(最新のHDD録画;2018年ザルツ音楽祭・ウイーンフイルの「魔笛」K.620、)
18-12-3、コンスタンティノス・カリディス指揮ウイーンフイルO&Chorによるオペラ「魔笛」K.620、脚本;イナ・カール、演出&脚本;リディア・スタイアー、2018年8月4日、ザルツブルグ祝祭大劇場、

−この映像は2018年のザルツブルグ音楽祭で上演された「魔笛」であり、クラシカジャパンの「ヨーロッパ直送宣言」の一環として、日本語字幕のついたオペラをいち早く放送したものであった。この演出では、「サーカス小屋のパミーナを救え!」とお爺さん(名優のブランダウアー)が、3人の孫(ウイーン少年合唱団、3人の童子)に読み聞かせる物語で進行するお子様向きなものに改変されていた。サーカスの踊り子にされたパミーナのクリスティアーネ・カルクが最初に出てきたときは、かわいそうな姿にされて気の毒であったが、サーカスの大勢の芸人が出入りして、子供たちを喜ばせる大サービスの演出であった。しかし、ナンバー曲は、物語が第1章、第2章と進むにつれて、真面目にしっかりと歌われていた。私は原作のリブレットを大幅に変更する舞台は好きでないが、この舞台は第二幕後半の盛り上がりが不足しており、子供たちは満足したであろうが、私には残念な「魔笛」となっていた −

(最新のHDD録画;2018年ザルツ音楽祭・ウイーンフイルの「魔笛」K.620、)<B>
18-12-3、コンスタンティノス・カリディス指揮ウイーンフイルO&Chorによるオペラ「魔笛」K.620、脚本;イナ・カール、演出&脚本;リディア・スタイアー、
2018年8月4日、ザルツブルグ祝祭大劇場、
(配役)クラウス・マリア・ブランダウアー(おじいさん語り手)、ウイーン少年合唱団(3人の孫、3人の童子)、マウロ・ペーター(タミーノ)、クリスティアーネ・カルク(パミーナ)、マティアス・ゲルネ(ザラストロ)、エマ・ポスマン(夜の女王)、アダム・ブラチェトカ(パパゲーノ)、マリア・ナザーロヴァ(パパゲーナ)、マイケル・ポーター(モノスタトス)、タレク・ナズミ(弁者・僧侶1)、ほか、

         12月号の第三曲目は、今年の夏のザルツブルグ音楽祭2018に上演された「魔笛」であり、クラシカジャパンの「ヨーロッパ直送宣言」の一環として字幕のついた放送を収録したものであり、その努力を買って、どうしても年内にアップロードしておきたいと思った演奏であった。初回放送が10月27日(土)で、日本語字幕付きであるのでとても有難い。クラシカジャパンによると、「サーカス小屋のパミーナを救え!」とおじいさん(名優のブランダウアー)が、3人の孫(ウイーン少年合唱団、3人の童子)に読み聞かせる物語で、急遽代役登板のエマ・ボスマン(夜の女王)が大注目」とあった。この演出では、サーカスの踊り子にされる、パミーナのクリスティアーネ・カルクが、最初に出てきたときは、かわいそうな姿であり、子供たちを喜ばせる大サービスの演出のようであったが、ナンバー曲は、物語の第1章、第2章と進み、しっかりと演奏されていた。


       このような子供たちを喜ばせるだけのような、原作の持つ神秘性とか不可解性といった持ち味を失わせるようなリブレットを改変する演出は、私は余り好きでなく、これを写真入りで丁寧に紹介していく意欲を失わせてしまうのであるが、結果的に最後のカーテンコールなどでは、結構、人気があったようなので、このHPとしてはキチンと紹介しなければならないので、気の滅入る作業とならざるを得ないが、お許しいただきたいと思う。


                  映像が始まると、横長のフェルゼンライトシューレの大きな舞台と客席が映され、幕が上がると「第一幕」の文字が出て、強い三和音とともに序曲がいきなり始まって、二階の大きな食卓に夫婦と祖父がテーブルに着いていた。音楽がアダージョからアレグロの早いテンポに変わると三人の子供たちが飛び出してきて騒ぎながら食卓に座って、三人の侍女により食事が運ばれ、全員で食事が始まっていた。しかし、一階では人の出入りがあり、主人が新聞を見て、驚いた様子で外に飛び出して行き、落ちつかない。やがて子供たちは、食事を終えて子供室で着替えをはじめ、ベッドに着いたところで、あわただしい序曲が終了となっていた。


           場面が変わって、大きな窓がある寝室で、お爺さんがソファーに腰を下ろして大きな絵本を広げていた。「魔笛」と読み始めると、子供たちはベッドから顔を出し、続いて「第一章、タミーノの救出」と声を張り上げ、「王子が龍に追われている」と語りだしたときには、三人の子供たちは、お爺さんの周りに駆け付けて話を聞いていた。
        そこへ稲光とともに窓が開き、「助けてくれ」と言って窓から王子が飛び込んできて、「やられてしまう」と倒れこんでしまっていた。子供たちは、話と現実とが一緒になって「さあ大変!」。そこへ三人の侍女が銃をもって駆け付け、窓の外を狙って一斉に発砲すると、大蛇は動かなくなり危機は去った。三人の侍女たちは、気絶した王子を見るなり気に入ってしまい、そこで三重唱が始まって騒がしくなったが、「夜の女王」に報告する必要があり、結局は三人で報告に出かけ、タミーノが気絶したまま部屋に残されていた。


        お爺さんの「第二章、鳥刺し」の掛け声とともに、三人の子供たちが、鳥の声を理解し、「夜の女王」に鳥を売って暮らしている「鳥刺しパパゲーノ」の話をしていると、パンを吹きながら鳥刺しが一階に現れた。子供たちは、「彼は一階の肉屋の叔父さんだ」と言って驚いていたが、彼は眼鏡をかけ、血の付いた作業着を着て、第二番のパパゲーノのアリアを声高らかに歌っていた。パンの音で目を覚ました王子がパパゲーノの血の付いた姿を見て、君が助けてくれたのかと質すと、パパゲーノは窓の外を見て驚くが、「王子を助けたほうが、鳥を売るよりも儲かる」と判断したか、「そうだ。」と答えていた。それを聞いて三人の子供は驚くが、三人の侍女たちがもっと怒りだし、パパゲーノに2度と「嘘をつかないように」と口枷をし、王子には夜の女王の娘「パミーナの肖像画」を手渡して立ち去っていた。そこで王子タミーノが思わずそれを手にすると、それに見とれてしまい、辺りかまわずに「何と美しい絵姿だろうか」と思わずゆっくりと第3番のアリアを歌い出していた。このタミーノのアリアは、余りにも情熱的に歌われたので、王子が女王の娘パミーナに恋をしてしまったかのように、聞いていたお爺さんや三人の童子たち、そして三二の侍女たちに受け取られていた。


         続いてお爺さんの「第三章、夜の女王」が始まっていた。夜の女王は一階の入り口から三人の侍女を従えて登場し、見上げるタミーノや三人の童子たちに向かって、早速、「私の娘が悪者に攫われた」と歌いだした。夜の女王は、角の付いた冠に白いガウンの美しい姿で素晴らしいコロラトゥーラのアリアを歌い、テンポが変わって後半には、タミーノに向かって「娘を助けてくれたら、娘はお前のものだ」と早口で歌って、再び、あっという間に姿を消していたが、すごい拍手が残されていた。


   やがて「む、む、む」と口がきけないパパゲーノが騒ぎ出したが、王子は口枷をどうしても外せない。そこへ三人の侍女が駆け付けて、女王様のお許しが出たと言い、賑やかな第5曲の五重唱が始まったが、パパゲーノに二度と嘘をつかないことを条件に口枷の錠を外してくれた。続いてパミーナを助けに行くタミーノには、女王様の贈り物と称して、「魔法の笛」が贈られていた。一方のパパゲーノはザラストロに会うと殺されると拒否していたが、どこかに掛けてあった古時計を良い音のする「銀の鈴」と称して、三人の侍女から女王様の贈り物として手渡されたので、不承不承、一緒に行くことになった。王子とパパゲーノが、ザラストロの宮殿に行くにはどうすると尋ねると、三人の侍女は、ここにいる三人の少年が案内するから、話をよく聞いて進んでくれということであった。


         お爺さんの話は、続いて「第4章、王女パミーナ」の話となり、数週間前にザラストロ一味に誘拐された王女パミーナが、そこから逃げ出そうとしてサーカス団の奴隷たちの親分のモノスタトスに捕まって、そこで賑やかな三重唱が始まっていた。パミーナが可哀そうに、逃げ出さないように踊り子のスタイルにされ、手足を磔にされていた。場所はサーカス小屋の一角か、モノスタトスがパミーナを捉えた奴隷たちに、パミーナと二人だけになりたいと命令をしていた。そこへ大きな鳥肉を持ったパパゲーノが三人の童子とともにひょっこりと現れて、誤ってそこにいたモノスタトスを突き飛ばしてしまったので二人は「さあ、大変」。初顔合わせする二人は、お互いを怪物だと思い込み、勝手知ったモノスタトスが逃げ出したところに、パミーナが手枷・足枷を外されて助け出され、「やっと自由になった」と喜んでいた。


       そこで早速、お爺さんがパミーナに、王子タミーノがあなたを愛しており、助けに来ると事情を説明し、一方のパパゲーノは、女王に毎朝鶏肉を届けていたパパゲーノだと親し気に挨拶をしているうちに、パミーナは安心をして、第7番の二重唱を歌いだした。パミーナは「恋をする男なら、優しい心を持っている」と歌えば、パパゲーノは「甘い愛を知ることが、女性の第一の務め」と歌いだし、二人は恋の楽しさと妻となり夫となる幸せを、立場が違うが大きな声で歌って、万雷の拍手を浴びていた。 


           お爺さんの話が「第5章、三つの門、または、三人の賢い少年」と読み上げられると、三人の童子はやっと出番が来たと声を挙げて喜んでおり、賑やかにフィナーレが開始されていた。そしてそこに現れたタミーノと一緒にサーカスの広場を歩き始め、王子タミーノに、これからは「強い意志」「辛抱強さ」「沈黙の行」の三つが大切だと教え込んでいた。そこで早速、三つの門が現れたので、タミーノは「ここに来た目的は、パミーナを助けること」と再確認し、「自然の門」から入ろうとしたが、「下がれ」の一声。驚いて次の「理性の門に入ろうとすると、ここでも「下がれ」と退けられた。困ったタミーノが勇気を出して最後の「知恵の門」に入ろうとすると、二階から「この神殿に何をしに来た」と声を掛けられた。周りには、サーカス小屋の連中がうろうろしていたが、声の主は二階の怖い顔の弁者であった。パミーナを誘拐したザラストロに会いたいと告げて問答となったが、「お前は女に騙されている」と言われて、タミーノは途方に暮れていた。


         そこへ姿なき合唱が「パミーナは生きている」と教えてくれて勇気百倍になり、感謝の気持ちで「魔法の笛」を思い切って吹くと、サーカス小屋からいろいろな動物や芸人たちが出てきて喜んで聞いていた。中には球に乗った芸人や、背高ノッポの芸人も出てきて、観客は喜んでいた。そこで喜んでもっと笛を吹いているうちに、何とパパゲーノの笛が遠くから応えてきた。しめたとばかりに、勇んで笛を吹き続け、タミーノは元気を出して、パパゲーノたちを見つけようとしていたが、見つからない。場面が変わって、そこに現れたパパゲーノとパミーナが、モノスタトス一行に捕まってしまった。そこでパパゲーノが、慌てながら手にした古時計の「銀の鈴」を鳴らしてみると、ラ、ラ、ラ、の美しい音楽が鳴り出して、一行は一緒に歌いだし、どこかへ行ってしまっていた。「助かった」と二人が喜んでいると、勇ましいトランペットの音とともに行進曲が始まり、「ザラストロ、万歳」の叫びとともに、大勢の人々による大合唱が開始されていた。


         そこでお爺さんの「第6章、ザラストロの登場」が始まり、そこでは、ザラストロが来るので「さあ、大変」となっていたが、ここでパミーナは、急にしっかりした王女の口調に変わって、改めて「正直に真実を語ろう」と決意して、パパゲーノと一緒に退場していた。「ザラストロ、万歳」の合唱とともに、山高帽子をかぶったサーカスの親分風のザラストロが、中央の階段の上に姿を現した。
      パミーナは「自分が逃げたのは、悪いムーア人が私に愛を求めたからです」と正直に説明すると、ザラストロは良く分かっており、また、母の名を口にすると、そのために自由を与えることは出来ないと釘を刺されていた。そこへモノスタトスがタミーノを連れて登場し、タミーノとパミーナが初めて顔を合わせていた。しかし、モノスタトスは処罰され、タミーノとパパゲーノは試練を受けることになって、パミーナとよそ者三人は目隠しをされ、宮殿へと階段を上って、ここで第一幕は終了となっていた。大拍手が続き、映像はオーケストラピットが映されていたが、第一幕は大成功のようであった。



第二幕は厳かな行進曲の前奏が始まって、舞台ではザラストロと大勢の僧侶たちが、何やら儀式めいたことを行っていた。三人の童子たちが「あの人たちは?」とお爺さんに質問すると、「姿はいろいろだが、我々と同じ人間だ」と説明しており、いよいよ「第7章、第一の試練」が開始されていた。ここでは、三つの和音が響いてから、タミーノとパパゲーノとパミーナの三人が大勢の僧侶たちの前に、目隠しのまま連れてこられ、中央の段に上がったザラストロが、第10番の「イシスとオシリスの神に、彼らに叡智の心を与えたまえ」とゆっくりと歌い出した。ザラストロは、危険の中にいる二人に忍耐の力を与え給えと祈り、僧侶たちも同じように合唱していた。儀式が終わると、パパゲーノが試練なんか嫌だと騒ぎ始めたが、お爺さんに「沈黙」と一喝され、おとなしくなった。


       一方、舞台では、タミーノとパパゲーノは、登場した二人の僧侶に、試練を受けるかどうかを確認されたが、タミーノは覚悟していたが、パパゲーノは「美しい娘のためなら」と答え、ザラストロが用意した自分に似たパパゲーナに会えることを楽しみに試練に加わることになった。そして「賢い男も女の策略にかかる」と沈黙と女の企みに気をつけろと、踊りながら第11曲の二重唱で教えていた。早速、暗闇の中から三人の侍女が現れて、女王様が来ていると頻りに誘う第12番の五重唱が始まっていたが、パパゲーノもタミーノに助けられながら、何とか頑張り通したので、三人の侍女は諦めて暗闇に消え去っていた。


         場面が変わって、暗闇の中でモノスタトスが登場し、月明かりの中で寝込んでいるパミーナを発見して、「惚れれば楽しいさ」と早口の第13番のアリアを歌い出していた。そして、「キスぐらいはいいだろう」といたずらをしようとして、折から現れた夜の女王に見つかって、「お下がり!」と一喝されてしまった。
          気のついたパミーナに女王は「ザラストロに復讐しなければ、お前は私の娘でない」とコロラチューラで歌う第14番の華やかなアリアを歌って立ち去って行った。このアリアは、大変な成功で高い高音も見事に決まり、大変な声援と拍手を浴びていたが、この夜の女王は、若くてすごい美人であり、この舞台で一気に人気を挙げたように思われた。


         続いてお爺さんの「第8章、パミーナの決断」が始まっていた。一人呆然とナイフを持って考え込んでいたパミーナは、「人殺しは出来ない」と固く決断したところに、ザラストロが突然に現れた。母親の罪を許してやって欲しいと訴えるパミーナに、ザラストロは慰めるように「この聖なる殿堂には、復讐を思う人はいない」と第15番のアリアを歌い出し、この美しいアリアを朗々と歌っていた。しかし、この映像では、ザラストロが歌っている間に、パミーナが左手に持っていた武器を力づくで取り上げられ、彼女が反省してザラストロに許されるというシーンがあった。


         再び暗闇の中で、タミーノとパパゲーノは退屈していると、お爺さんが「第9章、第二の試練・毅然たる態度」が始まった。パパゲーノがここには「水もない」とこぼしていると、白い装束の婆さんが現れて水を差し出した。パパゲーノが退屈しのぎにからかうと、18歳と2分の若い婆さんの恋人が自分であることが分かって、さあ大変。しかし、暗闇と雷鳴のお陰で婆さんは消え去った。
        そこへ三人の童子が現れて、「ザラストロの国にようこそ」と歌い出し、魔法の笛と銀の鈴を手渡し、ワインや食べ物を手渡して、沈黙を守るように注意していた。タミーノが思わず笛を吹くと、それを聞きつけてパミーナが話しかけてきた。しかし、男二人は注意されたばかりであるので、相手になるわけにいかない。パミーナは悲しげに「ああ、確かにもう終わりなのね」と第17番のアリアを歌い出し、無視されるのは死ぬほどつらいと恨めしそうに歌っていた。木管のオブリガートが美しいアリアで、パパゲーノも今回は立派に沈黙を守っていた。


      続いて三つの和音が鳴り響き、僧侶たちが集まって、僧侶たちの第18曲の合唱が始まっていた。合唱は、「イシスとオシリスの神よ、何という喜び」と祈っていたが、しかし続けて良く聞いていると、「若者は我らの務めに捧げるであろう」と歌っていた。ザラストロが登場し、「王子よ、冷静であった」と語り、パミーナを呼んで第19曲の別れの三重唱が始まっていた。別れがつらいと歌う二人に、何事も神々の意思だと歌うザラストロのそれぞれの心を歌う見事な三重唱になっていた。


      一方、パパゲーノはワインにありついてご機嫌であったが、思いついたように銀の鈴を振るとグロッケンシュピールが明るく鳴り出し、「パパゲーノは若い娘が欲しいな」と有名なアリアを歌い出した。ワインを飲みながら、調子に乗って歌っているうちに、サーカスの踊り子たちがブランコに乗って芸をしてサービスをしていた。歌が終わるとそこへ「私だよ、お兄さん」と例の婆さんが現れた。しつこく握手を求められ、パンと水だけの世界になると脅されてしぶしぶ手を出すと、あら不思議や、婆さんが白い頭巾をとると若いパパゲーナが現れた。パパゲーナと名を呼んで追いかけようとしたが、怖い裸のお兄さんが出てきて遮られ、もう一息で逃げられてしまった。


       お爺さんが「第10章、絶望」と叫び、 フィナーレの前奏に続いて三人の童子たちが「朝の訪れを告げる太陽が輝く」と明るく歌い出していたが、彼らは様子がおかしいパミーナを見つけて近づいた。パミーナは武器を持ち、悲しみの余り自殺しそうな様子でふらふらしていた。三人はタミーノに会わせてあげるとご機嫌を取り、隙を見て武器を取り上げ、4人が連れだってタミーノを探しに出発しようとしていた。


     場面が変わって、暗闇の中で、凄い物音が続きお爺さんが「第11章、最後の試練、“火と水”」と叫んでいた。前奏が始まり、二人の僧侶のほかにも人々が舞台や背後の隠れたものを守っており、「この道を来たるもの、火、水、大気、そして大地で清められる」とコラール旋律で歌っていた。そこへタミーノが登場して、勇敢に前に進もうとしていると、パミーナの声が遠くから聞こえてきた。二人は会話が許され、「私のタミーノ」「私のパミーナ」とめでたく互いに劇的な再会をした。


      そして、ピッチカートの伴奏に乗って、二人の愛と魔笛の力で試練の道を克服しようと相談をし、タミーノが笛を吹きパミーナが案内をするという。二人は初めに「火の試練」をクリアしたが、場面は影絵のスクリーンで示されていたが、音楽で十分わかり、この試練に成功した。続いて「水の試練」に立ち向かい、これも影絵で示されて、それらしく元気に戻ると、二人は遠くからの大合唱で勝利を祝福され、神殿へと迎えられていた。


      一方、場面が変わって、一目見た若いパパゲーナを探して、パパゲーノが暗闇の中を駆け回ってきたが、どうしても捕まらない。サーカスの踊り子たちを捕まえても皆違い、遂に諦めて首吊りでもしようかと考えていたら、三人の童子が手伝ってくれて、ブランコが下がってきた。それに首吊りのロープを掛けて、1、2、3、とゆっくり数えてから首を吊ろうとしても、誰も声を掛けて助けてくれない。遂に諦めて思い切って首を吊ろうとしたときに、三人の童子が「銀の鈴」を鳴らせという。忘れていたとばかりに、パパゲーノが勢い込んで鈴を鳴らすと、後ろの陰から、可愛いいパパゲーナが飛び出してきて、二人は劇的な「パ、パ、パ」の二重唱となっていた。この演出では、沢山の乳母車が赤十字のおばさん方に引かれて、沢山の子供が誕生したことを示しており、観客の笑いを誘っていた。


      暗闇の中でモノスタトスの案内で夜の女王の一行が、ザラストロに復讐しようと神殿の地下から出てきたが、それを警戒し待ち構えていた一行による雷鳴や稲妻により襲撃され、危険なモノスタトスが倒されていた。


ここで、ザラストロは「太陽の光」の勝利宣言を行い、集まった僧侶たちやサーカスの人々による勝利の祝福の大合唱が始まっていた。広場の中央には、三人の童子たちが花道を作り、若き王子のタミーノとパミーナが揃って登場して花道をゆっくりと行進していた。そしてイシスとオシリスの神々に感謝の大合唱を捧げて終幕となっていた。もの凄く大勢の人が参加した舞台の大人数の大団円であり、通常、登場する動物たちや、パパゲーノやパパゲーナや大勢の子供たちの姿が見えず、若い王子と王女の誕生を祝った賑やかな合唱で、三人の童子たちとお爺さんが目立って大忙しの大団円となっていた。


     この映像は、2018年のザルツブルグ音楽祭の最新の映像であるが、冒頭に申し上げた通り、語り手のお爺さんと三人の童子を中心に、リブレットを変更して、大きな対立関係がない、子供たちが喜びそうな大勢のサーカスの芸人たちが登場する「魔笛」であった。しかし、ナンバー曲が省略なくしっかりと歌われており、品の良い演出なので、終わってみれば、終始、笑いの絶えない「魔笛」となっていた。場面が崩されていたにも関わらず、タミーノも踊り子姿のパミーナも、良く声が伸びてしっかり歌っており、特に、夜の女王の歌と容姿には驚いた方が多かったと思う。今回の指揮者カルディスは名前だけしか知らないこのHP初登場の方であったが、序曲が速すぎて落ち着かない様子であったが、それ以外は、良く歌手を歌わせており、まずまずの出来栄えのように思われた。常連のウイーンフイルや合唱団も水準の高さを思わせており、目先の変わった面白い「魔笛」として、評価が残される映像になったものと思われる。

     今回の映像は、前半の変化のある舞台を意識し過ぎたのか、中盤のサーカスの人々の出入りが多くなって、それに全体の精力が使われたのか、後半のフィナーレからの最後の試練や、最後の大団円が盛り上がりに欠けて、全体が締まらない舞台のように見えた。結果的にカーテンコールなどで拍手が多く、客席の人々は喜んだようであるが、私には物足りなく映っていた。見始めた当初は斬新なスタイルの舞台であり、何か新しいことが始まるかという期待を抱かせていたが、それも第二幕の半ばまでで、残念であった。この演出では、ザラストロがフリーメーソン・スタイルの力強さが欠けており、それがかなりの要因のように思われるが、私にはドイツ語圏の本流の「魔笛」だけに、もっとザラストロの威厳ある支配と、お客さんを喜ばせる重厚な仕掛けなどがあっても良かったように思われた。


(以上)(2018/12/15)



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