏でており、途中から第2クラリネットによるパパゲーノの笛の音も聞こえて、実に楽し気に進行していた。この曲は全体が大きく繰り返されて、再び初めから演奏されていたが、今度は全員合奏でいかにも楽し気に進行して曲の楽しさを表していた。



         第3曲目は。これもパパゲーノのアリアで、第二幕の後半の第20曲としてワインの力を借りて元気よく歌う「恋人か女房が欲しい」と歌うアリアで、3番まである長いアリアであり、ここでは上手に変化を付けて3番まで歌われていた。この曲の前奏はクラリネットで始まってから、第一番は第一オーボエが主題を吹き始めて楽しく進行してから、途中で急にテンポが変わり、今度は全員合奏で楽しく終了していた。第二番はクラリネットが主題を吹き始めていたが、途中からはテンポが変わって、再び全員合奏で演奏されていた。三番は、初めから全員合奏で主題が始まり、テンポが変わっても全員合奏で楽し気に進行し、元気よく終了していた。



          第4曲目は、魔笛の第2幕のフィナーレに出てくるあの有名な「パパパの二重唱」であり、パパゲーノが探していたパパゲーナと劇的に再会し、お互いに「パパパ」と口ずさみながら抱き合ってしまう場面の音楽であり、ゆっくりした伴奏で始まって、オーボエの二重唱でパパパが始まり、途中からオーボエとファゴットが、そして全員合奏で楽しいアリアとなり、最後はもの凄い早いテンポで明るく終わるものであった。

         序曲とアリア3曲ではあっという間に終わってしまい物足りなさがあったが、演奏はこれでお終いであった。日本のメンバーは、皆さん真面目な方が多いせいか、演奏もあまりくだけたところがなく、何となく固い演奏のまま終わってしまったような気がした。このハルモニー音楽は、お酒の席でも伴奏音楽として演奏されることが多いので、もっと楽し気に砕けたかたちで演奏してほしいと思うのであるが、日本では室内楽を聴くかのような真面目な雰囲気のコンサートになり、残念な気持ちであった。今後、この種の音楽の演奏機会が増えて、舞台でも客席でも、もっと砕けた雰囲気で音楽を楽しめるようになって欲しいとつくづく感じ入った。


(以上)(2018/02/12)



目次5にもどる 目次4にもどる
目次3にもどる 目次2にもどる
目次1にもどる 私の新ホームページへ


       名称未設定