(最新の放送記録より;アルゲリッチとバレンボイムの2台のソナタK.448など)
17-9-2、マルタ・アルゲリッチとダニエル・バレンボイムによる二台のピアノソナタニ長調K.448、2014年8月、「ピアノ・デュオ2014」、コロン劇場、ブレノスアイレス、およびジャン・フールネ指揮NHK交響楽団によるヴァイオリン協奏曲第3番K.216、
ヴァイオリン;ドンスク・カン、1993年2月13日、NHKホール、

−アルゲリッチとバレンボイムの「ピアノ・デュオ2014」というお二人の生まれ故郷であるブレノスアイレスのコロン劇場で収録された珍しいコンサートであったが、 収録曲は前にアップしたベルリンのフィルハーモニア・ホールでの演奏会(15-5-2)と同じ曲目であった。前回も感じたのであるが、K.448の両端楽章は私にはテンポが少し早すぎたが、この第二楽章では実に二人のゆっくりとしたアンダンテが良く、二人の呼吸がピッタリと合っているのが良く分かった。一方のK.216のカンの独奏ヴァイオリンとN響は、実に持ちつ持たれつの温かみのある演奏に終始し、これにはやはりやジャン・フールネのやや遅めのテンポでしっかりと進めてくれたことと、カンの明るいがやや蔭りのある音色が、私にはとても合って軽快で楽しい演奏に聴こえていた−

(最新の放送記録より;アルゲリッチとバレンボイムの2台のソナタK.448など)
17-9-2、マルタ・アルゲリッチとダニエル・バレンボイムによる二台のピアノソナタニ長調K.448、2014年8月、「ピアノ・デュオ2014」、コロン劇場、ブレノスアイレス、およびジャン・フールネ指揮NHK交響楽団によるヴァイオリン協奏曲第3番K.216、
ヴァイオリン;ドンスク・カン、1993年2月13日、NHKホール、
(2017/06/30、クラシカジャパンの放送をHD-1に収録。および1993/01/30、NHK芸術劇場ほかの3放送をVT-93に収録)

続く9月号の第2曲目は、最新のクラシカジャパンの放送で収録したのであるが、アルゲリッチとバレンボイムの「ピアノ・デュオ2014」というコンサートであり、2014年8月にこのお二人の生まれ故郷であるブレノスアイレスのコロン劇場で収録されたものであった。収録曲は、二台のピアノのためのソナタニ長調K.448のほかに、シューベルトとストラヴィンスキが続いており、これは前にアップしたベルリンのフィルハーモニア・ホールでの演奏会(15-5-2)と同じ曲目のコンサートであり、今回は故郷での久し振りの凱旋公演と言うことであった。
このK.448一曲だけでは少し物足りないと考えて、古いS-VHSテープ゚よりジャン・フールネ指揮のN響定期でドンスク・カンのヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲第3番K.216をお届けしたいと思う。この協奏曲は最も映像数が多い曲で、このテープのアップが終われば、あとパールマンの演奏が残っているだけとなり、やっと「総括」が出来る準備が整ってきているので、ご期待いただきたいと思う。




チリの共にブレノスアイレス生まれのマルタ・アルゲリッチとダニエル・バレンボイムの巨匠同士による夢のような二人のデュオが、二人の生まれ故郷で実現するというコンサートであって、超満員の会場のコロン劇場には熱気が溢れていた。豪華な6階建て位のボックスシートに囲まれて舞台には2台のピアノが置かれていたが、舞台の上にもピアノを囲むように三方に客席が用意され、写真のように大変な賑わいであった。前回報告した二人のベルリンのコンサートと全く同じ曲目であったが、兎に角、超多忙のお二人が同じ年に二度コンサートを行なうことは大変なことであったと思われる。
             今回の曲目もモーツァルトのソナタK.448、シューベルトの1台4手の変奏曲D813、およびストラヴィンスキーの自作の2台のピアノ版の「春の祭典」という異色なものであり、まさに夢のような期待に溢れる人々で満ちたブレノスアイレスのコロン劇場であったろうと思う。故郷ではどんな姿を見せるかを、前回と比較するような形でご報告したいと思う。




      モーツァルトの二台のピアノのためのソナタニ長調K.448(375a)は、二台のピアノが全く対等な立場で声部を分け合い、互いに競い合い助け合って進行するほか、16分音符の華麗なパッセージや美しい分散和音、長いトリルなどの華やかな装飾音がふんだんに使われており、コンチェルタントな効果をあげる魅力ある優れた作品とされている。映像ではアルゲリッチが先頭で入場し、舞台に上がると二人が手をつないで四方に丁寧にあいさつをしてからバレンボイムがプリモ、アルゲリッチがセコンドの席に着いていた。アルゲリッチはデュオの時は、いつもセコンドを弾いているようで、前回と同様に二人は並んでピアノに向かっていた。




バレンボイムが頭を振ってフォルテのユニゾンで第一主題が力強く始まり、モーツァルトらしい軽快な旋律で第一と第二ピアノが順番に交替しながら、追い掛け合うような華々しいパッセージで第一主題が進行していた。晴れやかな経過部が続いた後にドルチェでアルゲリッチの第二ピアノが優しく第二主題を弾き始めると、バレンボイムの第一ピアノがこの主題を軽やかに受け止めて弾きだし、二つのピアノはお互いに模倣しながら華々しくこの主題を歌ってから経過部の新しい華やかな結尾主題へと移行して、アルペッジョで提示部を終えていた。ここで二人はごく自然体で再び冒頭に戻って、元気よく軽快な第一主題を弾き出していたが、二度目になると二人は一層軽やかになり、装飾音などを自由に弾き出して賑やかさを増しながら威勢良く進行させていた。
             展開部では第二ピアノがソロで新しい主題を提示してから第一ピアノに移されて、二つの楽器による激しいユニゾンの部分が続いていたが、直ぐに二つのピアノが互いに答え合うような部分が続き、やがて強奏になって勢いを増しながら、再現部へと突入していた。再現部では第一主題、第二主題、結尾主題とほぼ同じように再現されていたが、最後に珍しく展開部の主題も第一ピアノで再現されており、それが両ピアノに渡されて素晴らしい効果をあげていたように思われた。二人のピアノは調子に乗ってややテンポが速くなりすぎそうになり、細かなアンサンブルが気になるような部分もあったが、二人の巨匠の息の合った名人芸なら許されるものと、むしろ二人の真剣な表情を楽しみながら映像を見ていた。




            第二楽章のアンダンテでは、バレンボイムの第一ピアノが美しいメロデイラインを受け持って始まり、途中からオクターブで輝くようなメロデイを聴かせていたが、続いて第二主題に移行すると、ここではバレンボイムのピアノにアルゲリッチが一小節遅れで追従するようにゆったりと主題が流れていた。結尾主題が第一ピアノに現れ、第二ピアノが続いて二台の長いトリルで提示部を終えていたが、ここでバレンボイムの第一ピアノはごく自然体に冒頭に戻り、再び美しい第一主題に戻って提示部を繰り返していた。この繰り返しでは二人の息が実にピッタリと合い、自然につけられる装飾も美しく馴染んで、実に最高のこれぞ名人芸とも言うべき二重奏が繰り返されていた。
展開部では第二ピアノが単独で新しい主題を提示する変化を見せながら第一ピアノに主題が渡されて、二台で展開部を仕上げた後、第一ピアノで再現部に入っていたが、ここでもキラキラと輝くような旋律が綿々と続いていた。しかし、第一と第二のピアノの役割が変わったり、右手と左手の動きが逆になったり、絶えず変化を見せながら美しいコーダで結ばれていた。この再現部でも二人の呼吸がピッタリと合い、実に美しい名人芸の二重奏が続いており、最後の二人が続ける分散和音の美しさなどは息を飲むほどで、さすがと思わせていた。




               フィナーレのモルト・アレグロは、典型的なロンド形式。いきなりバレンボイムの第一ピアノによって、あの「トルコ行進曲」に感じに似た輝かしいロンド主題が飛び出し、華やかに繰り返された後、賑やかに二台のピアノで華やかなパッセージが続いていたが、突然、バレンボイムの第一ピアノで短調の第一のエピソードが現れた。この主題は第一ピアノで弾かれて賑やかに発展していくが、突然、フェルマータで止まり二台のピアノで奏する和音の主題に変わり、これがさらに発展して大和音でフェルマータで休息後、冒頭の明るいロンド主題が復活していた。 続いて第二のエピソードが第一ピアノで始まり第二ピアノが引き継いだ後に、二つのピアノが掛け合いながら進んでいたが、途中から第一のエピソードも姿を表して軽快に進んでいた。そして最後にロンド主題が静かに復活し、次第に勢いを増しながら長いコーダに入り元気よくフィナーレが結ばれていた。




                このトルコ行進曲に似た元気の良いフィナーレが大方のフアンを惹き付けているのであろうが、聴くと次第に元気になってくる癒しの効果を多分に持っている曲なのであろう。バレンボイムとアルゲリッチも弾き終えてニッコリしながらお互いに肩を寄せ合いながらご挨拶を繰り返していた。この曲で元気をつけて、お二人はこの後、一台4手のシューベルトの変奏曲を、肩を寄せ合い、手を重ね合わせるようにして仲良く弾いており、これが実に仲睦まじい絵になっていた。最後の2葉の写真は、この1台4手の時の写真である。そして休憩後に、最後にストラヴィンスキーの「春の祭典」を弾いていたが、これは大変な難曲に思えたので、お二人の準備が大変であったろうと思われる。
     バレンボイムとアルゲリッチのとても珍しい巨匠同士のデュオの第一曲目のソナタは、前回も感じたのであるが、両端楽章は私にはテンポが少し早すぎて、落ち着いて聞くことができず、もう少しゆっくりとしたテンポでじっくり弾いて欲しかった。しかし、この第二楽章では実にゆっくりとしたアンダンテであり、特に前半の提示部で繰り返してからは、二人の呼吸がピッタリと合っているのが分かった。そして、お互いにかなり自由に装飾をつけたり、お互いのやり取りの息が合っており、素晴らしいこれぞ名人芸と言うべきアンサンブルを聴くことが出来た。         (以上)(2017/09/17)





            続く9月号の第二曲目の第二曲は、予告したとおり、ドン=スク・カン(Dong-Suk Kang)のヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲第3番K.216であり、ジャン・フールネ指揮NHK交響楽団との来日公演である。1954年生まれの若いヴァイオリニストは、一見して名前から韓国人だと分るが、この国では良く英才が育つものと関心を持ちながら見ることにした。この人は1967年から71年までジュリアード音楽院で学び、さらにカーティス音楽院でも学んでおり、74年から76年わたって、アメリカとヨーロッパのコンクールに参加し入賞の経歴を持っているようであった。この映像は、恐らく実況ライブではなくN響アワーなどからの編集された映像であり、いきなり指揮者とソリストが登場するところから始まっていた。




         曲はジャン・フールネの指揮により、いきなり全員のトゥッティで第一主題を開始していたが、オーケストラの様子を良く見るとコントラバスが四台のしっかりした弦5部とオーボエ・ホルンからなる協奏曲にしては大規模なオーケストラであった。この長いアリア風の第一主題の合奏が穏やかなゆっくりしたテンポで続いてから、直ぐにオーボエとホルンが導く第二主題が表れてオーケストラによる主題提示部が盛り上がりを見せながら、勢いよく進行していた。
            そこでカンの独奏ヴァイオリンが、1オクターブ高く、勢いよく第一主題を弾き始め、早速、装飾音を加えながら明るく弾き始めていた。彼の弾き方は、身体を動かして弾くタイプであり、ヴァイオリンは明るいがやや蔭りのある音色で、威勢は良いがやや地味な印象であった。そして、短いトゥッティのオーケストラの後に、直ぐに第三の新しい美しい主題を華やかに弾き始め、それから早い技巧的なパッセージが続いてソリストの見せ場を作っていたが、フールネとのテンポがよく安心して聴くことが出来た。やがてオーボエの重奏で第二主題が提示されて、再び独奏ヴァイオリンがこれを受けて元気よく活躍しながら提示部の後半を盛り上げていた。




           展開部はまずトゥッティで始まり短調の陰りを見せながら進行してからカンの独奏ヴァイオリンが新しい主題を出して繰り返し、トゥッティ、独奏ヴァイオリン、オーボエなどの順に展開されて規模が大きくなっていた。そしてフェルマータの後一息ついて、再現部に突入していたが、ここではトゥッティに始まり独奏ヴァイオリンが続いて第一主題を提示した後に、第三の主題が独奏ヴァイオリンで弾かれ、続いて第二主題へと進み、ほぼ型通りに進んで盛り上がってからカデンツアとなっていた。カンのカデンツアはオリジナルか。初めて聴く表情豊かな技巧を散りばめながら仕上げられたもので、華麗なヴァイオリンの音色が示されていた。フールネのやや遅めのテンポのもとで、カンは落ち着いて素晴らしい安定した技巧を示しながら、明るくオーケストラと対話しており、初めての方ではあるがゆとりのあるしっかりした演奏のように思われた。




            第二楽章ではアダージョで、オーボエの代わりにフルートが用いられ、全楽章が穏やかなピッチカート伴奏で進行する美しい楽章であった。始めにトゥッティで4小節の美しい主題がピッチカート伴奏で始まるが、直ぐにカンの独奏ヴァイオリンがオクターブ高く繰り返して進行し、ピッチカートの伴奏で独奏ヴァイオリンがこの穏やかな美しい主題を明るく歌い、変奏を加えながら繰り返していた。続いてフルートとホルンの重奏と独奏ヴァイオリンが交互に第二主題を提示して繰り返されていた。
           続く短い展開部では、第一主題前半のモチーブによる独奏ヴァイオリンの一人舞台であり、続けて始まる再現部では、カンの独奏ヴァイオリンが中心になって再現され、やがて第二主題も現れてフェルマータに導かれてカデンツアとなっていた。短いカデンツアは第二主題中心のものであったが、カンは瞑目しながら静かに美しい音色でこのカデンツアを仕上げていた。最後はコーダのあと独奏ヴァイオリンが第一主題を弾きだして終わるという変わった試みで、味わい深い静かな終わり方であったが、カンは終始落ち着いた素振りで瞑目しながら丁寧に弾いており、その姿は印象的であった。




            第三楽章はフランス語でRONDEAUと書かれたアレグロ楽章であるが、モーツァルトはいつも、単なるロンド楽章ではなく、中間部にいろいろな工夫を試みている。まずオーケストラで耳慣れた楽しいロンド主題が軽やかに提示され、続いて独奏ヴァイオリンがロンド主題を繰り返していくが、カンはこの主題を実に軽快に進め、その後は新しい主題を独奏ヴァイオリンが提示する形で第一クープレが入り、第二クープレも弾き終わってA-B-A-C-A-と、颯爽とロンド主題に戻っていた。
          ところがロンド主題を終えてフェルマータの後、曲は一転して短調風のアンダンテとなり、独奏ヴァイオリンが弦のピッチカートに乗って、軽やかに美しい新しい歌を歌い出し繰り返された。その変わりように驚いていると、続いて曲調はアレグレットに変わって、再び独奏ヴァイオリンが民謡調の別の主題を歌い出し、更に独奏ヴァイオリンの重音奏法の新しい主題が提示されて繰り返されていた。この新しいフランス風の気まぐれな飛び込みは、新鮮な印象を与えていたが、フェルマータの後に、再び始めのロンド主題に戻ってこの楽章は静かに終わっていた。モーツァルトが協奏曲の連作時に見せるロンド楽章のこうした思わぬ新しい変化は、この曲あたりから目立つようになり、何時も楽しみを持って迎えられていた。




       カンの独奏ヴァイオリンとN響は、実に持ちつ持たれつの温かみのある演奏に終始し、これにはやはりやジャン・フールネの私にはとても合ったやや遅めのテンポでしっかりと進めてくれるからであり、とても軽快で楽しい演奏であった。このK.216の第3番の協奏曲はとても人気のある協奏曲であり、この曲にはまだ未アップの古い演奏がまだ1組あるので、「総括」の完成にはまだ時間がかかるものと思われる。


(以上)(2017/09/18)



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